雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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沼島での「石のお花見」観察会の、写真ギャラリー(後篇)
(本写真ギャラリーは、前篇からの続きです)

【威風堂々と聳立する上立神岩】
●712年に編纂された『古事記』によれば、イザナギとイザナミの二柱の神が、天も地もいまだ分化せずクラゲが漂うように混沌としていた世界を完成させるために、天浮橋(あめのうきはし)という雲の上の橋に立って、天沼矛(あめのぬぼこ)でこおろこおろと下界をかきまぜました。その天沼矛から落ちたしずくが固まって淤能碁呂島(おのごろじま)ができた…、と言っています。

●ま、そういうハナシであって、オノコロ島がどこか? 諸説あるのですが、一説ではそれは沼島だという説もあります。そして、この上立神岩が、天沼矛(あめのぬぼこ)だという説もあります。本当のところはタイムマシンで712年に行って、『古事記』を編纂し終えた 太 安万侶(おお の やすまろ)聞くのが一番いいでしょう。でも、聞かれた 太 安万侶 だって返事に窮して「わしもよう分からんのじゃ。ははは。なんせのう、このハナシはそうとう昔からの言い伝えやさかいな」てなぐらいのことは言いそうです…。

沼島の上立神岩のとても面白いところは、この海食尖塔の中ほどに、くっきりとハートの形が刻印されていることです。イザナギ、イザナミの恋成りて、天沼矛(あめのぬぼこ)にその験(しるし)顕われたり、ということなのか?? 良縁成就・夫婦円満の願いが叶うパワースポットとして、南あわじ市観光協会は売りだしたらいいでしょう…。

上立神岩
↑上立神岩の高さはどの程度でありましょうか? 国土地理院の「電子国土ポータル」で2500分の1の測量図まで閲覧できるので、それを見てみましたがこの海食尖塔は測量されていないようです。で、一つの方法として、この岩の塔を眺めて、その頂と水平線が重なって見える所がどこか調べると、その場所の海抜に自分の目の高さを加えた数値が、この上立神岩の海抜の高さであると近似できるハズです。この方法でやってみたのですが、36.6メートルよりも大分低いということは確実です。結局、その場所自体の海抜高度が正確には分からないのです…。説明看板には30メートルなどと書いてありますが、ちゃんと測量したのだろうか? 適当にサバを読んでいるかもしれません…。だいたいにおいて、観光地の説明看板など内容がいい加減で、適当に書かれている物が多いのです。 

説明の看板

●さて、「石のお花見」であります。観察ではありません。岩石名を正確に同定するには、偏光顕微鏡でその岩石の造岩鉱物の種類や存在比を調べたり、場合によっては化学組成まで調べないと同定は難しいとされます。この「石のお花見」ではその石を割って片理をながめたり、ルーペで見える範囲で鉱物の配列などを見たという程度でありまして、とても観察などとは言えません。サクラの花見と同じです。サクラの名所を花期に訪ねてみると、花見客は大勢来ていますが、雄蕊の数は何本あるのか?とか、がく片はどうなっているのか?などと、観察している人はほとんどいません。それと全く同じで「石のお花見」なのです。放言していることに信頼性はほとんどありません。悪しからず…。

岩石が累々と堆積する
↑海岸には破砕された大きな石が累々と堆積しています。この写真の中に見える大きな石は自動車ぐらいの大きさがあります。とても荒々しい岩石海岸で、浮石もあり、安定性のわるい石も多いから、この海岸には立ち入らないほうが無難です。絶対に遭難しない方法がたった1つだけあります。それは、危険な場所に立ち入らないことです。

