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雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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本当に記録的だったのか? どうかを検証する。
きろく‐てき【記録的】 の意味は?

[形動] 従来の記録に並ぶ、また、それを上回るほど程度が甚だしいさま。(デジタル大辞泉
従来の記録に並ぶというのは、つまりタイ記録のことです。それを上回るというのは、記録更新・新記録がでることです。記録というのは文字や数字で書き残すということであり、「的」 が接尾についているから、文字や数字で書き残しておく必要があるほど程度が甚だしいことですが、それには新記録かタイ記録ぐらいでなければダメで、たとえばオリンピックで世界新記録はスポーツ新聞で大きく報道されます。書く必要性・ニュース性があるわけです。これが、5位とか9位ではまともに報道もしてくれませんわ! よって、やはり、新記録かタイ記録ぐらいでなければ記録的などとは言えないわけです。

ということで、言葉の意味をハッキリと明らかにして (定義して)、気象関係者が一部の者ですが 「記録的な寒波が来るぞ」 と煽った今回の寒波が、本当に記録的だったかどうかを観測事実を以って検証してみます。



日本本土に所在する高層気象観測所ごとの、500hPa気温の低温ランキング!
高層気象観測データ検索 から、日本本土部分に所在する高層気象観測所ごとの500hPa気温の低い順10傑を抽出、一覧表にしました。ただし、仙台は観測終了していますから除外しています。また、釧路は根室から移転、松江も米子から観測地点を移転していて、厳密には観測統計の連続性が失われていますのでこれらも除外しました。 マスゴミどものお天気番組で有名な気象予報士が登場し、「強い寒気が南下しています」 と解説するとき引き合いに出されることが多い500hPaの高度の気温です。約5000~5500mぐらいの高度ですが一定していません。これは一定高度面での気温測定よりも、一定気圧面での気温測定のほうが技術的に容易であるためらしいのですが、つまり、より低い気温のほうがより低い高度で観測されることを意味します。そのあたりの事情は地上気温と意味合いがやや異なるから注意が要るかも? 報道される上空の気温が強烈な寒気なのか、並みのものなのか、この表の主な数字を覚えておくと判断できそうです。
本土にある高層気象観測所ごとの500hPa気温の低温ランキング

で、今回2017年1月15日09時の観測で、秋田で-46.1度が示現されました。1957年以降60年ほどの観測史上で、堂々の第3位の低温記録であります。では、これで今回の寒波は記録的だったかというと、全く言えません。なぜならば秋田以外の地点ではどこも10傑にすら入っていないからであります。福岡・潮岬・鹿児島では10傑に遠く及びません。この点では、今回の寒波は東北地方を寒波の中心が通過したことが明瞭にわかります。けれども、寒波の中心が通り抜けた秋田でさえも第3位です。過去最低記録を更新したわけでもないし、タイ記録でもないから、言葉の意味からいって “記録的だった” などととても言えるものではないです。


↓ 11日21時の観測データを初期値にして、72時間後の予想。
地上気圧と850hPa気温です。約1500m上空で、-12度の等温線が山陰~近畿中部まで南下を予想しています。
予想図

↓ 14日21時の実況図。
実況図では-12度線が中国地方~近畿中部あたりまで南下しました。気象庁の予想はほぼ正確に当っています。当ったと言っても “記録的” とはとても申せません。この程度であれば毎冬起こっています。本当に記録的な下層寒気がシベリアから流れ込んだ場合には、西日本ほぼ全域が-15度以下になっていますわ。
実況図

↓ 淡路島周辺でも雪雲湧くも、ちょっとの間。
しかし降水量はアメダス南淡でたった0.5ミリ、つまり雪はほとんど降らなかった。14日夜おそくに地面が薄らと白くなった程度で、積雪は1センチにも満たない状況で、期待外れ。 近畿の日本海側や北陸ではそれなりに積雪があったけど、観測データ的には歴史に残る38豪雪などには遠く及びませんでした。 (時間降雪量など局所的には記録更新はあっても、総体的には38豪雪に足元にもおよばなかった)
雪雲湧くも、ちょっとの間

↓ ウィンドプロファイラで観測した毎時の風向風速、静岡
富士山にごく近い静岡の ウィンドプロファイラ観測表 から抜粋借用。旧富士山測候所では現在は風の観測をしていないようなので、替わりに静岡の上空の風の観測を見ると、富士山山頂では-30度以下の酷寒に見舞われた時間帯には、風速30mの強烈な北西季節風が吹いていたと推定できます。
富士山で-33.8度を観測するも、記録的ではない。
富士山の高度では強烈な風
この表の時間帯に富士山で-30度以下を観測しています。15日02時に最低気温-33.8度を記録しましたが、特別に低い値ではありません。富士山の観測史上の最低気温の記録は-38.0度なので、まだ4度以上の距離があり、とても記録的とは言えません。 ちなみに、富士山の山頂は日本一の酷寒地獄で、-30度以下の極低温はシベリアからの寒気移流に際して起こります。つまり、極寒と暴風とのダブルパンチです。旭川の-41.0度をはじめ北海道の極低温は無風状態で強烈な接地逆転で雪面上の空気が冷えて起こりますので、寒さの性質がことなります。極寒と暴風のダブルで体感気温は-50度~-60度ということで、実質的には富士山頂が日本で一番寒い場所であります。日本一は陸別でも旭川でもありません。で、冬の富士山に挑んだ登山者は、装備・技量が十二分じゃないと一発で遭難死です。普通の山登りでは近づけない世界ですね。これも、富士は登る山じゃなくて見る山と言われるゆえんでしょうか?


