雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(3)直感的に正しく見えることは、必ずしも真ならず。
(前稿からの続き)

【命題】トヨタ自動車は1円の消費税も払っていない。にもかかわらず、毎年2000億円以上もの輸出戻し税が還付されている。これは明らかにおかしい、不公平ではないか? トヨタをはじめキャノンであるとか輸出比率の大きい大企業の幹部が牛耳る日本経団連が、消費税の増率を強硬に主張している理由は、消費税の税率を上げれば輸出戻し税がたくさん貰えてトクするからだ。

●この命題の真偽に関する考察でありますが、ここで、まず、意外に知られていない消費税についての基礎の基礎をおさらいしておきましょう。わたくし山のキノコも税法について全くの素人ですので、自分が消費税について認識を深める為に、消費税法の条文にも目を通し、参考書を何冊も紐といて調べてみました。法令の条文を見るには、総務省の運営する 電子政府の総合窓口 イーガブ(e-GOV) で法令名を検索します。こちらが 消費税法 でありますが、見ていたら頭痛がしてくるので見ない方がよろしい。インターネットは全く玉石混交でありますが、(わたくしも、つまらない路傍の石を増やしています)たまに流れ星のように光る石があるのも間違いありません。で、消費税の基礎を学び申告など実務にもつなげられる推奨サイトは次です。アトラス総合事務所様の 『消費税パーフェクトガイド.com 』 がぴか一です。

●さて、冒頭に掲げた命題の真偽についての考察でありますが、その真偽の判断にかかわるところの消費税の規定を見ていきます。いくつかあるので項目毎に分けて考えます。ただし議論に必要な規定のみを見るのであって、この議論に関係ない部分は一切を割愛します。

1、消費税の「担税者」は最終消費者であるが、納税義務者は「事業者」であります。(消費税法第4条および第5条)事業者というのは個人事業者と法人をいう。(第2条3項)実際に消費税を払う人と、それを税務署に申告納税する人とが、まったく乖離している。(直接税ではなく間接税なので)トヨタ自動車は、エコだ何だと高邁なことを言っているけれども、営利を目的とする株式会社であって明白に消費税の納税義務者であります。

2、日本から外国に輸出するものには消費税が免除される。(消費税法第7条)に輸出免税が規定されています。トヨタ自動車が日本国内で販売するクルマに関しては消費税がかかるのでありますが、外国に輸出するクルマに関しては全く免税で、消費税がかかりません。

3、納税する消費税額の計算には、仕入れ物品に内包している消費税額の控除ができる。(第30条の規定)トヨタ自動車は最終消費者に売りつけたクルマの消費税を国庫に納めるのではなく、売った車の消費税からその製造に必要な部品等に内包している消費税を控除した額を納める。

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★孫請会社は部品を下請け会社に売り、対価の60万円をもらいます。うち消費税は3万円です。その3万円を税務署に申告します。3万円の消費税は下請会社からもらっています。

★下請会社は孫請会社から60万円で仕入れた部品をエンジンなど中間物にして、付加価値を加えて、100万円でトヨタに売ります。うち5万円が消費税です。その5万円は売値の100万円に内包しているから、トヨタからもらっているハズです。税務署への申告は5万円ではなく、仕入れに内包している消費税は控除できるので、5万円-3万円=2万円です。

★トヨタは下請けから100万円で仕入れたエンジンなどの中間物を組み立てて完成車とし、付加価値を加えて、消費者に200万円で売ります。うち消費税は10万円です。その10万円は売値の200万円に内包していますから、消費者からもらっています。税務署に申告するのは、仕入れに内包している消費税は控除できますから、10万円-5万円=5万円です。

★最終消費者はトヨタから車を200万円で買いました。消費税は10万円です。10万円を担税させられました。しかし消費者が税務署にいって消費税の申告をする必要はありません。

消費者が払った10万円の消費税を、トヨタが5万円、下請が2万円、孫請が3万円づつ分散して(計10万円を)国庫に納めています。流通の各段階で(生産の各段階で)分散して国庫に納入してはいますが10万円を出したのはあくまでも消費者です。

●難解な消費税を分かりやすくするために、模式図的な説明に堕してしまいました。現実はこんな単純な構図ではないと思います。しかし、これで消費税の正体は明らかです。
消費税は、最終消費者が負担しています。事業者が負担しているのではありません。 トヨタ自動車も、下請会社も、孫請会社も、1円の消費税をも負担しているのではないのです。消費税を払っているのは実際的にはわれわれ消費者です。事業者に納税義務を課しているために、事業者が消費税を払っているように錯覚するだけです。

●さて、ここでトヨタが外国にクルマを売る場合を考えてみます。消費税法第7条の輸出免税規定により、外国人から消費税を取ることができません。で、車の売値は200万円ではなく税抜きの190万円です。内税ならば200万円×105分の100=190万4762円です。(ま、そんな細かなことはどうでもよろしい)
しかしながら最終消費者から消費税がいただけないのに、仕入れ物品には消費税が内包されています。消費税法第46条の規定にのっとり仕入れで支払った消費税は還付してもらわないと損です。トヨタ自動車には還付申告して取られた消費税を取り返す権利があります。

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【結論】さて、以上で明明白白であります。これ以上検討する必要はありません。冒頭の命題はまったくの100%誤りであります。
トヨタは1円の消費税も払ってないのに、莫大な輸出還付金をもらっていてケシカランと、切歯扼腕・悲憤慷慨して息巻く人やブログが多いのですが、わたくし山のキノコが調べたところ全く何の問題もありません。トヨタも下請も孫請も実質的には1円の消費税も払っていないし、また払う必要もありません。消費税を払っているのはあくまでも最終消費者であり、最終消費者が払った消費税がトヨタや下請や孫請をたんに “素通り” しているのにすぎません。

これは、直感的に正しいと思われることと、実際に正しいこととは異なるという好例であると言えましょう…。本来ならばわれわれ消費者が1年間に物やサービスを消費したレシートを溜めておいて、税務署に申告に行けばよろしいのですが、その納税事務手続きを事業者にさせていることから、事業者が消費税を払っているように錯覚して見えているのであろうかと思われます。

【拙稿はまだ続きます】
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