雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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スイートスプリングは、ジュースにすれば極上の美味さ!
●柑橘類は市場に出回る種類はきわめて限られています。数えるほどの種類しか市場では売られていません。果樹試験場で交配で沢山の新品種が育成され、また民間育種家の手によっても新品種が産み出されました。ところが、せっかく開発された新品種なのに、果実の見栄えが悪いとか、規格に合った果実の粒がそろわないなどのツマラナイ理由で市場性がなく、消えていった素晴らしい果樹品種が沢山あります。そんな消えていった柑橘品種の一つに 「スイートスプリング」 という品種があります。

スイートスプリングの着果風景
↑ 吾輩が自給自足用に栽培しているスイートスプリングです。樹齢は27年です。これは大豊産性の品種です。ハッサクに似た葉がびっしりと着き、葉の陰で分かりにくいですが、葉の後ろに実が鈴なりになっています。

果樹の新品種育成には、長い年月がかかる。
(独) 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 「育成品種紹介 スイートスプリング」 によると、上田温州 (うえだうんしゅう) とハッサクの交配種であります。交配が行われたのは終戦直後の1947年で、静岡市にある旧 果樹試験場 興津支場で育成された品種ですが、交配して成らした実から種子を採取し、たくさんの苗木を育てて、成木になって実が着くには10年~20年とかかり、育てた多くの成熟樹に着いた果実の中から、品質の良いものを選抜するのは気の遠くなるような年数がかかりますわな。で、品種登録されたのが1982年です。35年かかっていますね。そのような膨大な手間と、長い年数をかけて行われるのが果樹の新品種育成です。1年で種子ができる1年生あるいは越年生野菜の品種改良と異なり、果樹の品種改良というのは数十年先を見て行うもので、時には、人の1代で完結しない長時間の中での営為なのであります。



味はいいのに、全く売れなかった新品種!
●スイートスプリングは、品種登録後は大変話題になった品種です。本品種の長所は “抜群の糖度の高さ” です。山の斜面など水はけが良くて乾燥気味の園で栽培したものは、とても柑橘類と思えないほど甘みが強い品種です。平野部で圃場の土壌水分が多いところで栽培すると、糖度が下がるのはしかたがないのですけれども、それでも他の柑橘類の追随を許さない甘さがあります。もう一つの長所は “果汁の多さ” です。果汁が多く大変みずみずしい柑橘です。抜群の高糖度と果汁の多さ、それから穏やかな良い香りがあり、素晴らしい新品種が出来たと柑橘栽培の関係者の間で評判でありました。ところが、まったく売れなかったんですわ。市場に出しても消費者が手に取ってくれませんでした。

●売れなかった理由ですが、次のリンクの野口果樹農園様が語っています。野口果樹農園 みかん直売所 「見た目が悪く、栽培が増えなかったため、現在も生産量が少なく、市場には殆んど出まわっていない珍しいみかんです」 見た目が悪すぎますわね。果皮がデコボコ、ざらざらで、中身は完熟しているのに果皮にまだ緑色が残って熟していないみたいに見えます。果皮も厚く固く手では剥けませんわ。包丁で果皮に切れ目を入れて無理やりに剥くって感じです。強引に剥いて中身を出して、いざ食べようとしたら果汁が多いので汁がこぼれ落ち、食卓も手もべたべたに汚れますわ。味は極めていいのに、とにかく食べにくいんです。で、市場では売れませんでした。て言うか、消費者が手にとってくれませんでした。食べてからこんなのダメだというのではなく、食べる以前に、見ただけで 「こりゃあ、アカンわな。美味ないやろ」 ということでありました。都会に住む消費者は残念ながら “表面のつくろい” を重んじます。見かけが良くないと売れないのです。

果実の拡大

果皮の目は粗い
↑ 写真では分かりにくいのですが、果皮の目が粗く、シワも見られます。本日2月5日に撮った写真ですが、2月には完熟しているのですが果実の色に緑色が残っています。ゴルフボールほどの固さはないにしても、果実がかなり固いです。果実がふっくらと柔らかくないので食べようという意欲が湧かない品種です。

●で、生産が拡大普及することはありませんでした。最近ではほとんど栽培されなくなっています。スイートスプリングの生産量は全国で年600トン程度しかありません。温州ミカンの生産量は近年ジリ貧ですが、それでも平成24年には846,300トンもあります。スイートスプリングの生産量は温州ミカンのそれのわずか千分の一以下です。ミカン農家の庭先に自給用として樹が残っている程度です。これでは消えていった新品種と言っても過言ではないでしょう。


●吾輩も栽培しながら、味は美味いけれども食べにくいので、とても食べる気が起こらなかったので、今までは鈴なりになってもほとんど収獲せずに放っていました。で、樹上で乾燥して干からびるか、強風で落果するにまかせていました。皮が固すぎてヒヨドリもカラスも手を出しません。しかしながら、利用せずに捨てるのはモッタイナイから何とか利用方法がないか? ということで収獲したところ、それほど大きな樹じゃないのに収穫籠に6杯も (100キロほどか) あったのにはビックリです。

カゴに入れて収獲

あれこれ食べ方を模索したら、ジュースにすると絶品!
であることが判明。とても甘くて美味いジュースなのですが、甘すぎるというきらいもあります。で、寒風害で落果したネーブルの果汁をまぜたら極上品になることが分かりました。スイートスプリング3個に対して落果ネーブル1個の比率でジュースに搾ると良いようです。やや大きめの果実ならば4個でワイングラス2杯のジュースが搾れます。スイートスプリングの抜群の糖度の高さと、ネーブルの爽やかな酸味や香気がベストマッチして、とても素晴らしいジュースになります。
スイートスプリング3、落果ネーブル1の比率でジュースにしてみた

【拙稿は続く】


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