雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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淡路島の山は、なぜ低いのか?
地塁山地はドングリの背くらべ。ひときわ高いピークはない。
淡路島は小さな島なので、島内の山は低いです。最高峰と言えども諭鶴羽山 (ゆづるはさん) の海抜607.9mしかありません。地形図に名前が載る山としては、柏原山 (かしわらさん・568.9m)、兜布丸山 (かぶとやま・535m)、妙見山 (みょうけんさん・522m)、伊勢ノ森 (いせのもり・515.1m) と、500mを超える山は5座ありますが、ドングリの背比べです。いずれも 地塁山地 の中のピークであります。地塁山地の大きな特徴として、連山の等高性が挙げられそうです。ある長さ・幅を持つ土地が断層運動で隆起する場合、元の平面が同時にほぼ等速度で持ち上げられるから、隆起後に浸食されて沢山のピークが形成されても、それらのピークは似たりよったりの高さです。考えたらドングリの背比べは当たり前ですわ。関西地方には地塁山地の例がたくさんありますが、どこを見ても似た海抜高度のピークが一列に並んでいるわけです。琵琶湖東岸を走る高速道路や鉄道の車窓から眺めると、琵琶湖の向こう側に比良山地が見えますが、1100m前後のピークが10座ほど行儀よく並んでいてドングリの背比べです。ただ、高い水準でのドングリの背比べか、低い水準での背比べかの違いです。地塁山地 (淡路島南部の諭鶴羽山地はまさにそれ) には、ひときわ抜きん出た高いピークはないのです。

ドングリの背比べの山々が並ぶ
↑三原平野側から柏原ー諭鶴羽山系を遠望しました。この淡路島南部の地塁山地は、山地南側に巨大な中央構造線活断層帯が東西に走っています。断層帯の北側が隆起しましたが、元は後期白亜紀 (1億年~6500万年前) に和泉内海に厚く堆積した土砂から成る地層で、砂岩と泥岩が互いちがいに積み重なり、ときには礫岩も交え、大量の貝やアンモナイトの化石を含んでいます。東西20キロほどの間に500~600mほどのピークが沢山並んでいます。これらのピークの標高に大きな差はなく、まさにドングリの背比べであります。写真の中に見えている高架道路は神戸淡路鳴門自動車道であります。


先山は、淡路島では特異な独立峰だが、海抜たった448m。
ちょっと見は成層火山なのか? と思えそうなほど均整のとれた富士山型の山容です。しかし火山じゃありません。地質的には、後期白亜紀 (1億年~6500万年前) に地下の深い所に貫入したマグマが冷えてできた新期領家花崗岩類が隆起して出来た山とされ、火山そのものではありません。しかし、富士山型なので淡路富士などと讃えられ島内広い範囲から眺められます。山頂には寺院もあり正月には大勢の登拝者で賑わいます。しかし、海抜はたったの448m。低い。あまりにも低すぎ。
淡路富士と讃えられる先山(せんざん)

富士山を作るのには、先山(せんざん)が何個必要か?
●簡単です。富士山は海抜3776m、先山は448mです。双方ともなだらかな裾野を引いて裾野の先端は海 (あるいは海抜ゼロm付近) まで達しています。山の姿も何となく似ています。仮に、山の形状が全く相似であると仮定したならば、富士山の海抜高度は先山の 8.43倍 の高さです。したがって 8.43の3乗 ≒ 600 であります。淡路島のなかに富士山を作ろうとしたら、先山を作っている土砂の600個分必要であります。もちろん山容が相似形であると仮定したハナシであって、厳密には違うでしょう。しかしながら、大雑把に言って、オーダーとして数百倍ということは当たっているでしょう。淡路島の小さな低い山では、600個、あるいは1000個分ぐらいないと富士山が作れないのです。すなわち、淡路島の山などいかにちっぽけで低いかがよく分かります。

念のため、富士山と先山の裾野の広がりについても調べてみました。富士山の裾野は広大で、南側ではほぼ駿河湾の海岸にまで達しています。富士山頂から駿河湾の海岸までの水平距離は約25キロです。一方、先山のすそ野も広いですが、裾野は大阪湾まで達してはいません。山頂から南東方向へ水平距離3キロ先の洲本市上加茂で、海抜3m、そのあたりが裾野の先端です。さらにその先はあと2キロほど海抜2~3mの沖積平野 (洲本平野) が続いています。25÷3は8.33です。富士山は先山と比すれば垂直方向に8.43倍、水平方向にも8.33倍です。同じ倍率であるということは、ほぼ相似形であることを示しています。富士山の山体の容積は先山の600倍というのは、ほぼ当たっていると思われます。ちなみに、富士山の山体の直径は約50キロで、淡路島の南北長とほぼ同じです。先山600個分の土砂を盛り上げて富士山を作ったら、淡路島全島を覆い尽くすものと思われます。

●この小さな先山を淡路富士などと讃えるのは、ある意味では本物の富士山に失礼でありましょう。 羊蹄山(ようていざん 1898m) を蝦夷富士と讃えたり、東北地方の名峰 鳥海山(ちょうかいさん 2236m) を出羽富士と讃えたり、中国地方の最高峰の 大山(だいせん 1729m) を伯耆富士と讃えるのは、それぞれがまさに小型富士山でありますが、離島の中の400m台の小山を富士山になぞらえるのは離島根性まるだしの井の中のカワズというほかありません。


