雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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この冬最後の雪見 (詳細版記事その3)
まだ残雪が色濃かった4月9日の剣山登頂記の続きであります。

ただちに撤去するのが望ましい説明看板
↓ 絶滅危惧種リスト入りの理由のひとつが 「観賞用採取」 であります。ただちに撤去するのが望ましい説明看板です。盗掘されて困るというのであれば、そういう植物があること自体を知らしめてはいけません。知らしめることは盗掘を奨励することと同義であります。口先で貴重植物の保護だなどというけれども、ホンネは別のところにあるのは透けてみえていますわ。
キレンゲショウマの説明看板

↓ キレンゲショウマ自生地への登山道は、まだ雪に埋もれている。(4月9日)
場所はここ (+マークのところで、海抜1810m) → 国土地理院電子地形図


自生地への登山道は雪に埋もれている


キレンゲショウマは、襲速紀要素の植物
●高知県出身の宮尾登美子が 「天涯の花」 で紹介したということばかりが喧伝され、地元自治体が山岳観光の金儲けの材料にならないかという願望がにじみ出ています。 「世界的な希産植物」 だなどというのもかなり変な理由付けであって、そもそも日本で見られる高等植物の4割程度は日本固有種だとされます。すなわち、日本列島にしかないのだから、世界的なレベルでは日本固有種はみな 「世界的な希産植物」 と言えてしまいましょう。どこの地方にお住まいでも日本全国身の周りは 「世界的な希産植物」 だらけということでありますね。剣山にしかないのならばまだしも、キレンゲショウマは石鎚山 (ここが基準産地) にもあるし、四国カルストの黒滝山にも、紀伊半島の大峰山系にもあります。九州の祖母山や白鳥山などにもあります。島根県の山にも自生が知られ、ようするに、キレンゲショウマは西南日本外帯のブナ帯~亜高山帯に点々と分布しているわけで、分布域からすると襲速紀要素 (そはやきようそ) の植物の典型例だといえましょう。分布は限られるといっても、中国にもあるというから日本固有種ではありません。したがって 「世界的な希産植物だ」 などと大言壮語を銘打つのは、珍妙にして大袈裟な理由づけなのであって、実は、観光客が大勢きてカネを落としてほしいという願望が言わしめているわけです。

●ネット情報で、基準産地の石鎚山以外で、キレンゲショウマの確度の高そうな自生情報を探してみましたところ、次のような自生地点が見つかりました。
九州 祖母山九州熊本県 御三池 (おみけ)宮崎県 白岩山九州 市房山(11頁)、高知県 黒滝山高知県 筒上山徳島県 剣山(徳島県では剣山1か所のみ)、広島県 戸河内町(恐羅漢山あたり?)、島根県 匹見町奈良県 天川村・川上村(行者還岳、観音峰山?) 得られた自生情報を地図にプロットしたら、分布図らしきもの (分布図もどき) ができてしまいました。ネットって便利ですね。

ただし、科学的な (学術的な) 分布図とはとても言えません。植物の分布といっても生物学の一分野であり自然科学です。自然科学は証拠主義です。標本はラベルに記載された産地にその植物があったという物的証拠です。標本に基づかない、あやふやなネット情報でこしらえた分布図もどきなど、良い子は信用しないように…。


キレンゲショウマの分布


●↓ 村田 源 : 『近畿地方植物誌』 大阪自然史センター刊, 4頁, (2004年) にキレンゲショウマの分布図が載っています。で、借用します。岡山県西部ならびに鳥取県西部のデータがプロットされていないので、それらが見つかる前のきわめて古い標本群をプロットした分布図かもしれませんが、こちらの方が信用なります。あるいは、ソハヤキ要素の植物であることを強調したいがゆえに、ソハヤキ地区から外れる自生地を無視したのかも?? いずれにせよネット情報でこしらえた分布図もどきと比べて、それほど大きな違いはないようです。とは言え、やはりネット情報はいい加減です。ネット情報では標本という物的証拠がないから、その情報に疑義が生じても検証しようがないですワ。

ある登山者が○○山で○○という植物を見て写真に撮りネットに載せても、それが、たとえ日時・場所・生育環境・観察者氏名など克明に記述したとしても、それが本当に○○という植物だったのかどうか写真ではハッキリしないことが多いです。写真ではよほど接写しないかぎり、ディテールはどうなっているのか判然としません。キレンゲショウマのように1属1種で似たものがない植物ならばいいとしても、酷似した近縁種が多い植物ならば、種の同定に疑問が生じても標本をこしらえていないかぎり検証のしようがありません。ということで、ネットはまだまだ発展途上だと吾輩は思いますね。Wikipediaなんかは特にそう。ネット百科事典として大いに便利で参考にはなっても、どこの誰が書いているのか分からない、書き手の知識レベルがどの程度か不明、どういう立場で記述しているのかも不明、で、記事の信用性・正確性が担保されていません。もちろん吾輩が書き散らすことも信用性はゼロです。ネットに膨大にあふれかえる情報の信用性をどう担保するかが大きな課題のように思います。が、偉い人や権力を持つ人が検閲まがいのチェックを入れるというのならば、かえってマズそう。結局、ネット利用者が自己の情報リテラシーを高めるしかないのかもしれません…。


