雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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果樹栽培は適地敵作の原則にしたがい、ミカン栽培は和歌山県や愛媛県にまかせよう。
●冬将軍の勢いはいまだ衰えず、強烈な寒波が北日本に襲来しています。昨夜21時 (2014年2月4日21時) の高層天気図を見ると、500hPa高度の気温-42度以下の第一級の寒気が東北地方北部から北海道地方に襲いかかろうとしていますが、秋田市の上空の気温は、500hPa高度で-39.7度、850hPa高度で-15.1度です。これら専門天気図を閲覧すると、シベリアから地を這うように南下してくる下層の寒気が強いという印象がします。04時の時点で、北海道の旧上川支庁の朱鞠内 (シュマリナイ) ですでに-29.8度まで下がり、明け方には-30度を割り込む勢い(*)です。

*その後、気象庁は05時29分に-30.8度を観測。南極みたいであります。

山形県のミカンは、この寒波で大丈夫だろうか?
●北日本を寒波襲来するときに心配になるのは、山形県がおこなっているミカン類の試験栽培です。山形県は地球温暖化で100年後に2~3度気温が上昇し、日本海に面している庄内平野でミカンが栽培できるようになると考えているようです。数十年後に山形県でミカンの商業生産を行うために、今から試験栽培しようということのようですが、実際に飛島という島と、酒田市にある 庄内農業技術普及課産地研究室 という所の2か所で、2010年からミカン類の試験栽培に着手しているみたいです。まことに結構な試験栽培、温暖化対策の新作物開発研究でありますが、この大寒波をのりきることができるのか? 寒害でミカン樹が落葉や木を枯らされないか? と大変心配しておりいます。

山形県 「地球温暖化に対応した農林水産研究開発ビジョン」

もし温暖化したならば、ミカン栽培適地が移動
↑ もし温暖化したならば、温州ミカンの栽培適地は内陸部や北方にシフトすると山形県は言っているわけですが…。もし温暖化しなかったならば、どうするのでしょうかねえ? 地球温暖化の政治的プロパガンダの科学的箔付けの役を担ってきたJAMSTEC (独立行政法人海洋研究開発機構) の研究者たちが改宗したのか、「地球の気温は70~80年周期で変動しており、今の気温は極大で、今後は寒冷化する」 とか、「地球の気候に影響を与える要素は複雑で、分からないことだらけであり、数値シミュレーションで長期的な予測を行うことは不可能だ」 などと温暖化否定論・予測不可能論を言いだしていますよね。君子豹変するというコトバがありますが、学者 (研究者) も豹変しますね。

平成25年10月15日(火)、山形県知事の記者会見

寒冷地でのミカン栽培に意欲を燃やす県知事
引用開始】  もう1つ、ここに今日並べておりますかんきつ類、山形県内で収穫したものです。最近の地球温暖化の進展なども踏まえまして、寒冷地では育てることが難しいとされているかんきつ類の栽培が可能かどうかを検討するために、県内でも比較的温暖な気候であります飛島と、それから庄内総合支庁産地研究室というのが酒田市にあるのですが、この2か所で平成22年から試験栽培を実施してまいりました。
 飛島では、3年目の今年初めて実をつけまして、このたび「すだち」について3本の樹から60個の実を収穫することができました。(手に「すだち」の入った篭をかかげて)これが飛島産の「すだち」であります。北限の「すだち」ということであります。11月中旬には「ゆず」それから「レモン」も収穫・調査できる予定です。
 また、庄内総合支庁産地研究室では8種類のかんきつの試験栽培に取り組んでおります。昨日、日沿道の起工式が終わりましてから、そちらのほうを視察してきたのですが、こちらでは、「すだち」や「かぼす」に加えまして、「温州みかん」、これ、みかんなのです。昨日、その樹からもいできたものですから、まだ青いのですが、数日置くと黄色くなります。北限の「みかん」になります。まだ試験栽培の段階でありますけれども、そういった実験をやっております。
 庄内地方では、冬の間日本海から強い寒風が吹きつけますので、かんきつ類の樹を寒さから守るために、布で覆ったり、防風ネットを設置するなど工夫が必要です。
引用終了

●ミカン類は、そもそも熱帯から亜熱帯に多くの原種が自生しています。ユズのように耐寒性の強い (-10度まで大丈夫です) 品種もありますが、大部分のミカン類は寒さに弱いのです。耐寒性の弱いレモン・ネーブルなどは-2度が耐寒限界です。温州ミカンは-5度が耐寒限界です。それ以下の寒波にさらされると落葉したり木を枯らされたりします。温州ミカンでは-7~8度で樹が枯死する危険性が非常に高いです。木が枯死しなくても、落葉すれば春の新梢の生育に支障が出て、その年の果実の収獲に深刻なダメージが現れます。わたくし山のキノコは農家ではないですけれども、昔、ミカン園を20アールやっていて、収穫したミカンを農協の選果場に出荷したこともあります。で、ミカン類の栽培に関しては少しは知識や経験があり、それで、山形県のミカン類試験栽培が大丈夫なのか? と大変心配しているわけです。別に、なにも失敗しろと望んでいるわけではありません。むしろ成功してほしいのですが、気候的にかなり無理では?と危惧しているわけです。

