雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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徳川家康が愛飲した幻の薬酒 「忍冬酒」 を作ろう。(その2)     スイカズラは300年前の 『大和本草』 に収録される薬草。
忍冬酒をこしらえる前に、まず観察を致します
江戸時代の有名な本草学者に、貝原 益軒(かいばら えきけん・1630年―1714年) という偉人がおります。本草学者というのは、今風に申せば、博物学者であり植物学者であり生物学者でありましょう。明治以降に西洋の生物学や農学が入ってくる前までは、貝原益軒が日本の歴史上最高の生物学者であるとの誉れが高いのですけれども、貝原益軒の代表的な著作が 『大和本草』(やまとほんぞう) であります。その大和本草にスイカズラが載っていますので見てみましょう。

【↓ Wikipediaから写真を借用。国立科学博物館所蔵のものらしい
大和本草

【↓ 中村学園様 貝原益軒アーカイブ からスイカズラの項目を借用させていただきます。】 国立国会図書館デジタル化資料でもネットから閲覧できるのですが、中村学園様のほうが鮮明です。
『大和本草』 (やまとほんぞう) のスイカズラ(忍冬)の記述

●なんともはや、古色蒼然として、カビ臭いような古い書物ではあります。しかし、こんな古臭い物と、バカにしてはいけません。この書物こそ日本独自の植物学の夜明けを飾る金字塔であり、不朽の書物であります。しかし、一般にはとっつきにくいかもしれません…。あまり身の上を明かすのはマズイですが、山のキノコは学部しか出ていませんが一応文学部国文学科の出身です。ミミズの這うような変体仮名の崩し字が出てこようが別に抵抗はないのですが、今の若い人は戦前の書物、たとえば夏目漱石にしても森鴎外でさえも、既に古典になってしまっているようです。冒頭は次のように書いてあります。江戸期以前の書物には一切句読点がないので、文意の切れるところで適宜句読点を打ちます。
忍冬(にんどう)スヒカズラ。諸々のかずら、皆右にまとう。忍冬のかずら左に巻く。故(ゆえ)に、左纏藤(さてんとう)と言う。花開くとき白し。2、3日を経て黄に変す。故に金銀花(きんぎんか)と言う。

●この大和本草の記述により、スイカズラを江戸時代中期に「金銀花・きんぎんか」と言っていたことが分かります。また左巻きの蔓植物だという意味で、「左纏藤・さてんとう」などとも言うらしいです。花が咲くときには、最初は白で、2、3日後に黄色になることなど、貝原益軒は正確に観察しています。スイカズラの花・茎・葉を陰干しにして、煎じて服用したり、酒に漬けこんで薬酒にして服用したらよろしい。腫れものが化膿して膿がたらたら出るような、すなわち、免疫力が低下して感染症が起こるような体が弱っているときには、著しい効果があると言っています。普段からお茶の替わりに飲めばなおよろしい。和え物にして食べてもいい、と言うふうなことを言っています。

花のアップ

●花は非常に面白い形をしています。花冠の下部は筒状で長細いです。花冠の先は5つの裂片に分かれていますが、上に4裂片が認められますが基部は合着しています。下には1裂片が反っています。ちょうど、手の親指を下に向け、残り4本の指を上に向けているみたいなケッタイな形状であります。
送粉昆虫が来て、めしべが受粉すると花が黄色に変わるなどと書いてある書物もありますが、果たしてそうだろうか? スイカズラの枝を持ち帰り、花瓶に挿して数日間観察しましたところ、家の中には訪花昆虫はおりませんが、最初白だった花が翌日にはみな黄色に変わりました。受粉などしなくても黄色に変わることは間違いないみたいです。白から黄色への花色変化は、受粉に依存するのではなく、時間に依存しているように思われます…。


クチナシも黄花と白花がある
↑ クチナシも花色が、白 → 黄色に変化します。花色が変化する植物は野外で観察すると南あわじ市でも結構あります。花色変化は普通説明されるのは、花粉や蜜を求める訪花昆虫は先ず白花に来て、目的の花粉や蜜を集め、その際にめしべの頭柱に花粉を受粉させる。受粉したら花の色が変化して、もうこっちの花は花粉も蜜も(つまり報酬)はありませんよ、こっちへ来ないでね、と昆虫たちにサインを送っているとされますが…、多くの花は自家不和合性であっても、そうではない物もあるし、夜行性の訪花昆虫は花の色を見分けられるのか?ということもあります。ま、花の種類によっても違うかもしれないし、諸説あったりで、よう分かりませんです。

スイカズラは蔓草で他物に巻き上る
↑ これは南あわじ市灘土生(なだはぶ)の落石防止の金網に巻きついて登るスイカズラの蔓(つる)です。これを右巻きと言うのか? あるいは左巻きというのか? 意外に難しい問題であります。別に混乱なんかしていませんが、歴史的に変遷があり書物により記述が違うので、うろたえる面はありそうです。佐竹義輔ほか『日本の野生植物』1982年、や『学術用語集 植物学編 増訂版』1990年、に倣うならば左巻きです。

左巻き……S字巻き。自分の手の甲を見て右手の親指の方向(左肩上がり)につるが登っていく。
右巻き……Z字巻き。自分の手の甲を見て左手の親指の方向(右肩あがり)につるが登っていく。

40年ほど前に定義が変更されて逆になってしまったことが、混乱しているように思える原因なのでしょう。最近の書物・論文・解説文などは全て上記のようになっているハズです。広島の植物ノート様 「つる植物の右巻きと左巻き(詳細版)」 がとても参考になります。


【これで、はなはだ簡単でございますがスイカズラの観察は終わりといたします。次回に、いよいよ徳川家康が健康のためにと愛飲したという忍冬酒を製造いたします】

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