雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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ハイイロオオカミの放獣などという愚かなことは、しない方がいい
●昨日に、名無しさんという方から、コメントを戴きました。が、単にリンクを貼ってあるだけで、なんのご意見も仰っていないのでコメントとも言えません。ひょっとすると、リンク先の関係者かシンパの方の宣伝かもしれません。で、そのリンク先のサイトの主張に反論というか、別の見方を返事しようと思ったのですが、記事にするのにちょうどいいテーマなので、記事にいたします。

コメント
鹿対策に狼の導入 参照 http://japan-wolf.org/content/faq/

私のお返事
名無しさんへ、残念ながら、全く参照にはなりませんよ。これはコメントではなく宣伝です。貴方が「日本オオカミ協会」の会員もしくは関係者なのか? あるいは単なるシンパにすぎないのか? それは分かりませんが、他人のブログに宣伝の落書きをするのはよくありません。宣伝したいのであれば、どうかご自分のサイトでして下さいませ。

●名無しさんが推奨されている 一般社団法人 日本オオカミ協会 は、WWFジャパンと同じ穴のムジナみたいなもので、色々な環境問題を材料にして寄附集め(カネ集め)を目的化している利権団体みたいなものです。特に、WWFは「地球温暖化」と「シロクマなどの絶滅危惧」を煽りたてて、企業や個人から莫大な寄附集めに大成功しています。一方、「日本オオカミ協会は」失礼ながら資金集めが下手です。会計報告を拝見すると、公的な補助金の導入にも不成功みたいです。その点はWWFジャパンのほうが遥かに上手であって、日本オオカミ協会は資金集めの手法をWWFから学ぶ必要があります。たとえば、地球温暖化を絡めるのも一法。

「日本オオカミ協会」が導入せよと主張しているのは、日本固有種であったニホンオオカミではありません。外来種のハイイロオオカミです。日本の地形は極めて複雑で箱庭的であり、急峻な山や急流の谷や川で画然と棲息行動範囲を細切れにしている可能性が高いです。なだらかな山や平原が広がる大陸に棲息して行動範囲の非常に広いテリトリーを持つハイイロオオカミと、島国の複雑な地形に適応して棲んでいたニホンオオカミとでは、その生態が異なっていた可能性すらありそうですが、ニホンオオカミは1905年の生存確認を最後に絶滅していますから、結局、その生態が科学的にほとんど何も研究されていないので、ハッキリしたことはわかりません。しかし生態が異なる可能性がある外来種の安易な導入には、強く反対致します。

「日本オオカミ協会」は、シカが増えすぎたのは捕食者の頂点に君臨していたニホンオオカミがいなくなったためだ、などという安易な推論を根拠にして外来種のオオカミの山野への放獣などという愚かな主張をしています。が、あまり賛同者がいません。というか、ほとんど賛同者がいません。

●シッカリと認識しておかなければならないのは、100年前にニホンオオカミは日本列島から絶滅しているのです。北海道にいたエゾオオカミもとっくの昔にいなくなっています。ところが、シカやイノシシによる農作物の被害が大きな問題になってきたのは比較的近年です。けっして100年まえからではありません。古くからと見てもせいぜい30年~40年前ごろからです。この点をみても、シカ・イノシシが増えすぎたのはオオカミがいなくなったからだという説は、破綻しています。100年前に絶滅したと言っても、100年前まで沢山いたのではありません。もっと前から絶滅に向かっていたハズです。したがって、もしシカ・イノシシの増殖がニホンオオカミの絶滅が要因であれば、100年前からシカ・イノシシの農作物の被害が顕著でなければなりません。しかし、農業関係で大きな問題になってきたのは近年なのです。草食獣の増減は捕食者が決定するという「日本オオカミ協会」を胡散臭い団体だと見る根拠はこの点です。

上位の栄養段階の生物による消費の動向が、下位の栄養段階の生物に与える影響のことを生態学では “トップダウン効果” と言っています。栄養段階の上位にいるオオカミが、下位にいるシカ・イノシシを捕食することによって、下位の食植者のシカや雑食性のイノシシの個体数を強く抑制しているという見方は生態学ではあり得るでしょう。逆に、食物段階の下位の緑色植物の増減が、食物段階の上位にいるシカの個体数を強く制限しているという “ボトムアップ効果” もあり得ます。どちらの効果の方が大きいのか? などと議論を始める以前に、日本にはシカやイノシシの栄養段階の上位の捕食者、すなわちニホンオオカミがとっくの昔にいないのです。したがって、生態学で言うトップダウン理論では、近年急に顕在化したシカ・イノシシの農作物被害を説明しようがないのです。「日本オオカミ協会」はトップダウン理論にこだわりすぎているのではないか??

