雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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真夏の観察会を終えて
真夏の散策会は、これという見処はなし】 本日は2013年8月5日であります。昨日に “淡路島南部の洲本市鮎屋川の源流地帯を散策する” という自然観察会を開催したのですが、とにかく暑く、そうやたらに歩き回れるものではありませんでした。鮎屋川の上流域まで車で行き、歩いたのはせいぜい片道1キロぐらいでありましょうか。ひんやりと涼しい谷筋で、苔むした岩に腰掛けて弁当、ノンアルコール偽ビールで酒盛り(?)に終わりました。小さな渓谷を流れる水は清冽で冷たく、谷を吹き降ろしてくる風には冷気が含まれ予想外に涼しいのには驚かされた…。

鮎屋ダムから淡路島南部の山地の方を見る
↑ 鮎屋川ダムの堰堤(えんてい)から南の方角を眺めた。ダム池の満水時の最大長は直線距離で1028m、最大幅は230m、満水時のダム池面積は11.36haであります。流域面積は約8.3平方kmです。しかしこの数字は国土地理院の地形図上で私が勝手に計測したものであって、ダム管理者側の公表数字と異なる可能性があります。ものの大きさというものは、気温の測定と同じで、計測に使う道具や道具の器差や測る方法や有効桁数の取り方など、さまざまな要因で数字は変わるのです。 写真の中央やや右に見えているピークは海抜434mですが、写真には写っていない源流地帯の最高所は海抜544mあり、400~500mの山々が重畳(ちょうじょう)しています。

鮎屋ダムから先山を見る
↑ こちらはダム堰堤から北の方向を眺めたものです。7キロ離れている先山(せんざん)が指呼の間に見えています。先山は山頂に寺院があり非常に抹香臭い山であります。実際と写真とでは見え方が異なるもので、こうして写真で見ると淡路島は山ばかりです。飛鳥~奈良時代の律令制の下での、地方行政区分として、淡路島は、面積的には全国の約600分の一という小さな島ですが 「淡路国」 という 令制国(りょうせいこく) の地位が与えられました。(もっとも佐渡・壱岐・対馬・隠岐も1島1国ですが)言わんとすることは、淡路国の特徴は何かと申すと、山国だということであります。島なのに少し内陸部に入ると海など全く見えず、視野に入るのは山ばかりなのです…。

コモチシダの観察
べつに兵庫県版レッドデータ種でもなんでもなく、普通種のシダ植物でありますが、特異な生活史をもつコモチシダが “葉の上に子が生じている” 状態だったので観察しました。写真を見ての通り、葉の上に “無性芽・むせいが” と呼ばれる沢山の “子” が出来ています。標準和名は “子持ちシダ” の意味でありましょう。胞子で殖える筈のシダ植物が、胞子だけでなく、胞子に加えて、このような一種の “クローン戦術=分身の術か?” で殖えるのは、とても面白いものであります。淡路島南部の山岳地帯ではありふれたシダ植物で、林道の法面など急傾斜のところに大きな葉を垂れ下がらせています。けれども、なかなか子を見ることが少ないです。(最大の要因は盛夏のクソ暑いときには山歩きをしないのが、この子持ち状態の姿をあまり見ない理由でありましょうが…)

なぜ、胞子で殖えることができるのに、栄養器官の上に無性芽などというクローンを沢山つくるのか? は確かに大きな疑問ですが、次の問答がとても良い参考になります。日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナー 「苔のふえかた」


コモチシダ

コモチシダ
↑ 淡路島鮎屋川のコモチシダです。植物生態研究室(波田研)のホームページ に解説と、拡大写真があるので参考にしましょう。

淡路島に、サケ科の渓流魚はいるのか?
ところで、本日は真夏の散策会でありましたが、弁当を食べるころから、ランクルさんは釣糸を淵に垂らして渓流釣りを始めました。散会後は渓流釣りを本格的にやるために、その谷筋をさらに上流の方へと遡行していきました。その谷の源頭岩場にもシャクナゲが自生していて、調査のために数限りなく私もその谷を遡行しています。谷の源流近くには小さな島とは思えないほどの水量豊かな淵があったり、落差は小さくても良い滝もあったりで、何かが居そうな感じはします。釣果はいかほどであったでしょうかねえ?

●ちなみに、渓流釣りの対象魚種といえば、アユ(鮎)、ヤマメ(山女魚)、アマゴ(雨子)、イワナ(岩魚)あたりが定番でしょうか。アユ(アユ科)ならば淡路島の小さな河川にも昔は沢山おりました。地名にも鮎屋とか鮎原とかアユにちなんだ地名が残っております。河川の中流域や下流域に棲息するアユは水質の悪化でほとんど居なくなっておりましたが、最近はアユが帰ってきたという話をよく聞きます。魚ではありませんが、シジミも淡路島に戻ってきています。わたしもあちこちの用水路などでシジミ(マシジミ)を確認しています。

