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雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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アカメガシワの葉の斑入り、初雪柏 (仮称) が見つかる
●少し前のことですが、11月の下旬のある日の午後に、あるものを採ろうとして、わが淡路島南部の山岳地帯の山裾を徘徊していたところ、変わったものを見つけた。よく観察すると 「アカメガシワ」 という落葉樹の子どもであります。葉が斑入り (ふいり) になっています。これはとても珍しそうでありますから、少し書いてみませう。

【↓ 淡路島南部では12月上旬~下旬に、アカメガシワが黄葉】
黄色のアカメガシワ

植物学のみならず生物学全般では生物の種名は、その標準和名は片仮名で書くのが慣例というかルールですけれども、片仮名で動植物名を書くとその意味が分からないことが多いです。ですけれども、動植物名をどのように表記するかによって、その書き手が動植物とか自然に関してどの程度の知識であるとか認識を持っているかが見当がつきます。そのために素人ではありますが、拙ブログでは片仮名表記を貫いておりますが、アカメガシワという樹木をあえて漢字で書けば、「赤目柏」 であります。その意味は春先の新芽が赤っぽくて美しく、食べ物を盛るのに古代から重宝したカシワ (柏) の葉みたいだ、ということでありましょう。各地の地方名を文献で調べると、サイモリバ (菜盛葉) とかミソモリバ (味噌盛葉) とかゴサイバ (五菜葉) などの方言が見られます。漢字の意味するところから推定すると、主食のごはん (強飯こわいい・姫飯ひめいい) ではなく、副食物のおかずをアカメガシワの葉に盛りつけたのであろうか? もしご飯をもりつけたならば、イイモリバ (飯盛葉) という地方名や古名が出来た筈ですが、それは無いみたいです。ちなみに、菜盛葉については江戸時代の絵入り百科事典である 『和漢三才図会』 わかんさんさいずえ、正徳2年(1712年)成立 に、「山人葉を用いて食物を盛る器皿に代える。故に菜盛葉と名づく」 との記載があるみたいです。 

●さて、アカメガシワという樹木は、ありふれた樹木であり、誰もあまり注目しない樹木ですが、話題性の高い面白い樹木です。まず第一に、なんといっても、薬の規格基準を規定する厚生労働省の 『日本薬局方』に生薬として記載されている薬草 であります。 厚生労働省 「日本薬局方」 ホームページ から、最新版の 『第十六改正 日本薬局方』 を見ると、1445頁に確かにアカメガシワが載っています。

井沢一男著 『薬草カラー図鑑』 によると、夏に葉または樹皮を採取し、日干しにして、明治以前には 「切らずに治す腫れものの薬」 であったらしい。樹皮を煎じてそれを飲んで効くならば、胃の腫れもの、すなわち胃潰瘍にも効くのではないか? ということで専門家が臨床試験を進めたところ、ある程度の効果があることが判明。近年では胃潰瘍の薬として用いられるようになり、樹皮のエキスを原料とする治療薬が発売されているそうであります。たとえば、日本新薬株式会社のイリコロンM配合錠 効能書きを見ると、主成分の一つにアカメガシワエキスが含まれ、「排便をうながす作用や下痢を止める作用があります。また、腸管の収縮を抑え、胃液、胃酸の分泌を抑える作用があります。」 とあります。ネットは便利なもので色々と検索すると、胃潰瘍にも効くという情報が確かにヒットします。どうやら、胃腸の弱い人にはアカメガシワの樹皮を日干しして煎じて服用すると良いらしいですね。

【↓ 第十六改正 『日本薬局方』 の1445ページにアカメガシワが記載
第十六改正 日本薬局方 1445頁から

●さて、第二の注目点は、アカメガシワは生態的に非常に面白い戦略で生き延びる樹木です。すなわち、地中の根からシュート(茎と葉をひっくるめて言う用語)をどんどん出します。万一、地上の幹や枝葉が何らかの要因(例えば日蔭になるとか)で枯れたり、伐採で取り除かれたりしても、地表浅く伸びている根のあちこちから芽吹いて、一見すると子株かと思われる再生株が沢山生じます。もし根が真っ直ぐに伸びていたら子株が一列に生えてきたように見えるのです。しかしそれは子ではなく親株の一部であります。親株と繋がっています。波田先生の アカメガシワの戦略(8) アカメガシワの戦略(9)をよく読むと、アカメガシワの恐るべき生き残り作戦に驚かされます。これではアカメガシワが邪魔になって除こうとしても、刈っても刈っても退治できませんよね。