●ところで、北海道では開拓が行われるようになった明治期に、家畜がエゾオオカミに食われることが多く、エゾオオカミの退治が官民挙げて行われています。本州にいたニホンオオカミの絶滅要因は別の理由でしょうが、北海道のエゾオオカミの絶滅の大きな要因がヒトによる捕殺です。家畜を襲うのと、毛皮目的もあったみたいです。で、安易な外来種オオカミの放獣は思わぬ問題を引き起こす可能性が高いです。そういう意味からも大反対です。シカ・イノシシによる農作物の被害をなくすために、シカ・イノシシを捕食するハイイロオオカミを放てば、そのハイイロオオカミがブタやニワトリ等の家畜を襲撃する危険性があり得ます。物事には功罪両面があるハズですが、事前には一面しか見えないことが多いです。ある対策を講じても、こんな筈じゃなかった…、というふうなことはよくあるのです。しかも、あらゆる政策や対策は、功罪両面のうち都合の良い面だけを強調しがちです。都合の悪い面は見て見ぬふりをするか、隠すのです。典型例は原発村のやり方です。あらゆる政策や対策は、そのことで利益を得る人たちが存在するために、つねに利権化していくのです。

さて、淡路島の場合は、もともとニホンオオカミは分布していなかった可能性がきわめて高いです。ニホンオオカミの古名(古典名)は山犬です。江戸時代の古典文学には頻繁に出てきます。淡路島に山犬がいたなどというハナシは、言い伝えにも聞いたことがないし、『味地草』や『淡路名所図会』など江戸時代の文献にも見たことがありません。ちなみに、キツネならば淡路島にも昔は確実にいたようです。淡路島でもシカ・イノシシの農作物への被害が顕著になってきたのは近年です。昔からシカ・イノシシの被害が顕著だったわけでは全くありません。淡路島は、もともとニホンオオカミがいなかった島ですから、オオカミがいなくなってシカやイノシシが増えて農作物に被害を及ぼしているという説は根拠が全く希薄です。

●私の考えでは、林野庁が戦後に全国でスギやヒノキの植林を強引に進めたのですが、植林事業の進展や、人工林の生長に歩調をあわせてシカ・イノシシの被害が顕在化してきたと思います。また、昭和30年代に燃料革命がおこり、田舎でも里山に入って薪炭を採らなくなったことと、シカ・イノシシの被害の発生は完全に歩調を合わせています。人工林が増えたので野生動物の棲息場所が奪われ、シカ・イノシシが人里にまで出没しだしたということがあろうかと思います。また昔はシカ・イノシシは奥山に棲息するのが普通だったのですが、人里と奥山の間に里山がありました。里山にヒトが出入りし薪炭を採っていて管理していました。奥山の動物は時には里山に出没することはあっても、それ以上は下に降りませんでした。で、里山がヒトと動物たちの生活圏を分ける緩衝地帯の役割をしていました。その緩衝地帯が奥山化してしまった、ということが問題の背景にあります。したがって隣接する田畑にシカ・イノシシが出没する頻度が非常に多くなったのです。ヒトのライフスタイルが変わったことに起因するそういう変化を良く観察すれば、「日本オオカミ協会」の “オオカミがいないからシカ等が増えるのだから、オオカミを放て” という活動や主張の根拠は間違っています。おそらく寄付金というカネ集めを目的にしているのだろうと、解釈できるんです。ただし、金集めはへたくそです。地球温暖化にからめてカネ集めを巧妙にやっているWWFジャパンを見習いなさい、と御進言申し上げたいと存じます。

