雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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氷河の後退・縮小は、気温上昇のみに依存するのではない。(その3)
北陸の剣岳に氷河が現存するのに、なぜ北海道の大雪山に氷河がないのか?
●表題のテーマを考えるには、なによりも両山の気象観測データが必要であります。しかし残念ながら、剣岳および大雪山には気象庁の気象観測所はありません。正確にいうと、剣岳(海抜2999m)の近くの立山(3015m)の室堂平の2291m地点にアメダス立山がありました。1976年から2010年まで夏期の雨量が観測されています。けれども、既に廃止されましたし、冬期の積雪などの気象要素が観測されていませんでした。とても、まともな観測所とは言えませんでした。一方、大雪山でも主峰の旭岳(海抜2291m)の中腹の1620m地点にアメダス旭岳が設置されていました。しかし、これも1976年から2003年まで夏期限定で雨量のみの観測でした。通年にわたる気温や降雪量の観測はなく、現在は廃止されています。気象庁は地球温暖化などの気候変動を問題視するのであれば、観測網を充実させるべきであるのに、やっていることは逆で、観測所のリストラに余念がありません。(ま、これは予算が削減されていることが大きいでしょうが…)民間の研究機関とか大学等の観測はあるみたいですが、しかし長期にわたる観測ではなく、その観測データも部外者には入手が困難であります。したがって、山麓の気象観測データから両山の気温や積雪降水量を推定するしかありません…。

剣岳の山麓の気象観測所
富山県 アメダス上市  (北緯36度40.2分、東経137度25.4分、海抜296mに所在する)
アメダス上市(かみいち)は、剣岳(海抜2999m)の西北西18.1kmの山麓にあります。

富山県 アメダス上市の観測データ
なお、統計期間は1981年~2010年、資料年数は30年。雨量の欄で赤字にしてあるのは剣岳山頂付近では雪になっているものと思われます。 気象庁の気象統計情報からデータを借用

大雪山の山麓の気象観測所
北海道川上地方 アメダス志比内  (北緯43度38.6分、東経142度34.9分、海抜310mに所在する)
アメダス志比内(しびない)は、大雪山の主峰旭岳(2291m)の西方22.1kmの山麓にあります。

北海道川上地方 アメダス志比内の観測データ
なお、統計期間は1993年~2010年、資料年数は18年。雨量の欄で赤字にしてあるのは、大雪山山頂付近では雪になっているものと思われます。 気象庁の気象統計情報からデータを借用

山頂あるいは中腹の雨量は、山麓の5割増し
●なお、山の山麓と、山の中腹~山頂を比べると、山の中腹~山頂の方が雨量は多くなります。低い山では山頂の雨量が多く、3000mを越えるような高い山では山頂よりもむしろ中腹のほうが雨量が多くなることが多いです。下に例示するように至近距離であっても、平野部や山麓とくらべると山の方では、雨量が少なくとも2~3割、ときには7~8割りも増えるのが普通であります。

静岡県天城山 (海抜1070m)4392.2ミリ 山麓の稲取(海抜130m)2322.6ミリ 89.1%増し
鳥取県大山  (海抜 875m) 2838.9ミリ 山麓の米子(海抜 6m) 1772.0ミリ  60.2%増し
和歌山県高野山(海抜795m)1851.6ミリ 山麓の葛城(海抜142m)1358.4ミリ 36.3%増し


剣岳・大雪山の気温は気温減率から推定する
富士山を例にして計算した気温減率
↑気象庁観測データからわたくし山のキノコが作成した。

●普通は、気温減率は、0.65℃/100mが使われます。しかしながら、場所により、気象状況により変化します。おおむね冬期の方が大きくなる傾向はあります。特に冬に上空に強い寒気が侵入してきたときには気温減率は1℃/100mに達することもあります。(富士山頂と麓の気温差は30度を超える)

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●以上を踏まえて、剣岳と大雪山の山頂の気象を推定すると、(あくまでも推定でしかありませんが)

冬の1月の平均気温は、富山県剣岳では-17℃ぐらい、北海道大雪山で-21℃程度か? ひょっとすると大雪山はもう少し高めかもしれません。大雪山の山麓の志比内は旭川の近くで冬の放射冷却で極低温が発生するところで、冬の気温が低めです。山腹温暖帯という用語もあるように山の上の方は予想ほど気温が下がっていないかもしれません…。 剣岳の近くの、高層気象観測所の輪島のデータを見ると、冬1月の700hPa(高度2850~3000m程度)での平均気温は、1日2回9時と21時の観測のデータともに、-15.4度です。剣岳の推定値とほぼ一致しています。また、大雪山の最寄りの高層気象観測所の札幌の冬1月の700hPaの平均気温は-21.0度です。大雪山の海抜2291mは、700hPa高度よりも600~700m低いから、それを勘案すると大雪山山頂気温は1月には-18度程度かもしれません。剣岳と大雪山の冬の山頂の気温はほぼ同じか、若干2~3度大雪山の方が低めと推定します。


●次に、剣岳と大雪山の降水量でありますが、議論するまでもなく、圧倒的に剣岳の方が多いです。麓の観測所データでは剣岳のほうが3倍あります。大雪山での年降水量は推定1500~2000ミリ、剣岳は4500~6000ミリに達するものと思われます。降雪量も圧倒的に剣岳のほうが多いと思われます。11月~3月の降水量比較から、剣岳の降雪量は大雪山の4~5倍に達するものと推定すべきでありましょう…。

拙稿は続く

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