雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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5月29日午後5時、南あわじ市で強烈な雷雨があった。
5月29日午後5時前後に、わが淡路島で強烈な雷雨がありました。 午後4時半ごろ、俄かに空がかき曇り、日没までにまだ2時間以上あるのに、辺りは夕闇が迫ったかのように暗くなりました。道路を行く自動車はヘッドライトを点け、街灯が点灯しました。雷鳴が轟くと同時に、北西の突風が吹きだして激しい雨が降りました。ただし30分か40分で終わったです。雹がみられるか?と思ったのですが、見られませんでした。
灘土生で、17時00分から17時10分のあいだの10分間に、25㎜の降雨を国土交通省が観測しました。各地でごく短い時間でしたが、10分間雨量で10~15ミリを記録しました。

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↑ 気象庁HP から。5月29日16時50分のレーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)の画像です。わが淡路島の南あわじ市に降雨強度80ミリ/時の赤いエコーが生じています。

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↑雷雨の前の14時には、南あわじ市阿万塩屋にある(国立淡路青年の家の入り口付近)アメダス南淡の気温は、25.2度でありました。13時20分には本日の最高気温27.7度をつけています。

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↑雷雨が発生しましたら気温が急降下です。17時正時には画像の通り17.7℃であります。17時29分には17.3度まで下がっています。雷雨の前後で気温が7~8度下がりました。風は16時53分に北北西の最大瞬間風速13.8メートルを記録しています。雨量は17ミリでした。

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↑500hPa面の高層天気図です。28日21時の天気図です。この時期としては強い寒気が日本列島の上空に侵入しています。鹿児島で-16.3度(平年比-8.0度)です。

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↑こちらは29日09時の高層天気図です。潮岬で-16.7度(平年比-6.5度)です。八丈島で-16.9度(平年比-7.3度)です。西日本上空にも平年比で6℃~8度低い寒気が侵入して大気が不安定になったようであります。日中地表付近の気温が上昇し、上空500hPa面との気温差が40度をかなり越えた模様です。
次の上空の寒気がバイカル湖付近から、日本を虎視眈々と狙っています。今年は雷雨の当たり年かも??
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(5)消費税の増税は、逆に税収を減らす…。
【前稿からの続き】

 日本経団連 が消費税の増税を強硬に執拗に主張する理由は、輸出戻し税の還付を受ける大企業が、消費税の税率を上げると還付金が沢山戻ってくるから得をするからだ、とまことしやかに言われます。果たしてそうなのだろうか?

日本経団連HPトップ>政策提言/調査報告>税、会計、経済法制、金融(制度)>『平成24年度税制改正に関する提言』
日本経団連は明確に消費税の増税を提言しています。日本経団連は政治的に強い影響力があるので、国家の政策にこの提言が反映していることは想像に難くありません。
【引用開始】改革の第一段階として、税率を2015年度までに10%まで、段階的に引き上げるべきである。必要額や税率変更に伴う事業者のコスト等を勘案すれば、1回の引き上げ幅は1%ずつでなく、少なくとも2〜3%とすべきである。その際、社会保障制度を国とともに担う地方に対し、安定的な財源を手当てする必要がある。その後も、社会保障の持続可能性を高めるためには、改革の第2段階として、2020年代半ばまでに10%台後半に引き上げることは避けられない。【引用終了】

日本経団連の主な提言
★膨張する社会保障給付金を賄うのは消費税しかない。個人消費がGDPの6割を占めるから、消費こそが担税力をもっている。消費税を社会保障給付費に充てる方針を明確にして、消費税率を早く上げよ! → 政府・財務省と同じことを言っている。財務省が日本経団連に言わせているのか? 日本経団連が財務省に言わせているのか? 多分、双方の思惑が一致している。官界と財界との癒着。

★法人税については、日本企業は、様々な要因により海外に移転せざるを得ない状況である。このままでは日本経済は衰退するのは必至だ。企業の税引後利益の増大をはかれば、海外移転は避けられ日本経済はデフレから脱却もできる。速やかに法人税を5%下げよ!国税の法人税率だけでなく地方法人所得課税も下げよ! → 海外へ出るぞ出るぞと露骨な脅迫。

★個人所得課税については、個人所得課税の最高税率を引き上げるのは止めよ! 経済活力に悪影響を及ぼす可能性がある。金融所得課税についても、金持ちが金融資産運用したり、企業が金融市場から資金調達がしやすいように、いろいろと工夫をせよ。 → 高所得者・資産家の露骨な擁護。

★相続税についても、過重な負担は経済の活力を失ってしまう。 → 上場企業のオーナー擁護。

★自動車やガソリンの税金は二重取りがあるが、それは止めた方がいい。 → 一見すると消費者擁護に見えるが違う。自動車市場が冷え込まないようにとの自動車業界擁護だ。

★社会保障・税共通の番号制度を早期に導入すべきである。 → 国民の所得や資産をシッカリと把握して徴税システムを盤石なものとする。経済界が財務省の手先をするのは、経済界を優遇してもらうため。

日本経団連が消費税の増税を強硬に提言するのは輸出戻し税を増やしてもらいたいなどという、チマチマとした理由ではありません。そもそも輸出戻し税で還付してもらってもプラスマイナス中立であるし、かりに得をするのだと仮定しても、その額が少なすぎます。高々数千億円か、1、2兆円だ。それよりももっと大きな10兆円、20兆円を狙おう、と財界のトップたちは考えるハズです。

日本の輸出依存度は低い…
それに、日本経団連に所属する大企業は輸出業界ばかりではありません。そもそも日本経済は輸出依存国ではありません。対GDPに占める輸出の比率は小さいのです。 日本貿易会月報 2007年 7・8月合併号 の72ページに掲載されている 『日本の輸出依存度は低すぎる』 という論文のなかの図表を引用させていただきます。
輸出依存度の国際比較
これを見ても分かるように、日本は国民が思っているほど輸出依存ではありません。いざとなれば鎖国をして自給自足でやっていける米国ほどではありませんが、世界の中では輸出依存度は低いほうです。日本は基本的には内需国であるので、日本経団連所属の大企業といっても内需会社や輸入会社が多く、そうそう輸出会社が牛耳きれるものではない、と考えるべきであります。

輸出会社ばかりではない
●日本経団連には会長1名、17人の副会長がいますが、それぞれの所属会社を列挙します。
住友化学・全日本空輸・三井不動産・トヨタ自動車・東芝・新日本製鐵・日立製作所・小松製作所・日本電信電話・三菱商事・三菱東京UFJ銀行・丸紅・東日本旅客鉄道・第一生命保険・三井住友フィナンシャルグループ・日本郵船・三菱重工業・(日本経団連事務総長)
これをみると、輸出など全く関係ない会社がたくさんあります。それぞれの会社に横断的に共通する利益は何なのか? を考えてみると、それは輸出戻し税還付などではありません。ズバリ言って法人税の減税です。それから所得税の減税です。大企業の経営陣や社員は給与水準が高く、所得税を減らして欲しいという立場です。

種類別の税収の推移
↑ 財務省のHP から引用しました。このグラフが雄弁に物語っております。消費税は法人税と所得税の減税の穴埋めであります。
赤線は所得税です。税収は平成3年に26.7兆円のピークを記録しました。その後、昭和61年に所得税最高税率70%から現行の40%に引き下げていった(金持ち減税)のと長引く不況で、平成22年には13兆円と半減しました。
黄色線は法人税です。平成元年には19兆円の税収を記録しましたが、平成21年には一時6.4兆円に落ち込み3分の1になりました。法人税率を40%から30%に引き下げられたのと、不況による赤字企業の増大で税収は低迷しています。よく見ると法人税・所得税ともに、景気変動の波にもろに依存しています。
青線の消費税は景気変動の波にあまり影響を受けずに、安定的に推移していますが、法人税・所得税の落ち込みを補填している関係でありますが、補填しきれていません。

日本経団連はその主張をよく読めば、法人税と所得税をさらに減税してほしい意向であって、そのために税収が減少するので、その分をカバーするために消費税を上げよ!と叫んでいるのです。輸出戻し税還付金のために消費税増税を叫んでいるのではありません。財務省は大企業の税負担率が、欧米各国よりも特別に高いものではないことを認めています。また、消費税は税率こそ5%と低いのですが、生活必需品にまで容赦なくかかるので税収全体に占める比率は20%を越え、欧米主要国と同等であることも知られています。さらに申せば、大企業は海外に移転せざるをえないなど見苦しい言いわけをする反面、しっかりと 内部留保 をため込んでいます。
内部留保をため込む
内部留保は必ずしも現金でため込んでいるのとはちがいますが、日本経団連に所属する大企業は稼いだお金が企業の外に流れ出さないようにするために、法人税のさらなる減税、裏を返せば消費税の増税を叫んでいるものと思われます。

●恐らく、財務省と日本経団連と野田政権、それからそれらの広報係のマスゴミがキャンペーンを張って、消費税増税を押し切る可能性が濃厚です。国民大衆は正社員をおろされ非正規雇用者に転落、自営業者も不況で苦しんでいるときに、逆進性の高い消費税増税を押し切ると、庶民はますます疲弊し、財布の紐が固くなります。税収を増やそうとして消費税を上げれば、それは逆に消費を冷却させる方向に作用し、結局は税収を更に減らしてしまうでしょう…。わたくし山のキノコは、消費税増税は 合成の誤謬(ごうせいのごびゅう) になる公算が大なり、と予想します…。

