雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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諭鶴羽山には、ホンドキツネは棲息していない。
情報の宝庫 “糞・ふん” を観察しましょう!
●野生動物の生息状況、とりわけその野生動物がその地域にどれぐらいの個体数がいるのか? その地域の野生動物の個体群の消長など、正確には全く分かりません。ていうか、それは分かりっこないです。そもそも野生動物の “国勢調査” などやりようがありません。ヒトを調査対象とする国勢調査でさえ精確ではないのです。(近年の国勢調査では非協力者が非常に増加しているので、やむなく調査員らの推測が入ります。) しかしながら野生動物の個体数を一応推定することは可能でしょう。推定値はあくまでも推定なのであって、事実の数字ではないという弱点がありますね。それはさておき、個体数を推定する方法は区画法、狩猟法、糞塊法などいろいろあるようですけれども、①狩猟の際の目撃情報、②ハンターによる狩猟数、③有害捕獲数、④フィールド調査による糞の発見数、などを体系的に収集したデータを組み込んだ推定モデルで推定することが多いようであります。つまり、“動物たちの糞” というのは有力な手掛かりであるということです。

けだし糞 (ふん、くそ) というのは情報の宝庫でありましょう。糞を見てその動物の食性を知り、その動物の行動パターンを知り、個体数の推定からその動物の健康状態も推定でき、糞に混入している植物の種子からその植物の種子散布の戦略など、さまざまなことが分かります。糞は汚穢物などと忌み嫌うべきものなどでは決してなく、積極的に観察すべき物なのであります。したがいまして、われわれ自然観察を趣味とする者は、野山を歩くときには登山道周辺に落ちている動物たちの糞に注目すべきであります。ただし我々多くの者は研究者じゃあないから、なにも糞を拾い上げてお皿に載せてまで観察する必要はないでしょう…。

環境省の設置した気になる説明看板
●先日、積雪のあった諭鶴羽山に北側の南あわじ市賀集牛内ダムから登ったのですが、ダムから山頂までの中間地点あたりでありましょうか、環境省の看板があります。看板は要所要所に設置されているのですが、中間地点の写真に掲げたものは、大変気になる看板であります。書かれている文面は、生態学的観点から、また動物行動学的な観点から、動物たちの糞を観察しようと呼びかけているもので、べつに異議があるわけではありません。登山者やハイカーが動物たちの糞を観察するならば、まことに結構なものであります。動物たちの糞を観察し、自然に対する関心や認識を深めるのは好ましいことでありましょう。少し問題になりそうなのはキツネです。淡路島南部の山岳地帯にはキツネはいないからです。キツネの記述があり写真まであります。これでは、諭鶴羽山にキツネが棲息しているのだな、という誤った認識を登山者やハイカーに植え付けてしまう危惧がありはしないか? 以前から気になっていたのですが、諭鶴羽山のみならず淡路島にはキツネはいないことを指摘したいと思います。


やや不適切な箇所がある説明看板
登山道にある説明看板

兵庫県下におけるホンドキツネの棲息分布
左の図 …… ホンドキツネの狩猟者からみた棲息動向(狩猟者アンケート)
右の図 …… ホンドキツネの農耕地への出没程度(農業集落アンケート)

ホンドキツネの狩猟者からみた棲息動向、および、ホンドキツネの農耕地への出没程度
↑ 上の図の出典は 兵庫県立 人と自然の博物館 の出版物で 自然環境モノグラフ3 -兵庫県における大・中型野生動物の生息状況と人との軋轢の現状- の26頁から借用しました。

●上に示した資料で分かるとおり、諭鶴羽山のみならず淡路島ではキツネ(ホンドキツネ)の棲息情報 (目撃や捕獲) は全くないのです。わたしも柏原ー諭鶴羽山系は30年間歩き回っていますが、キツネは見ていません。イノシシ、シカ、サル、タヌキ、ウサギ、イタチ、外来種のチョウセンイタチ、は頻繁に見ています。テンも何回か見たことがあります。でもキツネは見たことがないですね。諭鶴羽山系を歩き回っている他の観察者のハンターや動植物の調査をやっている人々と話をしても、「キツネを見たぞぉ!」 なんて話はありません。最近定義が見直されたみたいですが、環境省の定義では過去50年間目撃や捕獲や棲息の痕跡が確認されなければ、絶滅と判定です。つまり、淡路島からはキツネ(ホンドキツネ)は絶滅しました。

実は、淡路島ではキツネは絶滅した
●じつは淡路島にもかつてはキツネが棲息していました。キツネはいたんですけれども、50年間全く棲息を裏付ける情報がないので淡路島からは絶滅したということなんです。戦前ならば棲息していたと言うハナシはあります。それどころか、私の出身地の集落には白ギツネがいて鎮守のお宮の使いと考えられていました。いわゆるアルビノ(白化個体)です。このような戦前の目撃証言が沢山あるのです。残念ながら裏付ける文献は見当たりませんが、戦前の万余のカビの生えた文献を渉猟すれば必ず見つかる筈です。 Wikipedia 「キツネ」 には 「日本では、本州・九州・四国の各本島と淡路島にホンドギツネが、北海道本島と北方領土にキタキツネが生息している」 などと記述していますが、あながち間違いとは言えないです。ただし淡路島から絶滅していることを付記すべきでありましょう。

●淡路島にはタヌキの棲息密度は高く、ときどき疥癬病が蔓延して個体数が激減することはありますが、身近にタヌキが沢山おります。それで洲本の 柴右衛門狸(しばえもんたぬき) を始めタヌキに関する民話などが沢山あります。キツネの民話みたいな話もないこともないです。ひょっとすると、キツネの昔話も淡路島にかつてキツネが棲息していた傍証にはなるかもしれません。以前の拙記事 『味地草』 における白石村 の記述について 「キツネの恩返し」 などはまさにそれです。


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