雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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高城山でのキノコ狩り 第二話 (その4)
高城山の山頂から見る大パノラマ

●大パノラマなどと言っても幾重にも重畳する山岳地帯しかみえません実は、山が低すぎるのです。高城山と人里の平野部との間に前衛の峰峰が何重にも取り囲んでいます。で、平野部の里や都市や、海岸などは意外にみえません。南を遠望しても地平の彼方に太平洋は見えますが、室戸岬は全く見えません。見えるのは何重にも重なる山々だけです。四国山地とか紀伊山地は、地形学的には曲隆山地 (きょくりゅうさんち) です。山塊が横からの力をうけて山塊全体が上のほうにたわんで出来る地形ですが、真ん中が高く周辺ほど低いという特徴があります。このため何重にも前衛の峰々ができて、その前衛の峰峰が邪魔をして、意外に麓の町が見えなくなります。

●中央アルプスみたいな断層の動きで高く聳える地塁山地ならば、前衛の山々がなく、麓から一挙に山の高度を上げます。中央アルプスは幅がたった20キロあまりしかないのに、3000mに迫る高度があります。麓の海抜が500~600mあるから山麓からの比高は2200~2300m程度か? 物凄く急峻で高いのです。

●一方、剣山地は、麓の吉野川から剣山まで水平距離20キロすこしあります。剣山の山頂から太平洋側まで最短でも35キロあります。つまり剣山地は55キロの幅があって高さは2000m弱なのです。 一方、中央アルプスならば20キロに山脈の横幅がすっぽりとおさまり比高2300m。中央アルプスの駒ケ岳(2956m)の山頂から麓の町がみえています。結局、高城山の頂上に立っても山々しか見えないのは、山地の成因が地塁山地や火山などの独立峰でないことが要因なのでしょう。剣山地のような曲隆山地は山塊の規模の割に山が低く、ドングリの背比べのような峰々しか見えないということですな。残念です。



ドングリの背比べの山岳風景に、うるさく山名を記入

↓ 高城山山頂から見て、西~西南西方向。
剣山方面 (西~西南西方向)

↓ 少し拡大した様子
剣山方面 少し拡大

↓ 高城山から西北西方向を遠望したところ。
矢筈山方面 (西北西方向)

↓ 高城山山頂から、北~北北西方向。
高越山方面 (北~北北西方向)

↓ 大滝山というのは、徳島県・香川県境にある讃岐山脈の山です。大滝山と高越山のあいだには、吉野川にそって平野部があり徳島県の人口の過半数が住んでいますが、高城山山頂からは徳島平野はほとんどみえません。
高越山方面 少し拡大


高城山山頂に、珍しいヤマグルマの樹がある
淡路島には分布していない樹木です。徳島県のブナ帯の山々を歩いていると、ときどき見かけます。なんとなくウコギ科のカクレミノの老木に似ています。カクレミノは老木になると葉が小さく、しかも葉の切れ込みが消失します。しかも葉に光沢のあるのが非常に似ています。
ヤマグルマ

●ヤマグルマは話題性の高い樹木です。話題としては3点あろうかと思います。

①、亜熱帯~温帯上部まで広い気候帯に分布します。ヤマグルマは山形県を自生北限として以西・以南にあるとされますが、西日本ではブナが生えるような標高の高いところで良く見られ、ブナ帯の樹木かと錯覚しそうですが、沖縄など琉球諸島や台湾北部にも自生して亜熱帯域では大木になるらしい。亜熱帯にある樹が厳冬期には-20度にもなるような海抜1600mを越える高所 (註) にあるのは不思議な感じがします。葉を見れば葉の表面にクチクラ層が発達しているのか? テカテカと光沢があり、照葉樹の葉そのものです。もう少しで亜高山帯になるというほどの高所に常緑でまさに照葉樹の樹があるのは不思議な光景です。恐らく分化しなかったのでは? 普通ならば、全く異なる環境にあれば動植物は分化して別物に枝別れしていくものですが、進化して枝別れしなかったので広範囲の気候帯に分布しているように見えるのではないか?
 

