雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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キジョランの観察
●7月22日の午後に、洲本市千草の奥の猪鼻谷(猪鼻ダム奥の西側の谷)に行ってまいりました。昨年発見した濃色赤花のホンシャクナゲの接ぎ木用の「接ぎ穂」を採るのが目的でありました。その発見した赤花シャクナゲの樹は老成していて、枯れ上がった枝が多く、生育がかんばしくありません。そう遠くない日に枯死するであろうと思われます。それで、その枝を採集してその個体の遺伝子を保存しようということであります。6本の今年伸長した枝を採取して持ち帰り、台湾原産のアカボシシャクナゲ実生3年生に接ぎ木を行いました。アカボシシャクナゲは耐暑性が強く、シャクナゲの大敵の根腐れ病に強いので、シャクナゲの接ぎ木用の台木には普通これが使われます。

●ところが、採取した接ぎ穂自体が貧相で、通常ならばとても接ぎ穂にするのは無理な状態のものでした。また、その樹自体が樹齢数十年の老木であろうと思われますから、接ぎ穂もそれだけの年数を経た老化枝であります。われわれヒトを始め動植物の多細胞真核生物では、体細胞が分裂できる “分裂回数の絶対的な回数” があらかじめDNAにプログラムされているらしいことはよく知られています。たとえば、全てクローンからなる桜の品種のソメイヨシノは、細胞分裂寿命が迫っていて、その系統保存に危険信号が点灯していると言われています。要するに細胞分裂寿命が迫りつつあるかもしれない接ぎ穂を用いて、接ぎ木が上手くいくのだろうか? もっと若木であればいいのですが、濃色赤花のホンシャクナゲを見つけたといっても、老木すぎてその遺伝子を保存するのは難しそうな気がします。接ぎ木はおそらく失敗するであろうかと予想しています…。 

●さて、猪鼻西谷は植物の宝庫で、ウドカズラ(Aランク)、ナベワリ・カギカズラ(Bランク)など兵庫県レッドデータ種もたくさんあるわけですが、シャクナゲの接ぎ穂を採取した帰りに、ガガイモ科のキジョランを観察しました。兵庫県ではキジョランはレッドデータ種ではありませんが、淡路島では珍品に属すると思います。わたくしもキジョランは猪鼻谷・灘山本・灘惣川の3地点でしか見たことがありません。 キジョランをレッドデータ種扱いとする県もいくつかあります。 キジョランのとても面白いところは、その青黒い革質の葉や、独特な形状の果実などであり、異国情緒を漂わせていて観葉植物にできるのでは?と思えることであります。実際に、ときには園芸店の店頭で鉢植えのキジョランが陳列販売されることもあります。

キジョランの蔓が覆う
↑キジョランは、羽の水色が美しい大型のチョウの アサギマダラ の幼虫の食草としてあまりにも有名です。
【Wikipediaから引用】幼虫の食草となるガガイモ科植物はどれも毒性の強いピロリジジンアルカロイド(PA)を含む。また、成虫がよく吸蜜するヒヨドリバナやフジバカマも、蜜にアルカロイドを含む。アサギマダラはこれらのアルカロイドを取りこむことで毒化し、敵から身を守っている。アサギマダラは幼虫・蛹・成虫とどれも鮮やかな体色をしているが、これは毒を持っていることを敵に知らせる警戒色と考えられている。【引用終了】

葉と花
↑キジョランは蔓草です。大きさは3~4mの樹高の木を覆う程度の大きさであります。あまり大きく10mとかそれ以上とかまで伸長するわけではありません。葉は青黒いぐらいの感じで深い緑色で、革質の厚い葉です。極端に大きくならないので観葉植物に利用できそうです。写真の花はまだ蕾のものが多く、まことに小さくて地味な散形花序で、観葉植物とするならば葉と果実を鑑賞するものであろうかと思います。

花(散形花序)のアップ
↑花には観賞価値はなさそう…。

キジョランの果実
↑このキジョランの果実の形は、熱帯果物のマンゴーに酷似しています。が食べられません。シカの不嗜好植物です。ガガイモ科の植物は、諭鶴羽山系にはガガイモ・シタキソウ・イヨカズラ・コイケマ等がよく見られるのですが、シカ(鹿)はこれらを絶対に食べません。これらは、いずれも茎を切ると白い乳液みたいなものを出して気持ち悪いし、有毒なアルカロイドを含んでいることが知られています。キジョランは自らの体に毒を盛ってシカの食害から身を守っているのです…。

鈴なりの果実
↑蔓や葉の表側(陽光の当たる側)からは果実があまり見えないのですが、ツルをめくって裏側をのぞくと果実が鈴なりに沢山あります。

ザルに盛ったキジョランの果実
↑何十個もなっていたので、5個採集して観察しました。ザルに盛った5個の果実を、長さ・幅・重さを計測してみました。

① 長さ11.8㎝ 幅6.0㎝ 重さ52g
② 長さ11.5㎝ 幅5.7㎝ 重さ49g
③ 長さ10.9㎝ 幅5.9㎝ 重さ50g
④ 長さ11.3㎝ 幅5.7㎝ 重さ55g
⑤ 長さ11.4㎝ 幅5.3㎝ 重さ52g

果実を解剖した
↑果実はとても軽く、押えるとやわらかくて弾力があります。ゴム毬を押さえるような感じであります。キジョランの果実は、子房が1枚の心皮からできている 袋果(たいか) で晩秋に熟すると縫合線からパカッと裂開します。その縫合線にそって無理やりに割って中身を覗いてみました。ヘチマの果実の繊維みたいなものがあります。果実の中は、中心にやがて種子ができるところの固い部分がありますが、その周囲は柔らかい繊維状の物が取り巻いていてスカスカの構造になっています。

水に浮かべるとよく浮かびます。果実の3分の1程度が水中に没するだけで、3分の2程度は空中にでています。この果実の比重はおそらく0.3~0.4ぐらいではないか?と思います。海流によって種子を散布する植物の種子や果実は、水によく浮かぶような構造や軽さになっていますが、キジョランは海流(川の水流も)で種子散布するわけでは全くちがいます。秋遅くから初冬にかけて風で種子を飛ばしています。種子が風散布の植物なのです。種子に種髪(しゅはつ)というものが付いていて風でよく飛びます。種子(果実)が水の流れで散布するのではないのに、果実がこんなにも軽い理由はなんのためでありましょうか??
果実は水によく浮かぶ
↑若い果実はプカプカと水によく浮かびます。夏の水遊びの際の子供のおもちゃに宜しそうです。秋遅くに果実が熟しても水によく浮かぶのかどうか不明です。

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