雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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巨樹・巨木というのは、その多くが平野部や人里にあるのであって、深山のブナの原生林にあるのでは決してない。 (その2)
本エントリーの表題は巨樹・巨木に関するものになっていますが、高城山に来た目的は第一にキノコ狩りであったわけですが、ついでと言うか、付け足しにブナ帯の巨樹を観察したということであります。で、本題にはいるまえに先ず観察したキノコの写真を陳列します。

 にしといしごんげん
西砥石権現 (標高1457m) のキノコたち

ツキヨタケ (有毒)
↓ ツキヨタケはブナの枯れ木に生えるキノコで、まずブナにしか生えません。希に違う木に生えることもあり、今回、吾輩はミズメの風倒木に少し生えているのを見てビックリしました。ブナの木が分布していない北海道中部~東部ではイタヤカエデに生えるというから、ブナ以外に絶対に生えないというわけではなさそう。ブナもミズメもイタヤカエデも冷温帯 (ブナ帯) の樹木ですから、瀬戸内地方では平地にはないキノコです。ただし、ブナの木材を平地に降ろして貯木場に置いているとツキヨタケが発生する可能性はあり得るでしょう。ツキヨタケは古くなると傘の表面が紫色~黒っぽくなることが多いです。
自然毒のリスクプロファイル:ツキヨタケOmphalotus guepiniformis (キシメジ科ツキヨタ属)

ツキヨタケのやや古いもの
↓ キノコの柄は短いですがあります。柄とひだの間にすこし隆起したリングがみられます。
ツキヨタケの裏面
↓ 傘をたてに裂くと傘の付け根に黒いしみがあります。ただし、黒いしみがあるのか、ないのか、ハッキリしない場合もあるので、注意がいります。
傘の付け根に黒いしみがある
↓ ツキヨタケの若いものでは紫色っぽくなく、あまり毒々しく見えません。また、古くなっても白っぽい感じのものもあって個体差がかなり大きいから要注意です。「これ食べられるかな?」 と思ったり、ヒラタケやムキタケやシイタケと誤認して中毒事件が後を絶たたないキノコです。これをしっかりと覚えれば、日本のキノコ中毒の半数近くが防げますね。
ツキヨタケの若いもの


スギヒラタケ (要注意)
かつては優れた食用菌でした。出しが良く出るキノコですが、鰹節や煮干しに匹敵するほどの濃厚なダシがでて、味噌汁にいれたらツルンとした食感とダシで非常に美味いキノコでした。吾輩もかつては雲早山の裏斜面のスギ林までスギヒラタケを採りに来て食べていました。ところが2004年に、突如として北陸地方から東北地方にかけて9県から、スギヒラタケが関係すると思われる急性脳症が報告され、新聞で大きく報道され大騒ぎになったのはキノコファンとしては記憶に新しいところです。厚生労働省の集計では2004年中に患者数59人、うちスギヒラタケを食べたことが確認できたのが55人、腎臓疾患を持つ人が51人、死亡者は17人で騒然となりました。それまでは北日本では普通に食べられていたキノコで、南の方でも吾輩のように採って食べていた人もいるハズです。誰もが食用キノコと信じて疑わなかったスギヒラタケから中毒死亡例が出たことは驚天動地の衝撃でした。
自然毒のリスクプロファイル:スギヒラタケPleurocybella porrigens (キシメジ科スギヒラタケ属)
研究者たちにより中毒原因物質の探求が続いているようですが、まだハッキリとは原因は解明されていないようですし、腎臓疾患とスギヒラタケ中毒の関連性が高いといっても腎臓疾患が無い健常者の中毒事例も報告されているようです。どういう場合に中毒するのか解明されたならば、食べても大丈夫な中毒防止法も分かるのですが、当分要注意キノコとして食べるなと厚生労働省も言っています。吾輩は腎臓疾患はないので99パーセント大丈夫と思うけど、知らず知らずのうちに腎機能が低下しているということも考えられ、食べて万一中毒したら、多分お医者様が保健所に連絡し中毒事例として厚生労働省に情報が行くでしょう。 「おまはん、うちのホームページをちゃんと見ているのに食べたんか!」 と叱られましょう。リスクは犯さない、ちょっとでも危ないと感じたらただちに退却がモットーなので、厚生労働省の言い付けは守ります。 

●ところで全くの素人考えですが、スギヒラタケはもともと問題のあるキノコで、食べた本人の健康状態により昔から中毒が起こっていた、けれども中毒症状の発現が遅延性でたべてから数日~1か月もたってからなので、食べた本人も、中毒を診察したお医者様も、よもやキノコ中毒なんて気がつかなかっただけ、ということではなかろうか? スギヒラタケ中毒による急性脳症であっても、お医者様が適当に別の原因あるいは原因不明と診断していた‥、と考えれば色々な疑問がうまく説明できてしまいます。たとえば何故2004年に突如としてスギヒラタケ中毒が出現したのか? 大きな疑問ですが、洞察の優れたお医者様が中毒とスギヒラタケの相関性・因果関係に気付いたということでしょうね。

いまではスギヒラタケは毒キノコ扱いですが、でもまあ、ほんまに、これの味噌汁は美味かったよな、勿体ないなあぁ‥。と、未練たらたら。北日本じゃまだ喰っている人がおるんちゃうか? ちなみに、英名ではスギヒラタケには エンゼル ウイング (天使の翼) なんていう素敵な名前がついています。

