雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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高城山の植物 アケボノツツジ
5月5日に徳島県の高城山(1632m)で観察した植物を少し陳列しておきます。

シャクナゲの次に美しいアケボノツツジ
●シャクナゲは 「深山の麗花」 とか 「花木の女王」 とか称され、シャクナゲを凌駕する花は他には存在しません。シャクナゲの美しさの前には、どんな花でも何だか物足りない感じです。そんなシャクナゲには及ばないものの、次善の美しさを誇るのがアケボノツツジと言えましょう。この時期 (5月の連休前後) 四国の山々ではアケボノツツジ見たさの登山者や花愛好家で、アケボノが自生する山は大いに賑わいます。

●でも、徳島県の住民じゃない他所者の吾輩が言うのは気が引けるのですが、近年アケボノはずいぶん減りませんですか? むかし、吾輩が20代のころブナ帯の植物を学ぶために、足しげく雲早山周辺に来ています。まだ鳴門大橋などなく、高城山へのスーパー林道もなかったころです。そのころ雲早トンネルの上の尾根にも、いたるところどこでもアケボノが沢山あったように記憶しています。5月の連休ころにはアケボノだらけだったように思うのですが、近年は特定の尾根とか岩場にしか見られなくなってきたという印象がしますが、私の記憶違いということもあるかもしれません。昔は、高城山の山頂南側でも密生したスズタケで、背丈を越えるスズタケの藪こぎで難儀したものですが、今じゃ明るい草原みたいになっていますね。山はどんどん変化しているように思います。もしアケボノが経年的に減っているという私の記憶が間違っていなければ、減っている要因は 「遷移の進行」 でありましょう。なぜならば、ブナやウラジロモミなどの鬱蒼とした自然林にはアケボノが無いからです。これからはアケボノだけでなくトサノミツバツツジやツルギミツバツツジやシロヤシオなど色々なツツジ属植物が次第に減るのではないか? 岩場とか痩せ尾根など、大木が育ちにくいところに少し残るだけでしょうかね?


アケボノツツジ


アケボノツツジ


アケボノツツジ

アケボノツツジの観察】 肩がこりそうですが、少しは形態学的な観察もしましょう。 

●花は枝先に1個着きます。花には1~1.2センチの花柄があり、花柄には毛がありません。花柄は柔軟で良く動き、風が吹くと花がひらひらと揺れます。それで、樹に桃色の蝶が無数にいて羽を動かしているように見えます。なんとも不思議な光景です。 花冠は径5センチ程度もあり結構大きな花で、5深裂していますが、裂片は円形で先端がややくぼんでいます。花の形状や色から受ける印象は、丸くほのぼのと温和なというイメージがしますね。雄蕊 (おしべ) は10本あり長短まったく不揃いです。花糸 (おしべの柄) は基部には毛が見られますが、花糸の上部には毛がないです。子房 (やがて果実になる部分) には毛がなくすべすべです。子房と花冠基部との位置関係は 「子房上位」 です。なお、花糸の毛の状態とか花の大きさなどは、個体によってある程度の差があると思いますが、写真に撮った1個体だけをルーペで観察しました。また、申すまでもなく、花は葉の展葉よりも先にさきます。葉が出るまえに花が咲くから、花が樹を埋め尽くさんばかりに咲いたら非常に豪華なツツジです。

●樹高はかなりなものです。古木で大きなものは7~8mぐらいありそうな感じです。幹も径20センチを越えるようです。南高城山 (+マークのところ、標高約1570m) の山頂から南西に下がる尾根の1410mのピークに大岩があり、巨大なアケボノツツジの古木があると聞いていますが、160mも降りて登り返さんなんので見ていません。あたいは登山家じゃないさかい、そんだけ降りたり登ったりなんて、ようせんわ。アケボノツツジの古木は幹の樹皮が縦に割れて、剥がれるようであります。アケボノツツジの生育地は大雑把な傾向として、岩角地 (岩場)、痩せ尾根、急傾斜地で、土壌が浅く、水はけが良く乾燥しやすいところです。他樹とくに大木になる樹種が育ちにくいところのようです。大木が育ちにくいところというのは、光環境がいいところです。つまり、アケボノツツジは陽樹の性質を示しています。土壌が厚くて大木が育つところではアケボノツツジは競争に敗れるのかな? で、あえて条件の悪いところを選んで生えているように思われます。あるいは、普通の樹木には生育条件の悪いところでしかアケボノツツジは生き残れないということか? だとすればアケボノツツジが減っていくのは必然です。

●この山域でのアケボノツツジの分布高度は広いです。1000mぐらいから高城山の山頂付近まで見られます。石鎚じゃ山頂付近にあるから、ブナ帯~亜高山帯が分布域でしょうかね。水平分布は紀伊半島南西部~四国のようです。三重県以東では変種のアカヤシオに変わるとされるのですが、むかし東海地方に住んだころ鈴鹿山脈にある御在所岳にアカヤシオのお花見によく行きました。で、アカヤシオの方を先に見ていたから、四国のアケボノツツジを見て 「四国にもアカヤシオがあるじゃねえか」 と誤認したものです。 ちなみに、我が兵庫県にあるものはアカヤシオで、姫路市の奥にある 雪彦山笠形山 が兵庫県内のアカヤシオの名所であります。



細かく、細かく分類するのは、一種の分類研究利権なのかも??
アケボノツツジと、その変種のアカヤシオはどう違うのか? 吾輩のような素人には全く見分けがつかないほど酷似していますが、確かにアケボノの花柄には毛がないですわね。つるんとしています。(アカヤシオには毛がある) しかしながら少なくとも20倍のルーペで見るか、詳細に観察するには実体顕微鏡で50倍で観察するハナシです。あたしは一応植物の分布調査をする会の泡沫会員になっているからポケットに常にルーペを携行していますが、一般の花見客には毛があるとか無いとかどうでもいいような僅かの違いです。専門家たちから叱られるのを覚悟で申すと、これはある種の利権ですわ!

植物の僅かな違いを見つけて、別種あるいは変種あつかいにすれば植物の数をドンドンと増やせますよね。すると分類学の研究対象が増やせます。論文を書く材料が増やせますわね。その研究者の業績評価はいかに沢山の論文を発表したかが大きな基準になるから、研究対象の植物の数が多ければ多いほどいいわけです。で、母種が1つでも、僅かな違いでドンドンと細かく分けて、やたらと変種や品種を沢山作るわけなんですわ。ようするに分類利権ですわね。ま、どんな分野でもそうでしょうが、ていよく言う言葉の裏には、自分たちに巧妙に都合よく利益誘導する思惑がひそんでいるものなんです…。


アケボノツツジ

アケボノツツジ

↓ アケボノツツジの古木の幹の樹皮。
アケボノツツジの古木の樹皮


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