●生態学的にみても、色々な見方はありましょうが、仮に、シカ・イノシシが増えすぎた場合には、餌が不足してくるので、シカ・イノシシの死亡率が上昇します。また餌不足で栄養状態が悪いと子獣の出生率が低下してきます。やがて、ある地域のシカ・イノシシの個体群の個体数は減少に向かいます。しかしゼロにはなりません。個体数が減って、シカ・イノシシが植生等に与える被食圧がへると、植生が回復してきて、やがて餌がふえます。するとシカ・イノシシが減少したのと逆のメカニズムで個体数が増加するということが起こります。というボトムアップ理論からの説明をするほうが説得力があるのではないかと考えます。数十年の大きな周期で、シカの個体群の消長が調査・研究されていることで有名なのは、宮城県の金華山です。ここでシカの個体数を減らすのは餌の不足と、時々おこる強い寒波です。オオカミがいなくても、シカが増えたり減ったりを繰り返しています。もともと、野生動物の個体群の消長が起こるのはしごく当たり前のことですし、増えすぎても、逆に減り過ぎても、適正な所に修正させるメカニズムが自然には存在しています。

ちなみに、タヌキ(狸)の個体数を調節するのはダニによる皮膚病の疥癬症です。10年ほど前までは淡路島の南部の山岳地帯でタヌキが非常に増えていました。ミカンやスイカがかなり被害を受けました。しかし疥癬症でタヌキの個体数は現在は激減しています。しかし絶滅したわけではなく、しっかりと生き残っている個体はいます。長い年数をかけてまた増えてくるでしょうが、将来に増えすぎたらまた疥癬症が蔓延して個体数を調節するということになるでしょう。自然界には増えすぎた個体を適度に減らす仕組みが備わっています。

そういう意味から、シカ・イノシシが増えすぎて大変だとと騒ぎ立てるのはみっともないのです。ほっておけばいいのです。そのうち、餌の不足とか、大寒波による死亡とか、病気であるとか、自然の摂理が適当なところに修正しますよ。農作物が被害があるというのであれば、しっかりとした金網を貼ることです。外来種のハイイロオオカミを放獣するなどという愚かで阿呆なことをしてはいけません…。シカ・イノシシを間引いて個体数を調節するために、それを捕食する外来種のハイイロオオカミを導入・放獣しようなどという主張には、私は強く反対いたします。


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>滅多に起きないのであって、絶対に起きないのでは無い


その通り! ですね。狼はめったにヒトを襲わないというだけであって、襲うときは襲うようですね! 検索すると色々とヒットしますね! 

http://commonpost.info/?p=39355
【狼と触れ合えるスウェーデンの動物園で女性職員が狼に襲われ死亡!!】

http://tocana.jp/2014/07/post_4471_entry.html
【閲覧注意】54年間、口が消えた男!? 狼に噛みちぎられた傷を再建へ =中国

クマも恐いけど、狼も恐いですね! 昔、日本にいたニホン狼は小型ですが、
狼偏執狂らが導入を主張しているのは大陸の大型狼です。
もし、襲われたら人間の運動神経では太刀打ちできません。
かならずや狼がヒトを襲う事件が発生するでしょうね。
ほんまに、世の中にはヘンな奴らがいて困ったもんです。

でも、まあ、大丈夫ですよ!
狼じゃ利権にならんので、環境省も動きませんわ!
2016/06/23(木) 21:22:30 | URL | 山のキノコ #js83eNAU [ 編集 ]
熊に襲われるだけでもおっかないのに、狼まで加えるのは反対。
狼は滅多に人を襲わない。それは欧米の事例を見ても確かでしょう。
でも、滅多に起きないのであって、絶対に起きないのでは無い。
導入から何年後か、十数年後には、万に一つの確率で確実に起きる。
その時、再導入派は被害者とその家族へ
「自然回復のためのやむを得ない事故です。あなたの家族はその貴い犠牲となったのです。納得して下さい」
とでも言うのだろうか?
2016/06/23(木) 16:50:07 | URL | #- [ 編集 ]
yumal 様

2点勘違いされているので指摘します。困ったコメントですわねえ。

>人間が絶滅原因である!

