雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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剣山のハクサンシャクナゲが見頃! (その2)
ハクサンシャクナゲの観察

●四国には3種のシャクナゲが自生していますが、見分け方は簡単です。見分けるポイントは次の通りですが、下表は剣山地について当てはまります。

剣山地でのシャクナゲの見分け方

●ホンシャクナゲとツクシシャクナゲは同じものですが、葉の裏に赤褐色の毛がびっしりとあるものをツクシシャクナゲと呼んでいます。画然と分かれているのではなく、どちらとも言えないような中間型が出てきます。花期や分布標高はおおむねこんなものということですが、徳島県の植物調査をしている人に聞いた話では、徳島県南部に標高50mでホンシャクナゲがあるとのことです。何事も例外はあります。極端なことを申せば、ときには秋10月にシャクナゲが咲く “不時開花” も何回か見ましたわ!

ハクサンシャクナゲは、花冠が5つに裂けています。これがホンシャクナゲやツクシシャクナゲと決定的な相違点です。剣山の亜高山帯のシラビソ (シコクシラベ) の林中に自生しています。キレンゲショウマ自生地付近の岩場にも僅かにあります。個体数は少ないです。厳重な自生個体群の保全が必要であろうかと思います。 なお、登山者から聞いた情報ですが、一ノ森の東側の斜面の尾根上 (標高1500mあたりか?) に花期が非常に遅いシャクナゲがあるとのことです。花期が非常に遅いとのことなので、ハクサンシャクナゲの可能性が濃厚ですが、登山道がない尾根なので吾輩はまだ未確認です。そのうち調査に入りたいと思います。なお、一ノ森ヒュッテの庭に植栽されているのハクサンシャクナゲです。案内なしに自生品を捜すのはかなり困難と思われますので、一ノ森ヒュッテの植栽品を拝見するといいでしょう。

なお、ハクサンシャクナゲは四国では剣山と石鎚山にあり、分布の中心の中部山岳から300~400キロ離れていて隔離分布になっています。四国では個体数が僅かで、生育基盤が弱く、徳島県・愛媛県ともに絶滅危惧Ⅰ類 (兵庫県方式のAランクに相当) に指定されています。林床には実生の子生えが見られますが、見つけても盗らないように。亜高山帯に生育するものを平地におろしても夏の暑さにやられて育ちませんわ! 秋に種子を少し頂戴して播いて育てたらひょっとすると?? 千mの山では行けるでしょうが…。六甲高山植物園 (標高800-830m) ではコケモモなど高山植物が育っています。



【下図は6月28日付記事の再掲】
↓ ハクサンシャクナゲの大まかな分布です。国立科学博物館 標本資料センター標本・資料統合データベース でハクサンシャクナゲを検索、ヒットした188点の標本をメッシュ地図分布で出力しました。石鎚山が抜けているように票本数が足りないし、メッシュも粗すぎますが、まあ、これでおおよその分布域は分かります。
ハクサンシャクナゲの大雑把な分布


剣山のハクサンシャクナゲ
剣山のハクサンシャクナゲ
↓ 右側のものは既に落花しています。この木は樹高4mぐらいもありますが、開花が進んで落花もあり、花は褪色しています。シャクナゲの欠点はこの開花後に花が褪色する (色褪せて白っぽくなる) ことです。これは原種だけでなく交配した園芸種でもそうです。ですが、剣山のハクサンシャクナゲは褪色しても結構桃色で綺麗です。
すでに落花している

