雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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東シナ海は、本当に宝の海なのだろうか? (その1)
●私が注目する結社に NPO法人 もったいない学会 という団体があります。まずもって石井吉徳会長の挨拶の文章が素晴らしい。ほとんど “脱経済成長宣言” みたいな文章です。こんなことを言う人はこの国には希有です。会の創設者であり代表者である石井吉徳氏の理念が、脱経済成長の中での豊かさの模索でありますから、この団体に集まる研究者や論者には、まともな人が多いです。権益などにぶら下がるのを良しとせず、政府の言うことなどに与せず、世の中の潮流にも迎合せず、というふうな人々の集団のような印象があります。常識に反することであってもハッキリと言う。それを言ったら不利な立場に自らを追い込んでしまうという場合であっても、言うべきことは言う。多くの人が保身のために言わないということであっても、主張すべきことは敢然と主張する。というふうな人が多い団体であります。なぜそう言えるのか? と申せば、この団体の人たちは異口同音に、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の手法でもってエネルギー・プロフィット・レシオ(EPR)の評価をしなければ、そのエネルギーが本当に持続可能性を持つかどうかは言えない、と堂々と主張しているからです。

●他に団体として、そのようなことを言っているのは 日本LCA学会 ぐらいなものです。マスゴミも政府も環境団体も利権屋たちも、誰一人そのようなことを全く語りません。このLCAとかEPRなどの極めて大事な視点から、物事を視るという姿勢がない連中の主張は、あまり説得力がありません。仮にそれを語ったとしても、たとえばトヨタ自動車は自社製造の車の “製造から廃棄にいたる製品の生涯のエネルギー消費性能” というものを一応LCA評価しています。LCA評価するだけはましと言えましょうが、しかしお手盛りという感が拭えません。一切の利害関係のない第三者の評価とくらべると自己評価というものは、えてして甘くなりがちな傾向が否めません。“うちの車はLCA評価でこんなに環境性能がいいんですよ” と宣伝材料にしているのにすぎないのです。LCA学会にしても企業の研究者の集まりのようで、うちの商品はLCA評価でこんなにも環境にいいんですよ、という主張をしているように見えます。でも、まあ。LCAや EPRを語るだけまだましでしょう。

●ところで、青山繁晴氏という政治経済学科出身の評論家が、メタンハイドレートで日本が世界有数の資源大国になれるのだ、と幻想をふりまいています。そして地球物理学科出身の石井吉徳氏に噛みついています。青山氏はメタンハイドレートの開発研究が進まないのは、石油業界からの圧力があるからだ、というふうな説を唱えています。入力と出力の差がプラスになるのかマイナスになるのかという簡単な収支計算が青山氏には理解できないみたいで、しょせん文系の評論家にすぎないのか?という印象がします。かりに定性的にそう言えても定量的に分析しなければほんとうにそう言えるのかどうか分からない、ということも理解できていないようです。青山氏は社会に影響力があるだけに困った人です。青山氏の “米国石油メジャーが圧力をかけてメタンハイドレートの研究をさせない” などと言うのにいたっては、ほとんど陰謀論的なレベルです。政府系研究機関は20年も前からメタンハイドレートの試掘や研究をやっていますから、青山氏の主張は論理破綻です。青山氏は自信過剰な確信犯的な評論家で、原発の安全性を喧伝したり、何年か前には自信満々に北朝鮮政権はアメリカの工作によって転覆させられるという意味のことを主張していましたが、現実にはそうなっていません。青山氏の予測は外れることが多いです。