一列に並ぶアカメガシワの再生株
↑ 2013年11月29日、南あわじ市阿万東町の県道端にて。薄っすらと黄葉している樹がアカメガシワです。樹高2~3mの幼木が十数本も一列に行儀よく並んでいます。何気なく通ると気にもとめないのですが、少し観察すれば “何で一列に並んで生えているのだろうか?” と気になる不思議な光景です。これは、道路に沿って浅く根が横に伸びていて、親株が道路に覆いかぶさり邪魔になったので、伐採などで取り除けられた結果、真っ直ぐに伸びていた根から一斉にシュートが生じ再生株が育ったと考えると、上手く説明がつきそうです。恐らくこの再生株の十数本は地下では皆つながっているのでしょう。

●このように話題性があるにもかかわらず、世間的には、アカメガシワは利用価値はないように思われています。庭木にも街路樹にもならないし、材が柔らかく腐朽しやすいので木材的な価値は乏しいです。昔ならば薪(たきぎ)にはなったかもしれませんが、まだ50年や100年ぐらいは石油・石炭・天然ガスがありそうですから、薪としての価値が出るのは大分先です。アカメガシワがキノコ栽培の原木になるかどうかを考えても、あまりならんでしょう。以前にアラゲキクラゲがアカメガシワの立ち枯れに出ているのを見ましたが、他のキノコではヒラタケが良くでます。ヒラタケやアラゲキクラゲはあまり栽培(原木栽培)されることはないので、結局のところ、あまり利用価値はない樹なのでしょう。また、アカメガシワの若葉は山菜として食べることができるとされていますが、実際に食べてみるとクサギと同じでアカメガシワも美味くありません。積極的に山菜として食べようと意欲が湧く植物ではありません。ところで、直感的に思うのですけれども、アカメガシワの若い枝の樹皮は、繊維質で非常に強靭です。で、コウゾやミツマタのように和紙が作れるかも? あるいは、その樹皮を水に漬けて腐らせて繊維を取り出し、ロープにすることが出来るかも? でも実際にできるかどうか、やってみないと分かりませんね。


斑入りのアカメガシワの幼木が見つかった】 淡路島南あわじ市の山中にて
斑入り(ふいり)のアカメガシワ

●雪が降らない淡路島の山中で、路傍に雪が積もったように見えるから、「初雪ガシワ」 と名づけましょう。もちろん、わたくし山のキノコが勝手に名づけた仮称でありますが、これを育成・増殖して正式に品種登録の申請をするのもおもしろそうです。品種登録の窓口は、農林水産省 品種登録ホームページ ですが、年数がかかります。手間とカネをかけて、その品種の発見者(育成者)の権利を確保するほどのものでしょうかねえ? これが庭木として珍重され飛ぶように売れるのであれば、品種登録する値打ちがありますが、どうでしょうかねえ???  ま、自分の家の庭木にして、門外不出といたします。

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たしかに。アカメガシワは生長が早いですね。いわゆる先駆種といわれる樹木のひとつで、先駆種(パイオニア種ともいう)の特徴は、生長が早い、木の寿命が短い、あまり大木にはならない、種子が小さく風散布で飛び散るものが多い、種子の寿命が長いものが多い、陽樹である、日蔭では育たない、植生を撹乱した所に生じる…、などの特徴がみられますが、アカメガシワもそんな傾向ですわね。吾輩の庭にも10年ほどまえに、アカメガシワが生えてきて、あれよあれよという間に、幹が足の太さぐらいになりましたよ。大昔だったら風呂の焚きものになったけど、今は薪などいらないし、アカメガシワは役に立ちませんわね。
2014/05/21(水) 21:31:16 | URL | 山のキノコ #- [ 編集 ]
アカメガシワが突如、庭に生えて大木になって、往生したことがありました。
生育が早いのなんのって。
2014/05/21(水) 15:56:15 | URL | なおぼん #PsDE/PW. [ 編集 ]
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