雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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高城山でのキノコ狩り その5 (皮をむいて調理するムキタケ)
高城山 (1632m) のブナ林
概ね海抜800m以上に ブナ (ブナ科) があります。ただし、標高の低いところ (1200mあたりまで) はスギ植林のために伐採されているところも多いです。高城山の山頂付近には千古斧鉞の入らぬブナの原生林になっています。剣山 (1955m) の山頂付近の1700m以上は亜高山性の針葉樹のシラビソが優占していてブナが消えるので、四国東部の山岳地帯では、海抜800~1700mがブナ帯 (冷温帯) と言えましょう。この標高帯が天然食用キノコの宝庫であります。
ブナの森

ブナの幹は本来の地肌は灰白色なのですが、地衣類が付着してさまざまな紋様をあらわします。非常に独特な樹皮です。黒っぽい部分と白っぽい部分が混在するさまは、まるで望遠鏡で見た 月面 みたいであります。
ブナの幹

ブナの純林となっているところもありますが、他の樹種も交えています。多いのは、ウラジロモミ、ツガ(海抜が高くなるとコメツガ)、ゴヨウマツなどの針葉樹を交えて針広混交林のところもあるし、広葉樹ではイタヤカエデなどのカエデ類や、ミズナラ、ハリギリ、トチノキ、サワグルミなどがあり、この山域で特に目立つのはヒメシャラです。↓の写真で赤っぽい幹がヒメシャラです。ただし、ナツツバキも僅かに見られますが幹だけでは識別がむずかしいです。手前の太い樹の幹はおそらくツガですが、森の中に入ると枝葉がはるか樹上で茂っているので観察できず、木の幹だけみて樹種を見分けるのですが幹だけで樹種を同定するのは非常に困難です。

ヒメシャラとか、ウラジロモミなど

ブナ林は天然キノコの宝庫!
●徳島県・高城山 (1632m) にキノコ狩りに行ってから早10日も経ってしまったけれども、その記事の続きであります。ブナ林は天然キノコの宝庫であることに異論はないと思います。なぜ北陸地方や本州中央高地や東北地方でキノコ狩りが盛んなのか? その大きな理由の一つが、冷温帯のブナ林が身近な里山にあるからでありましょう。ブナ林のキノコのフロラは非常に豊かで、特に南の地方の常緑広葉樹林 (照葉樹林) と比べると、天然キノコの種類や発生量で圧倒しています。

ブナの自生南限地
この天然キノコの宝庫のブナ林は、日本列島の分布は、自生南限地が鹿児島県の 高隈山 (たかくまやま) (1236m)です。1000mを越える尾根筋の北側に僅かにあるそうです。かつての氷河期に北方の植物が分布を南下し、後氷期の温度上昇で北方へ後退、山の上の北斜面や谷筋に取り残された 「遺存」 であるらしい。 
『鹿児島の落葉樹 南限のブナ林』
『高隈山森林生物遺伝資源保存林』 等参照。

ブナの自生北限地
自生北限地が北海道・渡島半島 (おしまはんとう) の付け根の 黒松内町 (くろまつないちょう) の歌才ブナ自生北限地が非常に有名です。しかしながら、 『分布最北限ツバメの沢ブナ林の林分構造』 という論文を閲覧したら、真のブナ自生北限地はツバメの沢というところらしい。ならば、ブナの北限地は蘭越町 (らんこしちょう) ということになりそうです。北限地には、普通の 「北限地」 と 「最北限地」 との2種類があるらしい。吾輩もこれは知らなかったわ。よい勉強になった。 「北限地」 と 「最北限地」 はどう違うのか? おそらく従来北限地と考えられていた場所よりも更に北方でその植物の自生が見つかった場合であろう。つまり新しく見つかった所が 「最北限地」 ですね。しかしながら、従来の所が 「北限地」 の称号をを取り下げずに 「北限地」 を主張し続けるのでしょう。北限地でも南限地でも、そこの教育委員会等は案内の看板を建てて、町おこしの観光資源にしようとします。あんまりカネにはならんと思いますが、「北限地利権」 ということか??


