雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その12)
観光業界の市場占有率は、日本人観光客が93~94%、外国人観光客は6~7%でしかない。しかるに、世界遺産登録は日本人観光客の増加を狙ったもの。
● そもそも、世界遺産登録を観光振興のための起爆剤にしようとする企ては、外国人観光客を呼び寄せようとたくらむのでは全くありません。増やそうとする対象はあくまでも日本人観光客です。なぜならば観光入込数における外国人観光客の比率は1割もないからです。数%の比重しかないのです。したがって、世界遺産登録を観光振興の起爆剤に出来るかどうかは、日本人観光客に対して、世界遺産登録がその観光地を選択するための訴求力になるのか? がポイントなのであります。 その場合には、人々にほとんど名前も知られていない無名の弱小観光地であるならば、世界遺産登録によりマスコミが騒ぎ立てることが、一時的には、大きな宣伝効果をもたらすでしょう。しかしながら、マスコミの馬鹿騒ぎ報道が沈静化したあとが非常にヤバイです。一時的なブームは剥げ落ち、次第に忘れ去られていきます。一方、昔から人々によく知られている観光地であるならば、世界遺産に登録されたからと言っても、さほどの宣伝効果は見受けられません。残念ながら人々の反応は、“あ、そう” で終わるのです。全く知らなかったものを新たに知ったという驚きとか感動がないからです。ようするに、その観光地の知名度が低くても高くても、どちらであってもダメだということなんです。

●日本の観光産業ののマーケットシェアは、日本人観光客が93~94%、外国人観光客が6~7%であります。当然ながら、観光売上を増やそうとしたらシェアの大きい日本人観光客を増やさなければいけないのです。外国人観光客など無視しろというのではありませんが、外国人観光客を2倍にするよりも、日本人観光客を7~8%増やす方が実現可能性は高いです。(全体の売上増分は同じです)

観光市場での外国人観光客が占めるマーケットシェアは、僅か6~7%
観光客の延べ宿泊者数の推移
↑上図は国土交通省の 『観光白書』 の各年版から数字を拾い集めて、わたくし山のキノコが勝手にグラフ化したものです。国土交通省は、平成19年1月より、全国統一基準により、すべての都道府県を対象に、従業員数10人以上のホテル、旅館及び簡易宿所のすべての宿泊者数等を調査する 「宿泊旅行統計調査(一般調査)」 を開始しました。調査開始年が新しいので古い年の数字はありません。

●この数字は宿泊旅行者が対象なので、日帰り旅行は漏れていると考えられます。しかし、考えたら日帰り旅行は観光地にカネを落とさんのですよ。なんといっても宿泊者は沢山のお金を落としてくれます。また、外国人観光客が日本に日帰りで旅行にくるというのは、有り得ないハナシではないですが、まず宿泊するでしょう。何泊かして観光地をあちこち回れば、宿泊地観光地では宿泊客としてカウントされるでしょうが、通過中に訪問した寄り道観光地では、観光施設に入場したら日帰り観光客としてカウントされましょう。したがって、観光市場における外国人の比率が6~7%と見るのは妥当でありましょう。

●というよりも、宿泊客だけをみても圧倒的に日本人観光客が多いのです。しかも、日本人観光客は日帰り旅行を盛んにするのです。日本人は “宿泊旅行+日帰り旅行” であるのに対して、外国人は “宿泊旅行” だけです。したがって観光市場全体では外国人旅行者のマーケットシェアは更に下がると考えるべきでしょう。実際につぎの表を見ると少し下がっています。

観光客が、旅行でどれだけのカネを落とすのかを見ても、外国人旅行者の比率は6%前後
国内の観光消費額の市場別内訳
↑この表も各年版の 『観光白書』 から数字を拾い集めて、わたくし山のキノコが勝手に作表しました。国土交通省は平成15年から、「旅行・観光消費行動調査」を実施していますが、その調査数字を拾いました。数字を移す際に誤植をやらないようにと、3回校正したので間違いは無いと思います。我が国の観光市場の規模は、おおよそ23~24兆円であります。このお金を観光地に落としてくれるお客様は、ほかならぬ我々日本人自身です。外国人が日本に来て落としてくれるお金は、わずか1.3~1.6兆円で、比率ではたった6%程度しかありません。