残念なのは、青山氏の確信犯的な自信過剰の陰謀論を信じる人が多いことです。本当に残念なのは、世の中には、とくにインータネット世論では、ヤラセっぽい浅薄なナショナリズムの扇動に簡単に乗せられてしまうネットワーカーが多く、珍妙な陰謀論を信じさせられて、まともな議論が隅の方に押しやられ “悪貨は良貨を駆逐する” 状態であるのは残念です。なんせ、信じがたいことには、石井吉徳氏に御用学者や既得権益者のレッテルが貼られているのです。石井吉徳氏が東大教授をしていたから御用学者だ、というふうなステレオタイプな物の見方しかできないネットワーカーが多いのには驚愕させられます。たしかに官僚養成最高学府の東大教授には御用学者が多い傾向はありましょうが、しかし、それは人によりましょう。政府を敢然と批判する東大教授はけっこういますよ。たとえばこの人など。2011.07.27 国の原発対応に満身の怒り - 児玉龍彦 東大教授の児玉先生が国会で議員や政府関係者をものすごい剣幕で叱りつけていますよ。石井吉徳氏が御用学者ではないことは、氏の著書や論文を読んでその主張に耳を傾ければすぐ分かります。逆に、評論家の青山繁晴氏が御用評論家であるのかどうかは不明ですが、青山氏はかつて原子力委員会の委員をしています。そもそも、一度でも原発擁護に回った経歴のある学者や評論家は、どんなに正論を吐いているように見えても胡散臭いところがあるものです。ネットワーカーたちには物事をステレオタイプ的にとらえる人が多く、このことが本当の排他的利権屋集団どもの思うツボになっています。とても残念です。

●さて、前置きの余談が長くなりましたが、「もったいない学会」の創設者である石井吉徳氏は、石油開発も手掛けた経歴のある資源の専門家でありますけれども、この団体には石油開発事業にかかわった会員が複数いるようで、驚くべき記事があります。
田村八洲夫 『尖閣諸島周辺海域の石油埋蔵量について:科学・技術の国らしく正しく知ろう』
尖閣諸島海域に1000億バレルの石油があるとされる話は、1970年前後の古いハナシであって、そのころは探鉱技術がまだ未熟であって、その後の進歩した探鉱技術で埋蔵量推定をしたら、結局、32.6億バレルしかないというのが最新の推定埋蔵量であり、これは国の公式見解だ。という内容です。「石油開発出身の会員を代表して」と立場を明らかにして言っていることが重いです。

●田村八洲夫氏の叙述の中に「2006年4月の第164回国会行政監視委員会で、政府参考人細野哲弘氏が、約5億キロリットルと答弁している」との記述があります。それは本当なのか? 国会会議録検索システム で検索して追確認してみました。

第164回国会 参議院行政監視委員会 平成18年4月24日
著作権法第40条に、政治上の演説等の利用について、公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。と規定しています。ので、該当する第33番目の質問と第34番目の答弁とを全文転記します。


   *************************

【転記開始】
水落敏栄君 島根県の、問題になっております島根県の竹島もそうでありますけれども、我が国の領土が他国に侵されることは絶対許されない、我が国の主権は守らなきゃならない、こう思っておりまして、この共同開発は断固拒否していただくことを私は強く要望しておきたいと、このように思います。
 そこで、尖閣諸島付近に関連してお聞きしますけれども、国連のアジア極東経済委員会が一九六九年に東シナ海での石油埋蔵の可能性を指摘し、尖閣諸島付近の海域は地質学的な特徴から資源の存在が期待されていると発表しております。そして、こうしたことから、一九六〇年代後半から七〇年代にかけて帝国石油を含む国内の石油開発会社数社が開発を申請しておりますけれども、政府は申請の扱いを留保してきた、保留してきたと聞いております。また、経産省は、昨年七月十四日に、東シナ海での開発を申請した帝国石油に試掘権を付与する際、尖閣諸島を含む海域については付与を見送った、このようにも聞いております。
 そこで、二点お尋ねいたしますが、一つは、尖閣諸島付近海域の資源の埋蔵量について、これは試掘しなければ分からないと思いますけれども、アジア極東経済委員会の指摘のとおり有望な鉱区があるのかどうか、あと一点は、七月十四日に帝国石油に試掘権を付与した際になぜ尖閣諸島付近海域は見送ったのか、この二点についてお聞かせいただきたいと存じます。