【拙稿終了】
消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(4)無理を承知の上で、あえて主張している…。
小学館運営 NEWSポストセブン『消費税増税に経団連が賛成するのは“輸出戻し税”あるため』 週刊ポスト(2012年3月2日号)

【引用開始】 民主党の野田政権が消費税増税を推し進めようとしているが、それに対し小沢一郎元代表は反増税の立場を鮮明にしつつある。小沢氏はよく、目指す制度改革を「旧体制のアカを落とす」と表現する。旧体制で力を握ってきた霞が関や大メディアがそれを嫌がるのは当然だが、その一味には経団連を中心にした旧態依然の大企業もいる。経団連が、景気を冷え込ませる消費増税に賛成しているのは、「大企業への補助金」といわれる消費税の輸出戻し税があるからだ。
「税率を5%上げれば輸出戻し税も2倍に増えて財界の主要企業は儲かります。この特権を見直せば、税率を上げなくても税収は増えるし、財界はもっと冷静に増税の影響を考えるようになる」(小沢グループ議員)
 説明が必要だ。消費税は流通段階で価格に転嫁され、最終的に消費者が負担するが、海外の最終消費者からは税を取れないという理由で、輸出製品には仕入れ段階で課せられた消費税を企業に還付している。これが輸出戻し税で、還付額は年間約3兆円。自動車、電機など大手メーカーは、納める消費税より還付金の方がはるかに多く、輸出上位10社でざっと1兆円近くが戻されている。
 税理士の湖東京至・元関東学院大学法科大学院教授は、税制の矛盾を指摘する。「政府は消費増税分をすべて社会保障に回すという。現在の5%の消費税も基礎年金、医療、介護の財源という建て前です。そうすると、輸出大企業は社会保障財源から補助金をもらっていることになる。『租税は各人の能力に応じて平等に負担されるべき』という租税立法上の原則に照らしても、輸出戻し税の還付金制度は廃止か停止すべきです」【引用終了】

一見すると正論を言っているようにみえます。しかし、消費税法を調べて、消費税の仕組みを理解すれば頓珍漢なことを主張しています。これは日本経団連を牛耳っているところの輸出比率の高い大企業を目のカタキにして、罵詈雑言を投げつけ、たんに悪態をついているにすぎません。前エントリーで議論した通り、消費税法第7条で輸出免税が明確に規定されています。輸出物品に関しては消費税は1円も国庫に入っていません。仕入れに含まれていた消費税が事業者や国庫を素通りして元に戻っているだけにすぎません。国の税収ということでは、輸出物品に係る消費税は免税のために1円の税収もなく、また1円の税金持ち出しもありません。プラスもなければマイナスもなく、完全に収支中立で、いわば最初から存在しないものなのです。したがって、トヨタ自動車など輸出大企業が “特権” だとか “補助金をもらっている” などと主張するのは事実錯誤に基づく言いがかりにすぎません。なぜ、こんな簡単なことが理解できないのだろうか?? このハナシはネット言論空間に意外に拡散して蔓延しています。多くの政治ブログでしたり顔で週刊ポストの記事の受け売りを弄しています。

●調べてみたら、輸出戻し税が問題だなどと主張している税理士(税法学を専攻する人)はほとんどいないようであります。言っているのは、ほとんど湖東教授ただ一人であります。この教授があちこちで言いまくっているようで、それがネット言論空間に拡散しています。まともな税理士ならば絶対に言わない(言えない)主張をなぜこの教授は言いまくるのであろうか? 簡単に考えてみます。

1、この教授の立場が、中小零細企業擁護の立場に立っているようですから、輸出大企業の批判をしている。で、ご本人もちょっと言い過ぎかなと思いながらも、過激に主張している。お客さんにリップサービスしているだけ…。

2、この教授は、労働組合だとか共産党などの後援会や学習会でしばしば講師をされているようですから、当然に大企業の経営者を批判したり、富める者はさらに富むという資本主義の矛盾を批判するのはあたりまえで、その一環として輸出大企業を目のカタキにしている。

3、一見すると、(つまり数理感覚を以って論理的によく考えないと)“輸出戻し税問題” は正しいと錯覚してしまうハナシです。税務署に申告などしたこともない多くの国民大衆にとって非常に理解しにくいハナシなので、ウソであっても押しまくって主張すれば一般の賛同が得られるだろうと踏んでいる。(実際に多くの政治ブロガーが賛同し受け売りをしています。それどころか、共産党・民主党・日本新党の国会議員まで、賛同し真に受けています)

4、この教授は、ご自身の主張に無理があるのを百も承知でやっています。その主張の論理構成をよく観察すれば、論点のすり替えをやっています。「トヨタは強大な力があり、仕入れ価格決定権を握っている。トヨタに部品を納入する取引先はトヨタの値引き圧力に抗する手段がなく、消費税分を値引きされるのを余儀なくされている」などと主張しているのは、巧妙な論点すり替え。輸出戻し税が問題だと言っているのかと思ったら、そうではなく、途中から下請けに値引きを押しつけるトヨタの横暴さにハナシが変っています。

●結局、この教授は分かっていながら強引な主張を言いまくる確信犯なのですね…。そして、その主張を支持する大勢の人々がいる…、ということのようであります。

もちろんトヨタは仕入れ先に厳しく値引き要求することは、当然ありましょう。お人よしでは会社の経営は出来ないと言われます。仕入れをいかに安くするかということは、利益の増大化の絶対条件でありましょう。しかし、それと輸出免税還付金とは別のハナシであります。なんとなれば、トヨタの値引き圧力にあらがうことができずに、60万円で売りたいところ50万円にしなさいという圧力に涙を呑んで受け入れても、実務的には消費税は伝票に記入せざるをえません。トヨタから消費税をもらわないことには、納入業者は場合によっては脱税と解されるかもしれません。(もし税務調査が入ったら、トヨタから消費税をもらい損ねたのが悪いのだ、納めて下さいよ、とやられるでしょう)

納品書 部品 数量○○個 単価○○円 金額60万円 消費税3万円
               ↓
納品書 部品 数量○○個 単価○○円 金額50万円 消費税2.5万円

と納品伝票の記載が変わるだけです。消費税を記載しないわけにはいきません。また、値引きを押しつけられたトヨタの納入業者も、「トヨタさんよ、値引く替わりに数量は倍にしてくださいよ」とか、「値引きを受け入れますから、ライバル社の○○さんよりも、うちの方を優先的に使ってくださいよ」などと抵抗はすると思います。このような議論は輸出戻し税とは少し別の議論でありましょう。
そもそも、消費税があろうと、なかろうと、強大な親会社が下請けや取引先をいじめるのは、昔からあるハナシであります。消費税輸出還付金が、ただちに、下請いじめになっているという論理展開は、かなり乱暴な議論に思われます…。

●さて、では日本経団連がなぜ消費税増税に賛成するのか? それは輸出戻し税があるためなどではなく、法人税を下げるためであろうかと考えられます。それには、日本の上場企業の株主構成でアメリカ金融資本の比率が増大していますが、そのアメリカ金融資本の意向が色濃く反映していると見ます。また、大企業の経営者は高額所得者でもありますが、所得税(特に高額所得者)の税負担を下げる補填として、消費税増税を主張しているのであろうかと私は見ます。

【拙稿は続く】
消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(3)直感的に正しく見えることは、必ずしも真ならず。
(前稿からの続き)

【命題】トヨタ自動車は1円の消費税も払っていない。にもかかわらず、毎年2000億円以上もの輸出戻し税が還付されている。これは明らかにおかしい、不公平ではないか? トヨタをはじめキャノンであるとか輸出比率の大きい大企業の幹部が牛耳る日本経団連が、消費税の増率を強硬に主張している理由は、消費税の税率を上げれば輸出戻し税がたくさん貰えてトクするからだ。

●この命題の真偽に関する考察でありますが、ここで、まず、意外に知られていない消費税についての基礎の基礎をおさらいしておきましょう。わたくし山のキノコも税法について全くの素人ですので、自分が消費税について認識を深める為に、消費税法の条文にも目を通し、参考書を何冊も紐といて調べてみました。法令の条文を見るには、総務省の運営する 電子政府の総合窓口 イーガブ(e-GOV) で法令名を検索します。こちらが 消費税法 でありますが、見ていたら頭痛がしてくるので見ない方がよろしい。インターネットは全く玉石混交でありますが、(わたくしも、つまらない路傍の石を増やしています)たまに流れ星のように光る石があるのも間違いありません。で、消費税の基礎を学び申告など実務にもつなげられる推奨サイトは次です。アトラス総合事務所様の 『消費税パーフェクトガイド.com 』 がぴか一です。

●さて、冒頭に掲げた命題の真偽についての考察でありますが、その真偽の判断にかかわるところの消費税の規定を見ていきます。いくつかあるので項目毎に分けて考えます。ただし議論に必要な規定のみを見るのであって、この議論に関係ない部分は一切を割愛します。