亜高山帯針葉樹林の中に、ハクサンシャクナゲがある。
↓ コメツガ (徳島県絶滅危惧Ⅱ類) の上にハクサンシャクナゲの落花です。ピンボケ写真ですが、剣山では標高1600以上では葉が小さいコメツガが見られます。それ以下の標高では葉が大きなツガです。1600mあたりで画然と分かれていて見事な棲み分け・垂直分布が観察できます。
コメツガの上の落花
↓ シコクシラベ (徳島県絶滅危惧Ⅱ類) の幼木です。吾輩の背ぐらいです。クリスマスツリーにちょうどよさそうです。吾輩はクリスマスなどすると破門されますから出来ませんけど、本当にクリスマスツリーによさそうな綺麗な木です。世界三大美樹といえば、ヒマラヤスギナンヨウスギコウヤマキ ですが、前2種は外国の樹木であり、コウヤマキは日本自生で剣山地にも個体数は少ないけど点々と自生します。しかしですね、何を以って如何なる基準で美しいと判定するのか?? 絶対的な基準などあろうハズがなく、その人の主観によりましょう! わたしは抹香くさいコウヤマキよりもシコクシラベのほうが美しい樹木だと思います。 剣山のハクサンシャクナゲはこのシコクシラベやコメツガの出現する高所にあります。 このシコクシラベも標高1800あたりを境にして上にあり、それ以下ではウラジロモミで、さらに1000m以下になるとモミになって、見事な垂直分布が観察できます。
シコクシラベの幼木

花に濃淡の縞模様がある。
剣山のハクサンシャクナゲ
剣山のハクサンシャクナゲ
↓ 5裂する裂片の中央部が赤っぽいです。1つの花の中で濃淡の変化があって、縞模様になっているのが面白いです。
剣山のハクサンシャクナゲ
↓ ご覧のように花冠が5裂するのがホンシャクやツクシシャクと大きく違う点です。花冠の上側の基部 (1と番号を付した裂片のつけね) に緑色の斑点があります。いわゆるネクターガイド (蜜標) が緑色の斑点もハクサンシャクナゲの特徴ですが、白花だったら明瞭にわかるのですが剣山のハクサンシャクナゲは花色が濃いので分かりにくいです。
花冠は5裂する
↓ すでに落花して子房が露出しているのもあります。これが肥大生長して果実になりますが熟すのは10月ぐらい?? 種子を採取してまいて実生苗をつくればひょっとしたら?? 以前に購入した佐渡島のハクサンシャクナゲの実生苗を育てたことがあります。夏の暑さに耐えて5年ほど育ちました。結局、鉢植えのままだったので根詰まりを起こして枯らしてしまいましたが、原産地は大佐渡山地の標高1000mほどです。タネから実生で育てた苗は平地の気候によく耐えます。剣山のものでも種をまいて育てると行けるかも??
すでに落花もある


林床には実生苗がたくさん!
↓ ハクサンシャクナゲ自生地の林床には沢山の実生苗がみられます。散布された種子の発芽率・生存率の良好さがうかがえます。付近の亜高山帯針葉樹林は見事なモス・フォレスト (蘚苔林) で、林床は厚い苔のじゅうたんに覆われています。つねに雲霞たなびく高所なのでしっとりと湿潤で、実生の発芽・生育に最適な環境なのでしょう。この小さなハクサンシャクナゲの子供たちがみな成木まで育ったら、ハクサンシャクナゲだらけで、たきぎざっぱのように密集しすぎます。そこはうまくしたもので、適度な自然間引きが作用しましょう。後継樹の育ちを見るかぎりでは、剣山のハクサンシャクナゲ群落が消えることはなさそうです。 剣山ではシカの食害が問題になっているようですが、シャクナゲ類はシカの不嗜好植物です。じつは、シャクナゲ類はヒトには有毒植物です。
厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:シャクナゲ類
ハクサンシャクナゲの葉をお茶にして飲んだ中毒例があるそうです。また、シャクナゲ類の花から採蜜したハチミツでの中毒も報告されているらしい。養蜂家は気をつけなくっちゃ。

なお、これを見つけても盗ってはいけません。ここは夏でも最低気温13度、最高気温18度で、はるか北方の札幌よりも涼しいところです。(剣山測候所の観測データによる) 下界がうだる暑さでも25度を越えることなどめったにありません。で、気温が違いすぎて、これを平地に降ろしても絶対に育てられません! もちろん吾輩も盗ったことはありません。避暑をかねてお花見に来るだけです。

林床には実生苗がたくさん
林床には実生苗がたくさん



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