キレンゲショウマの分布図


●話題を元に戻します。キレンゲショウマが小説に取り上げられたなどというハナシは、「あっ、そう」 という程度のハナシであって、自然について観察したり学んだり観賞したりするのとは全然関係ないわけです。ことさらそんなしょーもないハナシを看板にするのは、虚構の存在にすぎない小説のヒロインにあやかって、わんさかと観光客が来てカネを落としてほしいという商業主義 (便乗主義) がチラチラと見えていますわ。そんなに金儲けしたければ著名人にカネを渡して剣山について書かせたり語らせばいいわけです。それから、このような宣伝がその植物に対する 「観賞用採取圧」 を高めて、その植物を絶滅に追いやる大きな要因ともなっています。レッドデータ入り選考基準のひとつに 「観賞用採取」 があることを認識する必要がありましょう。キレンゲショウマを護りたければ、そういう植物があるということ自体を知らせてはいけません。知れば探して採ろう、金網を破ってでも採ろうとする観光客がわんさかと来るわけです。人を見たら泥棒と思えというように、残念ながら、登山者・観光客の多くは公共善をわきまえない盗掘者なのです。したがって、この説明看板は即刻撤去したほうがよろしい。

●自然保護というのは色々な立場や考え方があり、ムダな水かけ論に巻き込まれる危惧があるため、あまり立ち入りたくないのですが、観光振興を図りながら自然を護ろうというのは根本的な矛盾を内包しています。観光客が沢山くると山を荒します。山を荒す奨励をしながら、山を護ろうということであり、どこかマッチポンプ的な胡散臭さがつきまといます。ちなみに、自然保護のNPO法人の活動とか、再生可能エネルギー推進政策などもそうですが、 「環境のため」 という言葉を錦の御旗にしていますが、これはたぶんに表向きの建前です。偽善の仮面をひと皮むけば、ホンネでは補助金をかすめとったり、カネもうけを狙っている色合いが濃厚です。世界自然遺産に関する国内の誘致活動もそうです。世界自然遺産条約の趣旨は 「破壊や消滅の危機から自然遺産を護ること」 です。観光振興では全くありません。本来は入場制限をして観光客を締め出すことであります。ところが日本では異様な観光振興活動に変容しています。 剣山の自然を護ろうとか、キレンゲショウマを守り育てましょうなんて言っているのも、それは建前でしょう。本当に剣山の自然を護りたいのであれば、ただちに登山リフトなど撤去すべきです。軽装で背広姿でも安易に登れることが本質的な問題です。それから国道439号線と国道438号線、それから剣山スーパー林道も閉鎖しなければなりません。簡単には剣山にアクセスできないようにするのが最良の策なのであります。

ようするに、この国は本音と建前を使い分けるのを得意としていて、偽善が多いんですワ。正直に、山村では現金収入の道がこれといってなく、剣山で金儲けの商売がしたい。観光客やハイカーや登山者の皆さま大勢いらっしゃい。大勢が来たら亜高山植物を盗掘したり平家の馬場の草原が荒れてしまいます。次に来た観光客も楽しめるように、自然が損なわれることには何とか対策を立てますから、ぜひ大勢いらっしゃっておカネを落として下さい。と、ホンネで言えばいいのに‥‥。なにも金儲けに反対しているのではなく、大いに金儲けしたらいいと思うし、吾輩もまた行ったら貧人の一灯なりにカネを使いますよ。ホンネとタテマエが乖離していることを話題にしているだけです。




石灰岩や蛇紋岩の山は、特異な植生になることが多い
ということは吾輩でも知るところですから、植物観察する人々の間では一般的な知識であります。キレンゲショウマの説明看板付近の登山道には石灰岩がごろごろと転がっています。剣山は、全山が琵琶湖の北東にそびえる伊吹山のような石灰岩の山じゃないですけど、山頂直下の北斜面に東西帯状に石灰岩層が見られますよね。そういえば四国カルスト付近の山にもキレンゲショウマの自生地が知られていますが、もしかすると石灰岩が風化した土壌とキレンゲショウマとが何らかの関係性 (好石灰植物とか?) があるのかも? よく分かりませんが、キレンゲショウマの自生地は石灰岩地帯であることが多いようですね。 ちなみに、わが淡路島でも僅かですが石灰岩が見られます。旧北淡町の野島鍾乳洞付近ですが、サンゴ礁起源の石灰岩じゃなくて、カキ (牡蠣) 礁が起源の石灰岩です。蛇紋岩も淡路島の付属島の沼島の上立神岩あたりの崖で見られますワ。
登山道には石灰岩がごろごろ

登山道には石灰岩がごろごろ

↓ 4月9日時点で剣山北東斜面は残雪が色濃い。
北東斜面に残る雪



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