たった1か所だけじゃねえか! 100ヵ所ぐらい出るのかと思ったわ!

観測史上1位の値 更新状況 からデータを取得しましたが、最新2日間のデータしか閲覧できません。
>最低気温記録更新は1か所だけ

●記録的な寒波が来るぞと、一部の人ではありますが気象関係者が騒いだ割には、なんともお粗末な観測結果です。アメダス観測網で約850ヵ所ある気温観測所で、最低気温の記録更新はたったの1か所だけです。それもタイ記録でしかありません。泰山鳴動してネズミが1匹とはこのことか? 記録的な寒波が来るというから最低でも100ヵ所ぐらいは最低気温記録更新が出るのかと期待しておりましたが、完全に肩すかしであります。 去年の1月24日~25日には西日本で大量の記録更新が出たのと比べると、今回は気温がかなり高かったです。いちいち数字を上げるとキリがないので地上観測データを概観、寒波の底の15日前後の数日の観測データをチェックすると‥‥

・北海道では-30度以下が出現しなかった。-28度とか-29度は数か所あったが、 この程度では毎年冬にはあたりまえのことであって、これはこれで大変な酷寒ではありますが、高断熱・高気密の家屋や、高度に保温性の高い衣装などで常にそれなりの対応をしていて、北海道の人は馴れていると思う。ガタガタ騒ぐほどではありません。

・本州中部以北では、-20度以下は岩手県アメダス 藪川の-22.5度(15日) の1か所だけでした。本当に強い寒波が襲来したら、本州中央高地や岩手県などで-20度以下が沢山出現します。 ちなみに、本州最寒の地として君臨する長野県アメダス 菅平で-13.4度(15日) で、まったく拍子ぬけです。最寒記録の-29.2度に遠く及びません。菅平周辺は関東地方のスキーファンには聖地ともいうべきスキーのメッカでありますが、こんなに気温が高いと雪質が悪くなるのではないか? それに雪道がびしょびしょのシャーベット状になってスリップ事故が多くなるのではないか? 雪道は気温が低くてサラサラのパウダーのほうが滑らないですよね!

・西日本では、-10度を割るところは山口県アメダス 徳佐で-10.5度(16日) だけでした! 西日本最寒記録-20.2度(岡山県アメダス上長田)にまで10度も距離がありまして、余裕しゃくしゃくであります。北日本や東日本より気温が大分高い西日本といっても、強い寒波が襲来すると、九州阿蘇山周辺の高原や盆地をはじめ、中国地方の山間部などで-10度以下やときには-15度以下が沢山出現します。しっかりと寒くならないと、西日本で盛んな日本酒醸造に支障が生じます。ソウメン・切り干大根・ちりめんじゃこなどの品質も悪くなりますね! (鹿児島県で焼酎が盛んなのは、気温が高すぎて日本酒醸造に向かないからです) 


人はだれでも自分の立場・都合で、ものを言う!

●総括するに、これらのどこが記録的なんだろうか?? 結局、これではポカポカ陽気じゃねえか? 今回の冷え込みは例年起こる程度でしかありませんでした。ワイワイと上を下への大騒ぎするほどではなかったわけです。身近なところで、周囲の60代~70代の人々と何人かと話をしましたところ、

「昔はもっと寒なかったけ? つららもよく見たけどなあ、最近は見えへんよね」
「昔はここらでも結構雪積もったけんどなあ、最近は積もらんわな」
「水たまりに氷が張っとたけんど、薄いわなあ。昔はもっと厚い氷が張ったわ」
「寒いときは、もうちょっとシッカリと寒ならんとあかんな」

という返事で、寒さが不十分で不満な返事です。根ほり葉ほりその真意を探りましたところ、シッカリと寒くならないと野菜の値段が上がらないということらしい。寒くないと鍋料理 (野菜需要が増える) もしないし。淡路島南部は周囲が海なので冷えづらく、氷点下5度以下になることは考えにくく、野菜の寒害は軽微です。で、本土の野菜産地が寒波でメタメタにヤラレてほしいという身勝手・自己中心の考えのようです。つまり、人はみな自分の立場や都合が第一でモノを言うわけです。気象庁技官や気象予報士どもも、つまり台風でも猛暑や寒波でも大袈裟に言うほうが都合がいいのでしょう!



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