雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その2)
みんな勘違いしていないか? 世界遺産の目的は “保護・保存” であり、“将来世代に伝える” ことであります。

世界遺産の目的は、観光振興の道具でもなければ、村興し・町興しの宣伝材料でもありません。それは、条文を見れば明明白白です。世界遺産は申すまでもなく、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約 に基づくものであります。全38条から成り、詳細は外務省HPに掲載されているリンクを閲覧していただくとして、第四条を転記します。それと条約の最後に記されている(参考)をも転記します。(なお、山のキノコが、重要なるポイントを勝手に着色した)

【第四条】 
締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び自然遺産で自国の領域内に存在するものを認定し、保護し、保存し、整備し及び将来の世代に伝えることを確保することが第一義的には自国に課せられた義務であることを認識する。このため、締約国は、自国の有するすべての能力を用いて並びに適当な場合には取得し得る国際的な援助及び協力、特に、財政上、芸術上、学術上及び技術上の援助及び協力を得て、最善を尽くすものとする。

【参考】
この条約は、文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存することが重要であるとの観点から、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とするものである。

●1972年にユネスコで採択され、1992年に遅まきながら日本も批准したこの条約のどの条文を読んでも、世界遺産を大いに活用して観光振興を図りましょうだとか、地域経済発展のために世界遺産を利用しましょうなどということは、どこにも書いていません。条文を読めば、世界遺産は人類全体のための遺産なのであって、損傷や破壊の脅威から保護し保存し、将来の世代に伝えなければならないと、明確に規定し謳っております。保護や保存が目的であり義務であるということであります。

という条約の謳う崇高な理念や目的をキチンと踏まえて、わが南あわじ市の広報をみてみましょう。行政を取り巻く動きがいかにお粗末なものであるかが、良く分かります。
南あわじ市広報2012年12月号に掲載のお粗末な記事
南あわじ市広報2012年12月号より

●特にお粗末なのは、“「鳴門のうず潮」世界自然遺産登録推進協議会” とやらの設立発起人の中田市長の発言です。「うず潮は淡路島が誇る世界に通用する観光資源。みんなで知恵を出し、汗をかいて世界自然遺産登録を目指したい」 と挨拶したとのことですが、お粗末を通り過ぎて無知まるだし、恥ずかしいような挨拶をしています。世界遺産というものがどういう趣旨で行われているのか、全く理解していないようです。たんなる観光振興の道具としか考えていないようです。世界自然遺産はお金儲けの道具じゃありません。また、記事の中に出てくるユネスコ前事務局長の松浦晃一郎氏の胡散臭さも目立ちます。世界遺産登録の指南役として全国を講演してまわっているようですが、活動としては本末転倒で怪しげです。世界遺産を損傷や破壊から守るのが目的であるのに、世界遺産の新規登録の水先案内活動のみ尽力するのは、本来の目的からかなりズレています。新規登録指南ビジネスの講演屋ではないか?

保護や保存と、観光振興や開発は、対立概念であり両立はできない…
●そもそも「保護や保存」と「観光振興」は多くの場合、特に自然遺産の場合は、するどく対立します。当たり前です。たとえば、貴重な湿原であるとか、絶滅寸前の動物の生息地があるとします。実際にそのようなところが自然遺産に登録されています。損傷や破壊から保護する一番いいのは、その地域を聖域としてヒトの立ち入りを禁止することです。観光客が、わんさかと押し寄せるのはロクなことがありません。屋久島や白神山地が世界自然遺産に登録されて入山者が増えましたが、アクセスが容易ではないところなので入山者の絶対数はまだ低水準です。しかし、入山者が増えすぎるという事態が生じたら1日に何人までというふうな入山制限が行われるでしょう。白神山地の核心地域の一部は入山禁止になっています。屋久島でも押し寄せる観光客を制限しようと縄文杉見学登山者を1日360人に制限する条例が議会に提出されましたが、観光協会の圧力で否決されたとか…。世界遺産じゃないけど尾瀬が沼など押し寄せる観光客による汚染や破壊がひどく、入山制限を設けている所はあちこちにあります。世界遺産の条約が目指す保護や保存と、観光振興はそもそも対立し矛盾することなのです。世界自然遺産に登録して観光を振興しようというのは、根本的に矛盾をはらんでいるのです。

