雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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なぜ、観測史上最大という表現がダメなのか? (後編)
前篇からの続き

●先日の2014年8月20日に、広島市で豪雨があり、広島市安佐南区八木、安佐北区可部東、安佐北区三入南などで激甚な土砂災害がありました。犠牲者が多数でました。


↑ 左ダブルクリックで地図を拡大(大縮尺化)、右ダブルクリックで縮小します。また、右クリックでその地点の経緯度・標高等の情報を明示し、スクロールして地図を移動できます。 国土地理院地図 (電子国土Web) から埋め込み。

当該地区に存在するアメダス三入では、8月20日の 04時までの1時間に101ミリ日降水量224ミリ が観測されました。気象庁おきまりの表現では、 「観測史上最大」 であります。本来の言葉の意味では、史上最大というのは後にも先にもこれを超える記録が存在しないということであり、これを超える気象現象があってはならないハズです。なぜならば、500年、1000年の歴史において、その記録が第1位に君臨し続けるからこそ、史上最大であるからです。

●そこで、気象庁のホームページから、アメダス三入の観測データを取得し、抽出し整理してみました。観測統計期間1976年から2014年の38年間余りをすべて調べてみた。1ミリ (0.5ミリ) 以上の日降水量があったのは4483日です。そして10ミリ刻みの降水量の階級ごとの出現頻度を調べ、度数分布の棒グラフを作成しましたところ、見事に 「べき分布」 を示しています


広島県アメダス三入 10ミリ毎の降雨日数分布

●アメダス三入では、過去3回の日降水量170ミリ台が観測されています。2位は1983年9月28日の179ミリでしたが、今年25%増しの224ミリが出現しました。べき分布の大きな特徴は、ロングテールが横軸に沿って長く伸びていて、どこがテールの末端なのか? どこで打ち止めとなっているのか? 全くわからないことです。もちろん無限にテールが伸びていることはないにしても、たかだた30年程度の観測ではテールの末端は想像もつきません。500年とか1000年に1回起こる様な現象こそが、ほぼテールの末端と同義でありましょうが、それはどのあたりか全くわかりません。

ロングテールの末端 = べき分布現象で起こる最大値 ≒ (観測)史上最大値 
であろうかと思います。べき分布を示す現象ならば、過去に前例がないとか、全く過去に経験がない、記録破りだ、ということが起こるのはある意味では当たり前ともいえましょう。実際に最大限どのあたりまで行くのか、気象庁の観測が1000年経たないと分かりません。1000年に1回の出現頻度の猛烈な豪雨が明日起こるかもしれないのです。少なくとも、224ミリで打ち止めだと考えるのは自然を甘くみています。至近距離にあって、少し観測年数の長い広島地方気象台では、 日降水量の1位の記録は339.6ミリ で100ミリ以上多いです。同じ瀬戸内式気候の支配下にある香川県アメダス内海(小豆島)では、 日降水量の1位は790ミリ です。2位は296ミリです。この例が示すように、突然に従来記録の倍を遥かに超えるような物凄い豪雨が起こり得るというのが、べき分布を表わす気象現象の恐ろしさであります。 下手に 「観測史上最大」 などと銘打つと、受け止め方によっては、それが最大限のことでそれ以上は起こらないなどという錯覚を与えるので、宜しくない表現です。 

●なお、無限にロングテールが横軸に沿って伸びているなどと主張しているのではありません。必ず限りというものが存在します。例えば、大きな岩盤で出来た岩壁が崩壊するとき、崩壊跡に堆積する石を観察すると、巨石は少なく、小さな石ほど無数にあります。崩れた跡に転がる無数の石たちはべき分布になっています。その岩壁の崩壊の仕方で、石の大小の分布は異なるでしょうが、どのような崩れ方をしたところで、元の岩壁の石(岩盤)よりも大きな石は絶対にできません。常に元の岩盤よりも小さな石しかできないのです。これこそが、ロングテールが無限に伸びない理由です。つまりべき分布を顕わす現象では、その最大値はつねに総量よりも小さいと言うことができます。降水量でいえば、地球上に降る雨というのは、その起源は太陽熱で蒸発させられた海水です。1年間に地球上に降り注ぐ太陽エネルギーは一定であり、蒸発量もほぼ一定であろうから、地球上全体では雨として地上に戻ってくる量もおのずと総量は一定です。

本当の狙いは何か?
●気易く 「観測史上最大」 などと表現するのはウラがあります。実は、本当の狙いは、観測史上最大の豪雨だったのだから、どうにも、こうにも、しかたがないわ、と行政の責任逃れ (たとえば危険な場所に建築許可を出した責任など) を狙っているのであろうかと思われます。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、従来は気象庁マグニチュードに頑固にこだわっていたのに、原発が事故ったらしいと分かると、モーメントマグニチュードに計算式をパッと切り替えて、9.0としたのと同じ狙いです。(気象庁マグニチュードでは8.4ぐらいで打ち止めです) 三陸リアス式海岸の湾奥での津波遡上高を比較すると、明治三陸沖地震とほとんど変わらないのに、史上最大の地震であると評価すればフクイチ原発過酷事故の責任を誤魔化せる、(史上最大の地震なのでしかたがなかった) というのと同じハラです。 島村英紀 『地震列島との共生』あとがき 追記1~5 参照。反骨の地震学者の島村英紀氏が、気象庁が気象庁マグニチュードからモーメントマグニチュードに切り替えた “政治的重大疑惑” を鋭く論考しています。



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上掲グラフの元の気象観測データ
アメダス三入の、10ミリ刻みの降雨日数
 (気象庁観測)
広島県アメダス三入における年毎の10ミリ刻みの降水回数

↑ アメダス三入は、1976年3月23日から気象観測が始まった。
最初は降水量のみの観測であったが、途中から気温など他の気象要素も観測されるようになった。
初期のころは欠測が多く、また、データに不自然なところも見られ、1970年代の観測データはあまり信頼できないかもしれない
また、2008年3月26日から、降水量の最小観測単位が “1ミリから0.5ミリ” へと高精度化されたため、厳密には観測データに不連続が生じています。

欠測期間
1976年12月11日~1977年3月23日
1977年12月6日~1978年3月13日
1978年12月17日~1979年3月13日
1979年4月19日~4月30日、6月22日~6月26日
1980年1月8日~2月29日
1987年8月24日~8月31日 



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