雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(4)無理を承知の上で、あえて主張している…。
小学館運営 NEWSポストセブン『消費税増税に経団連が賛成するのは“輸出戻し税”あるため』 週刊ポスト(2012年3月2日号)

【引用開始】 民主党の野田政権が消費税増税を推し進めようとしているが、それに対し小沢一郎元代表は反増税の立場を鮮明にしつつある。小沢氏はよく、目指す制度改革を「旧体制のアカを落とす」と表現する。旧体制で力を握ってきた霞が関や大メディアがそれを嫌がるのは当然だが、その一味には経団連を中心にした旧態依然の大企業もいる。経団連が、景気を冷え込ませる消費増税に賛成しているのは、「大企業への補助金」といわれる消費税の輸出戻し税があるからだ。
「税率を5%上げれば輸出戻し税も2倍に増えて財界の主要企業は儲かります。この特権を見直せば、税率を上げなくても税収は増えるし、財界はもっと冷静に増税の影響を考えるようになる」(小沢グループ議員)
 説明が必要だ。消費税は流通段階で価格に転嫁され、最終的に消費者が負担するが、海外の最終消費者からは税を取れないという理由で、輸出製品には仕入れ段階で課せられた消費税を企業に還付している。これが輸出戻し税で、還付額は年間約3兆円。自動車、電機など大手メーカーは、納める消費税より還付金の方がはるかに多く、輸出上位10社でざっと1兆円近くが戻されている。
 税理士の湖東京至・元関東学院大学法科大学院教授は、税制の矛盾を指摘する。「政府は消費増税分をすべて社会保障に回すという。現在の5%の消費税も基礎年金、医療、介護の財源という建て前です。そうすると、輸出大企業は社会保障財源から補助金をもらっていることになる。『租税は各人の能力に応じて平等に負担されるべき』という租税立法上の原則に照らしても、輸出戻し税の還付金制度は廃止か停止すべきです」【引用終了】

一見すると正論を言っているようにみえます。しかし、消費税法を調べて、消費税の仕組みを理解すれば頓珍漢なことを主張しています。これは日本経団連を牛耳っているところの輸出比率の高い大企業を目のカタキにして、罵詈雑言を投げつけ、たんに悪態をついているにすぎません。前エントリーで議論した通り、消費税法第7条で輸出免税が明確に規定されています。輸出物品に関しては消費税は1円も国庫に入っていません。仕入れに含まれていた消費税が事業者や国庫を素通りして元に戻っているだけにすぎません。国の税収ということでは、輸出物品に係る消費税は免税のために1円の税収もなく、また1円の税金持ち出しもありません。プラスもなければマイナスもなく、完全に収支中立で、いわば最初から存在しないものなのです。したがって、トヨタ自動車など輸出大企業が “特権” だとか “補助金をもらっている” などと主張するのは事実錯誤に基づく言いがかりにすぎません。なぜ、こんな簡単なことが理解できないのだろうか?? このハナシはネット言論空間に意外に拡散して蔓延しています。多くの政治ブログでしたり顔で週刊ポストの記事の受け売りを弄しています。

●調べてみたら、輸出戻し税が問題だなどと主張している税理士(税法学を専攻する人)はほとんどいないようであります。言っているのは、ほとんど湖東教授ただ一人であります。この教授があちこちで言いまくっているようで、それがネット言論空間に拡散しています。まともな税理士ならば絶対に言わない(言えない)主張をなぜこの教授は言いまくるのであろうか? 簡単に考えてみます。

1、この教授の立場が、中小零細企業擁護の立場に立っているようですから、輸出大企業の批判をしている。で、ご本人もちょっと言い過ぎかなと思いながらも、過激に主張している。お客さんにリップサービスしているだけ…。

2、この教授は、労働組合だとか共産党などの後援会や学習会でしばしば講師をされているようですから、当然に大企業の経営者を批判したり、富める者はさらに富むという資本主義の矛盾を批判するのはあたりまえで、その一環として輸出大企業を目のカタキにしている。

