雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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この冬最後の雪見 (詳細版記事その1)
4月8日に標高千m越えで降雪 があった模様
↓ 4月9日にまた西日本第二の高峰、剣山へ行く登山車道の入り口 (徳島県つるぎ町一宇地区の剣橋から1キロほどの所) まできました。リンクの国土地理院地図の+マークのところです。午前5時41分ですが、南あかじ市の雑想庵を出発したのは3時11分ですので、2時間40分かかっています。前回来た時はまだ暗かったことを思うと、随分と日の出が早くなりました。なお、登山車道の入り口とか始点などの表示はなく、吾輩が勝手にここをそうだと解釈しているだけです。理由は、通行注意の電光表示があるのとチェーン着脱場となっているからです。かつては積雪期にはここでチェーンを巻いていました。ただし、南国の山といえ、今じゃ雪山に来る人は8~9割がスタッドレスを履いてきます。チェーンはスタック脱出用の保険みたいなもので、とりあえず携行するだけです。
登山車道の入り口に到着

●冬期の剣山への登山車道はある意味では恐い道路です。頂上ヒュッテの経営者さんのブログを見ていたら、北海道の人が来たらしいです。で、経営者さんと話をして言うのには、「こりゃあ、北海道の道路よりも、なまら恐ぇー道だ」 ということらしい。北海道の冬の雪道は恐いらしいのですが、剣山の道路の方が恐いというのです。そりゃあ、そうかもわかりませんね。基本的には周氷河地形でなだらかな丘や山が多い北海道と違い、剣山地は谷が深く浸食された壮年期山地です。雪が積もり凍結して恐いなどと言う以前に、そもそも剣山の道路は夏でも恐いのです。今年の積雪期は終りましたが、来冬に行こうと思うのであれば、阿波泥暴さんらのように スノーアタック 覚悟で行くところであります。金属チェーン・スコップ・牽引ロープ・のこぎり・砂袋・ムシロ・防寒具・非常食1週間分などが必携です。 なお、何で 「のこぎり」 なんて要るの? という疑問もあるかもしれませんが、雪の重みで倒れた木を伐るために要りますね。スギは本来は冷涼なブナ帯の樹木のくせに積雪に弱くよく倒れますわ。そもそもノコギリはアウトドアライフの必需品なのです。チェーンソーがあればなお宜しい。

積雪期の剣山登山車道が恐い理由は沢山
①、急こう配、長い坂道が続きます。
②、カーブの連続、カーブで衝突の危険性がある。
③、道が狭い、狭すぎです。(広いところもあるけど)
④、ガードレールのないところがある、道路をはみ出したら命の保証はない。
⑤、アイスバーンやブラックアイスバーンは当たり前、
⑥、降雪時はホワイトアウト状態、前なんて見えない。
⑦、強い南岸低気圧が四国沖を通過するとき、一晩で1m積もる。むかし埋まった
   ことがあります。
⑧、標高が高いから雲の中、つまり “濃霧+降雪” なので視界ゼロ
⑨、登るにつれ、シャーベット状 → さらさらの乾雪へと雪質が激変する。
⑩、山の裏斜面、表斜面を縫うようにして登るから、雪道 → 乾いた道路 → 氷盤と
   道路の状態が目まぐるしく変わる。
⑪、何かあっても救援隊が来るには相当の時間がかかる。
⑫、救援隊が来れない可能性も大なり。自力での脱出が基本。
⑬、北海道や信州とちがって、南国の救援隊自体が装備や経験が不足。
⑭、山中でよく越冬車を見ますわ。(スタックして脱出不可能、歩いて下山とか?)
   春になって、或いは雪が少なくなってから車を回収に行くのでしょうか?



剣山スキー場から少し行ったところ です。時刻は6時32分です。海抜は約1380m。前日の4月8日の未明ごろに四国の海抜1000m以上で降雪があったみたいです。周辺のアメダス観測所の降水量が5~10ミリ程度 (アメダス京上10ミリ、アメダス木頭5ミリ、アメダス半田10ミリ) だったので、積雪はせいぜい5センチか10センチ程度であったと思われます。しかも、標高千m越えとはいえ春の雪です。すぐに溶けて消えてしまいますわね。
剣山スキー場あたりから前日の雪が残っている