ニホンオオカミが絶滅した理由は諸説ありますが、最大要因は明治時代になって西洋から西洋犬を移入し、その移入犬由来の伝染病がニホンオオカミに伝播して、その伝染病に抵抗性がなかったため、またたく間にニホンオオカミが絶滅しています。江戸時代末までは結構たくさんいたのに、あっという間にいなくなったことから伝染病説が一番説得力があります。その意味では、「人間が絶滅要因である!」 と断定するのは全く認識不足です。もし西洋犬を導入したことが誤りだったとするならば、人間が絶滅要因とも解釈可能ですが、西洋犬導入の時点では、ニホンオオカミを絶滅に追いやるとは予見不可能だったでしょう。ならば、タイリクオオカミ移入が予想もしない事象を及ぼす可能性も、十二分に考慮する必要があり、安易なタイリクオオカミ移入はしてはいけません。

江戸時代の文学ではニホンオオカミは山犬として色々な作品に出てきます。そのなかではニホンオオカミは人間に危害を加える存在ではなく、畑を荒らす害獣を退治してくれる益獣(?)であり、ニホンオオカミはむしろ畏敬され、神とあがめられる存在でした。中部地方や関東地方、さらに東北地方などではニホンオオカミが御祭神になっている神社もあります。狛犬がニホンオオカミであるという例は各地にたくさんあります。御祭神として崇めるニホンオオカミを、人間が退治して絶滅させたのでは全くありませんよ。

ついでに申せば、人間が退治して殺して絶滅させたのは、ニホンカワウソのほうです。魚を横取りする憎いやつとして漁業者が撲殺した歴史があります。農業者も田の畔に穴をあけるニホンカワウソが憎くて撲殺してますよ。それから毛皮目的の狩猟。棲息環境が悪化する前に、人間が退治してニホンカワウソはほとんど絶滅してます。水質悪化とか川のコンクリート3面張りなど棲息環境が破壊されたのは、じつは、ニホンカワウソがほとんど絶滅した後なんですよ。

それから、江戸時代まで瀬戸内海にも沢山いたニホンアシカだって同じです。瀬戸内海にアシカがいたなんて信じがたいですが、各地に棲息記録が残っています。私の住む淡路島にもいたみたいです。古い記録では、漁業者が魚を横取りするアシカが憎くて捕殺したのが絶滅の最大要因です。肉をとる狩猟対象でもあったようです。(日本人はクジラを食べる民族ですから、アシカを食べるなんて朝飯まえでしょうかね?)

更に申せば、トキだって明治時代まで狩猟対象です。各地で捕って食べられていました。表向きは環境の悪化だなんてことにしていますが、トキだってほとんど絶滅してから環境が悪化しています。大正時代にはもう激減して少なくなっていますわ。そうそう、トキもコウノトリも日本在来個体群はもう何十年もまえに絶滅していますわ。それを、こっそりと中国のものを持ちこんで、まだトキがいるかのごとく誤魔化しています。完全に環境省の利権でそうやってますわ。

>人間が絶滅させたこの時点で復活させるべきだと思います。

コメントが短すぎるので、貴方の立場(所属団体とか、或いは無組織とか)や真意が分かりませんが、大変困ったご主張です。そもそも完全に絶滅しているんです。復活させようがありませんわ。ジュラシック・パークのような話はSFの中だけですよ。国立科学博物館はじめ国内に数点のニホンオオカミの剥製標本が保存されているのはご存じですよね。その標本からDNAを取り出して生きたニホンオオカミを復活させることができたら、ノーベル賞が10個ぐらい貰えるんじゃないでしょうかねえ。

ニホンオオカミが絶滅した代わりに、大陸からハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)を持ちこんだところで、全く別種(あるいは別亜種)です。復活とは本質的に違います。分かりやすく喩えると、日本列島から日本人が全員死滅して(絶滅)して日本人がいなくなったとしましょう。日本人が1人もいなくなったら、日本という国は消滅です。無人列島です。で、そこで日本人を復活させようとモンゴルあたり(タイリクオオカミの生息地)からモンゴル人を連れてきて、産めよ増やせよ、人口が数百万人になったら、目出度く日本人復活だあぁ! と言えますか? 失礼ですが、貴方はそういう頓珍漢なことを主張されています。環境省や環境保護活動団体の宣伝(プロパガンダ)に乗せられています。
2014/08/25(月) 23:39:59 | URL | #js83eNAU [ 編集 ]
う〜ん
貴方の意見も分かりますが、自分はそもそも日本オオカミを復活させる理由はシカを減らすとかそういう目的じゃなく人間が絶滅原因である!という点がいけないと思うのです。
イノシシやシカは減らさなくても勝手に減るとか、森林破壊とかそれ以前に人間が絶滅させたこの時点で復活させるべきだと思います。

