雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その6)
●1978年に登録が始まった世界遺産でありますが、2012年までの足掛け35年間に、登録された世界自然遺産は188物件、自然遺産かつ文化遺産である複合遺産は29物件の計217物件です。拙稿その4で掲上した5枚の表を少し観察してみます。世界自然遺産であると評価する基準は次の4つであります。なお、①から⑥までは文化遺産の基準なので割愛します。

⑦ 類例を見ない自然美および美的要素をもつ優れた自然現象、あるいは地域を含むこと。
⑧ 生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地学的過程、あるいは重要な地質学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表とする顕著な例であること。
⑨ 陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。
⑩ 学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれがある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生育地を含むこと。

これらは多分に翻訳文体調の文で、ちょっと分かりにくいところがあります。しかし、ごく簡単に申せば、次のように要約できましょう。
⑦きわめて美しい自然である。 ⑧地質学的な価値が高い。 ⑨生態学的な価値が高い。 ⑩生物種が豊富で絶滅危惧種が見られる。

何個の基準を満たして登録されているのか?

●自然遺産の登録基準は4つあるわけですが、複合遺産を含めて217件の自然遺産がそれぞれ何個の基準を満足させて登録となっているのか? ざあっと見ますと、やはりと言うか、案の定、1978年に登録がはじまってからしばらくは基準を3つも4つも満足させた物件が多かったです。しかしながら最近の10年間を見ると3つも4つも基準を満足させるような大物の物件は少なくなっていると言えましょう。3拍子も4拍子も揃った第一級の自然遺産は早期に登録されてしまい、しだいに第二級・第三級の小粒の物件が増えてきていることを窺えます。近年は1個の基準のみで登録されている自然遺産が増えているので、かろうじて世界自然遺産になったものが多いのではないか? やはり、これ以上自然遺産の数を増やしたら質の確保が難しくなりそうです。

●日本の4個の自然遺産を見てみますと、日本には第一級の4拍子そろったような物件は残念ながらありません。東洋のガラパゴスなどとも言われる小笠原諸島でも、たった1個の基準でかろうじて世界自然遺産となったにすぎません。生物学史上の偉大な不朽の典籍、チャールズ・ダーウィンの『種の起源』を産み出す素地となったガラパゴス諸島が1978年に堂々の4個の基準で世界遺産となったのとは、比べるべくもありません。ダーウィンの乗船したビーグル号がガラパゴス諸島に寄らずに、代わりに小笠原諸島に寄ったとしたならば、はたして『種の起源』が書かれたかどうか? わたくしはダーウィンが小笠原諸島に上陸したのであったならば、ダーウィンの慧眼を以って動植物の観察をしても、『種の起源』が書かれることはなかったと思います。

(1993年登録) 屋 久 島 ⑦⑨の2個の基準で登録された。
(1993年登録) 白 上 山 地 ⑨の1個の基準で登録された。
(2005年登録) 知    床 ⑨⑩の2個の基準で登録された。
(2011年登録) 小笠原諸島 ⑨の1個の基準で登録された。

●ところで1992年に日本が「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の締約国の仲間入りして、すぐに官民挙げて「富士山」を世界自然遺産にと運動がなされましたが、2003年に環境省の「自然遺産の候補地の検討会」で候補地選定が見送られました。(手を変えて2007年に文化遺産候補とはなっていますが)富士山でさえ自然遺産が無理だったのです。成層火山としては氷河を戴く キリマンジャロ国立公園 のキリマンジャロ山(5895m)に太刀打ちできないのです。カムチャツカ火山群 (最高峰は4750m)にもスケールで全く負けています。べつに自国の物をけなすわけではありませんが、日本人は夜郎自大(やろうじだい)になる傾向があるのです。
富士山でさえ自然遺産登録を断念せざるをえないほどですから、鳴門海峡の渦潮を世界遺産にと運動しても、骨折り損のくたびれ儲けとなるのは必定です。

さて、世界遺産は1つだけでも基準を満足させれば登録可能だとされています。188の世界自然遺産のうちで、ただ1個の基準で世界自然遺産となった物件は、43個あります。43個のうち、⑦の基準の物が9物件、⑧の基準の物が15物件、⑨の基準の物が5物件、⑩の基準のものが14物件あります。もし、鳴門海峡の渦潮が世界自然遺産の候補に選定するとしたならば、⑦の基準しか考えられません。そこで⑦の基準で世界自然遺産に登録された9個の物件を見てみましょう。

登録基準の⑦のみで自然遺産として登録された9物件。 クリックすればユネスコの公式写真が閲覧できます。(文章は英文なので読まなくてもいい。語学が達者ならば読んでもいいし、読めるところだけ読むのも一法)

ベラヴェシュスカヤ・プーシャ/ビャウォヴィエジャの森

サガルマータ国立公園

キリマンジャロ国立公園

九寨溝の渓谷の景観と歴史地域

黄龍の景観と歴史地域 これは写真ギャラリーがないので公式動画を見ます。何を言っているのかわかりません。

武陵源の自然景観と歴史地域 こちらも写真ギャラリーがないので公式動画を見ます。

三清山国立公園 公式写真が1枚しかないのでこちらを見ますGoogle画像検索「三清山国立公園」

オオカバマダラ生物圏保護区

オウニアンガ湖群

●これら9つの物件の写真や動画を見ると、どれもこれも見事な自然美を見せています。たぐい希な絶景ばかりです。特に中国のものが素晴らしいですね。世界遺産と折り紙を付けられるにふさわしい価値があります。南あわじ市当局は鳴門海峡の渦潮を世界遺産に登録するために、その担当の臨時職員(給与15万円)を今募集しています。あちこちに立てる幟も作るそうです。しかしながら世界のこんなにも素晴らしい風向明媚なものと比較されて、値踏みされるのです。鳴門海峡の渦潮など申請したら、恥を掻くのがオチでしょう。やめといたほうが無難じゃないかしら?

(拙稿は続く)
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