雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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「こくもんじ」 の種子散布の様式は、動物被食型の典型的な例。
●本日は2014年1月23日であります。 拙ブログで 「こくもんじ」 というマタタビ科の蔓植物の観察をしたり、果実を採取して食用としたり、その果実で不老不死の仙薬の醸造を試みてまいりましたが、すこし趣向を変えて、生態学的な観点からその種子の散布ということを観察しましょう。

●子孫繁栄、一族郎党の勢力拡大を望むのは植物も全く同じで、植物は大量の種子を生産して自分の周りに撒きちらします。出来るだけ沢山撒き散らすほど、また自分の近くだけでなく遠くまで撒き散らせば撒き散らすほど、その植物の分布が広がり勢力拡大になりましょう。そもそも植物の種子は自然界では発芽率が低いことが多く、発芽しても生存率がそう高いわけではなさそうです。その植物が好む環境は限定されていて、どこでも生育できるというものではありません。その植物にとって発芽し生育するのに適地というのは限られていましょうから、出来るだけ沢山の種子を、できるだけあちこち広く撒き散らせば、種子が発芽生育適地にたどり着く可能性が高くなりましょう。

●植物たちは一定の場所に一生涯のあいだ固着して生きています。その一か所に縛られて動けない植物たちが移動できるチャンスは2回あると言われています。一つは、花粉を風や昆虫等によって運ばれるときですが、この花粉が運ばれるのはゲノム一組の移動であるうえに同種の株がいるところにしか移動できません。そう言う意味では不完全な移動か? もう一つは種子の散布されるときですが、種子はゲノム二組の移動であり同種の株が全くいない処女地にも移動できます。そういう意味では完全な移動か?という感じはします。この動けない植物たちは種子を出来るだけ遠くに、できるだけあちこち広範囲に撒き散らすために様々な工夫や戦略をたてていますね。

テイカカズラの種子は、風で散布する
↑ 風散布の一例。2013年12月22日南あわじ市灘払川にて、写真家おたけさん撮影。テイカカズラです。種子の頭に毛が沢山ふさふさと付いて、落下傘みたいになっています。無風状態であるならば、落下傘のように静かに落ちるだけですが、風があると、うまく風にのれば、遠方まで何キロでも飛んで行きますね。種子を遠くまで散布させる見事な適応・戦略ですね。

●観察を始める前に、まず福岡達人先生の学外にネットで公開されている 植物形態学講座 を受講して 「8.種子散布」 の頁をよく熟読しましょう。いちおう福岡先生の説に準拠しながらも、若干納得できない部分もあるので、ごく簡単に、独自に、種子散布の様式の概略を下表にしてみました。


淡路島分布植物から見る種子散布の様式
淡路島分布植物から見る種子散布の様式

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さて、こくもんじ (シマサルナシ) の種子散布の様式は?
2014年1月15日の “こくもんじ” の姿
2014年1月14日 南あわじ市灘地区にて
↑ 南あわじ市灘地区の海岸近くの谷筋にて。年が明けると完全に落葉しています。網の目のように伸びる樹の蔓が目立ちます。野生状態では剪定してくれる人がいませんから、蔓が繁茂しすぎで、日の当らない枝ができるためでしょうか? 枯れ枝も目立ちます。年が明けると果実は樹上で熟して柔らかくなっています。キウイのように追熟しなくても採ってすぐに食べられます。さわやかな酸味の中に、ほんのりと甘みがあり、山歩きや谷川の遡行での疲れをいやしてくれます。年明けの今頃はこくもんじの果実が完熟していますので、採ってすぐに不老長寿の仙薬の 「こくもんじ酒」 が作れます。まずは袋に一杯収穫しましょう。

特筆すべきは、こくもんじの果実は樹上で完熟しても落下しないです。長年自生地での観察をしていますが、こくもんじの果実は基本的には落果しないです。自重でポロリと堕ちることはまずありません。なぜかというと、鳥類が来て果実を食べてくれるのを待っているからなんです。落果したならば鳥類が食べてくれません。それが落果しない理由でしょう。(じつは、恐らく、完熟後に落果しないうちに全ての果実が鳥類に食べられてしまう、ということが真相の可能性が大です。)


こくもんじの果実が鳥類に食べられた跡
鳥類は中身を食べて、皮を残す
↑ はたしてありました。鳥が来て果実を食べた跡です。上手に中身だけをくりぬいて食べます。たいていは皮を残します。こくもんじの種子は、鳥類による被食散布の植物なのです。年中そこに住みついている留鳥も、冬の渡り鳥も共にこくもんじの実を食べますが、とりわけ、早ければ1月中旬~下旬に渡ってくるヒヨドリの大群には自生地の実は半日で全部食べられてしまいます。鳥類は様々な種が食べにきますが、哺乳類ではサル(猿)とヒト(人=山のキノコなど)が “こくもんじの実” を求めて食べに来ますね。ちなみに、ヒトがこくもんじの実を食べたならば、野糞をしなければなりません。こくもんじが分布していない谷筋で野糞をする必要があります。それは、もちろん、こくもんじが動物たちに果実を食べさせるのは、あちこちで糞をさせて分布を広げさせるのを狙っているからであります…。つまり、動物はこくもんじから食物の提供を受ける、こくもんじは動物たちから繁殖・分布拡大を助けてもらう、という相利共生

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