雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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ダケカンバの樹皮は何のために剥がれるのか?
樹皮がはがれ落ちるダケカンバ
「根周り穴」 とか 「根開き」 の話題をしようとするのではありませんが、ここは剣山の北斜面です。海抜1870mぐらい。終日陽が当らない北斜面です。しかしながら派手な 「根周り穴」 が出来ています。したがって、樹木の幹に陽が当たって幹の温度が上昇し、幹の周囲の雪を溶かすといわれている通説は説得力を失います。しかしながら今回のエントリーはそういう話題ではなく、樹木の樹皮が剥がれるのは何のためなのか? という話題ですので、「根周り穴」 の議論は横に置いておきます。 下の3葉の写真は、2015年4月8日の剣山山頂直下のダケカンバ林です。細かなことを申すと、四国山地や紀伊半島の大峰山系にあるダケカンバは変種のアカカンバだとされています。しかしそんな細かなことは本エントリーの話題にはどうでもいいので、ダケカンバという表記で行きます。
ダケカンバの林

ダケカンバの樹皮は、薄い紙程度の厚さの薄皮が次々に剥がれます。はがれ落ちた樹皮が雪上を汚しています。春の残雪ですから雪が汚れていますが、白い雪の上に落ちた赤っぽいダケカンバの樹皮はよく目立ちます。
樹皮が剥がれて、雪上を汚す

↓ 顕著に樹皮が剥がれている個体を写真に撮りました。樹皮が剥がれると言っても本当に薄い膜のようなものが剥がれています。
樹皮が派手にはがれる

●樹皮が剥がれるのは何のためか? という疑問には、まとわりつくカズラやコケや地衣類を払い落すためだ、という説明がしばしば行われます。たしかに一理あります。下の写真は2014年10月5日に高城山で撮ったものですが、カズラ (ヤマブドウ) に樹冠を覆いつくされて結構大木が枯らされてしまっています。ただし、枯らされた樹はヤマブドウの蔓や葉に隠れて見えません。樹木にまとわりついて登るカズラは、ヤマブドウだけでなくサルナシ・ツタウルシ・イワガラミ・ツルアジサイなど色々あります。そういうものが幹にまとわりついてきたならば、登ってくるなと、樹皮をわざと剥がれ落として、うるさいカズラやコケ・地衣類を一緒に払い落としているんだという説明なのですが、たしかに合理的な説明のように見えます。しかしながら本当なのだろうか? 


樹冠がカズラで覆われた木は枯らされる!
カズラに被陰されると枯らされる


ブナの樹皮ははがれないので、地衣類の天国だ!
コケや地衣類がびっしりと付着するブナ

●ところが樹皮が全然はがれない樹が存在するのも事実です。典型例はブナです。ブナの本来の樹皮は白っぽくて貴婦人のような美しさがあります。特に北日本や日本海側のブナは白くて綺麗でシラカンバと見紛うほどです。ブナはなかなか樹皮が剥がれて落ちないので、ブナの幹の樹皮の上にはコケや地衣類がびっしり付着しています。いろいろな地衣類が付着して色々な紋様を描き、まるで望遠鏡で見た月面みたいです。ブナはコケや地衣類の付着を歓迎しているように見えます。コケや地衣類の付着を嫌がっているようには見えません。

●生物の身体を観察すると、その組織や器官のみならず生理や習性にいたるまで実に “合目的的” であると言えます。ほとんど例外なく 「~のために」 という目的がありそうに見えます。たとえば、われわれの目という器官は精密なカメラ眼でありますが、可視光線の波長帯を感知して外部環境を捉えています。夜間になると暗くて可視光線ではダメなので、動物によっては赤外線カメラを発達させているし、漆黒の闇で障害物の多い洞窟にすむコウモリはなんと超音波カメラまでもっています。ヒトも生来目が見えない場合には、聴覚が異常発達して、障害物がある場所を歩く時、自分の足音等の反射を聞いて障害物を “見る” ことが出来る人もいるようです。後天的な音波カメラの獲得か? とも言えましょう。これらは全て外部環境の様子を知るためという明確な目的があります。

●さて、ダケカンバの樹皮がなぜ剥がれるのか? ということを考えた場合、生物の器官や行動は全て目的があるハズだという目でつい見てしまうから、幹にまとわりつくカズラや地衣類を払い落すためだ、なんていう発想になってしまうだけではなかろうか? というのは、そもそもダケカンバの根元に振り落とされたカズラなど見たことがないからです。それに、樹木が生長して幹が太くなっても樹皮が全然剥がれない木も沢山あるからです。ブナやツバキが典型例ですが、樹皮が剥がれないからといって困るようでありません。幹や枝に沢山の地衣類や着生植物を寄生させていて、なんら不都合でもなさそう。かりにツル植物に寄り付かれても、そのツル植物よりも高く枝葉を茂らせていたら枯らされる心配はありません。逆に自分が枝葉をびっしり茂らせたら、取りついたツル植物が被陰されて生長できなくなります。ツル植物との戦いはあるでしょうが、それは陽光を奪い合う戦いであって、それは樹皮の剥離とあまり関係ないのでは?