1、消費税の「担税者」は最終消費者であるが、納税義務者は「事業者」であります。(消費税法第4条および第5条)事業者というのは個人事業者と法人をいう。(第2条3項)実際に消費税を払う人と、それを税務署に申告納税する人とが、まったく乖離している。(直接税ではなく間接税なので)トヨタ自動車は、エコだ何だと高邁なことを言っているけれども、営利を目的とする株式会社であって明白に消費税の納税義務者であります。

2、日本から外国に輸出するものには消費税が免除される。(消費税法第7条)に輸出免税が規定されています。トヨタ自動車が日本国内で販売するクルマに関しては消費税がかかるのでありますが、外国に輸出するクルマに関しては全く免税で、消費税がかかりません。

3、納税する消費税額の計算には、仕入れ物品に内包している消費税額の控除ができる。(第30条の規定)トヨタ自動車は最終消費者に売りつけたクルマの消費税を国庫に納めるのではなく、売った車の消費税からその製造に必要な部品等に内包している消費税を控除した額を納める。

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★孫請会社は部品を下請け会社に売り、対価の60万円をもらいます。うち消費税は3万円です。その3万円を税務署に申告します。3万円の消費税は下請会社からもらっています。

★下請会社は孫請会社から60万円で仕入れた部品をエンジンなど中間物にして、付加価値を加えて、100万円でトヨタに売ります。うち5万円が消費税です。その5万円は売値の100万円に内包しているから、トヨタからもらっているハズです。税務署への申告は5万円ではなく、仕入れに内包している消費税は控除できるので、5万円-3万円=2万円です。

★トヨタは下請けから100万円で仕入れたエンジンなどの中間物を組み立てて完成車とし、付加価値を加えて、消費者に200万円で売ります。うち消費税は10万円です。その10万円は売値の200万円に内包していますから、消費者からもらっています。税務署に申告するのは、仕入れに内包している消費税は控除できますから、10万円-5万円=5万円です。

★最終消費者はトヨタから車を200万円で買いました。消費税は10万円です。10万円を担税させられました。しかし消費者が税務署にいって消費税の申告をする必要はありません。

消費者が払った10万円の消費税を、トヨタが5万円、下請が2万円、孫請が3万円づつ分散して(計10万円を)国庫に納めています。流通の各段階で(生産の各段階で)分散して国庫に納入してはいますが10万円を出したのはあくまでも消費者です。

●難解な消費税を分かりやすくするために、模式図的な説明に堕してしまいました。現実はこんな単純な構図ではないと思います。しかし、これで消費税の正体は明らかです。
消費税は、最終消費者が負担しています。事業者が負担しているのではありません。 トヨタ自動車も、下請会社も、孫請会社も、1円の消費税をも負担しているのではないのです。消費税を払っているのは実際的にはわれわれ消費者です。事業者に納税義務を課しているために、事業者が消費税を払っているように錯覚するだけです。

●さて、ここでトヨタが外国にクルマを売る場合を考えてみます。消費税法第7条の輸出免税規定により、外国人から消費税を取ることができません。で、車の売値は200万円ではなく税抜きの190万円です。内税ならば200万円×105分の100=190万4762円です。(ま、そんな細かなことはどうでもよろしい)
しかしながら最終消費者から消費税がいただけないのに、仕入れ物品には消費税が内包されています。消費税法第46条の規定にのっとり仕入れで支払った消費税は還付してもらわないと損です。トヨタ自動車には還付申告して取られた消費税を取り返す権利があります。

    *************************

【結論】さて、以上で明明白白であります。これ以上検討する必要はありません。冒頭の命題はまったくの100%誤りであります。
トヨタは1円の消費税も払ってないのに、莫大な輸出還付金をもらっていてケシカランと、切歯扼腕・悲憤慷慨して息巻く人やブログが多いのですが、わたくし山のキノコが調べたところ全く何の問題もありません。トヨタも下請も孫請も実質的には1円の消費税も払っていないし、また払う必要もありません。消費税を払っているのはあくまでも最終消費者であり、最終消費者が払った消費税がトヨタや下請や孫請をたんに “素通り” しているのにすぎません。

これは、直感的に正しいと思われることと、実際に正しいこととは異なるという好例であると言えましょう…。本来ならばわれわれ消費者が1年間に物やサービスを消費したレシートを溜めておいて、税務署に申告に行けばよろしいのですが、その納税事務手続きを事業者にさせていることから、事業者が消費税を払っているように錯覚して見えているのであろうかと思われます。

【拙稿はまだ続きます】
消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(その2)豊田税務署は “TOYOTA税務署” なのか?
(前稿からの続き)

トヨタ自動車は、1円の消費税も納めていないのに、毎年、2000億円超の輸出戻し税(還付金)をもらっているのはケシカラン。トヨタとかキャノンなど輸出比率の高い大企業が牛耳っている日本経団連が、消費税の増率を強硬に主張しているのは、消費税の税率を上げれば上げるほど、輸出戻し税がたくさんもらえるからだ! ケシカラン。輸出戻し税はトヨタではなく下請けに払い戻すべきで、そうしないのは下請け・孫請けいじめであり不公平だ! トヨタが還付金をもらうのは事実上の輸出補助金であり、輸出補助金を禁止するGATT(関税貿易一般協定)違反だ!

という見方が一部で根強くあるわけですが、この命題は真なのか? 偽なのか? 妥当なものか? 的外れなものか? ごく簡単にではありますが考察してみたいと思います。

●まず、一体いくらの輸出戻し税(還付金)をトヨタ自動車がもらっているのか?は不明です。正確には分からないハズです。トヨタ自動車が「輸出還付金を○○億円もらいましたよ」などと公表しているわけではありません。公表などするハズがありません。しかし、トヨタ自身は税務署に還付申告しているわけですから、その申告が満額税務署に認められて戻ってくるのかどうか不明ですが、トヨタ自身は正確な還付金の金額を知っています。(ま、当たり前のことですが)
で、部外者がそれを知るには、推定する他はありませんトヨタ自動車・有価証券報告書等から推定するのです。トヨタは製造したクルマの国内販売・海外販売の数字を発表しています。また、その有価証券報告書のなかの 経理の状況 という章をみれば売上高や仕入れ額等の数字がわかります。セグメント別や地域別の情報が色々と明記してあるので、推定することは十分に可能でありましょう…。

●で税理士でもある湖東教授が次の表を作成されました。全商連(全国商工団体連合会)ホームページの記事『消費税収の23%が大企業へ トヨタ1社で2,291億円』から引用します。
湖東教授の作成した表

★2006年3月決算(2005年度のもの)の数字から試算されているようです。トヨタ自動車の総売上高101918億円や内輸出売上高65125億円という数字は、おそらく単独決算数字であろうかと思いますが、まもなく2012年3月期決算が発表される寸前になっていますから、大分古い数字であり、あちこち沢山の資料に当たりましたがわたくし山のキノコは表にある数字を再確認することができませんでした。この数字が間違いないものだとするならば、輸出売上は65125億円であるから、国内売上は36793億円となりましょう。
表からは仕入額が全く不明でありますが8割と仮定してみると、(36793億円)×(1-0.8)× 0.05 = 367億円、という計算になるので国内売り上げに納税すべき消費税の推定額の374億円はハッタリがなく妥当な数字であろうかと感じます。輸出戻し税額についてもその仕入れ額を8割と仮定するならば、65125億円 × 0.8 × 0.05 = 2605億円となるので、教授の算出した2665億円は妥当な試算でありましょう。
わたくし山のキノコは、湖東教授が作成されたこの試算表はまったくハッタリや誇張がなく、まあこんなものだろうと思います。

国税庁の発表する資料では平成17年度(2005年度)の輸出戻し税還付金は21814億円で、地方消費税分を合わせると2兆7000億円余りであろうかと思います。輸出比率の高い僅かの大企業が、輸出戻し税の多くをごっそりと持ち去っているのは、ほぼ間違いないと思われます…。また、教授の作成された試算表は何年も前のものですが、消費税還付に関する状況はなんら変っていないですから、年ごとの還付金額には増減があっても、トヨタが毎年2000億円超の輸出戻し税の還付を受けているのは間違いないでしょう…。正確なところはトヨタ自動車経理部に問い合わせるしかありませんが、たぶん聞いても言わないでしょう…。

●トヨタ自動車の本社があるところのトヨタ市を管轄するのは豊田税務署ですが、トヨタ自動車に毎月輸出戻し税の還付金を200億円ほど振り込まねばならないから、赤字税務署だとはよく言われるところです。
国税庁<名古屋国税局<統計情報(名古屋国税局) を閲覧して調べてみると、平成17年に豊田税務署で消費税の法人分に関しては、243億円余りの税収がありました。一方消費税の還付金は1295億円あまりです。その収支でいえばたしかに1051億円の赤字であります。
毎月200億円の還付をしていたら年間2400億円の還付で数字が全く合いません。豊田税務署はトヨタ自動車税務署じゃあない(他の法人事業者や個人事業者の申告もあるハズ)のですが、そのトヨタ以外の申告者があるということは、トヨタ自動車の還付金は1295億円よりも小さいということを意味してしまいます。消費税の申告は支店や事業所が独立して申告するのではなく、本社が全社分を一括して申告するのが原則だったと思うのですが(消費税法22条法人の納税地の規定により)、そうしますと豊田税務署の消費税に係る還付額が少なくないか? という疑問が生じてまいります。1295億円の還付というのは国税分でしょうが、地方消費税分を入れてもまだ少なすぎるので、巷間、流布しているトヨタは毎月200億円の輸出戻し還付金をもらっているというハナシと合致しません。(詳しい方がいらっしゃったならばご教示くだされば有難いです)