●ところで余談ですが、政府は、平成20年に観光庁を発足させ、「観光立国推進基本計画」を閣議決定して「観光立国」などという阿呆なものをめざしています。原発事故で放射能汚染が広がる日本を、外国人は敬遠していますし、日本人も大不況で財布のヒモが更に固く、観光どころではありません。観光立国どころか、観光はジリ貧です。末細りの先細りです。霞が関の中央官庁はリストラすべきなのに、組織の拡大・増殖に大わらわです。観光庁など役に立たないお役所で、税金の穀潰し以外のなにものでもありません。

要するに、外国人観光客の比重は極めて軽いのであり、しかも、外国人観光客が来訪する都道府県は特定の所に極端に偏っている!
次に、東日本大震災および福一原発事故で外国人観光客が落ち込んだので、震災前の平成22年のデータを 『平成23年版 観光白書』 から採取してグラフを作成しました。これを見ると、外国人観光客は特定の都道府県に集中して来訪しています。世界遺産など関係ありません。平成22年の外国人延べ宿泊者数は2614万人泊です。うち、東京都が890万人泊、大阪府が322万人泊で、実に46.3%を占めています。世界遺産など関係ない東京と大坂で半分近くを占めています。なお、東京都の小笠原諸島が世界自然遺産に登録されたのは2011年(平成23年)です。

都道府県別 外国人延べ宿泊者数 (平成22年)

世界遺産観光地の観光客はほとんどが日本人
●世界遺産に登録されている屋久島の所在県の鹿児島県は12万人泊、白神山地の秋田県は7万人泊、石見銀山の島根県はたった1万人泊でしかありません。もし、仮に、この外国人観光客が全員それぞれの世界遺産に来たと仮定しても、本当に僅かな数字であります。実際には世界遺産に来る外国人はその数字の一部でありましょう。これを見ただけでも、国内の世界遺産を訪れる観光客は日本人が大部分であることが分かります。

鳴門海峡にも外国人観光客など来ない
●鳴門海峡に関係している兵庫県は38万人泊、徳島県はたった2万人泊です。兵庫県の場合は外国人観光客が訪れるのはほとんどが神戸市でありましょう。鳴門海峡の淡路島側でも鳴門市側でも、観察してみると外国人観光客などほとんど見られません。徳島県の資料によると、鳴門ブロック観光入込数の統計資料では、鳴門ブロックでの年間の観光客の延べ宿泊数は平成22年は52万人泊です。徳島県での外国人観光客が2万人泊が、仮に全員が鳴門海峡近辺で宿泊したとしても、たった4%です。(実際はもっと少ないハズです。1%ぐらいではないか?)鳴門海峡は世界遺産ではありませんが、国内では有名な観光地であります。その観光客の圧倒的大部分は日本人観光客なのであります。

以上の現状認識を踏まえて考えてみると、鳴門海峡の渦潮を世界遺産に! などと目指しても、見に来て下さる方は外国人では全くありません。世界遺産などというと世界中から観光客を誘致するのかと錯覚しそうですが、そうではありません。対象はあくまでも日本人観光客なのであります。

さて、その日本人観光客を相手にして、世界遺産ブランドが仮に実現したと仮定しても、数ある観光地の中から鳴門海峡を特別に選んでくれる訴求力を持つのかどうかは、極めて疑問です。架橋を見るのであれば明石大橋や、瀬戸大橋、瀬戸内しまなみ海道のほうが見ごたえがあります。鳴門海峡近辺では、遠く愛媛県松山市の道後温泉まで行かないと温泉らしい温泉はありません。風呂好きの日本人にとって温泉のない観光地は、残念ながら第2級か第3級になります。雄大な高い山もなく、複雑で勇壮な海岸でもなく、観光地としての魅力がやや薄いのは否めません。したがって、世界遺産の可能性は縷々考察した通りゼロですけれども、仮に世界遺産に登録されても一時的な賑わいに終わるのがオチでありましょう。ブランドよりも実質的な魅力が必要なのです。逆に申せば、ブランドを貼りつけても実質は何も変わらないのです…。


旅行好きグループの会話
「この間のニュースで、鳴門海峡が世界遺産になったらしいね。」
「どう? 今度の休みに、みんなで行ってみないかい?」
「前に、四国旅行の時、通ったけど、大した所じゃなかったわ。なんにも、ないわ。」
「そうなの。最近、世界遺産がやたらに増えすぎて、値打ちがないもんね」



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