筋状の構造が発達する
↑この沼島の三波川結晶片岩類は、片理がよく発達していて、薄い板状に剥がれやすいです。大きな岩は直方体の塊になっていますが、やがて平べったく割れて行き、波打ち際の小石はみな小判形の平らな石がほとんどです。筋状のほぼ一定方向の線が無数に走っているというふうな岩石ですが、それだけではなく、筋状方向に対して直角に割れ目(節理)も入っていることが多いです。この片理と節理が発達しているので、平たい直方体の石のブロックが自然にできています。そういう石が民家の塀に積まれているのが集落の中の路地を歩けば見られます。

鉱物が筋状配列になっているような感じ
↑岩の表面が筋状に見えるのは、この岩石を作っている鉱物が、おそらく一定方向に行儀よく並んでいるためなのでしょうけれども、その様子はルーペで見てもよく分かりません。やはり、岩石の観察は偏光顕微鏡で鉱物の観察をする必要がありそうです。ま、ルーペ観察でも白雲母はキラキラと輝いているのですが、石英はぜんぜん輝かないという程度のことは分かります。

太陽の光が当たるとキラキラと光る
↑写真ではとても分かりにくいのですが、沼島の結晶片岩類に太陽の光が当たると、石の中に微小な星が無数にあるかのように、キラキラと光ます。おそらく、造岩鉱物の白雲母の細粒なものであるところの 絹雲母(きぬうんも、sericite、セリサイト) が太陽の光を反射しているのであろうかと、思います。実際に沼島の結晶片岩類の小石を手に取って、太陽の光に当てて鑑賞すると、宝石みたいでとても綺麗なものであります。

石のなかで煌めく スターダスト。
星降る岩のなんと美しい…

キラキラと輝く

石英の脈が入っている
石英質の脈が入っている
↑泥質片岩の片理面にそってほぼ平行に、白っぽい半透明な、レンズ状の石英質の塊のようなものが混入しています。数は多くはないのですけれども、あっちの岩石、こっちの岩石というふうに点々と見られます。直感的に想像するのは、この岩石が地中深くにあったときに、何らかの要因で割れ目が生じて、ここに熱水が流れ込み長い時間をかけて石英を主とする鉱物が生成されたのではないのだろうか? ところで周囲を捜すと、半透明な白っぽい人の頭大ぐらいの転石もあちこちにみられます。これは石英質の脈の入っている岩石が破砕され風化して、その白っぽい石英質の部分が残ったのか、あるいは打ち寄せる波に洗い出されたのであろうか? これも大昔には地の底で変成作用を受けたのでしょうから、石英片岩と言うのでしょうかねえ?
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↑こちらの白い脈はレンズ状ではなくて、不定形状に入っていて、かならずしも片理面に平行になっていないようです。泥質片岩の中に、もこもこと白い雲が湧きたっているかのようで、とても面白い造形であります。 (これをもちまして、石のお花見はお開きです。)

●ついでに、植物の観察であります。
ヤツデです。
↑こちらはヤツデです。南風が強く吹き当たる風衡地であるので、伸びすくんで矮生化しているように見えます。根元を見ると幹は結構太いのですが、樹高が1メートルかせいぜいヒトの背丈ぐらいしかありません。葉もかなり小ぶりであるように見えます。この海岸崖地の植物には、トベラ・ダンチク・キキョウラン・アゼトウナ・ハマウドなど海岸植物が見られましたが、風あたりが強烈であるためか、扁形し、矮生化した物が多いようであります。

●5万分の1地質図を見ると、上立神岩付近の崖地には「蛇紋岩・じゃもんがん」が少し分布しているようです。そうであるならば、ぜひともその蛇紋岩の崖地に生育している植物を調べたいものです。超塩基性岩のカンラン石や蛇紋岩の山であるとか、それから石灰岩の山、さらに鉱山跡で重金属で汚染された山などでは、そこの植物相が特異なものになるということが良く知られています。そこの岩石(土壌)の化学組成が普通の山と大きく異なるので、そういう条件に適応した植物が生育するということであります。ので、上立神岩周辺の崖をよく調査すると何か変ったものが出てくるかもしれません。でも、遠目に眺めれば険しくて命がけかも…。

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