雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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諭鶴羽山系の薬草(4) クヌギ・アベマキ・コナラ   生薬名は 樸樕(ボクソク)
●ブナ科のドングリが成る樹木の皮が、『第十六改正日本薬局方』に収録されている生薬であるなどとは全く知りませんでしたし、こんなものが薬になるのか? と驚きです。クヌギ、コナラ、ミズナラ、アベマキの樹皮が樸樕(ボクソク)という名の生薬だそうです。

クヌギ ……… 諭鶴羽山系に沢山あります。普通種。
コナラ ……… 諭鶴羽山系に沢山あります。普通種。
アベマキ …… 私は諭鶴羽山系で1本だけ見つけた。当山系では希産種。
       ただし淡路島最北部付近にはよく見られる。
ミズナラ …… そもそも、淡路島には分布していません。

淡路島に分布していないミズナラという樹木は、コナラのごく親戚の樹木であります。隣の徳島県の山を観察すると海抜800メートルぐらいから上にあるように思います。標高の低い所にはコナラ、標高の高いところにはミズナラと、ハッキリと 棲み分け(すみわけ) ているように見えます。ミズナラは「水楢」でその材に水分が多いから言うそうですが、冷温帯の2次林を形成する樹木であり、諭鶴羽山系は600mほどしかないためミズナラが分布していないのです。海抜高度がすこし足りませんでした。

厚生労働省「日本薬局方・にほんやっきょくほう」ホームページ

厚生労働省 『第十六改正日本薬局方』

【第十六改正日本薬局方 1581ページから抜粋引用します】
第十六回改正 日本薬局方 1581頁より
第十六回改正 日本薬局方 1581頁より

クヌギの樹皮
これはクヌギの樹皮です。幹の径60㎝ほどのものです。下に掲げたアベマキの樹皮ほどの荒々しさはありません。クヌギの樹皮は、ヒトの顔が十人十色であるのと同じように、個体によってかなりの個性があります。しばしば下に掲げたコナラと変わらないようなものも出てきますから、樹皮だけでなく葉や、ドングリを包んでいる殻斗というお椀の状態など観察してから、同定したほうがよろしそうです。

クヌギの枝葉
これはクヌギの枝や葉です。クヌギは里山の代表樹種ですが、昔は炭焼きや薪に大切な木でした。昭和30年代の燃料革命で薪炭の需要がなくなった後は、シイタケ栽培の重要樹種です。シイタケの原木栽培はほとんどがクヌギかコナラで行われています。林業試験場の栽培試験データを見ると、クヌギの方がシイタケ発生量は多いようです。ただし原木(ほだ木)の扱い方はクヌギの方が難しいようです。

昆虫の好きな少年たちは、夏休みになるとこのクヌギの大木に日参です。 ボクトウガという蛾の幼虫がクヌギの幹に穿孔して材の中に入り、穿孔口から樹液がタラタラと出るんですが、この樹液が虫たちの大好物なのです。で、カブトムシ、ヒラタクワガタ、カナブン、オオスズメバチ、キマワリ、ショウジョウバエ…、いろんな種類の虫たちが麻薬に吸い寄せられるように集まってきます。で、捕虫網を手にした少年たちは毎日クヌギの大木に日参なのです。コナラも樹液を垂らすことは垂らすのですが、小学生を持つお父様は、息子にカブトムシを捕ってとせがまれたら、コナラよりもクヌギを捜すほうが宜しいですよ。

アベマキの樹皮
アベマキの樹皮です。クヌギとの違いは、この樹皮です。クヌギと比べると、ずいぶんと亀裂が深い半面山が盛り上がって、荒々しいです。その山も亀裂も全く不規則です。樹皮が奇怪に盛りあがっている様子は、まるで樹皮のオバケみたいです。怪獣の肌みたいで、盛り上がったものが今にも剥がれ落ちそうであります。これはコルク層というのが発達しているためだそうですが、昔は瓶の栓に使うコルクをこのアベマキから採取していたらしい…。

英語版 Wikipediaより 「学名 Quercus suber、通名 cork oak、日本名 コルクガシ」 を見るとヨーロッパ南部 ~ アフリカ北部に分布するコルクガシはコルク層は物凄く発達しています。コルクを採取するために栽培もされて、“コルクガシの畑” の写真が見られるのですが、コルク樹皮を剥がした後は赤褐色で、ちょうどバクチノキみたいで特異な風景です。

左アベマキ、右クヌギ
左アベマキ、右クヌギ
↑上の2枚の写真は、写真中央よりも左にアベマキの葉を置いています。中央より右にはクヌギの葉を置いています。どちらも葉の表と裏とが分かるように置いています。
アベマキは葉の裏側が小麦粉をまぶしたように白っぽくなっています。葉の形状もやや幅が広いようです。一方、クヌギは葉の裏側は表側よりも緑色が薄いのですが、小麦粉をまぶしたような白っぽさはありません。葉の形状もやや幅がせまいようです。アベマキの葉の裏を顕微鏡で100倍で観察したら、葉裏全体に星状毛や短毛がびっしりありました。それらの毛が光を乱反射しているために粉白色にみえるのだろうと思います。

『大阪自然』様が、これはクヌギだろうか? これはアベマキだろうか? と真剣に悩まれておられます。どちらとも言えない、あるいは、どちらでもあるというふうな “中間型” が出てきて決めかねるというのはよくあることです。双方の自然交雑種なのか? あるいは、あくまでもその種の個体変異の幅の最も端にあるものなのか? 自然観察をすればするほど悩みが深刻になるのが常ですが、顕微鏡写真を見せてくれています。

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【以下3枚の写真は、コナラです】
コナラの地方名として、「ホウソ」という言い方が広い範囲で見られますが、淡路島南部でも山仕事をしたりシイタケ栽培をする人々が「ホウソ」と言っています。里山の代表樹種であり、シイタケ栽培の重要な原木です。これは誰でも知っている木なので、下手な説明は割愛です。
コナラの樹皮

コナラの枝葉

コナラの葉の表と裏
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