豊田税務署の消費税の税収と還付
↑国税庁のHPの統計データ数字を拾い出して山のキノコが作表した。豊田税務署は “トヨタ自動車税務署” なのか? 莫大な還付金はトヨタ自動車の係わるものであることは多分間違いないでしょう…。税務署は営利企業ではないので赤字などという表現は変ではありますが、常に還付金が大幅に上回っていて万年赤字であります…。

★消費税はもっとも難解な税金であるとされているようで、たしかに税理士でも国税庁職員でもない我々一般の者には複雑すぎます。調べれば調べるほど不明な点が次々に湧いてくるという感じで、身近だが分からない…、巧妙にとられていく…、くすぶり続ける益税問題…、などなど問題点が山積です。日本の消費税の税率はは5%であっても、税収額全体に占める消費税額の比重は20%超になり、この点は税率20%を越える欧州各国とそんなに変わらないのは、すでに広く知られています。しかし、何故その点にほうかむりして野田政権は消費税率を上げるのに前のめりになるのか? ということで野田政権にはわたくし個人的には、大いに反対の考えでございます。

(拙稿はまだまだ続きます)
消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(その1)消費税額の2割強が還付されている。
●何年も前から、巷間で次のようなことがよく言われています。かつて週刊誌に扇情的に書きたてられました。共産党の赤旗でも問題視していました。最近では新党日本の田中康夫がいっています。また、ネット言論空間でもこの主張は根強く繰り返して流布されています。
「トヨタ自動車は1円の消費税も払っていない。にもかかわらず、毎年2000億円以上もの輸出戻し税が還付されている。これは明らかにおかしい、不公平ではないか? トヨタをはじめキャノンであるとか輸出比率の大きい大企業の幹部が牛耳る日本経団連が、消費税の増率を強硬に主張している理由は、消費税の税率を上げれば輸出戻し税がたくさん貰えてトクするからだ。」

(注)なお、「輸出戻し税」などという税があるわけではないが、還付金を通称として便宜的にそう呼んでいるようであります。

消費税収の23%が大企業へ トヨタ1社で2,291億円 関東学院大学教授 湖東 京至さんが試算(全国商工新聞) 税理士であり、税法学を専攻する 湖東 京至(コトウ キョウジ) 教授が言いふらしている説のようです。ネット言論空間で流布している “トヨタは輸出戻し税還付を沢山もらってケシカラン” という議論は大部分が湖東教授の受け売りであるか、教授の説を下敷きにした言説のようであります。湖東教授はどのような媒体や場所で自説を主張しているのか、ちょっと調べてみましたところ、全国商工団体連合会 の新聞(部数30万部)・講演会・学習会が多いです。また、しばしば共産党の講演会等にも顔を出すようであります。全国商工団体連合会とは、その連合会傘下の会員には従業員9人以下の個人事業者が中心となっています。中小企業経営者の連合会のようであります。ということは、湖東教授の立場は大企業擁護の立場ではなく、あきらかに中小・零細企業擁護の立場に立脚して言論活動をしているようです。 

●湖東教授の主張はリンク先を閲覧していただくとしても、その骨子を箇条書きに要約しておきます。

【湖東教授の主張の要約】
1、輸出比率の高い大企業には、莫大な輸出戻し税がある。上位10社で
  1兆円にも達する。ケシカラン。

2、とくにトヨタ自動車には2291億円も税金が還付されている。トヨタ
  は1円の消費税も払っていないのに、これだけの還付金を貰うのは、
  実にケシカラン。

3、輸出販売には消費税が非課税という規定があり、消費税申告のさい
  に「仕入税額控除方式」という仕組みがあるためだが、それを悪用
  している。ケシカラン。

4、トヨタは納め過ぎた消費税を、返してもらっているのではない。ト
  ヨタは1円の消費税も納めたことがない。納めているのは下請けであ
  る。下請けが納めた消費税を トヨタが総取りして還付してもらって
  いる。実にケシカラン。

5、消費税とは、(納税義務者にとって)預かり金であるとされるが
  とんでもない。第二事業税だ!「輸出戻し税」は事実上の「輸出補
  助金」だ! 輸出補助金を禁止しているGATT(関税貿易一般協定)
  違反だ! ケシカラン。

6、政府はつねづね消費税は社会保障の財源だというけれども、トヨタ
  は社会保障の財源負担をするのではない。輸出戻し税という補助金
  で、戻ってくる社会保障費などということがあっていいのだろうか?
  信じられないトリックだ! ケシカラン。

【わたくし山のキノコの見方】
●湖東教授は、まあ、たいがい、切歯扼腕(せっしやくわん)・悲憤慷慨(ひふんこうがい)してトヨタはケシカラン! と息巻いております。わたくし山のキノコの見方は、この人本当に税理士なのか?大学教授なのか?、と思うのでありますが、ま、多分、おそらくリップサービスをしているのでしょう。地球温暖化でも原発問題でも何でもそうですが大学教授というものは、誰かの代弁をする、あるいは代弁をさせられる、お墨付きを与える役回りを演じさせられる、という場合には頓珍漢なことを口走るものです…。中小零細事業者の代弁をして、中小零細事業者が随喜の涙をながして拍手喝さい喜んでもらうために、あえて言っているのではないか? と、私は見ます…。
その背景には、大企業中心の日本経団連と、中小零細企業の全商連との、立場の差というか2項対立みたいなものが、その主張に色濃く反映されているということではないのか?

(気象学者となんとなく似ています。気象学者たちは、二酸化炭素が温暖化の原因じゃないとハラの中では思っているのに、政治的な圧力で心にもないことを口走るのに、とてもよく似ています)


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【以下、簡単なる考察】

さて、教授のこの主張は果たして正しいものだろうか? それとも、誤解もしくは作為による的外れな主張でありましょうか? ごく簡単に考察いたします。

●まず、国税庁HP>活動報告・発表・統計>統計情報>各年ごとの『統計年報』 を閲覧しました。そして、重要なる数字のみ抜粋して作表しました。

消費税導入後の還付金などの推移
↑国税庁が発表公開している統計数字を用いて、わたくし山のキノコが作表した。この表の数字を見ると、大まかに言って、消費税は 約10兆円弱が申告(納税)される一方で、約2兆円強が還付されている ことが分かります。直近の5年間分について、消費税の納税申告額に対する還付税額の比率を計算してみると、平成18年度は24.8%、平成19年度は27.5%、平成20年度は25.4%、平成21年度は18.9%、平成22年度は21.0%となっています。2割あるいは2割5分ほどが還付されています。

(注)なお、上の表は国税庁の統計データなので、平成9年度以降は、国税分の消費税(4%)であって、地方消費税(1%)が含まれていません。平成22年度分に関して言えば、約9.5兆円の申告(実際の税収と若干の乖離が生じる)があり、約2兆円の還付がなされると約7.5兆円の消費税収となりますが、しかし、地方消費税の税収を加味すると、一般的に言われている約10.0兆円の消費税収となります。(色々な数字が出回っていて極めて混乱的なように思います。その数字が地方消費税の分を含むのかどうか、還付金額を相殺した数字か否か、などを確認する必要があるように思います…)

なお、消費税導入後の重要な変更点は、次の通りであります。
平成元年4月1日 消費税法が施行された。税率は3%
平成9年4月1日  税率5%(消費税4%+地方消費税1%)になる。
平成16年4月1日 消費税課税業者の免税点が、売上3000万円から
         1000万円に引き下げられた。
平成16年4月1日 価格表示が外税方式から、内税方式(総額表示)に
         変更された。

(本稿は続きます)
太陽光発電所の、日々の発電データからその日の天気が読みとれる。
●東京電力は、喜んでしているのか? いやいやしているのか? 悪法によりさせられているのか? 全く不明でありますが、昨年から今年にかけて3箇所のメガソーラー発電所を始めています。
東京電力HPトップ>社会・環境分野の取り組み>再生可能エネルギーの取り組み>太陽光発電(メガソーラー)
を閲覧して、すこし考えてみました…。


浮島太陽光発電所 神奈川県川崎市川崎区浮島町
         最大出力 7,000kW
         推定年間発電電力量 約740万kWh
         推定施設稼働率 12.06%
         太陽電池パネル枚数 約38,000枚
         運転開始日 平成23年8月10日
 
扇島太陽光発電所 神奈川県川崎市川崎区扇島
         最大出力 13,000kW
         推定年間発電電力量 約1,370万kWh
         推定施設稼働率 12.03%
         太陽電池パネル枚数 約64,000枚
         運転開始日 平成23年12月19日

米倉山太陽光発電所 山梨県甲府市下向山町
          最大出力 10,000kW
          推定年間発電電力量 約1,200万kWh
          推定施設稼働率 13.69%
          太陽電池パネル枚数 約80,000枚
          運転開始日 平成24年1月27日

●施設の概要については、東京電力のホームページをそのまま書き移しました。推定施設稼働率については、わたくし山のキノコが計算して付け加えました。計算式はつぎの通りです。
{(推定年間発電電力量) ÷ (最大出力 × 24時 × 365日)} × 100

