雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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氷河の後退・縮小は、気温上昇のみに依存するのではない。(その4)
その1で閲覧した論文を、もう一度読んでみましょう
公益社団法人 日本雪氷学会 の機関誌 『雪氷』 74巻3号 (2012年5月) に掲載された論文 福井幸太郎・飯田 肇 「飛騨山脈、立山・剱山域の3つの多年性雪渓の氷圧と流動 ―日本に現存する氷河の可能性について― 」 によって日本に氷河が現存していることが分かりました。この論文は専門の論文でしょうが、そう難しいことは書いてないから、われわれ門外漢でも十分に読めます。よく分からん用語が出てきたら、氷河・雪氷圏環境研究舎 『氷河・雪氷圏辞典 5訂版』 を見るとよろしい。

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閲覧した論文の骨子を要約  細かな調査方法とか、解析図解とかは一般には意味がないから割愛した。
●この論文で日本にも小規模ながら3個の氷河が現存することが判明しました。氷河と認めるには3つの条件、①降雪からできた雪と氷の大きな塊、②陸上に存在、③流動している、を満たす必要があるそうです。①と②は日本の中部山岳や東北・北海道の高い山に雪渓とよばれる雪氷体が存在し、研究者でなくても一般の山登りは見たことがあります。それらの雪渓には、夏が終わって次の降雪までに溶けきらずに永年性となる雪渓も多数あり、分厚い雪渓の下部は圧縮されて氷となるものも多いのですが、③の条件、重力によってその氷体が継続して動き下の方に滑り落ちているということがあってはじめて氷河であります。この③の条件が論文の元になった調査で確認されたのであります。まことに慶賀すべき目出たいことでありましょう。

小窓雪渓 (小窓氷河と呼んでいいかも?)
剣岳(2999m)の東側の標高2300-2000mの地点に存在する。長さは1200m、幅は最大で200m、平均傾斜は20度。降雪と雪崩で雪が集積し、最大積雪深は20mに達する。融雪末期の10月には氷体がところどころ露出する。氷体の厚さと内部構造の調査で、厚さ30m以上、長さ900mの氷体の存在が窺える。

三の窓雪渓 (三の窓氷河か?)
剣岳(2999m)の東側の標高2400-1700mの地点に存在。長さは1600m、幅は最大で100m、平均傾斜は25度。冬には降雪と雪崩で20~30mの雪が集積する。融雪末期の10月には氷体が一部露出。厚さ40m以上、長さ1200mの氷体が観測された。

御前沢雪渓 (御前沢氷河か?)
立山の雄山(3003m)の東面の標高2800-2500mの地点に存在。長さは700m、幅は300m、平均傾斜は20度。冬には吹きだまり効果と雪崩により積雪が15~20mたまる。融雪末期の10月には氷体の一部が露出。こちらの氷体は2つに分かれていて、上流部の氷体は厚さ23m長さ200m、下流部の氷体は厚さ27m長さ400mであるという。

●平衡線高度の考察も議論しています。積雪量の大幅な増加により、平衡線高度が大きく下がるのです。平衡線とは、氷河の上において 「降雪による涵養」 と 「氷の融解による消耗」 との収支バランスが均衡することを表わします。従来、中部山岳では平衡線高度は4000mと言われ地学や地形学の教科書にもそう書かれていました。しかし、それは気温のみからの見方であって降雪量が全く考慮されませんでした。立山連峰の世界屈指の豪雪は平衡線高度を大きく引き下げ、平衡線高度は小窓氷河・三の窓氷河では2000mであると考えることができます。3776mの富士山には氷河がなく、中部日本では太平洋側から日本海側にむかって降雪量が急増するのですが、この間に平衡線高度が1800mも下がっていることになりましょう。 【要約終了


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何故、北陸の剣岳で降雪量が多く、北海道の大雪山で降雪量が少ないのか? 
簡単です。下の図から考察しますと、日本海が胃袋の形をしていることが大いに関係していましょう。
国土交通省 『電子国土ポータル』 から
↑ 優れ物の 国土交通省 『電子国土ポータル』 の作図機能を使って作成したが、図はあまり上手くはない。

そもそも、日本海側の多量の降雪は低気圧によるものではなく、シベリア高気圧からの寒気移流と暖かい日本海からの水蒸気補給の協働によるものでありましょう。それが証拠に東北地方太平洋側や、北海道太平洋側では降雪量は僅かであります。

●まず、冬期に、シベリア高気圧から吹き出す寒気の流れが日本海を渡ってくるとき、その吹走距離が北陸地方で非常に長くなります。対馬海流で暖かい日本海から湯気のように立ち昇る水蒸気を多量に補給して降雪雲が発達します。この寒冷気団から吹く風の日本海上の吹走距離の長いことが、北陸地方で降雪量が多くなる原因です。北海道ではこの吹走距離が短いです。しかも日本海北部では海水温も低くなりましょう。

●次に、北朝鮮と中国の国境に白頭山(長白山ともいう、2744m)を盟主とする大きな山塊があります。シベリア高気圧は寒冷で背が低い高気圧です。そこから吹く寒冷な季節風は白頭山の山塊を越えられません。で、図中の青線のように、季節風の流れが2つに分かれて白頭山塊を迂回するような気流ができます。そして、分かれた2つの気流が日本海上で再び合流(収束)します。方向の異なる気流がぶつかると、激しい上昇気流ができたり、小さな低気圧が発生します。2つの気流がぶつかって出来る積乱雲の列ができるのですが日本海寒帯気団収束帯(JPCZ = Japan-sea Polar-airmass Convergence Zone)と呼ばれています。このJPCZがぶつかってくる場所が立山周辺であることが多いです。このJPCZが北陸地方の豪雪の立役者です。以上の2点が北陸地方の方が北海道よりも何倍も降雪量が多くなる要因でありましょう。


立山・室堂平の雪の大谷ウォーク】 を見ると想像を絶するような積雪です。20m前後であります。物凄いです。しかし計算が合いません。降りたてのサラサラ雪は比重が0.05ですが、次第に締まってきて比重が0.2とか0.3などになり、20m積もる下の方は比重が0.5とかの圧雪になる筈です。仮に平均比重が0.3とすると、降雪水量は冬期に6000ミリとなり多すぎです。おそらく、吹き溜まりになっていることと、斜面上部から雪崩のように雪が滑り落ちて溜まるからではないだろうか。 

拙稿は続く

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