普通に考えたら、樹木が生長して幹が太るとき、樹皮の下にある形成層の働きで新しい樹皮がどんどん作られ、古い樹皮は幹が太るにつれて外側に伸びていくハズだと思うのですが、ゴムみたいに伸びるわけじゃなかろうから、ひび割れて亀甲状であったり縦に裂けたり、いろいろな紋様が生じます。そして古い樹皮はやがて剥がれ落ちてしまいます。マツ類なんかは典型例で、亀甲状に樹皮が割れていて手で触るとポロリと剥がれおちます。大なり小なり樹皮が剥がれ落ちるのは当たり前で、目立つか目立たないかの違いのように思われます。樹皮が全く剥がれ落ちない樹種もあるんですが、そのばあい古い樹皮がひび割れていく時、そのひび割れの間隙を新しい樹皮が素早く埋めるのではないか? で、剥がれ落ちない? 冒頭の疑問 (設問) の 「ダケカンバの樹皮は何のために剥がれるのか?」 ですが、吾輩の拙い観察と考察では、別に何々のためにという目的などなく、その樹の樹皮の生育様式に従ってたんに剥がれ落ちているだけ、という結論にいたりましたわ。  (でも、まあ、間違っているかもわかりません。)



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暖温帯で一番よく樹皮がはがれる木は、バクチノキか?
ダケカンバは冷温帯~寒温帯に分布する樹木ですが、淡路島全域が属する暖温帯で樹皮が剥がれ落ちることで有名なのはバクチノキです。おそらく、樹皮が剥がれることでは暖温帯の樹木ではトップではないか? そもそもバクチノキという和名自体が樹皮の剥離に関係しています。樹皮が次々に剥がれ落ちることをバクチ打ちにたとえています。バクチ打ちが勝負に熱中するあまり身体がほてって暑くなり、衣服を1枚づつ脱ぐことに似ているというのです。

↓ バクチノキの若木では、樹皮の剥がれがまだ少ないです。
バクチノキの若木

↓ 樹皮が剥がれた直後は白っぽいです。
樹皮の剥がれた跡は白い

↓ バクチノキは古くなると赤褐色というか赤銅色となってきます。古い樹でも樹皮はよく剥がれます。
古い樹になると赤銅色になる

↓ 剥がれ落ちた樹皮をザルに盛りました。初夏から梅雨ごろに樹皮がよく剥がれて落ちてきます。観察している小1時間の間にも、4回幹の上の方から剥がれた樹皮が音を立てて落ちてきましたわ。梅雨ごろにバクチノキの大木を訪れると、根元の周囲に剥がれ落ちてきた樹皮が積もっているのをよく見かけます。樹皮は腐植しやすく、黄色~赤褐色の積もった樹皮が異様な光景をみせます。
剥がれ落ちた樹皮

●バクチノキは淡路島の南部の山岳地帯の裾には意外に多い樹木です。兵庫県版レッドデータではBランクの貴重植物としていますが、大きな樹であり盗ろうとしても盗れるものではありませんので、特別に上掲の写真をどこで撮ったか公開しましょう。庭木にしたい方は種をまけば簡単に苗木ができます。花期は淡路島南部では9月中頃、果期は5月中頃です。写真の場所の集団は今年は裏になるのか? 果実が全然付いていませんワ。山系の南側 (紀伊水道側) では谷ごとにバクチノキが点々と自生しています。 南あかじ市灘山本 住吉神社 の杜 (もり) で写真を撮ったのですが、リンクの国土地理院電子地形図の+マークのところです。南あかじ市在住者で自然が好きな方は、この特異な樹木を観察に行きましょう! なお、動物に注意してください。吾輩が観察中にイノシシが2頭、ウサギも2頭、目の前を横切りましたわ。もし弁当とか持っていたら、六甲山のイノシシみたいに飛びつかれるかも?


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