雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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アウトドアマンは手ぶらでは帰らない、帰れない。
沈黙の瀬戸内海! ほんまにアサリがいなくなったわ…
本日は2014年4月19日であります。そう言えば大潮の時期であります。昨日の午後、思い出したように磯に行ってまいりました。目当てはアサリであるのですけれども、3月20日の拙記事 瀬戸内海を適度に汚せ! 水清ければ魚棲まず でも申した通り瀬戸内海にはアサリがいよいよいなくなりましたわ。レイチェル・カーソン女史ばりに言えば、まさに “沈黙の瀬戸内海” であります。レイチェル女史は、彼女の名著の誉れ高い代表作 『沈黙の春』 の冒頭部分で言う…。

引用開始】 自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。みんな不思議に思った。裏庭の餌箱は、からっぽだった。ああ鳥がいた、と思っても、死にかけていた。ぶるぶる体をふるわせ、飛ぶこともできなかった。春がきたが、沈黙の春だった。いつもだったら、こまどり、すぐろまねしつぐみ、鳩、かけす、みそさざいの鳴き声で春の夜は明ける。そのほかいろんな鳥の鳴き声がひびき渡るのだった。だが、いまはもの音ひとつしない。野原、森、沼地 ── みな黙りこくっている。 (青樹簗一訳) 【引用終了

淡路島の沈黙の磯!
● (批判も結構あるけど) 名著 『沈黙の春』 で書き綴ったレイチェル女史の憂鬱の描写は、そっくりそのまま淡路島の磯に当てはまります。薄気味悪いほど磯は沈黙しています。大潮で磯が引いているのに、干潟の上で這いまわり人影を見て右往左往していた小動物たちはいません。タイドプール (潮だまり) を覗いても鏡のような水面の下は静まり返っています。磯の上をむなしく風が吹きわたるだけで、聞こえるのは寄せては返し返してはよせる波の音だけです。むかし、あれほどいたアサリはどこへ行ったのか? アカガイはとこに行ったのか? マテガイもいたけどどこへ行ったのか? 小動物がぞろそろ這いまわる磯は耳をすませば結構にぎやかでしたが、今は全く黙りこくっています。沈黙の磯です。

磯の沈黙の要因は、さまざまな複合要因か??
レイチェル女史は、環境中に拡散残留したDDTなどの化学物質が、生態系の撹乱要因になるという問題の警鐘を鳴らしたのですけれども、なんせ半世紀前の主張なので、その後の研究で反証がけっこう提出されていますわね。アサリがいなくなったのは何故か? については諸説あるようですが、化学物質であるとか地球温暖化とかは、あまり関係なさそうですわね。 日本水産学会誌 の総説 我が国のアサリ漁獲量激減の要因について では、地域ごとに要因は異なる面もあるし、沢山の要因が考えられるが十分には分からないし、要因毎の漁獲量減少寄与率は不明なところがあり、まだまだ調査研究が必要という印象がしますね。しかしまあ、磯ファン・アサリファン必読の文献です。

乱獲の可能性か? 底質悪化? 浮遊幼生の大量減耗? ナルトビエイの食害? ニホンスナモグリの競争圧の可能性? 貧酸素と青潮? 漁場の埋め立て? 冬期の死亡と波浪の撹乱による死亡? パーキンサス原虫の感染による産卵能力の低下の可能性? などなどの沢山の要因が挙げられていますが、その要因が現れた背景とか、要因の要因も当然ありそうですわね。直接要因の背景が本当の要因だったりして?? そこまで考えるとワケが分からなくなります。へそ曲がりはさておき、我が国全体ののアサリ漁業資源という観点からみたら、干潟の埋め立てが最大要因のようですね。我が国のアサリ総需要・総漁獲の10~14万トンのうち、8万トンを喪失したのは東京湾・伊勢湾・三河湾などの埋め立てらしいです。

●しかしながら吾輩がいつも行くアサリを獲る磯は、埋め立てなど全く無縁です。田舎に至るまで下水道が普及し、水質が見違えるほど良くなりましたわ。そこの磯は漁協がアサリ漁をしていないので、乱獲というのも説得力が薄いです。一般市民は潮干狩りに来ても水に入ってまで獲らないです。したがって干潮時には干潟になる部分は仮に獲り尽くされても、水中の親貝は残されるから、産卵が減るというのも考えにくいです。北朝鮮からのアサリの養蓄も行われていないから、パーキンサス原虫の感染も考えにくいのではないか?? で、消去法からの素人判断ですが、水質を綺麗にし過ぎたために海水中の栄養塩類の減少によるプランクトンや小石に付着する珪藻が減少したり、有機懸濁物質 (デトリタス) の減少、つまりアサリの餌が減ったからじゃなかろうか?? 

