雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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「放射脳」 という新語 (?) は多義的であり、使う立場で意味が正反対にかわる。
「言葉」 は時間とともに変化し、使う人により意味が変わる
言葉というのは流動的であります。数学の定理であるとか物理学の原理などはそう簡単には変わらないでしょうが、言葉は変化が早いですわね。いまの若い人々には戦前の書物はすでに古典になってしまっていますが、年配者にとってもはや明治時代の小説などを読んでも現代と言葉の意味がかなり違っているのに戸惑わされます。まして江戸時代の書物ともなれば、言葉の字ずらは同じであっても現代の意味で受け止めると読み誤ってしまいます。いちいち事例を列挙したらキリがないのですが、たとえば江戸時代に 「国」 といえば 「淡路国」 とか 「土佐国」 など、まあ「県」か 「衆議院選挙の選挙区」 ていどの範囲です。現代の 「中国」 とか 「ロシア」 などの国とはさし示す範囲が全く異なりますわね。言葉は時間と共に変化しますし、間違えた用法が広まって、やがて正反対の意味が社会に定着することも多いです。たとえば、 「全然」 という陳述の副詞は、「~ではない」 という否定表現とセットで使われる言葉でしたが、 「全然~だ」 と肯定表現にも使われるのが定着して意味が正反対になりました。

また、言葉というものは、普通はその意味を厳密に定義して使っているのではないから、使う人の立ち位置でも微妙に変わってしまいますわね。同じ 「山」 という言葉でも、2000~3000mの山々を毎日見て暮らしている信州の人ならば、 「山」 という言葉を聞いたらそんな高い山を思い浮かべるでしょう。しかしながら、高い山のない瀬戸内沿岸住民ならば、たとえば讃岐の住民ならば300mもあれば立派な 「山」 です。けれども信州の人が見たら 「そんなの丘じゃねえか」 と言うにちがいありません。言葉は人によって微妙に意味が異なります。海に住む 「タコ」 というのは日本人にとっては普通は御馳走です。世界には中国とか地中海沿岸諸国などタコを食べる国は結構あるようですが、タコを食べる国では 「タコ」 という言葉を聞いたらよだれが出てくるかもわかりません。しかしながら人類を支配しているアングロサクソン民族は 「タコ」 は食べられない怪物と考えているようで、(言語により単語は違っても) 「タコ」 を意味する 「octopus」 という言葉を聞いたら身震いするかもしれません。このように、言葉というのは同じ言葉でも、それを使う人の属性 (年齢・性別・職業・文化・宗教・主義・思想・立場など) により、その言葉の意味するところや、その言葉で思い浮かべるイメージは大きく変化します。

本当に 「気の毒な人」 はだれなのか?
最近、通りすがりの一見さんから、 「放射脳でしか物事を考えられない方なのですね、お気の毒です」 と落書きをされましたワ。

気の毒だなどと言うけど、何が気の毒というのだろうか? 意味不明です。吾輩は関西圏に住んでいるから不都合なことは何もありません。また、原発関係の利害関係者でもありませんから別に困ることもないです。フクイチ原発事故で何か被害を受けたということも何もないし、もしこの国が原発を全面的に止めても仕事を失うわけでもありません。もちろん間接的な影響は全国民に及ぶのは間違いないところですが、フクイチ原発事故や、国家の原発政策で直接的に影響を受けることは何もないのです。ようするに困ることは何もないので、「気の毒だ」 などという暖かいご憐憫は的外れであります。ま、落書きを投げ込んだお方の立場は全く不明ではありますが、原発推進関係者か? アクセス解析では東京都の方みたいです。東京電力の社員の家族だったりして? 困るのはむしろ関東圏にお住まいのそちらのほうで、本当にお気の毒に思いますね。ま、わざわざ瀬戸内の離島過疎ブログまでお越しくださり誠に光栄であります。 

たとえば、脱原発によるリストラで何時クビになるか不安におびえる電力会社の社員とか、もし自治体が消滅したら職を失うことになるフクイチ原発周辺の役場職員だとか、フクイチ原発事故で倒産したゴルフ場の関係者とか、海洋汚染で出漁できなくなった漁師さんとか、気の毒な人々は大勢いると思います。しかし、気の毒な人々にも明らかに2種類あって、原発推進側で利益を得ていた人々は自業自得のハナシであて、全く気の毒とは思いません。それどころか、指導的立場にあった者は、逮捕して監獄にぶち込む必要があります。一方、原発には何のかかわりもなく、原発から何らの利益も受けていなかったにもかかわらず、フクイチ原発事故で一方的に被害だけを被った人は、これこそが本当に気の毒な人々であります。国家がただちに本腰を入れて救済すべきでしょう。なのに、国家はなんら救済する腹はないのは不条理の極みです。政府は東京電力に全く責任をとらせようとしません。東京電力には事故を起こした刑事責任・行政責任・民事責任のみならず、資本主義経済のルールとして経営者責任・株主責任・(銀行の)貸付責任を厳しく追及すべきで、本来であるならば破綻処理すべきが当然です。


