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雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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種子の出来ない「3倍体オニユリ」は、クローン大作戦で殖える…
どこにでもある普通種のオニユリです。諭鶴羽山系の麓の人家近く、林縁とか田畑のあぜのような所、谷川の土手とかにあります。意外に多いのが海岸です。砂浜海岸の植物は帯状分布ですが、その安定帯~木本帯にかけてオニユリが生育しているのをよく見ます。ただ近年はオニユリが減ってきたかなという印象はします。昔はそれこそいたるところにあったような記憶がします。

オニユリは古い時代にその鱗茎を食用とするために、中国あたりから導入された渡来種であるという説が有力らしいです。たしかに人家近くに多いからそうかもしれません。山の上には近縁のコオニユリはあっても、オニユリはありません。昔、滋賀県の伊吹山(1377m)に登ったら山頂の草原にコオニユリの大群落がありました。

オニユリ……葉の付け根にムカゴがある。種子ができない。
コオニユリ…葉の付け根にムカゴがない。種子ができる。

これが見分けるポイントとされますが、諭鶴羽山系周辺はおろか淡路島にはコオニユリは自生していません。ところが不思議なもので、私の住む南あわじ市にはムカゴのないコオニユリの自生はありませんが、鳴門海峡を渡った徳島県の鳴門市大毛島にはコオニユリがたくさんあります。わずか1300mの海峡をはさんでフロラ(植物相)がずいぶんと変わるのは面白いものです。なにか地史的なものが関係しているのでしょうか?

オニユリ
↑オニユリはこの写真のように、数株から多い時には30株ぐらいの集団になって生えていることが多いです。何らかの経緯でここに最初の1個体がやって来ると、ムカゴを生産します。そのムカゴは風で散布するわけでもなく、動物の毛に付着して運んでもらうのでもありません。ブナ科のドングリがポロリと落ちるように、風でオニユリの茎がゆらゆらと揺れるとムカゴが親株の足元に落ちるだけです。なんとも芸のない散布のしかたです。ちなみに「ユリ」と言う言葉の語源は、「揺る・ゆる」という動詞の連用形の「揺り・ゆり」を名詞に転用したものだとされています。親株の周囲にしかムカゴが落ちず、しかもムカゴの生育・生存率が高いのがオニユリの集団ができる理由ではないでしょうか?

葉腋にムカゴができる
↑オニユリには葉腋(ようえき・葉の付け根)にムカゴができます。写真では分かりにくいのですが、葉の付け根の黒っぽいものです。濃い紫色で小豆から大豆ぐらいの大きさです。このムカゴで栄養生殖をします。オニユリは染色体の研究から3倍体であることがよく知られています。3倍体であるから減数分裂がうまくいかず、種子が出来ないとされています。実際に花後の子房を観察しても、少し大きくなるだけでやがてポロリと落ちてしまいます。種子どころか果実自体ができません。ただし、たまに果実ができているのも見ます。

それで、繁殖して仲間をふやすには種子ではなくムカゴで殖えます。ムカゴは葉腋にできた腋芽(えきが・葉の付け根から出る芽)が発達して鱗茎状になったものです。もともと親株の一部ですから遺伝的には親株と相同であるハズで、ということはクローンであります。種子のできないオニユリは「クローン大作戦」で殖えるということになります。

●さて、北海道から九州まで日本全土に分布するオニユリは、種子ができない3倍体のものであるのはよく知られています。しかし対馬にあるものだけは種子のできる2倍体のものです。対馬のオニユリは75%の個体が2倍体、25%が3倍体らしいです。種子の出来る2倍体のものも、自分の花粉で自家受粉できない自家不稔性の傾向が強いらしいです。有性生殖で殖えるために、対馬のオニユリは遺伝子の多様性があり、変異に富んでいるらしいです。変異に富んで個性豊かな対馬の2倍体オニユリには、黄色の花の黄金オニユリがあるのは園芸の方面ではよく知られています。

『対馬植物図鑑』オウゴンオニユリ保全計画
↑この対馬の自然を護る方々の素晴らしいサイトを拝見すると、個性豊かな2倍体オニユリや黄金オニユリの写真が見られます。クローンではなく有性生殖して殖えるのが多様性を生み出しているのです。個性豊かとか多様性とかは極めて重要で、世の中みながみな同じことを言いだすのは気持ち悪いし、危険でもあります。多様性を排除して世が一色に染まるのは恐ろしいことです。どんなに少数意見であっても、反対論・否定論・懐疑論にもしっかりと耳を傾けないと、この社会はまた同じ過ちを犯しそうな気がしています……。

●ところで、オニユリの英語名はタイガーリリー(tiger lily)ということですが、花被が、オレンジ地に暗紫褐色の斑点があるのがトラのようだと言うのです。なんか、おかしくないか? トラはふつう黄色地に黒の縞が入るような姿です。オレンジ~赤色に斑点ではトラを連想しません。黄金オニユリは国外流出してヨーロッパにも渡っているようです。で、黄金オニユリを見てタイガーリリーだと言っているのではないか?
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