●世界自然遺産をめぐる動きでも、生物多様性問題でも、絶滅危惧生物問題でも、地球温暖化問題でも、広く環境問題とカテゴライズできる問題の胡散臭さは、まさにここにあるのです。それらの問題にかかわっていかに観光を振興させるかとか、経済成長に繋げるとか、ビジネスにできるか、というふうな金儲け主義剥きだしのエゴが見え透いています。政治家も、お役人も、学者(とくに経済学者)も、みな異口同音でそういうことを言い、金儲け主義で動いているのです。彼らのいうエコは生態学(ecology)のエコでは決してありません。経済(economy)のエコなのです。拝金主義のエコであり、利己主義の(egoism)のエゴ剥きだしで、世界自然遺産だとか環境だとか口先で言っているにすぎないのです。南あわじ市の市長も…。もっとも、上の方の環境省のお役人からしてそうです。上も、下も、胡散臭い連中ばかりです…。

(拙稿は続く)
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コメント
コメント
たぬき様

コメントありがとうございます。

>>世界遺産=観光地のお墨付き=金儲けの道具のような低俗な考えが横行していて嘆かわしいです。

まったく仰るとおりで、嘆かわしい限りです。文化庁から環境省から県や市町村にいたるまで、皆おかしいです。世界遺産条約の趣旨を完全に履き違えています。世界遺産に登録することはミシュランの5つ星が付いたみたいな捉え方で、観光地としてのお墨付きとしか考えていないようです。低俗で阿呆で頽廃的です。

いま富士山が世界遺産に登録されて、国をあげての祝賀ムードですけれども、観光客が増えるのは一時的な効果しかないと見ています。理由は、富士山は国民みんなが知っているからです。誰でもが知っている歴史のある有名な観光地は、世界遺産になったからと言っても、結局は観光入り込みは増えませんでした。(厳島神社・姫路城・法隆寺地域の仏教建造物・原爆ドーム・日光の社寺など)

有名な観光地で知名度があり、すでに十分に宣伝も観光開発もされてきたところは、世界遺産による観光入り込み増加効果は見られないです。富士山もそのカテゴリーに入りそうです。今年か来年ぐらいは観光客は少しは増えるかもしれませんが、じきにその反動がくるでしょう。石見銀山などは世界遺産になるんじゃなかった、というふうな後悔の声も上がっています。富士山も、多分、観光業者が設備投資などしてもやがてそれはお荷物になり、従来なかった規制や保全のコストだけが残されて、数年後には恨み節がきこえてくるのではないか? と予想しています…。
2013/06/25(火) 20:02:26 | URL | 山のキノコ #- [ 編集 ]
はじめまして。

富士山が世界遺産に登録されて盛り上がっていますが、
世界遺産=観光地のお墨付き=金儲けの道具のような低俗な考えが横行していて
嘆かわしいです。
客が増えれば潤うのでしょうが、保全、保護はできるのかかなり不安です。
またユネスコはお金を出さないので、保全、保護の負担は税金になります。

フィリピンの田圃、スイスの葡萄畑も世界遺産ですが誰もほとんど行かないですね。
マチュピチュやモンサンミッシュルとは偉い違いです。

もちろん世界遺産委員会が1992年に文化的景観とかいう概念を出してきたことは
ブレてはいますが、遺物が残りにくい国ではいつまでたっても認定されてないことも
あったのでしょう。

2013/06/25(火) 18:06:57 | URL | たぬき #hG7ZF4t. [ 編集 ]
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