雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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鳴門海峡の渦潮を、世界自然遺産にだって? アホな。(その1)
もはや、新たに登録される世界遺産は価値逓減がいちじるしく、観光資源の権威付けとはなりません
●鳴門海峡に発生する渦潮を世界自然遺産に登録しよう! という会が発足しています。言っているのは島の自治体のお役人や地方政治家などであります。新聞記者や観光協会の人々も関係しているようです。しかし、全くバカバカしいというか、愚かな主張であります。ただたんに、観光資源として宣伝材料にしたいだけの目的であって、どうやって観光客を誘致してお金儲けをするか?という観点のみから考えているにすぎません…。そもそも、自然観察など無縁の人々が自然遺産について議論するのは滑稽でありバカげています。自然について考えるのではなく、自然を利用して金儲けに繋げるかを考えているだけであるのは、それは自然について冒涜するのに等しいのです。自然は単なる金儲けの道具ではないのです。

●そもそも、自然遺産に登録を!などということでは、もはや観光資源としても訴求力があまりありません。というのは世界遺産の数が雨後のタケノコのように増えすぎたからです。初期の頃のものはみな “第1級のもの” ばかりでありましたが、数が次第に増えるにつれて、第2級、第3級…、と価値逓減をハッキリと引き起こしています。通貨膨張で1万円の価値が次第に減っていくのに極めてよく似ています。最近登録された新しいものについては、それって何処にあるの? いったい何なの? というふうなものが増えていますよ。よほど、地理学の先生か、旅行業務取扱管理者試験に合格するような人でないと、換言すれば重箱の隅をほじくるような知識のある人でないと、知らないものが増えたのです。

●もはや、世界遺産に新たに登録されたからといっても、昭和天皇の口癖みたいに「あっ、そう。」というほかありません。それがどうしたの? っていう感じです。またか、という反応で目新しさとかなく、完全にマンネリ化しています。観光資源にお墨付きをつける権威としては、もはや世界遺産はその威光が色あせているのです。柳の下にそう次々にドジョウはいないのです。鳴門の渦潮の観光価値を高めたいのであるならば、別の斬新な企画を考える必要があります。いつまでも手垢のついた古い戦術に拘泥していてはいけないのです。

と、こきおろしてから、問題の新聞記事を引用させていただきます。11月の終わりぐらいにも同様の記事がデカデカと掲載されていました。最近の地方新聞は行政の広報紙に成り下がっています。
神戸新聞2013年1月6日淡路版に掲載の記事
神戸新聞2013年1月6日淡路版より

鳴門海峡の渦潮 世界遺産への挑戦


非常に問題がありそうだと思われる点は…
ユネスコ前事務局長の松浦晃一郎氏が「もっともっと学術研究を積み重ねてほしい。渦潮を眺めて『素晴らしい』と言うだけでは、世界遺産にたどり着けない」と言って、世界遺産の条件「顕著で普遍的な価値」を科学的に証明する大切さを訴えたとのことです。これ自体が極めて問題であろうかと思われます。で、「科学者を確保することが優先課題」だと新聞記事が締めくくっています。

これでは、御用学者を雇って、ウソでも捏造でもいいから、とにかく鳴門海峡の渦潮の “顕著で普遍的な価値” を壮大にブチ上げよう!ということになりかねません。原発ムラの御用学者が “原発は安くて安全でクリーンだ” と国民を騙し続けたのと構図は酷似しています。

要するに、本末転倒なんです。やり方が、あべこべで倒錯しているんです。本来ならば、学術的に高い価値があるということが先にあって、じゃあ、それならば、そんなに価値があるのだから世界遺産登録に申請してみようか、というふうであるべきなんです。逆に、世界遺産に登録して観光資源としての価値を高めようという浅はかで見え透いた思惑が先にあって、であるから、その必須条件の学術的価値を探そう、あるいは無理にでも作ろう、としているのがこのハナシです。


●これでは、地質学や地形学の御用学者を大枚を積み上げて雇っても、結論ありきの研究になってしまいます。データが改竄されたり、都合の悪いデータは隠されるし、存在しないデータが創作されることもありましょう。そして、データの恣意的な解析がなされ、データが都合のいいように解釈され説明されるでしょう…。これは非常にマズイです。結論ありきの研究だとか、予断を持った研究というのは、胡散臭いことが多いのです。