↓ 雲海のようなものが見えます。雲海の層の厚さは薄く、標高700~1000mあたりです。
雲海のようなものが見られた


発生頻度の希少な “雨氷(うひょう)” も見られた
↓ 写真では分かりづらいのですが、木の枝などに氷の層が付着しています。透明な氷で枝とか葉などに1センチ程度の膜になって氷ついています。写真では赤茶色いかずらみたいなもの (サルナシか?) や地面の笹 (スズタケの矮生化したものか?) などに透明な氷が付いています。いわゆる 雨氷 (うひょう) という気象現象です。つまり雪と雨氷という2種類の気象現象が写っています。観察すると付近一帯では山々の斜面で、標高1300~1600mの狭い範囲の帯状に雨氷がみられました。その高度よりも下でも上でも見られませんでした。 おそらく昨日 (4月8日) に出来たものでありましょう。1日経っているから消えかかっています。昨日ならば見事な風景が見られたのではないか? 昨日は天気が悪かったから登山者はほとんどいなかったであろうし、もし登山者がいても霧氷と勘違いするでしょう。だれか見事な写真を撮っていないかネットで探しましたところ、この4月から高城山 (1632m) の ファガスの森 高城 の管理人になられた 地下足袋王子さんが写真に収めて いました。やはり地下足袋王子さんはただものではないようです。
木の枝に雨氷が見られた

↓ 雨氷の拡大写真を上手く撮れなかったので、Wikipedia より 借用します。透明な氷が木の枝などに付着したものです。霧 (雲粒) が枝に次々に付着して出来る不透明な白い霧氷とは成因が全く異なる現象であります。すなわち、上空から落ちてきた雪片が零度以上の逆転層で溶けて雨になり、その雨が地表付近の零度以下の冷気層で冷やされ過冷却となり、木の枝などに当たった瞬間に凍りついて出来る現象とされますわね。

微妙な条件下で起こる現象で、地表付近の冷気が強ければ雨滴は過冷却ではなく凍って 「凍雨 = 透明な氷の粒」 となりましょうし、地表付近の冷気が弱すぎてもただの雨降りになるだけです。上空に逆転層があっても逆転層の気温がプラス圏になっていなければ只の雪になるだけですし、プラス圏でも気温が高すぎたら、そもそもそういう状態ならば地表の気温も高いわけで雨降りになるだけですわね。で、ホントに微妙なところ…。

雨氷 ウキペディアより借用


↓ 夫婦池の、2つある南側の池 (雌池というらしい) です。標高は1450m前後。地面が白っぽいのは雪ですが、ウラジロモミが白っぽいのは雨氷のためです。
夫婦池も薄らと雪がある

↓ 6時48分です。剣山の山頂を見上げました。念のために双眼鏡でみましたが、雨氷はおろか霧氷もなさそうです。ということは、昨日や今朝の剣山山頂の気温は氷点下ではなかった可能性が高いです。もちろん雲がかからないと霧氷は出来ませんが、今朝は雲が多そうな感じです。
剣山には雨氷も霧氷もないようだ


4月8日に西日本の上空で発生した逆転層が雨氷の成因!
四国山地の海抜1000m以上で降雪のあった4月8日に、海抜2000mぐらいの高所に菜種梅雨の前線の前面に暖気が這いあがって、明瞭な逆転層が出来ていた模様であります。福岡 2015年4月8日9時の高層の観測データ から高層の気温変化図を作成しました。剣山周辺で高層気象観測をしているところがないのは残念ですが、西日本の潮岬や松江でも同様な逆転層が出来ていたことが認められます。

逆転層の一例
↑ この図は横軸が気温、縦軸が高度です。高度千m後半が気温が低く氷点下です。高度2千m前半が気温が高くプラス圏になっています。通常は高度が増すにしたがって気温が下がるのに逆になっています。で、逆転層が発生しています。温暖前線の前面でよく起こる状態です。温暖前線面の上に暖気が這いあがってくるためです。この図では、標高1000~1500m前後で雨氷が起こる可能性があることが読みとれます。

なお、積雪と雨氷が同時に観察出来た理由ですが、おそらく、まず最初は上空の逆転層は無いか弱く、降雪があって少し雪が積もりました。その後に剣山地の上空2000m以上に南からの暖気が滑り上がってきて逆転層が顕著にできた、と考えると矛盾なく説明がつくのではないか?



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参考】 温暖前線の前面などに逆転層が出来るのは当たり前のハナシであります。そして、逆転層のできる高度というのは、前線に近いほど低く、前線から遠いほど高いというのも当たり前のハナシですね。下図は 八丈島の2015年4月8日9時の高層気象観測データ から作成しましたが、春雨前線に近い位置のために高度600mあたりに逆転層ができています。
4月8日に八丈島で観測された逆転層
↑ 逆転層が出来ていますが、逆転層の上も下も気温はプラス圏です。これでは雨氷は起こりようがありません。雨氷が起こるのは逆転層の上が+2度とか3度で、下がマイナス2度とか3度のところであって、降水があり、そこに山とか地表が当たっていなければならず、ごく限られた狭いゾーンであることが想像できます。つまり、剣山に至る登山車道で雨氷を見ることができたのは全くの僥倖であったと言えましょう…。今年は何か良いことがあるのかも? じつは、何か良いことがありそうな予感がしています。


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