3、一見すると、(つまり数理感覚を以って論理的によく考えないと)“輸出戻し税問題” は正しいと錯覚してしまうハナシです。税務署に申告などしたこともない多くの国民大衆にとって非常に理解しにくいハナシなので、ウソであっても押しまくって主張すれば一般の賛同が得られるだろうと踏んでいる。(実際に多くの政治ブロガーが賛同し受け売りをしています。それどころか、共産党・民主党・日本新党の国会議員まで、賛同し真に受けています)

4、この教授は、ご自身の主張に無理があるのを百も承知でやっています。その主張の論理構成をよく観察すれば、論点のすり替えをやっています。「トヨタは強大な力があり、仕入れ価格決定権を握っている。トヨタに部品を納入する取引先はトヨタの値引き圧力に抗する手段がなく、消費税分を値引きされるのを余儀なくされている」などと主張しているのは、巧妙な論点すり替え。輸出戻し税が問題だと言っているのかと思ったら、そうではなく、途中から下請けに値引きを押しつけるトヨタの横暴さにハナシが変っています。

●結局、この教授は分かっていながら強引な主張を言いまくる確信犯なのですね…。そして、その主張を支持する大勢の人々がいる…、ということのようであります。

もちろんトヨタは仕入れ先に厳しく値引き要求することは、当然ありましょう。お人よしでは会社の経営は出来ないと言われます。仕入れをいかに安くするかということは、利益の増大化の絶対条件でありましょう。しかし、それと輸出免税還付金とは別のハナシであります。なんとなれば、トヨタの値引き圧力にあらがうことができずに、60万円で売りたいところ50万円にしなさいという圧力に涙を呑んで受け入れても、実務的には消費税は伝票に記入せざるをえません。トヨタから消費税をもらわないことには、納入業者は場合によっては脱税と解されるかもしれません。(もし税務調査が入ったら、トヨタから消費税をもらい損ねたのが悪いのだ、納めて下さいよ、とやられるでしょう)

納品書 部品 数量○○個 単価○○円 金額60万円 消費税3万円
               ↓
納品書 部品 数量○○個 単価○○円 金額50万円 消費税2.5万円

と納品伝票の記載が変わるだけです。消費税を記載しないわけにはいきません。また、値引きを押しつけられたトヨタの納入業者も、「トヨタさんよ、値引く替わりに数量は倍にしてくださいよ」とか、「値引きを受け入れますから、ライバル社の○○さんよりも、うちの方を優先的に使ってくださいよ」などと抵抗はすると思います。このような議論は輸出戻し税とは少し別の議論でありましょう。
そもそも、消費税があろうと、なかろうと、強大な親会社が下請けや取引先をいじめるのは、昔からあるハナシであります。消費税輸出還付金が、ただちに、下請いじめになっているという論理展開は、かなり乱暴な議論に思われます…。

●さて、では日本経団連がなぜ消費税増税に賛成するのか? それは輸出戻し税があるためなどではなく、法人税を下げるためであろうかと考えられます。それには、日本の上場企業の株主構成でアメリカ金融資本の比率が増大していますが、そのアメリカ金融資本の意向が色濃く反映していると見ます。また、大企業の経営者は高額所得者でもありますが、所得税(特に高額所得者)の税負担を下げる補填として、消費税増税を主張しているのであろうかと私は見ます。

【拙稿は続く】
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名無し様

私が日本経団連や輸出業者の側に立った記事を書いているので、けしからん、考えを改めなさいと仰っているのであろうかと存じます。実は、輸出業者側の立場に沿って書くか、輸出戻し税を貰って儲けているトヨタはけしからんと主張している湖東教授の言い分に沿ってかくか、執筆のスタンスの取り方に悩みました。わたしもトヨタは消費税法のカラクリを利用し、輸出戻し税を貰って不当に儲けていると見ています。しかしながら、それを証明するのは簡単でない、というか不可能だと気付きました。で、原理原則に従って輸出業者を利する方向で記述しました。

