雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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短時間大雨観測データから考える
本日は、2012年9月2日(日曜日)であります。

【夏の乾燥】わが淡路島南部は瀬戸内海式気候の支配下にあるため、夏は基本的には少雨であり乾燥が著しいです。で、全国有数の溜め池分布地帯でありますし、植生を見ても『淡路島の植物誌』によれば、大陸乾燥地 → 九州北部 → 瀬戸内海 → 淡路島というふうに、瀬戸内海を回廊として分布を東進させてきた乾燥に適応した植物が、たとえばキビヒトリシズカとかクルマバアカネとか色々と知られています。ありふれたカシ類を見ても、乾燥にめっぽう強い硬葉樹のウバメガシが優占種として君臨していることが多いです。今年の夏は淡路島南部では雨らしい雨がなく、畑のサトイモが息も絶え絶えで枯れかかっております。山裾のダムの池も水位がだいぶん下がってしまいました。
少雨で水位が下がったダム
↑南あわじ市北阿万と賀集の境にある大日ダムです。まだ危機的な状況ではありませんが、農業用水を供給するダムの池の水位が低下しました。水底の茶色い土がじりじりと拡大しています。


【干天に慈雨あり】諭鶴羽山系あたりで昨日未明に1時間ほど土砂降りがありました。降水強度は40~50㎜/hぐらいであったかと思われます。もし数時間続けば水害が発生するレベルの降雨強度でしたが、1時間で終わったので良いお湿りでありました。
気象レーダーによる降水強度分布観測

【寒気が南から来るのが面白い…】 淡路島南部でも激しい雨があったのは、上空に寒気が侵入したことが大きな要因の1つであると解説されています。常識的には寒気は北とか北西方向から南下してくるものですが、夏は必ずしもそうではないのが面白いところです。対流性の激しい雨の大きな要因の1つに上空の寒気が指摘されていますが、高層天気図を見ると、なんと寒気が南東方向から近畿地方にやってきました。伊豆七島から小笠原諸島付近にある上空の寒気を伴う低気圧は、500ヘクトパスカル高度で-9℃であります。これが南東から北西方向にと北上しています。
2012年9月1日 9時 500hPa高層天気図(抜粋)
↑気象庁のホームページの船舶向け天気図提供ページから500hPa高度・気温分布図(9月1日09時の図)の一部を抜粋しました。伊豆諸島南部あたりに上空の低気圧があり、-9度です。遥か北の輪島で-4.7度、秋田で-4.5度と、日本列島付近の上空500hPa高度では、なんと南の方が低温になっています。
しかし、遥か北のシベリアの奥地上空は-27度と盆明けから急激に気温が下がってきました。日本列島は残暑たけなわですが、高層天気図では着実に冬に向かっています…。


【諭鶴羽山系で50ミリ前後の降雨】昨日9月1日未明の激しい雨は、諭鶴羽山系を中心とする降雨でありました。淡路島には気象庁観測所が3か所、国土交通省 テレメータ雨量観測所が現在20か所あります。1日未明の雨量が50ミリを超えたところは4か所です。
洲本特別地域気象観測所が71ミリ、沼島が58ミリ、相川が54ミリ、灘土生が51ミリ、です。同じ淡路島南部でもアメダス南淡でわずか4ミリ、福良で降水ゼロでした。温暖前線の前面で降るような広い範囲で一様に降る層状性降雨と異なり、昨日未明のような対流性降雨(降水型を参照)は時間的・空間的にバラつきが極端であります。
国土交通省 テレメータ雨量観測
↑わが出身地の隣の集落の灘土生で51ミリの降雨でしたが、わずか1時間ちょっとの間に降っています。この国土交通省の観測記録から、重大なことが指摘できます。それを指摘するには、気象研究者でもないわたくし山のキノコは全く適任ではないし、言わない方が無難なわけですが、これを指摘する人がほとんどいないので敢えて言いましょう。

“1時間降水量”は統計の取り方次第で大きく変わる!”
灘土生の観測データで考えればよくわかります。これは10分ごとにいくら雨量があったかを示している統計であります。

もし、毎正時に、その時刻までの1時間に降った降水を集計するならば、2個の数字ができます。
9月1日04時の1時間降水量………18ミリ(4+6+8)
9月1日05時の1時間降水量………33ミリ(13+9+7+3+1)

毎正時で集計するのではなく、10分ごとに集計される降水の1時間分(連続する6個の数字の合計)が最大になるように統計を取るならば、数字が大きくなります。
9月1日の最大1時間降水量………47ミリ(4+6+8+13+9+7)

