雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その9)
●おそらく、たぶん、鳴門海峡の渦潮を世界遺産に! などという阿呆な主張が出てくる背景には、観光客の入込数がこの15年横ばいで伸び悩んでいることが考えられます。ヒトというのはとても欲張りな動物であります。つねに、物事の上昇や発展を望みます。経済的には成長や拡大再生産を望み、年々収入が増えることを望んでいます。このように欲張りなヒトという動物は、横ばいでは我慢できないのです。なので、いかんともしがたい成長志向の妄想にとらわれています。“横ばい” というのは恐ろしい「後退」や「縮小」とほとんど同義なのであって、それは、とうてい受け入れることが出来ない恐怖でさえあるのです。

ヒトの欲深さは、指数関数的変化を、無意識のうちに、対数関数に変換して捉えていることも一因。「ヴェーバー・フェヒナーの法則」

●ここに16個の数列があります。
(100、110、121、133、146、161、177、194、214、235、259、285、313、345、379、417)
数学の問題を考えようというのでは全くありません。人間の欲深さはどこからくるのか? その心理的なものを考えようというのであります。最初の年に100万円の収入があったとします。翌年に収入が1割増えたならば110万円です。翌翌年に収入が前年よりも1割増えたならば121万円です。毎年、毎年、前年よりも収入が1割増えていったばあいの経年的な収入は上記の数列になるのです。最初の年から見ると、15年後には収入は417万円になっています。なんと4倍であります。20年後には672万円に、25年後には1083万円、30年後には1744万円になります。毎年1割づつ収入を増やすことができたならば、最初に100万円の低所得だった人も、25年後、30年後には高額所得者の仲間入りをすることができます。

しかし現実には、なかなか難しいです。たとえば、商売人が1割の収入を増やそうと計画を立てて努力したら、1割ならばそう突飛な目標ではないし、目標としては低水準の目標です。おそらく可能でしょう。けれども、低い水準の目標であっても、10年、20年、30年と積み重ねる事はいかに困難なものか、自分の才覚と努力とで食いぶちを稼ぐしかない民間人ならば皆知っています。(公務員は話をしてみると案外知らない人が多いみたい…)

●さて、もし上記の16個の数列のように収入が毎年1割づづ増えたならば、ヒトはどのように感じるでしょうか? 上の数列は次第に数字が雪だるまのように膨張しています。後ろの数字を前の数字で割ると、すなわち公比は1.1です。常にその比率は1.1です。これは等比数列なのです。毎年の変化率は常に同じです。100 → 110になるのも、379 → 417になるのも比率は1.1倍です。前者は10万円増え、後者は38万円も増えています。けれども、どちらも1割増えただけです。

あまり知られてはいないかもしれませんが、ヴェーバー・フェヒナーの法則 というものがあります。 この理論によると、100万円が110万円に増えると “ちょっと増えたかなあ” と思うのですが、それは379万円が1割増えて417万に増えて “ちょっと増えたかなあ” と思うのとは心理的に全く同じだと言うのです。また、庶民が自動車を買うのに100万円の方にしようか150万円の物にしようかと悩むことは、大資産家が自家用飛行機を買うのに40億円の方にしようか60億円の物にしようかと悩むのと、心理的には全く同じです。(比率が同じなので)ヒトは物事が変化するときには、その変化というものを、その時々の変化の数量ではなく変化の比率でとらえている、というのが「ヴェーバー・フェヒナーの法則」の骨子であります。

とくに、自然界では指数関数的な大きな変化を示す事象や現象が普通に見られます。明暗とか、音の強弱、風速と風圧の関係、夜空の星の明るさ、酸性アルカリ性を表わすPH、などなど大きな変化を示します。長くなるので図示するのは割愛ですが、そうした場合、ヒトはどうやら無意識のうちで、指数関数的な大きな変化を対数関数に変換して捉えているようなんです。つまり、心理的に、感覚的に、大きな変化を小さな変化に変換して捉えているようなんです。また、数列で示すと次のような感じです。

1、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、4096、(自然界の指数関数的な変化)
1、2、3、4、 5、 6、  7、 8、  9、 10、 11、 12、 13、 (ヒトの心理・感覚的な捉え方)

実際の一例
6等星の明るさを1とした場合、1等星の明るさは100とされています。等級が1等級変わると、明るさは100の5乗根、すなわち約2.512倍変化します。
 1   2.51、  6.31、  15.85、 39.81、 100.00 (実際の定量的な光量変化)
6等星、5等星、 4等星、 3等星、 2等星、 1等星  (ヒトの目の感覚的な捉え方)

●ということを踏まえて先に示した数列を再掲します。
(100、110、121、133、146、161、177、194、214、235、259、285、313、345、379、417) 
当初100万円だった収入が、15年年後には4倍以上の417万円になっているのだから上等です。相当収入がふえています。けれども、心理的・感覚的な収入の増え方は次のように緩やかな増え方に感じるハズです。
100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、
収入が結構増えていっても、実際ほどには増加が感じられないのです。で、増えていても、不満が生じるのです。それで、増えていても感謝することが出来ないのです…。増えていてもそうなのだから、横ばいでは減少しているのも同然です。心理的には、「収入の横ばい」は収入の減少を意味するのであり、「価格の横ばい」は高く売りたい売主にとっては値下がりと同等なのです。ヒトの強欲の深さは、ヴェーバー・フェヒナーの法則から心理的に説明がつきます。

鳴門海峡の観光客の入り込み数は、15年前から横ばい! これが、欲張りな観光業界や行政が焦って、鳴門の渦潮を世界遺産になどと主張する背景。

徳島県の資料、『平成19年版 徳島県観光調査報告書』および『平成23年版 徳島県観光調査報告書』から、数字を採って図表を作成してみました。(図表作成者は、わたくし山のキノコ)
淡路島の資料ではなく、徳島県の資料を採ったのは、淡路側の適当な資料がなかなかないのと、鳴門市も鳴門の渦潮が観光資源であり、世界遺産にという阿呆な運動をしているからです。

徳島県・鳴門ブロック 観光入込数の推移

●平成10年(1998年)4月5日に、明石海峡大橋が開通しました。それでその年に、観光客の入り込み数が約400万人から600万人弱にジャンプしました。それと、その年に、あすたむランド徳島 というテーマパークが鳴門ブロックのエリア内の徳島県板野郡板野町にできました。このテーマパークの入場者が年間40万人程度です。鳴門ブロックの観光入り込み数の大部分は鳴門海峡関連あるいは近辺を訪れる観光客ですが、平成10年以降は「あすたむランド徳島」の入り込み数を割り引いて考える必要があるそうです。

●平成10年以降の県外客は緩やかに増加はしていますが、県内客が減少して帳消しにしています。また、県外客が緩やかに増加しても宿泊客が全く増えていません。平成10年の64.3万人がピークで、平成21年には50.8万人と低迷しています。つまり、県外客の客単価が減少しているのではないかと見られます。観光客が鳴門ブロックに落とすカネはこの15年横ばいであろうかと思われます。「横ばい」は「減少」と等価。で、欲深いヒトは可能性はないのに世界遺産と叫ぶのです。

作表のためのデータシートに入力した数字は次の通りです。】
作表のデータシートに入力した数字
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