政府参考人(細野哲弘君) お答え申し上げます。
 今お尋ねの尖閣諸島付近の石油あるいはガスの埋蔵量でございます。
 この付近を含みます東シナ海につきましては、結論から申し上げますと、今先生御指摘のとおり、相当量の石油天然ガスが賦存している可能性が高いものと我々も認識をしております。
 今お話がありましたように、実際掘ってみないと分からないというところは事の性格上あるわけでございますけれども、平成六年に石油審議会の開発部会というところで、技術委員会で検討いたしました。そこの技術専門委員会でのあくまでの推定でございますけれども、その結果、東シナ海の中間線、日本側及び沖縄周辺海域における石油あるいは天然ガスの埋蔵量あるいは賦存資源量というものは石油換算いたしまして約五億キロリットルぐらいあるんじゃなかろうかと、そういうような推定が出ております
 それから、二つ目に御指摘になりました帝国石油に対する試掘権の付与についての地域の限定のことでございますけれども、御案内のように東シナ海海域における鉱業権の付与につきましては、日中間の排他的経済水域、それから大陸棚の境界画定がなされていないということなどを含めまして、諸般の事情を踏まえまして、政府全体としては、総合的に検討をいたしました結果、昨年までは鉱業権の出願の許可又は不許可の処分をずっと留保してきたところでございます。
 しかしながら、御案内のように、日中中間線の東側海域に影響を及ぼしかねない中国による探鉱開発に対しまして、我が国の主権的権利が侵害されないように適切に措置をしなくちゃいけないということでございまして、とりわけ北緯二十八度よりも北の日中中間線付近の海域につきましては、中国が、正に中国側の海域でありますけれども、現に開発を行っているということでございましたので、我が国といたしましても、日本海側海域での主権的な権利が侵害されないように適切に対応する、そういう緊要性が高いというふうに判断をいたしました。このため、昨年の四月、中国の設定した春暁鉱区などの五つの鉱区に対応する当該海域につきまして、試掘権設定の出願の手続を開始をさせていただいたところでございます。
 したがって、この区域には、今、以上申し上げました理由によりまして尖閣諸島の周辺海域は含まれておりません。  【転記終了】


   *************************

答弁に立った政府参考人の細野哲弘氏は、資源エネルギー庁長官を歴任した人物のようで、答弁に立った時点では資源エネルギー庁次長であったろうと思われます。
尖閣諸島周辺海域に石油があるのか? ないのか? と問いただされて、ハッキリと「無いよ」と言っているではありませんか!!
それも定性的にではなく定量的に「約5億キロリットルだ!!」と明言しています。資源エネルギー庁次長が明言するのだから、2006年時点での、東シナ海中間線から日本側の石油及び天然ガスの推定埋蔵量は、石油に換算して約5億キロリットルというのが政府の公式見解であることは疑いようがありません。巷間に流布しているハナシと全く異なるではないか!!

キロは10の3乗だから、5億キロリットル = 5000億リットルです。1バレルは159リットルです。換算すると、5000億リットル ÷ 159リットル = 31.446億バレルであります。1970年前後の国連等の推定埋蔵量1000億バレルとは、どえらい話が違うではないか。1000億の前には31億など無いも同然です。探鉱技術が十分でなかった時代の、40年も前の古色蒼然としたカビの生えた数字が独り歩きし、いまだに人々を惑わせているということのようです。もったいない学会の石油開発出身者たちが「なぜ誰も訂正しないんだ?」と疑問を述べているわけですが、思うに背後に政治的な思惑がうごめいているのではないのか???

●で、想像をたくましくしてみました。真相は全くヤブの中で分かりませんが、おそらく、こういうことでしょう。実際には言うほどには宝がないのにもかかわらず、あえて宝の海としておきたい…。そういう勢力がいる。だから国会の質疑では約5億キロリットルだと明かしたけれども、国民に知られたらマズイので徹底した報道管制を敷いている。宝の山があれば、油揚げを狙うトンビが舞うのは世の常です。ワシのとこの物だ、ワシにも権利があると横無茶を言うヤカラが必ず出てくるというものです。で、宝の海 = 奪い合いの海であり、対立の海です。日本と中国を適度に対立させるための仕掛けが “東シナ海の1000億バーレルの海底油田、つまり、イラクやサウジアラビアに匹敵する大油田” であったのではないか?? 誰が仕掛けているのか? たぶんアメリカでしょうが、日本も中国も深く関与していると見ます。あえて陰謀論的な見方をとると、いろいろと疑問に思うことが整合的にうまく説明がつき、断片が一つの線に繋がってきます…。

(長くなるので、続きは次回のエントリーといたします)

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