●さて、渓流釣りの定番のヤマメ、アマゴ、イワナは申すまでもなくサケ科の魚ですが、淡路島には残念ながらおりません。いろいろな資料に当たって調べても、これらの魚が淡路島内で標本さえも採取されていません。自然分布としては、ほぼ確実にそれらの分布域から外れているのでしょう…。イワナは川の上流域の低水温に棲息していて、兵庫県では氷ノ山付近には僅かにいるみたいですが標本程度。紀伊半島の山の渓谷では絶滅寸前だとか…、ということから考えるとイワナは淡路島におる可能性はゼロです。

もし可能性があるとしたらアマゴでしょうね。サツキマス (陸封型をアマゴと称す) アマゴの自然分布域は、神奈川県以西の本州太平洋側・四国・九州です。(なお本州内陸や日本海側はヤマメの分布域) 徳島県と香川県との境の阿讃山地の谷にはアマゴが僅かに居るみたいです。アマゴは養殖稚魚が放流されますが、徳島県の剣山系の河川中流・上流域には居ります。むかし私も入漁券を購入して毎週のように剣山地の渓谷にアマゴを釣りにいきました。でも、釣れるのは野生化したニジマスが多かったです。ところで、淡路島南部の海域で、サツキマス(サツキマスの陸封型がアマゴであり両者は同じもの)が網にかかって獲れたという話があるみたいです…。しかしながら、アユみたいに海と渓谷を往来する降海型のアマゴが、たとえば灘とか福良の漁港で水揚げされたとしても、アマゴが淡路島にいるとは言えないでしょう…。

兵庫県立人と自然の博物館 自然環境モノグラフ 4号2008年3月 『兵庫の淡水魚』兵庫県水生物研究会 編 の 61ー75頁 を閲覧すると、70頁にイワナ、72頁にヤマメ、73頁にアマゴの兵庫県内の詳細な棲息分布図が公開されています。大変勉強になる報告書なので、釣り好きなかたもご覧になるといいでしょう。しかしながら、これはあくまでも自然環境を護る目的のために使われるべき資料であります。絶滅危惧種や珍品を捕るためのガイドブックではありません。目的外使用は厳禁であります。

●世の中、ブラックバス釣りの連中がわがもの顔であちこちの池やダムでのさばっています。いつも思うのですが、ブラックバスを放流するのではなく、ニジマス(虹鱒・レインボートラウト)を山間のダム池に放流してくれないものだろうか? ニジマスは暖水域でも棲息できるサケ科の魚で、食用魚としても上等品です。塩焼きにしたら非常に美味いです。香川県の満濃池の近くにニジマスを放流して釣れる池があり、昔わたくしもよく釣りに行きました。


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2015/10/01(木) 23:01:51 | | # [ 編集 ]
たしか、別の記事で全く同文のコメントを以前に頂戴したかと思います。

残念なのですが、生物地理学的には、(つまり自然科学としては)その話を裏付ける標本等(つまり証拠)が要るんですよ。リンク切れになっていますが「人と自然の博物館」の資料(生物地理学的な専門資料)を引っ張り出したのは、そういう生物地理学的な観点からの記述にしようとしたものです。

魚拓ではねえ…。魚拓ではヤマメとアマゴの識別は困難かと思います。という以前に魚拓で同定など不可能です。それも、とある釣具店で見たというだけではねえ…。今は所在不明か? たとえアマゴであったとしても、ダムにいたというのでは釣り人の手による放流の可能性が排除できず、疑義が残ります。釣り人(川の漁業組合)がヤマメ分布域にアマゴの稚魚を放流し、アマゴ分布域にヤマメを放流して、これらサケ科の渓流魚の自然分布を撹乱しています。もし猪鼻ダムでアマゴが見つかり、その情報が専門家の手元にいっても、自然分布かどうかの検討がなされ、ただちに淡路島にアマゴが分布しているということにはならんでしょう。標本があっても、世の中には、ねつ造されたインチキ標本もあるようで、その標本の信憑性まで検討する慎重な取り扱いとなりましょう。つまり「いる」とか「いた」というのはそれを裏付ける証拠がないかぎり、残念ですがただの面白そうなハナシにすぎません。証拠があって初めて「事実」となります。植物や動物の分布や棲息情報を語るのは分野としては生物地理学で、徹底した「証拠主義」です。

標本は、その種がそこに分布している(していた)という証拠ですが、標本は実物そのものであるから最高の証拠です。証拠としては写真は値打ちが相当に下がります。なぜ標本が大事かと申せば、そもそもその魚が何であるか同定(鑑定)しなければなりませんし、それが本当にアマゴであったのかどうか疑問が生じたときに再検証できるからです。別の物を見間違ったのではないか? という疑問が出てきても標本がなければ再検証しようがありません。魚拓はいわば影絵みたいなもので、実物では全くありません。魚拓は釣り趣味人同士では価値があるのでしょうけれども、学術的には何の価値もありません。残念ながら紙切れでしかありません。
2014/11/14(金) 10:48:58 | URL | #js83eNAU [ 編集 ]
猪鼻ダムにかつてはアマゴが生息してたようです。
洲本のとある釣具屋さんで、猪鼻ダムで釣ったアマゴの魚拓を見たことがあります。
店主に聞いてみると、渇水期にダムで釣ったそうです。
アマゴが釣れそうな渓相の川はいくつかあるのですが、現在は絶滅したようです。
2014/11/13(木) 21:25:38 | URL | #- [ 編集 ]
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