雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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「ハンゲショウ」の観察(その1)
梅雨末期ごろの珍しい植物「ハンゲショウ」の花の観察をいたします。そうたびたび観察会を行うのは大変ですので、わたくし山のキノコが1人で観察しましたが、観察結果を少し書いてみましょう。観察日は2012年7月4日、観察場所は兵庫県南あわじ市賀集、観察会参加者は山のキノコ1人だけ。

ハンゲショウ
↑ドクダミ科のハンゲショウです。じめじめした湿地であるとか、水辺などに生育しています。草丈は70~80㎝か1mぐらいです。とても美しい植物で、観賞価値があります。庭園のあるお屋敷に住んでいる方は、その庭園の池の辺にハンゲショウを植えるといいでしょう。わしとこには池などないわ、という方は普通の庭(水辺でなくても)でも、鉢植えでも栽培は可能です。自生地をあまり荒すのはよろしくありませんが、1枝を採取するのであればいいでしょう。挿し木で簡単に殖やせます。コップに水を入れハンゲショウの1枝を入れておけば1か月ほどたてば、節から根がたくさん出てきます。

●本ブログを覗いてくださる奇特な方に、特別にこの写真を撮った自生地を公開いたしましょう。南あわじ市賀集にある、第47代 淳仁天皇淡路陵(じゅんにんてんのう あわじのみささぎ) です。御陵の西側に掘があります。その掘にハンゲショウが自生しております。ただし、あまりたいした自生地ではありません。淡路島南部で最大の群生地は洲本市由良にあります。なお、淡路島外の方はわざわざ見に来るほどの自生地ではないので、お住まいの地方の群生地を探すほうがおよろしいと思います…。ただし、多くの県でレッドデータ種扱いになっているため、自生地情報はあまり公開されていないようですが…。

日本のレッドデータ検索システムでは、「ハンゲショウ」は25県がレッドデータ種扱い ハンゲショウは植物自体は挿し木で簡単に殖やせるほど、丈夫な植物であるにもかかわらず、なぜ多くの県でレッドデータ種扱いなのか? 恐らく、湿地とか池・沼のほとりという環境に自生する植物なので、その環境が埋め立てとか水質悪化等の理由で大きな破壊圧にさらされているためではないでしょうか? それと鑑賞用採取もありそうな気がいたします。

白化した葉
ハンゲショウの葉は花期に白化しますが、花穂と向き合っている葉が白化するのであって、茎の下部・中部の花穂が出ていない葉が白化することはありません。したがいまして白化する葉は茎の上部にある葉が2~3枚か、多くても3~4枚までです。葉が白化するといっても、1枚の葉が全体すべてが白化することはまずなく、葉の下半分か3分の2程度で、先端部分は緑色が残っています。少ない場合は、3分の1とか、ほんのちょっぴりということもあります。

●面白いのは、葉が白化しているのは葉の表側であって、裏側は緑のままです。顕微鏡で観察すると、葉の葉肉を形成しているところの柵状組織のうち、葉の表側に近い部分の葉緑体が抜け落ちて白くなっていますが、葉の裏側に近い部分は緑色のままであります。

●ハンゲショウの花は、花弁、花冠(かかん、英 corolla) のない花です。いわゆる花びらがありません。花らしくない花、地味な花であります。それで花粉を運んでもらう訪花昆虫に、ここで咲いていますよとサインを送るために、葉を白くしているのだと考えられています。葉の白化はすなわち華やかな花弁の替わりであるというのです。花期が終わると、白化していた葉はしだいに緑色に回帰していきます。しかし、完全に緑に戻ることは無く、若干、色は薄いというかくすんでおります。

キツネの尻尾みたいな花穂
↑キツネの尻尾か、アキノエノコログサの花穂みたいに、おじぎをしています。尊大さがなく謙虚におじぎをしていますが、これは最初のうちです。1本の穂には小さな個花が数十個か100~200個ぐらいあるのでしょうか? 花穂(かすい)の根元から先端に向かって開花が進んでいきます。開花が進むにつれて花穂は立ちあがってきます。

●写真のものでは、綺麗な放物線状にお辞儀をしていますけれども、その放物線の頂点付近がちょうど開花しています。先端部分はまだつぼみであります。根元の部分は雄蕊(おずい・おしべのこと)の葯(やく・花粉の袋)が茶色く変色して、開花は終わっております。開花が進むにつれ花穂が立ち上がり、放物線の頂点付近がつねに開花最盛になるように開花がすすむのですが、これは頂点付近は花が上向きになって訪花昆虫が止まりやすいという配慮をしているのだと解釈されています。重要な花粉の運び手となるハナアブ類が、好んでハンゲショウの花粉を食べにくるのですが、ハナアブが止まりやすいようにサービスをしているのだと考えられています。訪花昆虫の形態・行動と、ハンゲショウの花の開花状況とが、ベストマッチするように双方がうまく進化したのでしょうかねえ??

ハンゲショウの花は、ルーペで観察しましたところ、写真のものでは雄蕊(おしべ)が5個、6個、7個と一定ではないようですけれども、6個の出現頻度が高いようです。子房の心皮を観察しますと、1個の個花には1個の雌蕊があり、その雌蕊は圧倒的に4心皮からなるものが多く、(若干3心皮、5心皮のものもあった)心皮の先端は合生せずに離生しています。福原先生の植物形態学講座「雌しべと心皮」 を参考にしてください。

群生するハンゲショウ
↑ハンゲショウはたいてい群生しています。ドクダミと同じように、白っぽい地下茎が縦横に走っているので、1本1本の茎が1個体であるということは無く、地下でみなつながっています。けれども、その群生しているものが全て地下でつながっている1個体ということもないでしょうから、一体この群生地には何個体のハンゲショウが生育しているのでしょうかねえ?? 全くわかりません…。

【ハンゲショウの語源説】
●24節季72候の、花鳥風月、歳時記的な季節区分け法によるところの、夏至の末候の半夏生の頃に花が咲くからハンゲショウという…、説があります。けれども、ハンゲショウが開花するころを「半夏生」と言うようになったのか? 「半夏生」という時季になると開花するのでハンゲショウと言うようになったのか? 両方の可能性があり得そう…、です。

要するに、季節名が先なのか? 植物名が先なのか? であります。「半夏生」という字句を見れば、「半夏・ハンゲ」という植物があって、そのハンゲが生えて花が咲くころを「半夏生」と言うようになったのではないか? ハンゲは一説によるとカラスビシャクか? ハンゲとハンゲショウは別物であって、ハンゲが咲くころにハンゲショウも咲くから、もとはハンゲの咲く頃の意味だった時節名を、ドクダミ科のハンゲショウに流用したのではないのか?? でないと、ハンゲショウの咲く頃という意味で時節名にしたのであれば、「半夏生生」としないと矛盾が生じます。

24節季72候のごく一部

二十四節気(にじゅうしせっき)

七十二候(しちじゅうにこう)

●ハンゲショウは「半化粧」だとする説もあります。葉の半分か、3分の2程度が白くなるので、全面的な化粧じゃあなくて半分の化粧だというのです。たしかに、おしろいを塗りたくって化粧しているように見えます。別名のカタシログサは葉の片面(表側)だけが白いという意味であるのはほぼ間違いないでしょう。
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