つまり淡路島の山はあまりにも小さく、とても山とは呼べない。
●海上アルプスと讃えられる屋久島の 宮之浦岳 (1936m) は岳人憧憬の南国の名峰で、その名を知らぬ者はなく、一度は登ってみたい山です。世界遺産にも登録され、屋久島の森林や山岳は第一級の観光資源でありましょう。それに比べると淡路島の山や森は貧弱としか言いようがありません。島内のお役人や観光業者たちは、淡路島が豊かな自然だなどと、夜郎自大(やろうじだい) の極みですが、恥ずかしくないのでしょうかね? 少しは、身の程をわきまえたほうがよろしい。淡路島の山は低く、ただの里山にすぎません。たった400~500mしかなく、その程度の山などは本土には無数に何千何万と存在します。淡路島の小さな山など、山をこよなく愛する岳人が来るような山ではありませんわ。

●山をこよなく愛し、植生の美を愛でる岳人やナチュラリストには、ハッキリとした山の基準があります。西日本で山といえる基準は海抜800m以上なのです。これには理由があります。関西や四国や瀬戸内沿岸地方で、海抜800mを超えると植生ががらりと変わります。ブナ帯がはじまるのが概ね海抜800mからなのです。樹木の種類ががらりと変わります。シイや多くのカシ類など照葉樹が消え、ブナやナナカマドやイタヤカエデやサワグルミなど夏緑樹林にかわり、針葉樹では低地のモミがウラジロモミに変わります。海抜800mを境にして冷温帯の植物が一斉に出てくるのです。また、800mから上に行くと急に眺望が開けてくるのです。で、山に登ったという感慨がわいてきます。これが、山といえる基準が海抜800m以上だという理由です。残念ながら淡路島にはこの基準に達する山はありません。



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日本の離島の山の高さランキング 淡路島は第26位!
1島1山、その島の最高峰を列挙しました。海抜600m以上の島山を漏れなく抽出。
島嶼の山の高さランキング
なお、赤色山名は第四紀の比較的新しい火山、橙色山名は第三紀の非常に古い時代の火山である。
(註1)伊豆大島全体は成層火山だが、頂上部はカルデラになっていて、758mのピークはカルデラの中の中央火口丘である。島内各所に溶岩流あり、小型楯状火山ありで、細かな事にこだわれば成因過程は複雑であり、ただの成層火山とは言えなくなる。


【上掲のリスト作成にあたり主に次のサイトを参考としました】
国土地理院 「地理院地図 電子国土Web」
国土地理院 「日本の主な山岳標高」
国土地理院 「基準点成果等閲覧サービス」
独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質図Navi
独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 日本の第四紀火山
特定非営利活動法人 日本火山学会 「日本の第四紀火山カタログ 火山データーベースWeb版」 
特定非営利活動法人 日本火山学会 「日本の第四紀火山カタログ 第四紀火山分布図」

日本の離島の中でも、淡路島の山はとても低い!
上掲の表を作製しながら吾輩も改めて驚いたのですが、日本の離島の中でも淡路島の山は非常に低いです。淡路島よりも遥かに面積が小さい島に、淡路島の最高標高608mを超える山がたくさんあるのです。瀬戸内海に限っても、小豆島の星ヶ城山 (816.7m)、周防大島の嘉納山 (691m) と、淡路より高い山は2座もあります。 なお、これらは非常に古い時代 (1000万年以上昔) の火山です。 日本火山学会 火山学者に聞いてみよう 「瀬戸内火山岩石区」 参照。


日本列島の主要4島の最高峰の高さ順位、実は全部火山だ。
日本列島の主要4島最高峰
(註1) 富士山山頂付近から東側中腹まで、有名な県境未定部分。 富士山頂の三角点は意外にも二等三角点!
(註2) 大雪山は、20以上もの成層火山や溶岩ドームから成る火山群を指す。
(註3) 約1500万年前~700万年前に噴火した火山の岩石(安山岩・玄武岩類)が、面河渓あたりを中心にして直径10キロほどの円形に存在し、中心が陥没している。石鎚山の山頂付近は陥没カルデラの外輪山に当たる。
(註4) くじゅう連山は、小型成層火山および溶岩ドームが多数(1700m以上が10座、1000m以上が40座)複合した火山群。「くじゅう」と平仮名表記するのは、九重町と久住町(平成17年に合併して竹田市)の両地域に配慮したものらしい。



なぜ淡路島の山は低いのか? 作成したリストを見ると明らかです。

①、淡路島は火山島ではないから。これが最大要因でありましょう。利尻島とか、中之島など、小さな面積の島で高く聳える山が存在しているのは、ほとんどが火山島です。

②、マグマ (花崗岩) の貫入の規模が小さく、隆起も少なかった。これは先山についてですが、屋久島と成因が似ているところがあります。屋久島の花崗岩隆起の規模は巨大です。先山とは全く比較になりません。 

③、地塁山地の規模が小さすぎ。南部の諭鶴羽山地についてですが、たかだか東西20キロ、南北7キロの小さな山地です。これでは高い山が存在するのは無理です。地質的に同じ和泉層群の讃岐山地は徳島県と香川県の間に聳える地塁山地ですが、東西90キロ、南北18キロぐらいあり規模が大きいので最高標高は竜王山 (1059.8m) です。高い山が存在するには山地の規模が大きいことが必要です。 



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