東京電力が、施設稼働率を12~14%と見込んでいるのは、おおむね妥当なところだと思います。数は少ないけれどもあちこちのメガソーラー発電所での、公開されている発電電力量の実績はこんなものです。しかしながら、さすれば、発電連力量が少なすぎる! ということがいえそうです。現実には太陽光パネルはその発電能力の1割強の発電しかできないのが、補助金を流し込み、さらに、ソーラー電力の高値買い取り優遇措置を講じなければ、世の中で存在しえない根本的な理由です。

●太陽光パネルは、そもそも夜間は発電出来ず昼間だけです。それによる実際の発電電力量は50%に低下。昼間といっても太陽高度の低い朝晩は少ししか発電できません。で、50%が半減して25%です。しかし雨の日も、曇りの日もあります。晴れていても雲が流れてきて太陽を隠します。それから沢山の枚数のパネルを接続していると1枚不都合が生じると全体の出力低下につながります。天気が続くとパネルに泥ホコリが付着して、これも出力低下の原因になります。黄砂でも飛んでくると大変です。あれやこれやの悪材料で25%がさらに半減して12.5%なのであります…。
結局、1割か1割半なのです。定格出力などなんの意味もありません。最大出力などというのも最適の条件の時にそれだけ発電することが可能というだけです。1日24時間のうちの太陽が南中する前後の2時間づつ、しかも快晴のときだけは、というだけなのです。

●しかも、生産された電力は最低の品質!です。変動する不安定電力です。当たれ前のことですが、電力というのは需要量に即応して出力調節せねばなりません。しかしソーラー電力は出力調整などやりようがありません。その点、一定の出力運転ができる原発はベース電源にすることができるので、電力の質という観点からはずっとましです。不安定電源の太陽光発電は原発にも劣る劣等電源であります。(ただし、これは原発擁護・推進の意味では全くございません)

●何言ってやがるんだ! 大容量電池や揚水発電所やスマートグリッドなどを推進すれば不安定電源も安定化できるじゃないか! という苦情が飛んできそうですが、それは膨大なコスト・資材の投入を意味します。さらなる補助金の流し込み、1kWhあたり42円どころか80円ぐらいで買い取らねばならないでしょう…。電気代が2倍3倍と青天井に上がってきますよ。でも、それらでメシを喰っている業者は大喜びです。ソフトバンクの孫正義社長も大喜びであります。国民やエコを叫ぶお花畑たちが幻想をもってくれているので、彼らはウハウハ笑いがとまりません…。このままじゃ、グリーン日本も2~3年先には、ドイツやスペインみたいに “グリーンバブル崩壊” で塗炭の苦しみを味わうことになるでしょう…。賭けをしてもいいです。

      ********************

東京電力は、なんと、メガソーラー発電所の発電状況のデータを公開しています。 全く驚くべきことであります。風力発電でも太陽光発電でも、発電事業者たちはなかなかデータを出したがりません。恐らく、あまりにも変動しすぎるし発電電力量が少ないので、こんなものダメじゃないかと、実態がバレるのを恐れているのでしょう。それを東京電力はインターネット上で堂々と公開しているのは驚きです。(こんなものダメじゃろうが、やっぱり、原発をせにゃ仕方ないんだよ、と誘導するのが狙いなのか?)

★さて、浮島太陽光発電所での5月15日~5月21日の1週間の発電データから、読みとれるその日のお天気を推定してみましょう。

【5月15日(火曜日)】
5月15日
↑5月15日は、厚い雲が垂れこめています。雨が降ったかどうかは不明でありますが、雲が全天を覆っているのは間違いありません。雲は雨を降らせる可能性のある低層雲が覆っていますが、時折、雲が薄くなりました。とくに朝9時過ぎには一瞬ですが雲が途切れてすこし青空がみえました。本日は、発電らしい発電はできませんでしたから、バックアップする火力発電がフル稼働でした。太陽光発電は役立たずでした。これから梅雨になると太陽光パネルは連日役立たずです。で、火力発電の施設縮小など絶対にできません。

【5月16日(水曜日)】
5月16日
↑5月16日は、一応晴れでありましたが、雲はけっこう多かったです。高層雲が覆ってどんよりとしているというのではなく、シャキッと青空に点々と雲があるという天気でした。その雲は主に雲底高度1500mぐらいの積雲でした。ときどき大きな積雲が太陽を隠して、ソーラー発電の出力低下がおこりました。雲が出てくると一瞬で出力が半減するので大変でした…。

【5月17日(木曜日)】
5月17日
↑5月17日は昨日とほぼ同じ天気でした。一応は晴れでした。昨日ほどではないのですが時折雲が湧いてきました。昨日と異なるのはごく薄い高層雲がでていて僅かに高曇りという感じだったことです。特に夕方15時以降に西の空で高層雲が僅かに厚くなって太陽を少し遮りました。

【5月18日(金曜日)】
5月18日
↑5月18日は、変な天気でした。一応晴れては居ましたが、雲がおおかったです。その雲は対流性の積乱雲で、北西の空から次々にながれてきました。ちょうど冬のしぐれ雲が流れてくるような感じです。大きな雲の塊が来ると雨がパラリと来ましたが地面が濡れるほどではなく、すぐさま晴れました。今日1日中晴れたり曇ったりの繰り返しでした。太陽光発電出力は猫の目のように目まぐるしく変化して、とんでもないことになりました。

【5月19日(土曜日)】
5月19日
↑5月19日は、1日中よい天気でした。ただ午前中はずうっとうすい霞のようなものがかかり空が乳白色でした。午後になるともやみたいなものが消えました。夕方にはごく小さな積雲がパラパラとあらわれました。しかし、まあ申し分のない晴れでしたので、太陽光発電グラフは綺麗なサインカーブ(横軸の上半分)を描きました。

【5月20日(日曜日)】
5月20日
↑5月20日、これは鋭角的な不思議なカーブを描いています。19日の綺麗なサインカーブと比べると異様な形状です。午前中の9時・10時台と、午後の1時・2時台に日照を減衰させる「何か」があったようです。一番考えられるのは移流霧かな?と思います。立地場所が東京湾沿海地のようなので、北東気流により海上に薄い霧が発生し太陽光パネルを覆った、しかし、正午前後は強い日差しで一時的に霧が晴れたとすれば、説明がつきそうです。

【5月21日(月曜日)】
5月21日
↑5月21日は金環日食の馬鹿騒ぎの日でしたが、朝の7時台の出力は19日では3000kWぐらいです。しかし21日はゼロに落ち込んでいます。6時台に僅かに発電できているので、雲が出たのではなく、日食の影響ではないか?日食で太陽放射強度が急激に相当低下したのではないか? 自然界のあらゆる変化は指数関数的な大きな変化をするのですが、人間の感覚器官だとか、脳での情報処理が、その指数関数的変化を対数関数に変換してとらえている(無意識のうちに)ので、見た目以上に遥かに暗くなった…、と思われます。
(たとえば、明るさが10分の1になっても感覚的には2分の1、明るさが100分の1になっても感覚的には3分の1ていどにしか感じられない。 有名な ヴェーバー‐フェヒナーの法則 です。)

★ところで、19日のグラフがよくわかるのですが、11時台を対称軸としてほぼ左右対称のカーブになっています。対称軸は12時じゃあありません。また、朝5時台には少し発電できていますが、夕方6時台には発電はできておりません。これは狭い日本でも時差があるためです。日本標準時の基準は東経135度ですが、川崎市は東経140度ほどですから20分ほどの時差が生じます。11時40分ぐらいに太陽が南中します。そのために11時台が対称軸になるのです。(経度15度で1時間ずれる)
もっと、曇れ!  雨よ、降れ!
2012年5月19日09時に気象庁が予想したところの、5月21日09時の地上天気図であります。 世紀の天体ショーだなどと喧伝されて、たとえば日食グラスとか減光フィルターなどのグッズを売り付けようとする便乗商売人まで踊っております。肝心のお天気がビミョウーに厳しい状況であります。
5月19日09時に予想の、21日09時地上天気図
↑1週間先の予想図であれば外れるのでありますが、2日先ではそう外れないでしょうね。商売人もあてが外れそうです。近畿圏で金環日食を観察しようとするならば、南紀串本あたりの旅館に泊っていて、朝に金環日食を観察するのが宜しそうで…。でも、紀伊半島南部は降雨の可能性が計算されているようで…。近畿北部に行けば太陽が拝めるかもしれませんが、金環日食帯から外れそうで…。どうやら、あーあ、残念でございました、ということになりそうです。ちなみに、わが淡路島・南あわじ市は金環日食帯の中にかろうじて入っているようですけれども、しっかりとした厚い中層雲に覆われる、と個人的には予想しています。

●ま、それでいいんじゃないでしょうかねえ? 前の、トカラ列島から硫黄島にかけて見られた皆既日食のときもそうでしたが、馬鹿騒ぎをしすぎであります。たんなるお祭り騒ぎでしかありませんでした。皆既日食を観察して、そのために太陽についての関心が深まり、たとえば若者が(高校生が)地学という科目を履修して学ぼう、さらに上級学校へ進んで太陽物理学を専攻しようなどのハナシが増えたかというと、全然そんなことはありませんでした。たんなるイベントとか運動会などと同じでありました。タチの悪いのはマスコミで、煽りたてる…。折角の金環日食なのだから、若い人も社会人も太陽について学ぶ機会にすべきなのに、馬鹿騒ぎのイベントにしてしまうのは残念であります。商売人が跋扈しお祭り騒ぎになりさがるのであれば、馬鹿騒ぎを戒めるために、いっそ曇って雨が降るほうがよろしい…。