「放射脳」 生まれたてのホヤホヤの新造語
●さて、「放射脳」 という新しい造語をよく見かけますが、意味は不明であるし、日本の言語空間に定着した言葉ではまだありません。フクイチ原発事故後に出てきた言葉ですから、登場してまだ2~3年しか経っていないので社会に定着したとはとても言えません。例えば、著名な国語辞書が改訂版を出そうとするとき、新たに新語をどこまで収録するのか難しい問題ですけれども、どんなに新語収録に柔軟的な辞書でも2~3年程度ではまず収録しないでしょう。出来れば20~30年はほしいところです。「放射脳」 という言葉をだれが造語したのか不明ですが、それまでにゲーム脳という造語がかなり広まっていたから、それにヒントを得たのか? という気はしますね。「放射脳」 の文献上での初出の不明ですが、例えば、池田信夫氏のブログ の2011年12月28日付の記事に「放射脳」 という言葉が見えますから、原発事故があった2011年内に既にこの言葉が登場していますね。池田信夫氏は著名な言論人ですが、体制擁護の色合いが濃厚なNHK出身だけあって原発容認・原発推進の立場の言論人です。意味の不明な言葉の意味を探るのは、その言葉の使われている用例を収集して、どのような文脈で使われているかを調べ、沢山の用例で共通的になにを表現しようとしているかということから帰納法的に考察する、のが一つの方法です。で、池田信夫氏の用例をベースとして他の用例を調べてみました。おそらく次の意味でありましょう。

原発賛否の立場の違いで、180度意味が逆転する 「放射脳」
●池田信夫氏の主張によれば、 (放射脳の人々は) マインド・コントロールに引っ掛かっている、お金儲けの反原発運動をしている、嘘に囚われている、そとの世界がみえない、クリス・バズビー教授のフクイチ原発事故で今後50年で40万人が癌で死ぬという見方を盲信している、そういう行動・思考の人々をさして 「放射脳」 と呼んでいるように思われます。他の用例に当たっても大同小異で、似たり寄ったり。ようするに、原発推進の考えや立場の連中が、原発反対の人々を揶揄し罵倒する造語なのです。そして、「放射脳」 の人々を、何も問題がないのに問題があると主張している、安全だのに放射能を怖がっている、安全だというデータを示しても理解できない頭の弱い連中だ、放射能の影響を過大に吹聴してカネもうけをたくらんでいる、などと批判し、こきおろすのです。つまり、人を罵倒するときの言葉、バカ野郎! たわけぇ! ドアホ! とほとんど同列の言葉であります。 で、この言葉の辞書的な説明は次のようになりそうですわね。

放射脳の辞書的説明

●「放射脳」 という新造語の用例を収集して、帰納的にその意味を探ったのですが、多くの用例は原発推進の側に立つ人が使っている例が圧倒的であると感じました。おそらくこの言葉は最初は原発推進の側の人が使ったのはほぼ間違いなさそうです。ところが、数は少なくなりますが原発反対の立場の人々も 「放射脳」 という言葉を使っていますね。この場合には意味が正反対になるようですわね。その場合の辞書的説明は次のようになりそうです。

放射脳の辞書的説明

↑ この定義の背景は、原発推進に手を染めているやつらは、放射能で頭がイカレてしまった連中であり、原発利権で飯を食ってカネの亡者になったイカレた連中だ、という現状認識にもとずいています。これこそが 「放射脳」 の正しい意味です。放射能で脳がヤラれてまともな判断ができなくなったので、原発は安全だなどという噴飯ものの妄言を口走るのですわね。カネというのは魔物であって、カネをめぐって骨肉の争いをしたり、殺人も起こります。(保険金詐欺殺人など) いったん原発利権に手を染めた連中は、魔性を持つカネの毒に脳が浸潤され、利権の亡者となって誤魔化し・嘘・隠蔽・責任回避・脅迫…、ありとあらゆる悪徳をろうして、原発に反対や疑問の声を封殺しようとしていますが、すべて利権(カネ)づるを守るためです。一方、原発に反対する人々はカネをもらっているわけじゃありません。原発反対は利権にはなりません。そこのところを考えるとどちらの定義があたっているかは明らかです。利権にへばりついている奴らが言うことは、利権を死守するために手前勝手なことを言うだけなんです。原発推進利権者どもは、事故などなかった、原発は安全だ、原発を再稼働しないと日本経済はダメになる、という立場です。いま、全ての原発は停止しています。けれども世の中はちゃんと回っています。騙されないことです。 (ま、こんな子供だましには誰も騙されんでしょうが…)

「放射脳」 は言語活動を拒絶する罵倒言
吾輩が思うのですけれども、原発推進に賛成の人も、原発推進に反対の人も、多義的で使う人によって意味合いがかわる 「放射脳」 などという言葉は、使わない方が宜しいかと思いますね。反対派をののしるのであれば、たんに 「馬鹿野郎!」 「この阿呆!」 で宜しいかと…。ということもあるのですが、このような罵倒語の大きな特徴は、一切の説明とか敷衍、議論・対話を拒絶する言葉なんです。沢山の語彙をならべて相手に説明したり説得したり論破したりするのが邪魔くさいから、バカヤロウということなんです。人間は言葉をしゃべる動物であるのに、その言葉を捨てているんです。バカヤロウの替わりの言葉が 「この放射脳め!」 なんです。 「放射脳」 なんていう言葉を安易に使うことが、ご自分のボキャ貧をさらけ出すことになるので、使わない方がいいのです。池田信夫氏ほどの日本代表言論人が 「放射脳」 などという表現に頼ってしまているのを見ると、まあなんとも品のない文章に落ちてしまい、興ざめしてしまいます。

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