(註) 剣山測候所での最低気温の記録は-23.5度です。この時は上空に強い寒気が進入し、気温減率は0.8~0.9度/100mに達していました。山が約300m低い高城山山頂では剣山での観測値より2~3度高かったと思われます。高城山の山頂では-20.8~-21.1度であったと推定されます。

あるいは、ヤマグルマは元来は温暖な地方の植物であるけれども、耐寒性が非常に強い樹木かも? それから、岩場に多いということは他の樹木との競争に弱い (アカマツみたいに) ことを意味します。土壌中のバクテリア相や菌類相が関係していて、暖温帯の平地では土壌に有害なバクテリアが多くてヤマグルマは育ちにくい。けれども、ブナ帯では山地の標高が高く急峻であるから岩場が多く、有害菌のいない生育適地がけっこうあるのではないか? ブナ帯でも傾斜の緩やかなところは厚い腐葉土の層ができていて (気温が低いから有機物が分解されにくいので) ヤマグルマは有害菌のいるブナの森では暮らしにくい。さて、沖縄や台湾にヤマグルマがあるのは、亜熱帯域では気温が高く有機物がどんどん分解されて腐葉土層が出来にくいから、ヤマグルマに有害な菌類とかが少ない? というふうに、キノコファンとして菌類・バクテリア相と樹木の関係という視点から想像したら、ヤマグルマが亜熱帯に自生し、日本本土では平地ではなくブナ帯の岩場に多いという矛盾が上手く説明できそうな気がします。 (ただし素人の思い付き解釈)

だとすると、マツ(松)類と同じですね。本来、クロマツでもアカマツでも、海岸の砂地とか、山の尾根筋の岩場が本来の生息地です。広葉樹の茂った土壌が肥沃なところでは、マツに害のある菌が多くマツに有益な共生菌が少なく、マツは自生していないです。 一見するとかけ離れた環境に隔離して分布するように見えてしまいます。(ヒトが本来の分布を撹乱していますが)

植物生態研究室 (波田研) のホームページの 「ヤマグルマ」
導管を持たない日本で唯一の広葉樹  等参照。
 

②、ヤマグルマは、1科1属1種の孤高の植物として有名です。日本にある植物では唯一の 導管を持たない原始的な被子植物です。被子植物でありながら、裸子植物の面影を残している特異な樹木です。1科1属1種というのは、つまり分化していないということも言えそうです。たとえば、寒いところに生育するヤマグルマが葉を薄くして落葉性になるとか…、つまり変化しなかったということではないか?

③、ヤマグルマの樹皮からトリモチを作ることができる。淡路島では 鳥黐 (とりもち) はモチノキの樹皮を剥いで作ります。吾輩も子供のころモチノキの樹皮を剥いで作りました。樹皮を金づちで細かく叩き潰して、水の中で良く揉んで樹皮の繊維を取り除くとトリモチが簡単に作れました。鳥を捕るのではなくイタズラに使いました。淡路島ではヤマグルマが自生していないので、モチノキから作るしかありません。クロガネモチの樹でも作れます。ヤマグルマが沢山自生している地方では、ヤマグルマの樹皮からトリモチを作っていたらしい。ヤマグルマで作ったトリモチは色が赤っぽく赤モチというらしい。 自家製のトリモチを作ったのは50年も前のハナシで、今日びの中学生らはトリモチなど見たこともないでしょうね。


ヤマグルマの果実


高城山の山頂に、石灰岩の岩があるではないか!

四国山地の山々の山頂には、点々と 石灰岩 がみられます。剣山の山頂にもあるし、石立山の山頂にもあります。このあたり一帯は地質学では 付加体 (ふかたい) だと教えています。大昔に、中生代ジュラ紀に日本列島がまだ大陸にくっついていたころ、今のフィリピンプレート (そのころは テティス海 か?) の海底上に堆積した物質 (チャート等) とか、海底火山の岩石 (玄武岩等) や、海底火山の上に出来たサンゴ礁 (石灰岩) などが、プレートのベルトコンベアーに乗って西日本沖の海溝に運ばれ、西日本に次々に付け加わわったとされます。石灰岩があるということが、これは大昔には海の底にあったという証拠ですわね。ただし、サンゴ礁は海面スレスレの海山の頂上にできるので、この石灰岩は海底で形成されたとは言えないでしょうが…。

それにしても1億年とか2億年の時間尺度のなかで起こったことで、億年の重みなど感覚的には全く理解できないハナシです。長生きしても人生せいぜい100年です。文字が発明されて記録が始まってから最長でせいぜい5000年ですが、たった50回の人生の長さでしかありません。それに比べると、地質年代的時間スケールの1億年て100万回の人生分です。そう考えると、人類の歴史のなんとまあ薄っぺらなことか…。思うに、この億年の時間の重みが地学の魅力なのでしょう。各地に地学を学ぶ会があって、地学を正式に学んでいない一般の人でも、ハンマーを手にして化石を捜したりしている人々が大勢いますね。


高城山の山頂の石

山頂の石灰岩



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