●金環日食の観察に意義がないとは申しませんが、人類が重大な関心を持つ必要があるのは、日食ではありません。日食など地球上では毎年どこかで起こっている現象であって、別に特筆すべきものでもないし、大騒ぎするものでもありません。人類が本当に気にするべきことは日食などではなく、今後の太陽活動の推移でありますそれによって人類は大きな影響を受けるハズです。(日食では人類は大して影響をうけない。)

近年、太陽活動の低下が懸念されています。 太陽物理学の研究者とか、観測機関から太陽黒点の減少が報告され、それに伴う気候変動の可能性がささやかれています。ハッキリと地球寒冷化が起こるのではないか?と口にする(文章で書く)専門家が増えてきています。日食などよりも、太陽活動低下による気候変動のほうがよほど重要です。馬鹿騒ぎに浮かれている状況じゃありません。以下のグラフは Solar Influences Data Analysis Center(SIDC) のサイトで無料で閲覧できます。

太陽黒点のサイクル24の立ち上がり状況
↑サイクル23が終わり、現在はサイクル24が進行中です。グラフは今年4月までのデータが記入されています。来年2013年5月に太陽黒点の極大期(ピーク)を迎えると予想されているようです。が、黒点増加の立ち上がりに勢いがあまりなく、サイクル24はあまり活発にならないという見通しの方が多いらしいです。

直近の5個のサイクルの推移
↑サイクル19から直近のサイクル23までの黒点数の推移です。一つのサイクルの周期は平均すると11年だと言われていますが、太陽活動が活発なときは短くなり、太陽活動が低調な時には長くなるというのがよく知られています。サイクル23は12.6年と異常に伸びております。

過去312年間の黒点数の推移
↑過去300年ちょっと(1700年~2012年)の太陽黒点の推移であります。グラフの左のほう1650年~1700年頃には、太陽黒点がほとんど現われなかった有名な “マウンダー極小期” があります。また1810年、1820年頃は “ダルトン極小期” で太陽黒点が少なくなっています。これらの黒点極小期の頃は、気候は小氷期であり、かなり寒冷な気候になったことが知られています。イギリス・テムズ川が全面氷結して、氷上で市(いち)が開かれたとか、日本でも大阪・淀川が氷結して歩いて渡れたとか、驚くような記録があります。黒点の増減の大周期と気候変動が見事に相関しているのはよく知られています。政治的な思惑で気候変動の要因を二酸化炭素のせいだなどとしていますが、多くの関連の研究者たちはハラの中じゃ、二酸化炭素じゃねえだろ、太陽活動と一致しているじゃないか、と思っているのが関連の資料とか論文を読んでいると、ありありと出ているように思います…。

たとえば、理科年表オフィシャルサイト に太陽黒点の長期変動に関する解説がありますが、「黒点数周期は太陽の活動周期とも呼ばれる。黒点数周期は太陽輝度の変化と連動していることがわかり、この長周期変動は地球の長周期気候変動との関連を示唆する」などと言っています。地球の気候変動(気温の変動)は太陽活動が原因なんだよ、とチラチラと言外に多くの研究者たちが言い始めているのです…。(それにしても、マスゴミは地球温暖化を言わなくなりました)
淡路島文学 第七号 を読んで。             宇津木 洋 『風紋』 を鑑賞する。(その2)
   <その1からの続き>

『風紋』です。砂の上に出来るから「砂紋」とも言うらしい…
砂漠に生ずる砂紋
↑ナミビア砂漠の砂紋です。Wikipedia「砂紋」から抜粋引用。すこし画像を加工しました。砂漠の上を吹き渡る風が、砂を移動させマカ不思議な模様をつくっています。周期的な模様であるようにも見えるし、そうではないようにも見えます。吹く風の強さ、吹く方向も必ずしも一定ではないので、風というのはそもそも乱流でありましょう。また、風の強さも強弱の息をする揺らぎがありましょう。移動する砂の側の事情をみても、星の数ほどもあろう砂粒も大小あります。その形状も千差万別であります。どのような模様ができるのか? それは砂の粒子の大きさ・形状・風の風向・その強弱…、風紋を解析する数式のパラメーターは沢山考えられ、完璧に定式化することも難しく、仮に定式化したところでその数式の解を求めたとしても、これこれこういう風のときはこの模様のパターンだ、とそう簡単に言えないに違いありません…。

変幻自在で解析不能な風紋パターンは、むしろ経験則にのっとって、たとえば5月の△△から吹く風では○○の模様になることが多い…、秋10月の風ではこのパターンが頻出する…、などと沢山の観察例を積み上げてそこから何かしらパターン性みたいなものを抽出・帰納するほうがいいのかもわかりますん…。ようするに、どんな時にどんな紋様ができるのか、記述したり、正確に予測などできませんな、とわたくし山のキノコは思うのであります…。

こちらは水面(みなも)にできた風紋であります。 波紋ではありません。波紋とは、発生の中心すなわち波源があり、同心円状に外に向かって放散していく紋様でありましょう。風紋は同心円状ではなく、一定方向に並んでいてそして進行していくもので、(物理的には水の粒子がその場所で振動しているだけでしょうけど)明らかに相違しています。
池面(いけも)を吹く風が作る紋
↑これは自家製の写真です。画面の右から左の方向に強風が吹いています。この写真を撮った頃にアメダス南淡で最大瞬間風速15.0m/sを観測しています。砂漠の紋様と酷似しているのですが、かなり違います。砂粒は大小の大きさがありますが、水の分子には大小は多分ないでしょう。質量が約2倍の重水素から成る水の分子は一定の割合で存在するのでしょうが、分子はあまりにも小さく、水分子1個1個に風が作用することなどは考えにくいです。砂の構成粒子は大小あり均質ではない反面、水を作る分子は均質で一様な、という違いがありそうです。それに固体物質と流体物質という違いもありましょう。それで、風が砂上に描く模様と水面に描く模様とでは違いがあるのかもしれません。画家が同じ絵筆で同じ手法で絵を描いても、キャンバスの素材が布であるのか紙であるのかで微妙に異なるみたいなものかもしれません…。ま、これとて山のキノコの妄想であり、実際のところはよく分かりません。

●さて、つねに似たようなパターンが出現するけれども、よく見れば、その都度その都度ビミョウーに紋様は異なり、2つとして同じものがあり得ない。その瞬間毎に現われた紋様は唯一無二のものであって、全く同じ紋様が現われることなど決してないのであります。指紋と同様に、同じ紋様が出現する確率は無限小であります。800年まえの古人が見事に喝破しています。

行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくの如し。 
                   ―― 鴨長明『方丈記』――

★尽きることなく流れていく川の水は、本当に絶えることがありません。しかしよくよく観察しますと、10分前に目の前を流れていった水は今はずっと下流にあります。今まさに目の前にある水も10分後ははるか下流に流れ去っているハズです。水はいつでも常に目の前にあるのですけども、その水は10分前の水ではなく、また10分後の水とも違います。水は定常的に常に変わることなく流れて目の前に存在していますが、目の前の水は常に新しい水であります。元の水では決してないのであります…。

★淀みに浮かぶ「あぶく」も、世の中にある家も人も全く同じです。あぶくは出来ては消え、消えては出来ます。家も古い家が壊され新しい家が作られます。生まれ死ぬる人も何処から来たりて、何処へと去るのか分からず、50年たてば周囲の人々の顔ぶれもすっかり変わっています。この世の中のあり様を端的に記述すると、消滅と生成、破壊と建設、死去と誕生のサイクルの連鎖なのです。そのサイクルの無限の繰り返しなのです。しかし注意すべきことは、それは円環をぐるぐるとめぐる無限の輪廻転生であるように見えるけれども、しかし単純な繰り返しではけっしてありません。その一つ一つのサイクルは、唯一のものであり、全く合同なサイクルということは起こり得ないのであります…。その意味では円環の循環ではけっしてなく、一方向に進む不可逆的な流れと言うべきかもしれません…。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もついには滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
                  ――『平家物語』の冒頭 ――

★インドにあるという祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)という寺の鐘の音色には、この世に存在するあらゆる物には実体がなく、むなしく、永遠に存続するものなど何一つもないんだよ、と言っているような寂寥たる不思議な響きがございます…。また、これもインドにあるという沙羅双樹(さらそうじゅ)という樹は、ナツツバキだとか、諭鶴羽山にも自生するヒメシャラの樹に似ているらしいのですが、その白くて楚々とした花の色は、権力の頂点を極め、どんなに栄耀栄華を誇ったとしても必ず衰退し没落するときはやってきます。と、そういう人の世の法則を表しているような気がするのです…。権勢を誇り威張っている人も、何時までも頂上にいられるわけではありません。それは春の夜の幻か、つかみどころのない蜃気楼みたいなものですよ。権力を握り、乱暴狼藉をはたらき、横柄に威張り散らしている者は、結局いつかは必ず滅亡するのです。それは、ひとえに風に吹かれて飛んでいく塵みたいなもので、はかなく、空しいものなのでございます……。