最大の過ちは絶滅させた原因が人間にもあるという点です。貴方にもそこを考えて頂きたいです。

しかし参考になりました。
2014/08/25(月) 21:19:59 | URL | yumal #/mny6f1I [ 編集 ]
名無しさんへ、

どうか、宣伝は、ご自分のサイトでやってくださいませ。拙記事の内容に対するコメントでは全くなく、ただリンクを貼りつけるだけというやり方で宣伝をされるから、強く批判したまでです。世の中、色々な考え方があり、主張もあり、生態学的にも色々な説がありましょう。「日本オオカミ協会」が日本の山野にハイイロオオカミを放獣せよと主張されるのは自由です。何を主張されても、犯罪に当たるとか、極度に反社会的であるとか、公序良俗に反しない限り、いかなる主張も自由ですし許容されるでしょう。しかしながら、主張や宣伝は、原則としてご自分のサイトでするべきものです。他人のサイトに勝手にリンクを貼るなどということは、たとえるならば、他人の家に勝手に張り紙をするのと全く同じです。

そもそも、拙記事「クスドイゲは派手なトゲで草食獣の食害を防御」は、題名が示している通り、シカの食害をテーマにした記事ではありません。植食動物の食害に対抗手段をもたない植物種の一例として果樹のビワを挙げて、しかしながら、植物たちがただ食われることに手をこまねいているだけでは全くなく、色々な対抗手段を進化させていて、物理的防御法として例えばトゲで食べられないように対抗している種がたくさんあり、そして淡路島南部の山岳地帯でどのようなものが生育しているか? という記事です。その趣旨で書く記事の導入部分で、ビワのシカによる食害を示しただけです。

写真のビワの木は私の所有する畑の木です。放棄した果樹園なのでシカに荒されるままに放置し、観察していました。が、拙文をご覧いただいたら分かると思いますが、シカの食害で困っている、どうしたらいいんだろうか? シカを撃退する何か良い方法はありませんか? という記事では全くありません。あくまでも植食動物に対抗手段としてトゲで武装している植物がたくさんあるという記事です。オオカミの放獣に関して全く何一つ書いていません。オオカミに関する記事ではないのです。ところが、どこのどなたか知りませんが、ご意見は一切仰らずに、ただリンクを貼りつけるだけというのは、おそらく “宣伝の意図” であろうかと判断しました。こちらが望んでいないリンクは迷惑千万なのです。

「日本オオカミ協会」の存在は前から気づいています。そのサイトも以前に拝見しています。短絡的で愚かな主張をする人たちだと、極めて批判的に見ていました。で、思ったのですが、寄付金集めが下手くそだなあと。オオカミではあまり利権にも出来ないし…。国民の賛同も得られないし、WWFを見習ったら、少しぐらいは補助金も盗れるかなあ…、この会の人ら、オオカミ愛好家なんだろうな、と思っていました。貴方が「日本オオカミ協会」の関係者なのか、ハンターなのか、単なるシンパなのか何者なのか知りませんが、議論をしても多分水掛け論を延々と繰り返すだけになるのは、目に見えているので、やめておきます。が、当方の考えは言っておきます。

①淡路島南部の山岳地帯は兵庫県有数のシカ・イノシシ棲息密度です。今に始まったことではなく、昔からです。「淡路島の場合は鹿を導入したり猪が本州から海を渡ってきたからでは?」と仰るのですが、全く間違いです。昔から沢山シカ・イノシシはいました。私の住む南あわじ市は、旧名は三原郡です。歴史的には “三原 = 御原(おんはら)” で、天皇の御原、狩り場、という意味です。京の天皇が淡路に来てシカやイノシシを狩る所ということで、千年前からそれらの棲息密度が高いと考えられます。

②それと同時に、ニホンオオカミは淡路島には棲息記録が全くありません。古文献にも古老の話にも言い伝えにも、一切、ニホンオオカミは出てきません。タヌキの古い話は山のように存在しますが、ニホンオオカミ(山犬)の話はないのです。