●ヨーロッパの中世の音楽家たちが、自分たちを養ってくれるパトロンの皇帝や国王のために音楽を演奏したのと同様に、現代自然科学といえども研究費を出してくれるパトロンを必要としています。真理の探究であるべき自然科学の研究が、カネを出してくれる人への奉仕であってはならないハズです。自然科学者というのは、ただひとつ、真理・真実の僕(しもべ)でなければいけないのに、パトロンへの奉仕者が多いのはとても残念です。

(原発関係の御用学者たちをみれば、わたくし山のキノコの主張が賛同いただけるのでないかと思います。たとえば東京電力が東京大学の寄附講座に5億円を出したというニュースがありましたが、そんな癒着の中からは原発を擁護する研究しか出てきません。)

世界遺産に登録されたからといって、必ずしも観光客は増えない…
●残念ながら、これが厳しい現実です。世界遺産に登録すれば観光客が増えて金儲けができるぞ! などと取らぬ狸の皮算用をしていたら、アテが外れる危険性が極めて高いです。世界遺産登録で宿泊客が増えると読んで、観光旅館が増築などしようものなら、それが裏目にでて経営破綻する可能性さえあります。世の中、思惑と逆になる可能性もありうると平素から肝に銘じていかなければいけません。逆になったならばどうするのか? という想定をしていなければ大企業だってアッという間に倒産してしまいますよ。 (そんな例は山ほどある)

●財団法人「えひめ地域政策研究センター」の研究員 服藤圭二氏の論文、『世界遺産登録による経済波及効果の分析 =「四国八十八ヶ所」を事例として=』の11ページに極めて示唆に富む図表がありますので、引用いたします。世界遺産登録先の観光客数の推移                               (千人)
世界遺産登録先の観光客数の推移

●この引用図表では黄色でマーキングしてある年にそれぞれの観光地が世界遺産に登録されました。で、目出度く世界遺産に登録された後に観光客が増えたかどうか? はケースバイケースであります。必ずしも増えるわけではありません。法隆寺や姫路城では観光客は減っています。ほぼ横ばいもあれば、一時増加して後減少もあります。屋久島や白神山地では大幅に増加しています。全く色々であります。このような調査データが存在しているので、鳴門海峡の渦潮が世界遺産に登録されたとしても観光客が増えると予想するのは、あてが外れる可能性が大いにあるのです。

●おそらく、既に、古くからの観光地として開発されている所はほとんど世界遺産効果は無いように思われます。そのような十分に知名度があり歴史がある観光地は、観光資源として開発され尽くしていて宣伝も行き渡っております。いまさら世界遺産になったからといってそれが魅力になるものでもない、ということでありましょう…。

図表で白神山地の躍進が目立っております。世界遺産登録の1993年に212千人だった観光客が、2002年には624千人へと2.94倍に激増しています。これは元々誰も来ないような秘境同然のところに、宿泊所を整備したり、ブナ林散策路を設けたり、案内するガイドを養成するなど、観光開発ゼロだった地域をすこしてこ入れした結果ではないか? もともと観光客の絶対数が極めて少なかったことから急増したように見えるだけでありましょう。急増したと言っても、他の世界遺産観光地と比べると、観光客数の水準は極めて低調であります。

さて、鳴門海峡の渦潮が世界遺産に登録されたら観光客数はどう変化するであろうか? まづ、鳴門海峡の渦潮は昔から有名であります。秘境ではありません。大都会の京阪神に日帰り圏内です。で、すでに昔から観光開発が十分になされています。観光旅館やリゾートホテルなど宿泊施設は余るほどあります。立派な観潮船も就航しています。展望台もあるし、なによりも巨大な架橋が出来て30年近くになります。もはや、観光開発する余地はありません。で、同じ自然遺産の白神山地とは条件が全く違います。むしろ文化遺産の姫路城や厳島神社や古都奈良に近いのではないのか? よって、わたくし山のキノコの推論では、一生懸命に熱くなっている関係者に水を差すようなことを申して悪いのですが、もし鳴門海峡の渦潮が世界遺産に登録されても、世界遺産効果はほとんどないと予想します…。

世界遺産登録先の観光客の推移を指数化した
↑引用した図表は数字の羅列で分かりにくいので、指数化してみました。それぞれの世界遺産観光地の世界遺産登録年の観光客数を100.0としました。登録年の前後でどうなっているのか、増えている場合は赤色数字で、減少しているばあいは青色数字で示しました。

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