つい、すぐに乱獲か? と考えがちですが、むかしは磯が “立錐の余地もない” という表現が誇張ではないぐらい三原郡中からわんさかと人が来ました。それでもアサリが沢山とれましたわね。近年じゃ獲れないのが分かっているから、あまり人がきません。そうしたら、ヒトによる乱獲圧力よりも、その海域でのアサリ個体群の増殖速度が上回って、それなりに資源回復すると考えるのが自然です。しかし現実には全くそうなっていないから、アサリが獲れないのは乱獲のためだという見方では、説明しきれないです。何か、他に要因がありそうな気がしますわね…。


アウトドアマンは手ぶらでは帰らない…、帰れない。
大潮だというのに数人しか来ていませんでした。つまりアサリが居なくなったのを皆知っているから来ないのです。8畳の間ぐらいの面積を掘り返している初老の人に 「アサリが獲れましたか」 と話かけてみました。 「ほれ、この通りじゃよ」 と見せてくれたバケツには3センチぐらいの大つぶが1個、1センチ半ぐらいのちっちゃなものが10個ほどです。 「昔はバケツ一杯獲れたのにねえ」 と懐古談の話の花です。

アサリはいなくなったのですが、家の中に座敷テントを張って寝袋で寝る筋金入りのアウトドアマン(?)ならば、海や山に行って手ぶらでは帰らない。帰れない。釣りに行ってボウズならば魚屋で買ってでも土産が要るのです。


モズクをバケツに入れて観察した
モズク

本日の収穫物
本日の収穫

晩のおかずはモズクの三杯酢和え
モズクの三杯酢和え


       ***********************************

おたけさんのコメント
アサリが少ないですね(;;)
アサリが沢山獲れる海岸にはタコもよく釣れてたのですが、浜がどうかしちゃいました。魚もアサリも昔から比べると少ないです。
高校生の頃、養殖網のそばで魚釣るとものすごく釣れたのですが、今海苔の管理が水中でそのまま成長させるようになってからは、魚がどこかへ逃げてしまってます。
潮が引くと地上に出てくる海苔網方式じゃ無いので、養殖業者は沢山の処理剤を沢山使うのが環境を汚しているように感じます。 こんな資料がありました。
兵庫県瀬戸内海「のり、わかめ等」養殖漁場図

山のキノコの返信
おたけさん、こんばんは。
アサリがいなくなって、アサリの味噌汁が食べられなくなりました。とても残念です。

>養殖業者は沢山の処理剤を沢山使うのが環境を汚している…
これはリンクした総説にも言及されていますね。引用すると、「ノリ養殖におけるアオノリ駆除用の酸処理剤や船底塗料の有機スズによる浮遊幼生への悪影響も想定されたが、海水の酸処理剤濃度や有機スズ濃度は、浮遊幼生の分布密度を激減させるほど高くはないとの指摘もある」(141頁左側) ということで因果関係はハッキリとしないようです。ただ、福良湾のような外海との海水の交換に時間がかかり若干閉鎖性のある海面では、その有害化学物質の濃度が高まるということはあり得るでしょうね。でも、昔は、灘の大川や山本、それから洲本市上灘の中津川などの磯でもアサリがいて、昔は結構獲れたんです。そういう外洋の太平洋につながっている紀伊水道に面した場所でもアサリがいなくなりました。これらのところではほぼ絶滅です。灘土生にもいたんですが、これは埋め立てが原因でいなくなりました。アサリの激減は全国で起こっているみたいですし、外洋に面したところでも起こっているので、化学物質原因説でも説明しきれない要因がありそうですね。リンクの総説を書いた研究者たちは乱獲と考えているようですが、動物の個体群を維持するにはある一定の個体数が要るということがあるのですが、ひとたび個体群維持最低水準を割り込むところまで乱獲したら、もはや回復不可能という不可逆性があるのかもわかりません。アサリがいなくなった要因は色々考えられるようですが、要因が何であろうとも、このままでは庶民の口に入らなくなりそうで、困ったものです。



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アサリが少ないですね(;;)
アサリが沢山獲れる海岸にはタコもよく釣れてたのですが、浜がどうかしちゃいました魚もアサリも昔から比べると少ないです。
高校生の頃、養殖網のそばで魚釣るとものすごく釣れたのですが、今海苔の管理が水中でそのまま成長させるようになってからは、魚がどこかへ逃げてしまってます。
潮が引くと地上に出てくる海苔網方式じゃ無いので、養殖業者は沢山の処理剤を沢山使うのが環境を汚しているように感じます。

こんな資料がありました。
http://www5.jf-net.ne.jp/hggyoren/noriken/pdf/zentai.pdf
2014/04/20(日) 00:10:16 | URL | おたけ #- [ 編集 ]
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