③淡路島南部の山岳地帯では大勢ハンターが現在でもいますが、イノシシは狩猟の対象ですが、シカは狩猟の対象外です。最近では行政が猟友会に依頼してシカの駆除をしていますが、これはごく最近の話です。基本的には、シカ肉はとても不味く、ハンターが獲っても売れないから、淡路島では狩猟の対象外です。(全国的には、シカ肉を食べる食文化のある一部の地方では、シカが狩猟対象になることもあるかもしれませんが…)

この3つの条件のもとで、長い間別に何の問題も無かったのです。近年問題になるのは、どちらかと言うとシカの方であって、イノシシは昔から狩猟の対象であり、ヒトが頂点捕食者の替わりの役をしていたのは多少は認めますが、田畑に害を及ぼすのはシカの方が甚大です。問題になっているのは、あくまでも最近の話です。
これらの事実から推論できるのは、シカが増えたのはニホンオオカミが絶滅したからだと結論するのは根拠が希薄なのです。そもそも、シカが本当に増えたかどうか? 自体が推論で不確かです。色々な推定方があるみたいですが、野生動物の個体数を推論しても大きな誤差が伴いますよ。かなり正確に突き止められるのは、人間に良く馴れて調査しやすい金華山か奈良公園のシカぐらいでしょう…。もちろん、淡路島南部に何頭のシカがいるのか色々調査や推定がなされていますが、正確には全く不明なんです。

それと、里山にシカが出没しだしたのは、頂点捕食者のニホンオオカミが絶滅したためでは全くなく、シカやイノシシはその習性として強くヒトを恐れます。で、里に出没するのは大部分夜間です。昼間はほとんど出てきません。昔は里山に大勢のヒトが入って炭焼をしたり薪を採ったりしていて、ヒトが山仕事をしていました。今は里山に人影が全くないのでシカ等が安心して出てきているのですよ。オオカミが居なくなったからとは違うんです。人間が居なくなったからなんです。近年、シカの棲息分布の拡大が報告されていますが、拡大したのは里山部分に拡大したのです。その要因は、オオカミの絶滅じゃあなくて、農村とか都市郊外の周辺の里山にヒトが入って山仕事をしなくなったからなんです。そこを、取り違えたらダメですよ。第一、里山にシカ等が進出してきたのは近年(この20年とか30年)です。しかし100年以上前にニホンオオカミは絶滅してるじゃないですか! 誤魔化したらダメですよ。

ついでに申せば、ハンターがやっていることをバラしましょうか。彼らは、イノシシが居なくなると商売が出来なくなります。で、ひそかに子獣を育てて山に放つことまでやりますよ。漁師さんが稚魚の放流をするみたいなものです。彼らの本音では山に沢山イノシシが居ないと困るんです。当たり前と言えば当たり前です。彼らだって商売でやっているんだから、山に沢山イノシシが居て欲しいんです。単純に、ハンターが頂点捕食者の代理になってイノシシを適当に駆除してくれているなんて思ちゃあダメですよ。裏の裏まで見ないといけないんです。

それと、多くの人が、専門家でも勘違いしているのですが、日本列島の全体で歴史上今が最も植生が豊かなんです。歴史上、一番森林が生い茂っているんですよ。これは植生調査する専門家でも見落としている視点です。植生調査する植物地理学とか植生学とかの専門家でも、調査しているのは現代か現代に近い植生を見ているだけなんです。彼らに欠けているのは、100年前、200年前、300年前はどうだったんか? と現代と比べる歴史的視点です。

日本列島では、昔は風呂でも炊事でも暖房でも、全て薪や木炭です。建築の原則は全てといってもいいほど木造建築です。田畑の肥料は里山の林床で集めた落葉や下草です。それから風呂や炊事でできる草木灰です。江戸時代は人口はほぼ3000万人前後で推移しました。現在の人口の4分の1です。3000万人が森林(里山・奥山も)に依存した暮らしだったんです。で、何が起こっていたか? すさまじい森林破壊です。なんせ、世界遺産に登録された屋久島の屋久杉(小杉ではなく屋久杉と称された樹齢千年以上のもの)でさえ薩摩藩は江戸時代に大量に伐採しているのです。あの離島でさえそういう状況だったんです。江戸とか大坂とか都市の近くの森林など、ひとたまりもありません。江戸時代から、明治、太平洋戦争まで、都市近郊はもちろんかなりの山村に到るまでハゲ山だらけなんです。