      ……………………………………………………

淡路島文学 第七号 宇津木 洋 『風紋』の書評
【作品のタイトルの付け方の巧みさ、凄さ】
宇津木 洋 の文章はリリシズムのある上質の文章で、よい作品を書き続ける安定感があります。このたびの作品も抒情性があふれています。今回の作品のタイトルが何故「風紋」なのか最初は全く理解できなかったのであります。なんだか奇妙なタイトルだなあと、最初はまったく分かりません。読み進めてもまだわかりません。しかし70枚のこの作品を読み終わると、なるほどそうなのか! と一瞬で疑問が氷解するという、そんな題名なのです。読了してはじめて「風紋」がぴったりの題名であるし、また「風紋」以外に題名を付けようがない…、ということが了解できるのです。今回は題名のつけ方に凝ったのだなあという印象であります。題名の付け方の巧みさ、凄さに驚かされました。

「風紋」と「人の世の遷移」の等価性…、とでも表現すべきなのか、結局、同じものだということを宇津木は表現しているのです。で、本エントリーの冒頭から2葉の写真をまじえて累々と書き述べた拙文が宇津木洋『風紋』の書評(感想)であります。

砂の上にできる風紋も、水面にできる文様も、人と人との生者必滅・会者定離がおりなす織物の模様も、結局みな同じだということであります。全体的には人の世は常に一定の姿を顕しているということでは定常的であります。人が居て人があつまり集団を作っているということでは30年前も今もそう変わりません。しかしその集団全体では見かけ上は同じような姿を保持していても、その集団の1人1人をよく観察するならば、古い人と新しい人とが常に交替しています。個々の部分部分では流動的でつねに変化しているのです。これは「動的平衡」だと換言できましょう。それを800年前の隠者文学の傑作『方丈記』ではレポート風に表現しました。まったく同じことを宇津木は小説として表現したのです。

ゆえに、宇津木作品の『風紋』は古典の名著『方丈記』に比肩する秀作といえましょう…。
淡路島文学 第七号 を読んで。             宇津木 洋 『風紋』 を鑑賞する。(その1)
淡路島文学 第七号 が発行されました 
2012年4月発行。頒価千円(税別)発行所は「淡路島文学同人会」
〒656-0016 兵庫県洲本市下内膳272-2 北原文雄方
小説・詩・随筆10本が並び、島内主要書店で好評発売中であります。

●淡路島では各旧町ごとに俳句や雑俳の結社があり、島内いたるところに句碑が建てられるなど、短詩型文学の創作が盛んであります。けれども、小説や随筆などの散文学の創作はかならずしも盛んではなく、散文学不毛の地だと言われてきました。そんななかで『文芸淡路』が興され23号まで発行したのちに休眠、その後に誌名を『淡路島文学』と改名して冬眠から覚め、このたび第7号にまで漕ぎつけた模様です。“同人誌は3号誌” であるとよく言われます。3号まではなんとか発行できても、それ以降が続かない、ということを揶揄してあるいは自嘲していう言葉です。実質は第30号にまで続いているのは、のんびりしているけれども粘り強い島人の底力なのだろうか? この実質30号まで続いたという事跡などを勘案するならば、もはや淡路島は散文学不毛の地とは言えないでありましょう。元同人のなかから「文学界新人賞」などを受賞する書き手も排出しているそうでありますから、淡路島の散文学的土壌はけっこう肥沃であったと言えるのではないか?

●第7号には同人10氏の作品群が掲載されています。各作品の傾向には “多様性の豊かさ” が観察できます。身辺雑記ふうな生活記録的なもの、人生回顧録ふうな自叙伝的なもの、若かりし頃の反省文・懺悔録か?というもの、だけでなく、SFファンタジー的な手法を取り入れた寓話的作品、地域の現代史を克明に写し取る記録文学的なもの、社会のある事象を鋭くえぐり出す告発文的なもの、内面の深層心理のゆらぎを端正な文体で書く心理小説ふうなもの、などがズラリと並んでいます。表現は容易であるけれどもその解釈が難解で意味深長なポエムもあり、本誌に異彩を添えております。

淡路島文学 第七号

淡路島文学 第七号 目次

●発売されるとすぐに手に入れておりましたが、仕事が案外に忙しかったのと、シャクナゲ観察会を企画してその準備に大わらわでなかなか読めなかったけれども、ようやく『淡路島文学 第七号』を通読することができました。そこで、大胆にも書評をしたいと思います。力作・秀作がズラリと揃っていて目移りするのですが、全作を論評していたならば10回連載の記事になり冗長なので、ただ1作を選抜いたします。やはり、その特筆すべき “文体の華麗さ” および “描いている根源的テーマの普遍性” の観点から宇津木 洋の『風紋』が、他作より1ランクあるいは2ランク上に突き抜けているように思います。第7号の巻頭を飾る『風紋』が本号の大黒柱であることは疑いようもありません。


宇津木 洋『風紋』(70枚)についての感想
【作品の梗概】 
 作品は、中古の自動車を買い換える場面から始まる。隆文は中古車店の店頭を、敬虔な巡礼者が聖地を巡るかのように、中古車店を巡って物色した。どのように品定めをしたらいいのか? その知識がないので良い買い物ができるだろうか? 沼からメタンガスが湧くように、迷いや思案がふつふつとわき上がってくるので、しまいには仏壇に手を合わせた。それは何の意味もないことだけれども、心配のあまり、ご先祖様のご加護のあらんことを乞い願った……。

 翌日は孫の宮参りの予定であったが、いとこの新田モリヒロさんの訃報が飛び込んでくる。モリヒロさんは隆文よりも10歳以上年行きであった。雑俳をしていた。お悔やみに駆けつけたところ、隆文には見知らぬ顔ばかりが並んでいる。隆文は若いころのモリヒロさんや祖父のサイゾウさんや昔の人々のことを思い浮かべるが、周囲の人と交わす言葉もなく、新田家を辞去した。とり急ぎのお悔やみを終えると、中古車の物色の続きである。隆文には少し優柔不断というか、思案し過ぎというか、なかなか決断できないところがあった。それで店の前を行ったり来たりしたけれども、意を決して店主と交渉しめでたく売買契約が成約した。

 翌日は新田家のお通夜だった。モリヒロさんの弟のヨシヒロさんが駆けつけていた。隆文は子供のころに夏休みのあいだ新田家に預けられたことがあった。それで何十年も前の昔のことが走馬灯のように思い出された。ヨシヒロさんは昔は闊達な人であったが、お通夜の席では次第に寡黙になっていった。親族の世代交代はいかんともしがたく、昔の新田家の人々はもうほとんどいない……。隆文やヨシヒロさんの時代の人々は、祖父や祖母も、伯父も伯母も、いとこたちも、みんな世を去っている。いま集まっている多くの顔を隆文は知らなかった……。

 さて、しばらく後に、中古車を買った店の前を通ったら店が空っぽであった。すわ、前金を盗って夜逃げか? と思ったが、調べてみると店舗を移転していた。人だけでなく、店も、閉鎖とか新規開店とか移転など、移ろいでいくものなのだろう。千古不易とか永遠不変などありえない……。ものごとは、風に吹かれる塵のように、移動・異動していくものなのだ。

 3か月ほど経って、こんどは叔母の高木トミコさんがなくなった。この叔母は、元は隆文の従姉であったが、隆文の叔父と結婚したがために叔母になったという複雑さがあった。民法的には、4親等でもあるし3親等でもあるということだが、隆文は幼少期に実母を亡くしたので、この叔母が何かと世話をしてくれた。その叔母の家族も次から次へと亡くなっているのだ。娘のヒサコさんが癌でなくなり、長男のテツオさんも心臓発作でなくなった。周囲の人々が次から次へと帰らぬ人となっていくのである。その叔母の葬儀が終わり、初七日の法要で、隆文の隣に故人のトミコの姉妹ミサコさんとサカエさんが座った。昔、おしゃべり3姉妹といわれ饒舌で鳴らした姉妹だ。一人欠けてもよくしゃべる。ひとしきりしゃべったあと姉妹は言う……。

「残ったいとこは4人になってしまったね」
「うん、このまま別れたらもう会えないかもしれないね」
「出会えてよかった」

【寸評】
晩秋の鐘の音のように、なんとなく哀愁を帯びた余韻の尾を響かせながら、作品を締めくくっています。生きとし生けるものには「死」は必然であり、不可逆的であります。どうしようもありません。生者必滅、会者定離はあらがいようのない世の定めであります。生きている存在が、生きていることに起因するところの、苦しみ・不安・辛さ・宿命といったものから、逃れられない哀しい現実を抒情詩的な文体でサラリと描き出しています。なかなかの秀作であります。

   <本エントリーは、その2に続きます。>
シャクナゲ観察会の総括、および、来年のシャクナゲ観察会の予定。
2012年 ホンシャクナゲ観察会の総括をしておきます。
●過日の5月13日に、諭鶴羽山系の奥深くの、人跡も希なる尾根でシャクナゲの観察会が盛大に行われました。わたくし山のキノコは必ずしも主宰者ではありませんでしたが、連絡人として案内のチラシを作成し、あちこちに配布を致しました。風車反対運動で活躍をしているランクルさんが全面協力くださいまして、市民運動をしている仲間の26人にメールでチラシを配布し、情報拡散に尽力くださいました。また、なんと拙ブログをご覧になった方からも参加の申し込みがありました。そのようなことから全部で10人もの参加者があり、盛会裡のうちにシャクナゲ観察会を催行することができました。