余談その1
自生地北限利権なのか??
黒松内町 のホームページを拝見すると、その表紙 (トップページ) に

「北海道黒松内町のホームページへようこそ! このホームページでは、北海道黒松内町に関する様々な情報をお伝えしています。 「ブナ北限の里 くろまつない」 をごゆっくりお楽しみください。」

と書いてあります。ブナの真の自生北限地は明らかに北側に隣接する蘭越町に移転しているのに、いまだにブナ北限の里を主張しています。これはおかしいです。本来ならば、蘭越町のツバメ沢でブナ自生林が発見された時点で、黒松内町はブナ自生北限地の称号を取り下げるべきです。大袈裟な言い方をすれば、一旦手にした利権・利得は絶対に手放さないぞ、ということでありましょう。もちろん利権の質や規模は全く異なりますが、チェルノブイリを超えたと米国機関が認定したフクイチ原発過酷事故を起こしても、絶対に原発利権を手放さない原子力ムラの連中に相通じるものを感じます。


余談その2
淡路島南部地域の自生北限地
黒崎先生 (植物地理学専攻) らの研究によると、淡路島南部地域で、野生高等植物 (維管束植物) で分布限界地となっている種が2種あります。1つは キキョウラン (ユリ科) で旧西淡町伊毘の沖の島が北限地です。もう1つは マルバハダカホオズキ (ナス科) (2段目の赤い果実がびっしりと着いているのが吾輩の写真) で旧洲本市の上灘海岸 (相川~中津川) です。また、ミツバツツジの一種のユキグニミツバツツジが一時自生南限地 (諭鶴羽山) とされましたが、すぐに他地に譲りました。地元の教育委員会は自生北限地の説明看板を建てて、早急に観光スポットにしなければいけない。


西日本じゃ相当な深山へ行かないとブナ林がない
●ようするに、ブナの樹の出現高度は南限地では海抜1000m、四国東部では800m、近畿北部では谷筋など場所によっては500mと緯度が高くなるにつれて下がってきます。 『佐渡:安養寺のブナ林 佐度における最低海抜55mのブナ林』 によると佐度島では場所によっては海面近くの低いところまで降りてきます。東北地方北部では標高の低い里山まで、北海道南部じゃ平地まで降りてきます。つまり、北日本ではキノコの宝庫のブナ林が低い所にあります。一方、瀬戸内地方などではブナなどほとんどなく、相当な深山に行かないとブナがありません。これが北日本ほどキノコ狩りが盛んな自然環境的な背景です。  

なお、淡路島にはブナの自生はありません。淡路島の周辺最寄でブナがあるのは、北の方では六甲山 (931.3m)、東では大阪府の葛城山 (858m)、西では香川・徳島県境の大滝山 (946m) の山頂付近です。南は紀伊水道で海です。



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高城山のブナ林のキノコ
↓ 下の2枚の写真は ムキタケ です。ブナ帯では普通に出てくる優秀な食用菌です。表面の皮を剥いて調理するから 「剥き茸・むきたけ」 というらしいが、東北地方では普通に食べられているキノコです。肉質がやや柔らかで、水分をよく含む傾向があり、味噌汁など汁物によく合う食材であります。
ムキタケ
↑ 10月4日、高城山の中腹海抜1300m地点にて。

●このムキタケが何の樹の風倒木に出ているのか、材の腐朽が進んでいるので特定できません。ミズナラ? イタヤカエデ? あたりだと思いますが、ひょっとするとシデ類(イヌシデ、アカシデなど)かも? そのキノコが何の樹に出ているのか特定しておくことは重要です。キノコの種 (しゅ) は特定の樹種と結びついていますから、発生する樹種(ホスト)を可能な限り確認しておけば、次回のキノコ狩りに経験則として大いに生きてきます。(そのキノコの出ない樹種を捜すという徒労をカットでき、キノコ狩りの効率が上がる)

ムキタケ

↓ こちらは ナラタケ の老菌です。つまり、腐る寸前あるいは腐りかけです。残念! こちらも東北地方では良く食べられる美味い食用菌です。このキノコは西日本の照葉樹林帯でも発生しますが非常に少ないことは間違いありません。やはり、分布の本拠地はブナ帯でしょうか?
ナラタケの老菌
↑ 10月4日、高城山の中腹海抜1300m地点にて。ブナの巨木の立ち枯れの根元に出ていました。


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