>国内での非課税取引では、非課税であるから消費税を転嫁することはできず、仕入れに係る消費税は負担

全くそうですね。調剤薬局なんかは典型例ですね。消費税をどんどん上げたら消費税倒産するところが出るかもしれませんね。上げた消費税分だけ薬価を引き上げるとかの救済策が要りそうです。それか薬の非課税を廃止して、患者から消費税を取るとか…。でも、高騰した薬代が払えない貧乏患者が医療を受けられなくなって死ぬかも? あるいは調剤薬局には仕入れに含まれている消費税を還付するとか。

>輸出取引においても課税はしないが、負担すべきとすることはできませんか

海外の客から消費税はとらないが、輸出業者にも、消費税を税務署に納めさせるとの意味ですか? もしその意味でしたら、もらってもない消費税を税務署に納められるハズが無いですが…。あるいは「負担」の意味は、輸出戻し税の還付金を輸出業者に還付しない、という意味ですか? もしそういう意味ならば(形式的には)調剤薬局と同じ状況になりそうです。

>考え方を変えることはできませんか

別に考えを変えてもいいですよ。日本経団連の側から湖東教授の主張に沿った方向に転換してもいいです。そもそも確固とした主義主張で書いているのではありませんから。ただ考えを悔い改めよと、詰め寄る相手を間違えています。私はただのしがない一民間人です。私が法律を作っているのではありませんよ。政府の税制調査会の委員であるとか、内閣法制局で税法見直しに関わって実際に法案を書く官僚とか、法案を出したり法案を採決する権限を持っている国会議員とか、そういう人たちに向かって輸出戻し税還付制度はおかしいから税法を改正しなさい、と詰め寄るべきでしょう。

>輸出免税を停止し企業として正当な取引に注力してほしい

というふうに仰いますと、輸出業者が不当な、不正取引をしているようなニュアンスを含んでしまいますが、トヨタにしても不正取引をしているわけじゃありません。いっそ、海外に輸出する商品にも消費税を課して外国のお客様から消費税を頂くと、スッキリとしますよね。外国人から見ると、あれっ、日本からの品物が急に5%高くなったぞ! 国際競争力が落ちるかも?

>儲けはいらない。消費税が還付されるからつぶれないという輸出業者もいます

仰る通り! ありますよね。けしからんと言っても、仕入れの中に含まれていて、仕入れの代金と一緒に払った消費税を戻してもらうだけなんだから、どうにもなりません。形式的には全く落ち度がありません。問題は仕入れ業者に値引きを要求するなどで、実質的に消費税を払っていないかもしれないのに、ちゃっかりと還付金はもらっていることかなあと思いますが、それを証明するのは難しそうです。輸出業者に納入する品物を免税にするということも考えられますが、例えばトヨタの孫請け会社がネジを売った場合、そのネジが国内販売車に使われるか輸出車に使われるか、全くわかりません。インボイス方式の導入をしようが、何をどうしようが、なかなかスッキリと行く決め手が見当りません。
2013/09/29(日) 06:43:49 | URL | 山のキノコ #js83eNAU [ 編集 ]
輸出免税の仕組みは理解しています。制度上、仕組み上、なんら問題のない取引であります。輸出に対しては諸費税を課さないルールに従い消費税を課さないとすることは、それでいいと思います。しかし取引において売り手の原価の内容など買い手にとってはどうでもいいこと。いかに安く調達できるかがポイントです。国内での非課税取引では、非課税であるから消費税を転嫁することはできず、仕入れに係る消費税は負担となっています。輸出取引においても課税はしないが、負担すべきとすることはできませんか。考え方を変えることはできませんか。輸出免税を停止し企業として正当な取引に注力してほしい。その上で、法人税等の負担が過大ならば低減を検討すべきと思います。偏った考え方ですが、ご教授願います。儲けはいらない。消費税が還付されるからつぶれないという輸出業者もいます。
2013/09/29(日) 00:32:00 | URL | #- [ 編集 ]
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