雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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諭鶴羽山系の薬草(3) サンショウ
●サンショウというのは日本版ハーブであり、料理に香りを添える日本原産香辛料であります。その刺激性はかなり強烈です。その小さな果実を口に含み、噛んでつぶすと、舌がジンジンとしびれてきます。まるで舌に麻酔をかけられたように麻痺してしまい、1時間ぐらい舌の感覚がおかしくなります…。

●プロの料理とアマチュアの料理の違いはいろいろありましょうが、その一つに、プロはその料理に香りや色どりを添える脇役の一片を必ず添える、ということがありましょう。例えば、お吸い物には必ずユズの薄切り片を加えるとか、酢の物にはミョウガの千切りを少しあしらうとか、焼き物にはハジカミの甘酢漬を添えるとか…、であります。その添え物の一片があるかないかで料理の見た目ががらりとかわります。日本自生ハーブであるところのサンショウは料理の名脇役でありますから、薬草というよりも山菜として人々に認識されているでしょう。木の芽あえや、アサリの味噌汁に散らしたり、その実を佃煮にすると絶品です。秋に出来る黒い種子をすり鉢で潰して粉にすると、胡椒のような振りかける香辛料になりそう…。

●この山菜であり香辛料であると思っていたサンショウが、日本薬局方に収録されている生薬であったとは驚かされます。ふつうは芳香性健胃薬として知られ、整腸代謝を進める効能があり、果皮を粉にしたものを食後30分に服用すると、胃もたれの緩和に宜しいらしいです。サンショウの葉を潰してその汁をガーゼに含ませ、「できもの」に当てておくと膿を吸い出し症状の改善に効果があるとか…。
第十六回改正 日本薬局方 1510頁より

サンショウの木

サンショウの実
↑南あわじ市八木成相ダムにて。諭鶴羽山系ではどの谷にも自生する普通種です。ちょっと捜せばどこにでもあります。どちらかと言うと、湿った谷筋に多い傾向があるようです。乾燥する尾根には少ないです。それと、せいぜい2~3mの高さにしかならない低木であり、陽光が当たらないと育たない陽生植物ですので、森の中にはまずありません。森の林縁が自生場所です。必然的に谷筋に多くなる…。(つまり谷や川の中には樹木が生えませんから、谷に沿ったところが林縁になる)

それとサンショウという植物はパイオニア種としての性質を示しています。人為的にまた自然災害的に新しい裸地が生産されたら、真っ先に侵入してくるのがパイオニア種であります。たとえば新しく林道などが切り開かれたら、その道の法面にサンショウがすぐさま侵入してきます。そういうところを探すと宜しい。

サンショウの実の収穫
↑山菜として葉を採取するのであれば新芽の出る3月が採集時期ですが、実の佃煮であるとか薬用にするのであれば夏が採集時期であります。実が小さいので沢山採集するには根気が必要で、こんなものを採るのは男性には向かないでしょう。


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紛らわしい近縁種が2種あります。

●薬草として、あるいは山菜として、サンショウの葉や実を採集する場合には、次の2種がとても紛らわしく、間違える可能性があります。イヌザンショウは個体数も多く、サンショウと極めて紛らわしいです。しっかりと見分けないとサンショウ嫌いになるでしょう。フユザンショウは諭鶴羽山系では個体数が極めて少なく、なかなか目にすることができません。

常緑性のフユザンショウ
↑これはフユザンショウです。南あわじ市北阿万の奥の美女池という池からさらに奥に行った所、分水堰の手前300メートルです。車道の側ですので観察しやすいです。フユザンショウは雌雄異株ですが雌株しかなく、雄株は日本列島からまだ発見されていないとか…。

日本植物生理学会 質問コーナー 「フユザンショウの結実」
フユザンショウが雌花しかなく、したがって雄株の花粉が受粉しないのになぜ種子ができるのか?? 花粉なしに種子ができるメカニズムは専門家集団にも分からない…。もしかして雄株がどこかにあるのか? 雌株に雄花が混じって咲いているのか? テンナンショウ属植物みたいに性転換しているのか? まだ何も調査されず、何も分かっていない。自然界にはまだまだ謎がいっぱい…。ということで一読の価値のある問答です。

常緑で冬でも緑の葉がついているので「冬山椒」の意味であります。ただし、常緑といっても冬には夏よりも明らかに葉が減るようです。若干の落葉性を持っているのではないか?と思います。フユザンショウは、その葉の香りや刺激性はサンショウよりも若干弱いのですが、実のほうの性質はフユザンショウもサンショウも全く同等です。サンショウの代用品に立派になります。

香りの悪いイヌザンショウ
↑これはイヌザンショウです。犬山椒の意味でありますが、この「犬」という言葉は「本家ではないもの、紛い物」「役に立たないもの」という意味合いを含ませています。実際にイヌザンショウはその香りがはなはだ悪く、サンショウの代用品にはなりません。

【サンショウ類を見分けるポイント】
サンショウ類の見分けるポイント

★フィールドで実際的に見分けるのは、トゲの付きかたに注目です。トゲが互生ならばイヌザンショウです。それと葉が厚く小葉が2~3対ならばフユザンショウです。花など標本にしない限り野外で観察できるのは1~2週間のちょっとの間です。

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