雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その7)
鳴門海峡の渦潮を世界遺産に登録させるために、地質学的な普遍的価値を示すことが出来るか?

●この問いに関して、応えるのはしごく簡単です。鳴門海峡の渦潮を世界遺産にと変な幻想を追いかけている人々には悪いんですけども、残念ながら、出来ませんとしか答えようがありません。なんせ、世界遺産にというハナシです。世界遺産にたどり着くには、当たり前のことですが前提として、その物件が日本一であるか、日本有数のものでなければならないハズです。たとえるならば国体で優勝出来るぐらいでないとオリンピックに出場できないのと全く同じです。国内で何の実績も記録もない選手が、オリンピックに出場できるでしょうか?

言わんとすることは、鳴門海峡に日本一かもしくは日本有数の地質学的な何かがあるのか? を考えればいいのです。地学ファンならだれでも知っていることですが、日本の地質百選 というものがあります。地質情報ポータルサイト を見てもいいです。

① 鳴門海峡は、“日本の地質百選” にすら選ばれていない!
【地質情報ポータルサイトから引用します。】
美しい日本の国土、火山の恵み・温泉、美しい景観の観光地もみんな、それを形作っている日本列島の地質があってこそのものです。 あるいは地震や地すべりなどの被害も、また地質現象の結果です。日本の地質現象は多岐にわたっており、世界の地質学者が、その素晴らしさに注目しています。そこで日本全体から、地質現象のよくわかるところを百箇所選び出し、そのユニークさを顕彰し、広く知っていただくことにしました。2007年5月10日に第一次選定として83箇所を選び、2009年5月10日[地質の日]に第二次選定として37箇所を選び、合計120箇所の地質百選を選定しました。【引用終了】

というような趣旨のものが “日本の地質百選” なのですが、その120個選定されている地質現象の良く分かる特筆すべき場所のリストに、鳴門海峡が残念ながら入っておりません。“日本の地質百選” にも選ばれないような場所が、⑧の基準で、世界遺産に選ばれるハズがございません…。これが実情であります。関係者にはまことに厳しい現実です。あきらめるしかないのですよ。鳴門海峡を世界遺産にという気持ちは分からないでもありませんが、徒労に終わるし、税金の無駄づかいになるし、幻想を追いかけるのはおよしなさいと御進言申し上げたいと存じます。

拙稿その1で、引用した新聞記事のなかで、『(ユネスコ前事務局長の)松浦さんが薦めるのは「地形学や地質学的に重要な特徴」を評価する基準。国内4か所の自然遺産はいずれも、地形・地質の基準を満たしていない。』などと書かれています。記事は新聞記者が書いたのでありましょうが、松浦氏も新聞記者も高校地学レベルの知識もなさそうです。

松浦氏がなぜ “地形学や地質学的に重要な特徴” すなわち世界自然遺産に登録する基準の⑧を口にするのか、ですが氏はユネスコ事務局長をされたお方なので、鳴門の渦潮という景観だけでは、すなわち登録基準の⑦だけでは、とても世界遺産にたどりつけないことが分かっているからだと思います。しかし松浦氏は輝かしい学歴や経歴の持ち主のようですけれども、法学部出身の方でもとは外交官であり、地学にかんする知識が不足しているようです。もし、高校地学の教科書の知識があれば、後援会で鳴門の渦潮を世界遺産にするために、⑧の基準を狙いなさいなんて指南を絶対に言わないハズです。

② 鳴門海峡は、“日本ジオパーク” にさえ選ばれていない!
独立行政法人 産業技術総合研究所>地質調査総合センター>日本ジオパーク委員会 『ジオパークとは』から。
日本(世界)ジオパークの分布図
↑これが、地質学や第四紀学や地理学などの専門家たちが選定した “地質・地形版の世界遺産および日本遺産” であります。世界ジオパークが5つ、日本ジオパークが15あります。残念ながら鳴門海峡はありません。日本地質図の上に記入されているジオパークを一目見れば、鳴門海峡が世界遺産⑧の基準で登録されることなど絶対にあり得ないことが分かります。

●世界遺産は国際条約に基づくもので、目的は遺産の保護・保存です。条約の条文で明確に謳っています。観光振興が目的ではありません。
ジオパークは、ジオ(地球)に関するパーク(公園)だというのですが、目的は遺産の保護だけではなく教育などの利用も目的です。目的は世界遺産とジオパークとではやや異なるようですが、ジオパークもユネスコが深く関係しています。ユネスコ環境・地球科学部門の支援により2004年に世界ジオパークネットワーク (GGN) が設立されて、ここが運営しているのですが、世界遺産の⑧の基準で登録される自然遺産とは兄弟みたいなものだと解釈することが可能だと、私は思います。詳しくは ジオパークQ&A をご覧ください。

●日本ジオパークにも選ばれないような地質・地形学上の物件が、世界自然遺産に選ばれるハズがありません。実際に、日本一の成層火山として自然遺産に登録運動が繰り広げられた富士山は、2003年に環境省の「自然遺産の候補地の検討会」で候補地選定を見送りました。自然遺産としては富士山は候補にもなれなかったのです。(ただし2006年に手を変え文化遺産候補にはなれました)

ジオパークは後からできたものではありますが、案の定、富士山はジオパークにはなっていません。地質学者や火山学者たちは単なる成層火山というだけでは、それほどの地質学的価値を認めていないことが窺えます。世界遺産の評価と通じるものがありそうです。ちなみに、洞爺湖有珠山が世界ジオパークに選定され、磐梯山と阿蘇山が日本ジオパークに選定されていることから、カルデラを持つ火山の地質学的評価が高いようです。ま、鳴門海峡が日本ジオパークにもなっていないから、世界自然遺産の⑧の基準で登録されることなど絶対に有り得ません。

③“兵庫県版レッドデータブック地質の部” でさえ、鳴門海峡は選ばれていない!
●兵庫県版レッドデータブック2003『改定・兵庫の貴重な自然』では、「地形・地質・自然景観」の評価をしています。南あわじ市のエリアでは、護るべき地形は4地点、護るべき地質は10地点選定をしています。残念ながら鳴門海峡の淡路側であるところの鳴門岬(門岬・とさき)周辺は選定から漏れております。

鳴門海峡・鳴門岬が地質の選に漏れる!
南あわじ市のAランクの地質は2地点あります。Aランクの地形は南あわじ市にはありません。
南淡町沼島江の尾および黒崎東方海岸 …… 三波川結晶片岩類、泥質片岩中のさや形褶曲、海食
西淡町湊西方および阿那賀 ………………… 和泉層群西淡累層中のアンモナイト化石、海食

なお、沼島のさや形褶曲は “日本の地質百選” に堂々とランクインしています。

ただし、自然景観の評価では、鳴門岬周辺をAランクと選定しています。鳴門海峡に面した半島と島からなり、干潮時の潮流と渦潮を間近に見る雄大な景観、と記述があります。しかし、これは鳴門海峡の渦潮を世界遺産に、と言っている人たちの主張そのものでありますし、この景観美だけでは世界遺産の基準には弱すぎるということを、松浦氏は暗黙に言っているのです。

兵庫県版レッドデータブックにすら、鳴門海峡が地質の評価でリストに選定されていないのです。これでは、世界遺産にと運動をしても登録できるハズがありませんよ。

(拙稿は続く)
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