雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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夏のお花見に行こう! 剣山のキレンゲショウマは人気沸騰!(その3)
キレンゲショウマの観察をします
観察日は2015年8月7日午前9時~12時。観察場所は剣山の山頂直下、北東斜面で通称 「行場」 といわれる石灰岩のガレ場。観察者は山のキノコ。なお、『天涯の花』 で浮かれた観光客が大勢きたから落ち付いて観察が出来ませんでした。花の構造を詳細に観察するには現場でのルーペ観察だけでは不十分で、花を数個採取して持ち帰り、実体顕微鏡で50倍くらいで花の解剖をしながら観察したりスケッチすることも必要ですが、大勢の観光客の手前、標本にする分の採取もはばかられる状況でした。で、観察は全く不十分としか言いようがありません。それにしても、来る人すべてが単にカメラやスマホで写真を撮るだけです。写真を撮るだけでは何ひとつ観察していないことに気付いてないわけで、つまりこの国の昨今の自然志向とか環境ブームなんて全くのニセモノということです。うさんくさい環境保護団体や、経済至上主義の商売人どもがエコ、エコと煽っているだけにすぎません。そのエコも 「ecology」 のエコではなく、 「economy」 のエコなのです。全くまやかしのインチキ。


【草姿の観察】
↓ 地上茎をかき分けて地面をみたら、狭いところから複数の茎 (3~8本ぐらい) が立ち上がっています。で、おそらく地下茎とか塊根とか何らかの栄養器官が地中にあって、そこから地上茎が出ているように思われます。よって、地上に見えている茎が1本で1個体ではなく、3~8本のひとかたまりのものが1個体ではなかろうか? しかしながら、詳細は半日がかりでひと塊の根系を丁寧に掘り上げてみないと分かりません。文献では「短く肥厚した根茎がある」としていますが、どのようなものか? 掘って確認しよったらたぶん怒られるでしょう‥。
草姿全体

↓草丈は70~130センチで、概ね1mといったところ。 直立する茎はまっすぐで枝分かれがありません。茎は鉛直方向に立ち上がるのではなく、斜面の傾斜角度に対して直角に立ち上がっています。つまり斜面下方にむかって斜めに立ち上がっています。あるいは斜めに倒れています。葉は、5~6節に対生で2枚づつつき、上部の2節の葉には柄がありません。茎の下部の3~4節の葉には葉柄があります。葉柄は基部ほど長く、上部のそれは短い傾向です。
1本の茎を見ると

【葉の観察】
↓ 葉は、掌状で7~10ぐらい浅裂しています。葉の縁には鋸歯があり鋸歯の先端はトゲ状に尖っています。葉の大きさは柄のあるもので20~30センチ程度です。柄のないものでは10センチ程度。かなり大きな葉です。葉の表面には光沢はありません。ルーペで見ると葉の表面に小さな短い線状の毛があり、葉脈上では毛がやや多いです。葉脈は葉身の基部から放射状に延びますが、途中で枝分かれしています。
葉の様子

↓ 葉の裏面は、表面よりもやや色が薄いかなと思います。葉脈は裏面側に明らかに出っ張っています。裏面の葉脈の先端は、葉の裂片の先端まで明瞭に伸びています。(葉の表面ではやや不明瞭) 裏面にも小さな短い線状の毛があり、葉脈上で毛がやや多いです。変わった特徴として、葉の葉身の基部というか、葉柄の最上部が色か濃く黒っぽくなっています。
葉の観察

↓ なぜなのか葉柄の基部が黒っぽいです。その部分の茎も黒っぽいです。葉柄にも茎にも毛は見られません。葉腋に小さな葉が2枚ありますが、これは一体何なのか? 昔キレンゲショウマの茎には枝があったが、進化の長時間のなかで退化してしまったとか?
茎および葉柄

【花の観察】
↓ キレンゲショウマの典型的な集散花序であります。花柄を便宜的に大花柄・中花柄・小花柄と分けて考えると、通常は中花柄に3個の花が着くようです。生育が良ければ3個のようですが、生育がかんばしくなければ1個とか2個になるようです。
集散花序の様子

↓ 花の長さは開花したもので4センチです。20個ほど測ってみましたら3.5~4.5センチの間におさまっていました。花の色は黄色です。レモンイエローではなく濃い目の黄色です。花は半開きに咲き、平開することはありません。花弁は5枚あり、スクリューのように、あるいは風車のように螺旋状の形になっています。花は1つの花に雌蕊も雄蕊もある両性花で、雌性先熟か雄性先熟か不明。花は動物媒介花で写真でもマルハナバチ類が来ています。
キレンゲショウマの花

↓ 雄蕊 (おしべ) は15本あり、花糸の長短があります。雌蕊は花柱が3個あり合着せずに分かれています。雌蕊の花柱は果期まで残存するみたいです。個別の花は1日花ではないと思いますが、個花の寿命は不明です。群落全体では花期は7月下旬~8月中旬ぐらいか? ある程度の幅はあるようで、同時に蕾も若い果実も観察できます。
花

【若い果実の観察】
↓ すでに若い果実ができかかっています。めしべの花柱が角みたいで独特な形です。つのは3本ですが、4本のものも1~2割の高頻度で出現するようです。子房は3室から成るようですが、1~2割の出現率で4室のものも出ることになりそう。子房はほぼ球形で、宿存するガクが張り着いています。ガクはガク裂片が5つあり三角形をしています。
若い果実


なぜ全ての花が斜面下方を向いているのか?
●ネットを見ていたら、「剣山のキレンゲショウマの花が全て斜面の下の方を向いている、例外が一切ないわ、不思議だよね」 と言っている方がいました。妙なことに不思議がる人もあるんだなあ、と不思議に思います。べつに不思議でも何でもありません。なぜなのか吾輩がお答えします。誰かが 「下を向け、下」 と号令をかけているのでもありません。ちょっと観察したらじきに分かります。キレンゲショウマの茎や集散花序の構造から必然的にそうなっているだけです。

花はすべて斜面下方を向いている

●キレンゲショウマは斜面に生じています。急傾斜地です。で、茎は真っ直ぐに鉛直線方向に立ち上がるのではなく、斜めに立っています。そもそも地上茎が傾いて生えているのです。それから、集散花序の花柄は細くて軟弱です。強健で太いわけではありません。花柄が細いのに、花柄の先端に着く花は相対的に大きく重そうです。細い花柄では支えきれません。花柄が重い花を支えきれないと花は下を向いてしまいます。株全体が斜めに傾いていますから、茎の先端にある集散花序全体が重力に引かれて下を向いてしまいます。これが剣山のキレンゲショウマの花がすべて斜面下方を向いている理由です。なんの不思議もありません。 ではもし平坦地にキレンゲショウマの群落があったならば? どうなるのかですが、茎の先部分は重い花を支えきれずに曲がるでしょうが、微妙なことであっち向き、こっち向きとなるでしょう‥‥。

花は皆下を向く


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