スギヒラタケ
比較的に小さなキノコです。裏側を観察するとひだは緻密です。
スギヒラタケ裏面


ヌメリツバタケ (食べられる)
あまり見栄えがせず積極的に採集されるキノコではありませんが、夏から秋にブナの風倒木などに出る小型のキノコです。柄は堅いので傘の部分だけ食べます。傘はぬめりがあって食感はいいのですが歯ごたえがありません。ヌメリツバタケはキノコ自体にあまり味がないので、濃い目の味噌汁に麩の替わりに浮かべると良いでしょう。山小屋 (たとえば剣山頂上ヒュッテとか) の朝食の味噌汁に入れたら登山者が喜ぶのではないかな?
ヌメリツバタケ


ブナハリタケ (食べられる)
ブナの風倒木などに瓦重ねにびっしりと生える白く清楚なキノコです。乾燥する尾根筋ではなく湿った谷筋に発生します。スポンジのように水をたっぷりと吸いこむキノコで、たくさん採取した場合は手でギュッと絞ると重量は5分の1ぐらいになって持ち運びにいいです。キノコは柔らかいですが強靭で、絞ったからと言って潰れることは全くありません。水を吸うと元に復元します。風倒木にびっしりと生えるキノコなので、見つけたら収量は多いです。 このキノコの特徴の一つは、なんといってもその香りです。マッタケの香りとは異なりますが、マッタケと同じ香り成分も含んでいて、なんとなくマッタケ似の強い香りがします。甘酸っぱいような香りで、沢山生えていれば10mぐらい離れていても香りがしてきます。
風倒木などにびっしりと生える
ご覧のようにキノコの傘の裏側は針状の突起がびっしりとあります。柔らかいので触っても痛いことはありません。
裏面には針状の突起が無数にある

●むかし、もう30年近く前のことですが、高城山で採ってきたブナハリタケとムキタケを、そのころ知り合いだった北海道出身の板前さんに渡しました。彼はこのブナハリタケを見て 「おお、これ北海道にあったわ、子供の頃食べたよな」 と喜んでブナハリタケは佃煮にすれば美味いんだと、佃煮にしてくれました。ブナハリタケの強烈な香りが時間をかけて煮締めることでほどよい香りとなり、ぼそぼそとした食感が滑らかな感じになって、プロ料理人の手にかかると欠点が長所に転じて、美味い佃煮になりました。という過去の個人的ないきさつがあって、吾輩はブナハリタケの佃煮がすきなのですが、何故か近年は高城山ではブナハリタケが非常に少なくなりました。籠に何杯も大量に採って塩漬けで保存したのも遠い昔になりつつあります。ブナハリタケに血圧降下作用があることが確認されています。大量に一年分採って塩漬で保存、年中食べると高血圧の人にはいいのですが、高城山であまり採れなくなったのは何故だろうか? (観察・考察していますが理由がハッキリしません)

地下足袋王子さんもブナハリタケを採取された。
ようです。ファガスの森 高城の管理人で、高城山の悟空・森の番人といわれる地下足袋王子さんが2時間かけてブナハリタケというのは、高城山のキノコの不毛を物語っているかもしれません。昔は、25年とか30年前にはヒラタケ、ムキタケ、ヌメリスギタケ、ナラタケ、地面に生えるホウキタケなどどっさりと採れました。もう少し遅くにはナメコもありました。長年この山域を訪問してキノコ狩りをしている目には、豊饒のキノコ山がキノコ不毛山になったように思えてなりません。なぜ、それらが激減したのでしょうかね?



疑似的マッタケ風味のエビ入りブナハリタケごはん
ブナハリタケは香りが強いので大量には入れません。天然キノコはゴミが付着していますから、よく掃除をして悪いところは思いきって切除します。半分捨てるぐらいでなければいけません。ここが栽培品と違うところです。それから天然キノコは虫が入っていることが多いから、一つ一つていねいにチェックします。
材料のブナハリタケ
ブナハリタケは水分をふくみやすいから、ぎゅうっっと絞ります。でないと、ご飯を炊くときの水加減が狂います。写真のように細かくカットします。
細かくカットする
材料はブナハリタケ、えび、ニンジン、油揚げです。ダシは、利尻昆布を使います。また放射脳を申すのですが、日本海側の利尻島は放射能の心配が少ないからです。太平洋側はパスですわ。それから香川県 伊吹島産の煮干し。
出来上がり
↑ 吾輩のこしらえた作品です。疑似的マッタケ風味の香りが高く、エビがたくさん入っていて、自画自賛ですがとても美味いですよ。毎年秋になったら、必ずブナハリタケを採りにいってこのブナハリタケご飯をこしらえています。


本物のマッタケはなかった。
ふつうマッタケはアカマツ (赤松) の林に出ます。瀬戸内地方の常識ではそうですが、じつはマッタケはアカマツ以外にも出るんですわ。中部山岳の山ではツガによく出てくるので、ツガマッタケと呼ばれています。徳島県の山のツガ林でも時にはツガマッタケが出てきます。しかし今回は尾根のツガ林を相当歩きましたが見つかりませんでした。ま、そう簡単にマッタケが採れたらマッタケの値打ちがないわけで‥。

↓岩の多い 尾根筋は乾燥するのでブナではなくツガ林になることが多いです。
尾根筋のツガ林
↓ 大木は意外に少なくようやく見つけたツガの巨木。
ツガの大木
↓ 根回りはかなり大きく、巨木の風格を感じさせます。
根周りはかなり大きい
↓ しかし、環境省の巨樹・巨木林調査マニュアルに従って計測すると2m79センチです。巨木の基準の3mに足りません。たぶん、山中をすべて調べれば3m超はみつかるでしょうが、今回歩き回った範囲内では3m超のツガの巨木なんて1本もありませんでしたわ。
幹周2m79センチ



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