【観測史上最大という枕詞はクセモノ】 ところで、マスゴミは “観測史上最大の” という表現を好んで使います。もちろん気象庁等がそう言うからそう書く面はありましょうが、実際は気象庁がいうことを “10倍ぐらいに増幅して” マスゴミは煽っているように見えます。この観測史上最大のという枕詞は本当にクセモノであります。函館海洋気象台の前身の「函館気候測量所」が1872年に日本で初めて気象観測を始めて140年です。その間に、観測器具・観測方法・観測統計の取り方、が大きく変遷しています。あまりにも変わっています。昔の気象観測統計の数字と近年のそれとを同列に扱うのはヘンです。

雨量計にしても、人がいちいち貯水瓶に溜まった雨水を雨量マスで測っていた貯水型指示雨量計から、バネ式時計仕掛けのロール記録用紙を付加して自動記録する貯水型自記雨量計と変遷し、さらには、転倒マスの転倒回数を電子技術でカウントする転倒ます型雨量計に変わっています。それぞれに長所も弱点も兼ね備え、原始的であっても正確な初期の雨量計では、いちいち1時間降水量なんて測れないし、無理に測ろうとすれば大変な手間がかります。記録用紙式では横軸の時間が正確じゃないと専門家が指摘していますし、記録されたグラフから1時間雨量を読みとるのでは人によって数値が変わりそう…。最新の電子式ではそもそも0.5ミリ未満の降雨はキャッチできないし、これ本当に精確なのかよ? という疑問が湧いてきます。0.5ミリの降水があると1転倒するといっても、口径20㎝で受ける0.5ミリぶんの雨水の量は円周率を3.14159で計算すると、15.70795立方センチの筈です。たとえば15.9で転倒するとかの僅かの誤差があったならば大雨では何百回も転倒するのだから意外に大きな誤差になりはしないか? 1転倒してマスの水が排出されたとしてもマスに水滴が付着して残りはしないか? ま、つい、いろいろと想像してしまいます。

バケツになみなみと張った水が何リットルあるのか? いっぺんに測ればいいのに、小さな勺で何百回も汲み出して “勺の容量 × 汲み出す回数” で測るのとではどちらが精確なのか? は言うまでもないでしょう。小刻みにちょこまかと測れば誤差が大きいというのはあり得ます。たとえば、観測史上150年で最大の数字だ、といっても150年間にわたって同じ観測機器で同じ観測方法で、150年間全く同じ場所で、周辺環境も全く変化が無く、全くおなじ統計方法でデータ解析しなきゃあ、そう簡単に観測史上最高値だなどと気易くいえない筈です。早い話が雨量計の近くに木があってそれが生長したら雨量がへります。(横殴りの雨をその木が遮るためです)逆に木が伐採されたら雨量は増えるのです。

【観測網の高密度化が観測史上更新値の頻出する大きな背景では?】…と以上の叙述ということもあるのですが、最大の問題点は昔の統計数字と現在のそれとでは母集団が全くことなります。昔は1時間雨量なんて測れないか、測れたとしても数えるほどの気象官署だけだったハズです。かつての区内観測所の多くでは1日1回の日降水量しか測っていません。それが現在では850箇所のアメダスに加えて、その数倍の建設省の観測所があります。しかも今では1分ごとに観測データが集積され、ランキングなどがほとんど瞬時に自動計算されています。観測網の密度が昔と全くちがうから、昔では網から漏れていたところの降雨強度の高いものが網に引っ掛かっている面が大きいと思います。これも地球温暖化のプロパガンダがただちには信用できない大きな理由の1つなのであります。
たとえるならば、1学年70人の生徒しかいない小規模校で190センチ超の長身の生徒がいる可能性と、1学年700人の10倍の生徒がいるマンモス校で190センチ超の長身の生徒がいる可能性とでは、どちらが可能性が高いのか? 母集団が大きいほど、平均値から大きく偏差した極端な数値が出現するのは申すまでもありません。統計学の難しい数式など持ちだすまでもなく自明のことでありましょう…。


【朝の諭鶴羽山】 未明の激しい雨ののち、夜が明けると青空が見えていました。いくら50~70ミリ降ったといっても、対流性の降雨であり、驟雨(しゅうう)であります。平たく言えば夕立です。発達した積乱雲の下では土砂降りでも、数キロ離れれば晴れていますし、普通は1時間も待てば雨は上がります。写真は諭鶴羽山の北側から眺めたものですが、山頂は雲霞に隠れています。
雲霞に隠れる諭鶴羽山(2012.9.1午前6時)
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