雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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樫戸丸 (標高1566m) のオオヤマレンゲを見に行った (その6)
樫戸丸に自生するオオヤマレンゲの観察
なお、これは樫戸丸に自生するオオヤマレンゲの個体群を観察したのであって、当然ながら産地が異なれば、形質に違いがある可能性があります。(ま、別物になるほどは違わんでしょうけど)

↓ オオヤマレンゲの蕾。おそらく生薬 「辛夷」 になるハズと思う。
つぼみ

●たぶん、恐らく、オオヤマレンゲの蕾も生薬になるハズです。モクレン科モクレン属の樹木の花の蕾は、乾燥させたのち煎じたり粉末にして服用すればクスリです。鼻づまりとか鼻炎や蓄膿症などによく効きます。タムシバ・コブシ・ハクモクレンの蕾を乾燥させたものは辛夷 (しんい) という名の生薬で、厚生労働省がが発表するクスリの規格基準書の 『日本薬局方』 に掲載されています。中国では辛夷の材料に紫色のモクレンや、ボウシュンカなども使われるようで、要するにモクレン属の樹の蕾はみなクスリということであります。オオヤマレンゲもタムシバやハクモクレンと同じモクレン科モクレン属の樹木で、葉も花も良く似ています。絶対に効くハズです。が、オオヤマレンゲの自生する県ではすべてレッド・データ種あつかいです。絶滅危惧種の花の蕾を採るわけにはいきません。 吾輩は鼻が悪いのですが (鼻の粘膜の機能亢進という耳鼻科の説明)、耳鼻科の薬や市販薬も副作用がキツイです。 「辛夷」 は効きかたが穏やかなので手放せませんが、これは漢方薬局で買わなくても自給自足できるクスリです。自分が管理している法人の敷地にハクモクレンがあるし、どこの公園にもあって失敬しています。徳島県の山では中間温帯あたりにタムシバがあるので採ったこともあります。ただしタムシバは花が咲いたら目立つのですが、蕾の段階で見つけるのは難しいです。

↓ 第十六改正日本薬局方に掲載される 「辛夷・シンイ」 の記載です。1527ページから借用した。モクレン属の花の蕾はみなクスリです。
日本薬局方に載る 「辛夷・シンイ」

↓ 花被片は9枚ありますが、そのうちの外側 (写真では花柄側) の3枚はガク片です。内側の6枚が花弁ですが、ガク片と花弁があまり違いがありません。よく観察すると、ガク片のほうが僅かに小さく、幅も僅かに狭く、花弁より反りかえっています。たしかに微妙に違いがありますね。
ガク片は3枚

↓ 開花直後の雌性期の花の状態。中央のめしべ群 (15個ぐらいあるか? 合着しています。) の花柱が指をひろげるように開いて花粉を受け取れる体制を整えたようです。 おしべ群はまだ花粉を出していないから、明らかに雌性先熟 (しせいせんじゅく) です。雌性先熟や雄性先熟 (ゆうせいせんじゅく) は自家受粉を避けるしくみとされていますが、その説明では説明しきれない疑問も言われています。詳しくは学外に公開されている 福原先生の植物形態学講座 「雌雄異熟」 を受講しましょう。
花のアップ

↓ 開花してしばらくした後の雄性期の花の状態です。まん中のめしべ群の花柱は閉じてしまいました。その下のおしべ群は逆に開いています。開花後時間が経ってきたからガク片が茶色くなりかけています。花の終焉が近付いています。群落の中に、花が少ないと言ってもそれなりにあるので、メス期の花とオス期の花が同時に観察できます。もし、花が1個しかなかったならば開花から落花まで何日もテントを張って観察しなきゃならんです。
開花

↓ 雄性期の花の状態ですが、めしべ群の下に多数のおしべ群があります。たぶん100個ぐらいあるか? おしべはクリーム色で先端が紅色を呈して面白い色合いです。めしべが沢山合着している様子や、その下にある沢山のおしべはモクレン属独特の花の構造ですわね。観察するのはここを観察すべきなのに、ほとんどの登山者たちは花弁 (花の構造によっては花被片とか花冠など) の華やかな部分しか見ていないような気がします。
めしべ群の周囲に多数のおしべ群

↓ 若い果実です。花期が1か月ぐらいの幅があるのでしょうか? 早く咲いた花はすでに落花して果実ができている、遅い花はまだ咲いている、それどころか蕾もまだあるわ、という頃がじつは植物観察の適期です。ここが単なる物見遊山のお花見とは違う点です。○○山でオオヤマレンゲが咲いたよ! と登山者たちがブログや掲示板で開花一番乗りを競っているのは、単なる物見遊山です。本当に自然観察するには登山者たちの話題が一巡した後に行くものなんです。多くの人々は勘違いしています。ただし、理想的には毎週とか毎日そこへ行けたら一番いいのは申すまでもありませんが、自生地のすぐ近くに住んでいる人しか叶いません。もし毎日見に行けたら、たとえ素人であっても、専門家にもできない克明な記録ができますね。
若い果実

↓ 葉は互生です。葉の表面には光沢がありません。葉の大きさですが、一番大きなもので吾輩のてのひら大 (縦18センチ横11センチ) です。大部分の葉はそれより小さい。
葉は互生

↓ 葉脈はハッキリしています。まん中の主脈から45度ぐらいの角度で側脈が出ていますが、側脈は6~7対あります。側脈の先端は葉の縁まで達していなくて不明瞭に終っています。
葉脈は明瞭

↓ 葉の裏面では葉脈はハッキリと出っ張っています。葉の表ではややへこみ加減です。葉の縁には鋸歯 (ギザギザ) はなく、ゆるやかに波打っています。
葉脈は裏面で出っ張る

↓ 葉の裏面には非常に毛が多いです。葉脈上には特に多いようです。葉の表面には毛はなさそう。この毛がどのような形状の毛かは、うっかりルーペを忘れたから観察できなかった。
裏面には毛が多い

↓ 樫戸丸のオオヤマレンゲ個体群は、あまり樹齢が古くはなさそうなブナ林のギャップの中にあります。ここのオオヤマレンゲはあまり樹高がなく、せいぜい1m半ぐらいです。若齢の樹ばかりということもあるかもしれないし、あるいはここのオオヤマレンゲは枝ぶりの水平方向への開張性が高いのかもわかりません。調べないと分かりませんが、フェンスが張られた保護群落ですので侵入するわけにはいきません。フェンスの中はオオヤマレンゲが優占していて他の植物はあまりありません。
自生地はブナ林の中のギャップ



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