雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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亜高山帯のシラビソ林には、巨樹などない
高い山や北方にいくほどに、巨樹が少なくなる
●モミの仲間の樹木は何種類かありみな葉や樹形は酷似しています。樹木や植物に関心がなければみな同じに見えるでしょう。熱心に植物観察してもウラジロモミとシラビソを見分けられないこともあります。シラビソとオオシラビソも似ていて区別しにくいです。元は同じものだったのが棲息する場所の環境のちがいで微妙に異なるものへと分化 (進化) していったのであろうかと思うのですが、いくつかの近縁種が日本列島内で地域ごとに棲み分けています。四国の剣山では海抜が上がるにつれて、モミ → ウラジロモミ → シラビソ (シコクシラベ) と変化します。水平分布では北にいくにつれてシラビソ → トドマツへと変化するようです。 ここで注目するのは、モミの仲間の樹木では、温暖地や低地に多いモミは巨樹が多く、やや高い山に多いウラジロモミは中ぐらいに巨樹があり、高い山や北方のシラビソやトドマツでは巨樹がめったにない、ということです。

モミ属の分布と棲み分け


温暖地域では巨樹が多く、寒冷地域では巨樹が少ない
面積は国土地理院の 平成26年全国都道府県市区町村別面積調 より拾い出した。巨樹数は環境省の (設置場所は奥多摩町森林館であるが) 巨樹・巨木林データベース から検索して調べた。

●ただし、環境省の巨樹・巨木林データベースはいくつかの欠陥があります。上掲の表の (注) で示していることのほかに、二重データが非常に多いです。たとえば 「樹種:スギ」 「幹周:1600cm~」 で検索すると、有名な縄文杉が出てきますが9番と10番とに2つ出てきます。このような重複データが非常に多いです。たぶん、同一の巨樹を、別の人が別の時に調査して報告、重複をチェックせずにそのままデータベースに投げ込んでいるのではないか? よって、検索して得られた巨樹数は1~2割ぐらい割り引いて受け止める必要があります。それから、報告された調査内容で樹種の同定にもいい加減さが見られます。吾輩の住む旧三原町の巨樹は環境省データでは10本ですが、カエデというのが1本あります。これではイロハモミジなのか? オオモミジなのか? 不明です。細かな種名であったりカエデとかヤナギとかマツなど総称 (属名) であったり、まちまちです。これでは樹種ごとの全国統計なんてできません。全国から送られてくる報告を一つ一つきちんと検証しているのかどうか? 非常に疑わしいです。 かなり杜撰なデータベースだと言わざるを得ないですわ。

●ですけれども、これしかないし、そういう欠陥を認識して利用するならばそれなりに価値があると思われます。 でこしらえた下表ですが、北海道は冬にときどき自宅前で暴風雪で遭難死が起こるほどの寒冷地です。巨樹は少ないです。一方、近畿・中国・四国は北海道とほぼ同じ面積ですが、夏に熱中症で大勢が死ぬ温暖地です。巨樹は北海道の17倍もあります。そう単純なことを言うたらあきませんが、その地方の巨樹の多寡は、その地方の気温の高低に依存している可能性が考えられそうな感じはします。


温暖地は巨樹が多く、寒冷地は巨樹が少ない


南限の亜高山帯の針葉樹林を見に行こう!
さて、そういう先入観をもって、徳島県の剣山 (海抜1955m) の亜高山帯のシコクシラベの針葉樹林を観察します。「鑓戸植物群落保護林」 「鑓戸シコクシラベ林木遺伝資源保存林」 という学術的に貴重性が非常に高いといわれている森林を観察に行きました。なお、「鑓戸」 は 「やりと」 と読み、剣山から南東方向へ伸びる尾根上の小高い山名です。国土地理院の地形図には載っていません。


剣山の南東斜面
↑ 一の森の山頂三角点 (標高1879.6m) から剣山を見た景色です。剣山の南東斜面の亜高山帯常緑針葉樹林です。シコクシラベ (シラビソの四国地域の変種) やコメツガやヒメコマツなどの常緑針葉樹の森です。ウラジロモミとシコクシラベは必ずしも画然と棲み分けているわけではなく、結構混在しています。立ち枯れが目立ちます。芝生みたいに見える部分はミヤマクマザサのササ原です。

美しい針葉樹林だ

↓ 剣山と一の森の中間地点の二の森です。二の森という山名は地形図には掲載されていません。地形図上ではここ (+マークの所) です。海抜は1870mか1880mぐらい。このシラビソ林の林床にハクサンシャクナゲが少し見られます。
保護林となっている

↓ このあたりは海抜1800m以上で気温も低く風も強く、植物たちにとっては非常に厳しい環境です。で、成木しても枯れやすく白骨となった樹がたくさんあります。
立ち枯れも多い

↓ シコクシラベの若木です。意外にウラジロモミとの識別は難しいです。葉の裏が白いからウラジロモミというらしいですが、シコクシラベの葉の裏にも気孔帯があってけっこう白いです。で、今年の若い枝をルーペで観察して茶色い短毛があったならばシコクシラベ、毛がなかったならばウラジロモミです。
シコクシラベの若木

↓ 新しい今年の枝がまだ十分に固まっていないので、やや垂れ下がり気味です。独特な美しさです。写真を撮ったのは2015年7月の終りごろだったか?
若枝が垂れ下がりぎみで独特な感じ

この標高の亜高山帯林には巨樹などない!
↓ シコクシラベ林にそろっと入って観察しましたが、太いのはありません。保護林だの原生林だの言うわりには幹が細いものばかりです。巨木などありません。林床はびっしりと苔がはえていて、いわゆる蘚苔林 (モス・フォレスト) となっています。苔むしていて、枝にサルオガセ類がぶら下がり古色蒼然としていますが、幹が細いので原生林というほどではありません。
巨樹などない

四国森林管理局 鎗戸植物群落保護林 の説明看板です。リンクの説明では胸高直径115センチ (幹周は350センチ程度か?) のヒメコマツがあるらしいのですが、特別な例外です。ま、それが最大限でしょう。もし、もっと大きなのがあればその数字を出すハズですから。ま、一の森山頂尾根づたいにもヒメコマツの古木が点々とあり結構太いですが、特別太いのが環境省の巨樹基準にギリギリ達しているというだけです。
説明看板

↓ それにしても一の森や二の森は人気がないです。剣山に来た山登りやハイカーどもは、剣山から先へ足を延ばす場合、10人中9人ぐらいが南西方向のジロウギューへ行ってしまいます。明るい笹山が牧歌的な印象で一般向きするのでしょう。南東方向の一の森方向へは10人中1人かというほど少ないです。しかしながら自然観察や植物観察にはこちらのほうが遥かに見ごたえがあります。
看板中の地図

↓ 剣山測候所 (既に廃止されている) の職員が、昭和40年3月16日に雪崩に遭って殉職しています。一の森の北斜面で故障した通信線修理中の殉職です。新田次郎は申すまでもなく山岳小説家と呼ばれて山を舞台にした作品が多いですが、新田次郎自身も気象庁の職員でした。富士山測候所のレーダードームをこしらえたのは新田次郎の功績ですが、殉職した剣山測候所の職員と新田次郎は何か関係があったのでしょうかね? 気象庁に同期入庁とか?
ここで剣山測候所の職員が殉職した





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