2014年2月5日04時の東北地方南部の気温分布
2014年2月5日04時の気温分布(東北地方南部)
↑ 山形県酒田で-4.9度(*) 温州ミカンでも厳しい気温です。寒冷紗やコモをミカン樹に巻き、樹の根元に厚い敷きわらをするなど、徹底的な防寒対策をしなければ寒害が発生する気温です。問題はこの気温分布はこの地方では特別に低い気温ではなく、ごく普通の日常的に起こる気温であることです。

*その後、8時27分に酒田で-5.9度、飛島で7時03分に-5.6度を観測。ミカンには厳しい低温だ。

栽培不適地では、栽培に苦労が多く、良品が生産できない。
●その気候的にかなり無理という根拠ですが、庄内平野では、本当に寒い時は-10度や-15度があり得る地方だからです。数年の暖冬で大丈夫であったからと安心はできません。旧酒田測候所の最低気温の記録は-16.9度です。旧酒田測候所は酒田市の市街地にあります。近年は-10度以下は出現していませんが、実際に経済栽培としてミカン園を作るとしたら市街地に作るハズがありません。郊外です。そう大きな町でなくても人口1万人の町でもそれなりにヒートアイランド現象が起こることは日本気象学会の「天気」誌上で沢山の報告や論文があります。つまり、酒田測候所で-5度でも郊外ならば-10度がありえます。この低温ならば 「ユズ」 以外の品種は一発で枯らされます。なお、耐寒性の強い 「コウジ」 という品種も持ちこたえるかも分かりません。

果樹は野菜と異なり永年性作物です。生育期間は数10年です。時には100年を超えます。苗木を植えてもまともな収穫ができるまで10年かかります。その間は収入になりません。で、その数10年間にわたって木を枯らされるような寒波が来てはいけないのです。木が寒波で枯らされたら元の黙阿弥、また苗木を植えて10年間収入になりません。つまり、果樹は野菜よりも遥かに安全率を掛けて栽培しなければならないのです。適地適作の原理に従わなければならないのです。これが果樹と野菜との決定的な違いです。

無理してつくっても、商品価値・市場競争力はあるのか?
●それから、別の問題もありましょう。山形県は公金を流し込んでミカン栽培試験をしているわけだから、それは趣味の栽培などではなく、山形県内での産業としてミカン経済栽培を目指すものであろうかと考えられます。よしんば庄内平野でミカン栽培が成功したとしても産地間競争に勝てるのか? 市場競争力があるのか? という根本的な疑問があります。都会のスーパーに和歌山県産ミカンと・愛媛県産ミカン・山形庄内ミカンとが陳列されて、消費者が山形県産ミカンを選択して買うだろうか? という疑問です。消費者の反応は、へえーっ、山形県でミカンができるの? 酸っぱいんじゃないかしら? という反応が予想できます。庄内地方は日本海側だから秋~冬は日照時間が少なく、気温も低いので酸っぱいミカンになることは必定であります。

というふうに考えたら、東北地方でのミカン類栽培のトライアルは、国家をあげての地球温暖化狂想曲に踊らされたものと言わざるを得ないです。やはり、ミカン類の栽培は適地適作の原則に従い、和歌山県や愛媛県などに任せておいたほうが宜しそうで…。山形県の住民でない他県のよそ者が山形県の農政に疑問を呈するのは、あまり宜しいと言えないかもしれませんが、山形県はよそ者が見ても立派な果物王国です。山形県の適地適作であるサクランボ・ブドウ・洋ナシ・リンゴなどの高品質品を目指すほうが宜しそうで…。


果樹栽培の教科書 『新版 図集・果樹栽培の基礎知識』 から巻頭言の冒頭を引用。小手先の栽培技術よりも適地に、という人生訓みたいに味わい深い言葉です。

「果樹栽培の要点は、まず第一に、適地に植えることである。適地で栽培すれば、基本的な事項を習得するだけで、たいした苦労なしに良品多収が可能である。それに対し不適地では、栽培に苦労が多く、そして苦労の割に良品が生産されにくい。」


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追記】 今回の寒波は北海道地方など北日本が中心であったので、最低気温更新は非常に出にくかったのですが、それでもタイ記録を含めて関東地方などで3か所出現しました。北日本の積雪地帯では昔と違い、やたらに道路の除雪をするので、道路際のアメダス観測所で、放射冷却が阻害される (断熱材の積雪をはぎ取ると地中からの顕熱伝導で冷えづらくなる) と気象学者の近藤純正先生が指摘しています。
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