たとえば、神戸市の背後の六甲山は明治初期の写真が存在していますが、見事なハゲ山が写っています。しかし、逆に現在はみごとな森林におおわれていますよ。で、シカやイノシシがたくさん棲んでいます。特に、イノシシは神戸市の山手の住民がエサをやるので人に馴れ、住宅街にまで出没しています。つまり、100年前、200年前は、大都市周辺の山はすさまじいハゲ山であったのはもちろん、関東から太平洋ベルト地帯に沿った山々はハゲ山だらけだったんです。瀬戸内海沿岸地方でもそうでしたし、もちろん、淡路島南部の山岳地帯でもハゲ山でした。

このように、かつて日本中ハゲ山だらけだったんですが、社会の構造や人々の生活様式が変わり、木材は外材ばかり、風呂も炊事も暖房も燃料はすべて石油や天然ガス等です。(電気も元は石油や石炭)今では、森林(山)に依存する薪や木炭を使う人は山村でもほとんどいません。これが現代が日本列島で森林が江戸時代以降で、もっとも豊かになっている大きな背景です。

つまり、シカが植生を破壊しているという見方は、現代だけを見たごく部分的な観察なんです。たしかに、ごく部分的にはシカが木の葉や草を食べつくして裸地になっているところは沢山あります。淡路島南部の山岳地帯でもありますよ。ところが、100年前、200年前には、それとは遥かに比較にならないほどの大規模なすさまじい裸地が日本列島の随所で広がっていたんです。

昔は、太平洋戦争前までは、里山だけでなく奥山までもが、日本中の森林が定期的に伐採されていたために、案外、シカにとっては暮らしやすかった面もあります。ヒトが森林を伐採するので、「ひこばえ」が出てくるし、林床が剥きだし(すなわち裸地)になるから草が生えます。これがシカの餌だったんです。人間が森林を破壊し山が荒れていたんですけれども、意外にシカには餌が豊富だったんです。状況が変わったのは、昭和30年代後半以降です。ヒトの生活が山に依存しなくなったので、ヒトが森林を切らなくなりました。スギ・ヒノキの植林のために伐ることはあっても、しかしそれは森林の面積で40%です。天然林の方が60%で多いんです。その天然林がどんどんと樹木が生長しました。現在都市近郊でも田舎でも、周辺の山々も里山も鬱蒼と森林が茂っています。こうなると、シカにとっては食糧危機も同然です。10mの木の樹冠の葉を食べたくても背が届きませんから。で、シカがエサを求めて田畑にまで出没してくるわけです。

少なくとも、日本列島では、ニホンオオカミがいないからでは全くないんです。逆説的に聞こえるから信じてもらえないと思うんですが、ヒトが森林を破壊するからシカが棲息出来ていたんです。ところが、ヒトが森林を破壊しなくなったので餌が不足して棲息できなくなったんです。そのために、シカが人里とか田畑に頻繁に出没しだしたんですよ。ニホンオオカミが居ないから、シカが里山に分布を広げて田畑にまで出没するのでは全くないのですよ。
この事情は、本を見ても論文を読んでも、絶対にわかりません。足しげくフィールドに出て、森林がどう変化(遷移)しているのか、シカ達がどんな種類の木の葉や草を食べているのか、あるいは餌が摂れていないのか、その食草や木の生長の経年変化がどういうふうに推移しているのか、などを自分の目で観察しないと分かりません。が、逆にそういうことを観察すれば素人でもすぐに気が付きます。

おそらく、名無しさんはフィールドに出て自然観察などされたことがないんだろうと思います。先入観を捨てて、野山に分け入って植物でも動物でもつぶさに観察されることをお奨めいたします。それと、生態学の教科書の記述にとらわれすぎています。別に捕食者など居なくても生態系がバランスを取る仕組みは考えられますし、実際の野山には教科書の記述が当てはまらない状況はたくさんあります。教科書は模式的にモデル的にそういう例が多いから、そう言えるということで書いてあるだけです。あるいは、名無しさんはお若い方かなと思います。若い方ならば現在の自然しか見ていないから、それだけを見て考えると誤ります。どんな分野でも、その物事の歴史を知ることがとても大事なんです。

ついでに申しますと、米国とかドイツとは日本の自然環境は全く異なります。日本列島は、特に南の方ではドイツよりも遥かに気温が高く、米国よりもはるかに雨量が多いんです。日本は温帯では世界屈指の多雨国なんです。で、森林が破壊されても、裸地になっても数十年したら森林が見事に回復します。現に、50年前まではハゲ山だらけの瀬戸内海沿岸地方でも、現在は鬱蒼とした暖帯照葉樹林に回復しています。なお、生物多様性という面からは、森林が回復したら林床が暗くなって多くの草本類は生きられません。多くの種が絶滅していきます。一部のラン科などの着生植物は増えるかもしれませんが。

かといって、生物多様性を護る為にとか、シカが餌を確保出来る為に、適度に森林を伐採しましょうとなれば、それが良いのか悪いのか、難しい問題です。ま、広く環境問題は沢山のパラメーターが輻輳しあう極めて複雑な問題で、要因は様々ありましょうし、シカが増えて悪さをするのはニホンオオカミが絶滅したせいだとするのは、あまりにも単純な話であって、ゆえにハイイロオオカミを放獣しなさいなどと聞けば、阿呆なことを言うなと申し上げるしかありません。ハイイロオオカミなど放獣しなくても、餌が不足するのでもうすぐシカは減ってきますよ。賭けをしてもいいです。放っとけばいいのです。

名無しさんが、もし「日本オオカミ協会」の会員でしたら、早く脱退されるようにご進言いたします。もし、ただのシンパであるだけならば、狂信的な宗教団体とあまり変わらないようなヘンな会には、かかわらないことです。もし貴方が寄附でもされているのでしたら、大切なお金をドブに捨てましたね。お金は大切に…。それと、千葉徳爾著『はげ山の研究 増補改訂』そしえて 1991年 を、入手は困難かもしれませんので、大きな図書館で読まれることをお奨めいたします。大変な名著です。 ヒトが古くからシカ等より何千倍も何万倍も植生を破壊してきたかが分かります。また、“現在の日本の自然は破壊されている” などという普通の常識的な認識が、いかに実情を誤認しているものか痛棒をくらわされるでしょう…。自然に対する見方が一変しますよ。お奨めの一冊です。

それと、
「筆者さん懸念があるなら http://japan-wolf.org/content/faq/ で懸念を解消するといい」
というのは噴飯ものですよ。私はそれを批判しているのです。眼を通していますよ。自分たちの主張を正当化するために、自分たちの資料を提示してもダメですよ。するならば、「日本オオカミ協会」の主張を評価した第三者の資料を出さなくっちゃ。残念ながら、そんな資料はありませんがね…。要するに賛同者はいないんですよ。
2013/02/05(火) 03:13:06 | URL | 山のキノコ #js83eNAU [ 編集 ]
筆者さん
現在の日本の地形でも狼は充分生息できる。外国には日本以上に険しい山脈に生息する狼もいる
近年になって鹿や猪が問題になっているのは狼絶滅後強い狩猟圧があったから。だが近年若者の狩猟離れや銃規制強化などで狩猟者が減り数年後には狩猟者はいなくなる
日本の家畜はほとんど柵で囲っているから安全。狼に襲われる家畜は広大な牧場で家畜の群れの所在もわからないような牧畜や夜間も家畜の群れを牧野に放置しているような粗放な放牧に限られる。
淡路島の場合は鹿を導入したり猪が本州から海を渡ってきたからでは?
猪や特に鹿は植えた人工林も食べる
近年猪や鹿などが里山に出てきたのは頂点捕食者を欠き増え続けた猪や鹿が不足した餌を求め里山にはみ出してきたため
頂点捕食者を欠いた食物連鎖のピラミッドでは食べられた植生が回復する前に猪や鹿に生えてきた植生が根こそぎ食い尽くされるそれでも猪や鹿の腹は満たせないから結局共倒れになる。それに植生を食べる虫やそれを捕食する鳥も巻き込まれる。そもそも狼がいなくても生態系が成り立つなら米国やドイツなどで狼を再導入する動きなどなかっただろう
筆者さん懸念があるなら http://japan-wolf.org/content/faq/ で懸念を解消するといい
2013/02/04(月) 17:35:27 | URL | 名無し #- [ 編集 ]
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