●辺境の過疎地にかろうじて生存する拙ブログなど、誰も見ていないでしょうけども、この場をお借りして、参加者の皆様方に御礼を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。

●とりわけ、淡路島の植物などの自然調査の第一人者の I 先生のご参加を賜わりました。参加者が樹木の名前など聞いたら、たちどころに何でも分かりやすく教えて下さり、大変よい勉強になりました。また、その分野では名前の知られた育種研究家であられる H さんのご参加を賜わりました。シャクナゲの尾根では種子の採取のしかた、播種のしかた、接ぎ木のやり方など栽培技術的なことを、指導してくださりました。参加者も熱心に真摯に耳をかたむけました。また昨年に続いて2回目の参加者のランクルさんは、話上手で話題も豊富、ニホンミツバチを飼育して2升の蜂蜜を得ることができたとか、工事のための工事であるところの、不必要な離岸堤を兵庫県が作ったため、潮流が変化して五色浜がやせ細ったなどの、貴重な話を聞かせてくれました。今年の観察会は専門家が参加してくださったので、野外の学習会、情報交換会となり、たんなるお花見ではなく、貴重で有意義な観察行とすることができました。

山道を登る参加者一行。
↑ウバメガシやイスノキが多く、岩石も多い尾根を登ります。

シャクナゲの尾根で写真を撮る
↑小一時間でシャクナゲの尾根にたどり着き、写真を撮ります。

枯れ木に登って写真を撮る
↑先生が枯れたマツの幹に登って写真を撮っておられます。この枯れ木に登るには体重制限がありそうな感じです。

●さて、シャクナゲの開花状況でありますが、やはり裏年です。花は昨年の10分の1というところです。花が一つもついていない個体が多かったです。花があったとしても、数個がパラパラとあるという程度です。その樹の樹冠を埋め尽くすように咲き誇る個体は2、3本しかありませんでした。また遷移が進んで林床がうす暗く、シャクナゲの幼木がまったく見られず、成木も樹の先の方に葉をつけているだけで、すそ枝はハゲ上がっていました。このシャクナゲ自生地の将来はかなり危ういと思われます。後継樹が生育していないのが大きな懸念材料であります。林床が暗過ぎて幼木が育つのには光量不足なのか? 心無い山野草マニアによる観賞用採取圧もありそうです。シャクナゲはシカの不嗜好植物であるという報告が沢山あり、シカはシャクナゲの葉を食べないというのが定説であります。しかし、もしかしたらシカが食べたのか?という疑いも出ましたが、良く観察すると、シャクナゲの低い枝の葉を全然食べていないのです。シカは人間の背の高さの葉は十分に食べることができます。でも食べていないし食害の痕跡が見られません。したがいまして、シカの食害というのは考えにくいところであります…。

シャクナゲの花
↑ホンシャクナゲという種類です。花冠は7裂で、葉の裏面にはツクシシャクナゲのような赤褐色の毛がありません。

この木には花が多い
↑この木には花がたくさん着いていました。

★登山道には、けっこう難所というところもあったのですが、けが・事故もなく全員無事に下山ができまして、お開きとなりました。観察会終了後、ランクルさんは猪鼻川で川釣りに挑戦されたようですが、釣果は名前の不明な魚が2匹です。小さいので金魚鉢で飼うことにしたそうです。参加者のなかから良い観察会だった、来年もしようと言う声が異口同音に上がっております。

で、鬼が笑うなど何の屁の河童! さっそく来年2013年のシャクナゲ観察会の予定を発表いたします。あまり大勢でシャクナゲの根を踏みつけるのはよろしくない、と育種のプロからご指導たまわりましたので、先着20名様までとさせていただきます。


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2013年のシャクナゲ観察会
の日程でありますが、当たり前のことですが、人間側の都合ではなくシャクナゲの開花状態に合わせるしかありません。

【シャクナゲ観察会 催行予定日】
第一候補日は2013年5月12日(日曜日)です。
第二候補日は2013年5月6日(月曜日・祭日の代休)です。
どちらにするかは1月~3月の気温次第です。暖冬ならば5月6日、厳冬ならば5月12日であります。春のソメイヨシノの開花状態がシャクナゲ開花予想の指標になると思われます。

【シャクナゲ観察会 催行場所】
場所はやはり今年と同じ尾根です。他の場所は林道が狭くて駐車する場所がなかったり、あるいは自生地にいたるアプローチが、長大な距離を歩く必要があります。なお、屈強の男性ばかりであれば別の尾根でも可能ではありますが、女性が混じっていたならば今年と同じところです。

【シャクナゲ観察会 催行人数】
1人~20人です。先着20名様であります。あまり参加者が大勢だと、シャクナゲの根を踏み固めて自生地に悪影響が出ます。つきましては20人になり次第締め切らせていただきます。1人~というのは、万一、誰も来なくても、わたくし山のキノコが1人でも見に行くという意味であります。参加人数の制限がございますので、希望者は早めの申し込みをお願いします。お申し込みは、メールフォームで山のキノコ宛まで。なお、参加費は全く無料です。そのかわり自己責任にてのご参加をお願いいたします。

【留意点】
健脚向きの観察会です。72歳まで。それを越える場合はご家族の同伴をお願いします。
2013年はシャクナゲやオンツツジは表年であります。
シャクナゲは夏前に花芽分化し急速に蕾が膨らんできます。9月にもなれば翌年の開花状態がハッキリと予測できます。
若葉寒(わかばざむ)が、シャクナゲを散らさずに、待ってくれています。
●本日は5月11日です。あさって5月13日に、淡路島の諭鶴羽山系に自生する ホンシャクナゲ観察会 をとり行います。現在のところ参加を表明下さった方は、私も含めて9人です。あんまり何十人もこられたら困るのですが、(地権者の許可を取っていないのと、大勢だと必ず身体に故障をきたす参加者が出るので)あと数人の増加ならば大丈夫です。淡路島の自生のシャクナゲを見られる絶好のチャンスです。諭鶴羽山系の尾根という尾根、谷という谷を歩き尽くしたわたくし山のキノコがご案内いたします。花の大好きな方、山の好きな方はふるってどうぞ。なお、お弁当をお忘れなきよう…。

これがシャクナゲの自生している山の遠望です。写真で一番奥のかすんでいる山です。シャクナゲの自生している山は他にも3つあるのですが、写真の山が歩く距離が一番短いです。そのかわりに、登山道の最初のとりつきがやや難所です。それを越えたらあとは楽になります。
シャクナゲの自生する山を遠望する

●さて、お天気をチェックしておきます。ここ数日、本州の上空にこの季節としては強い寒気が侵入しております。図は、2012年5月11日09時の上空500ヘクトパスカル面における高層天気図です。上空の低気圧(寒冷渦)にともなって、本州中部で-20度以下の季節はずれの寒気が入っております。
2012年5月11日09時の高層天気図
↑2012年5月11日09時の500hPa面(上空5500~5700mぐらい)の高層天気図。気象庁サイトから抜粋引用。500hPa 高度、気温解析(アジア)

★各地の上空500hPa面の気温と、平年値とを比べてみると、1か月から2か月も季節を巻き戻した寒気であることがわかります。それで、地上もどちらかといえば若葉寒であります。
2012年5月11日09時の500hPa面の観測気温
特に、亜熱帯の父島が冬の気温にまで逆戻りですから、今回のサツキ寒気(?)が低緯度にまで南下したことが覗えます。ですが、ここ数日の寒気は福音であります。多分、満開のピークを通過したシャクナゲが散らずに待ってくれているとおもいます。

2012年5月13日09時の数値予報天気図
気象庁ホームページ 数値予報天気図から抜粋引用。見慣れていないと、わけの分からない図でありますが、観察会当日の午前9時の上空の気温が、潮岬では10℃上昇すると計算されているようです。上空の寒気が抜けて、朝は冷え込んでも昼は暖かくなるのではないでしょうかねえ? 風もおさまり、天気は昼ごろは高層雲が出てきて高曇り(うす曇り)で、写真を撮るには最高の条件と、私は予想します。快晴では明暗のコントラストがきつすぎるので、うすい高層雲が出て日傘現象がみられる天気が最高の写真日和でありましょう…。

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ホルトノキの巨木です。
おそらく、諭鶴羽山系の全体でも確実に5指に入る巨木でありましょう。ひょっとすると一番かもわかりません。樹種はホルトノキという樹木です。ぱっと一瞥するとヤマモモの木に酷似しています。よくみると一年中紅葉があります。緑の葉に混じってパラパラと赤い葉が混じっています。帰りに時間があれば、この巨木を観察するといいでしょう。猪鼻集落の公会堂の横にあります。
諭鶴羽山系で屈指の巨木

★全く意外なことですが、山中には巨木と言えるものはほとんどありません。日本全国どこでも、巨木があるのは山奥ではなく、むしろ人里です。人里と里山の間などに巨木がある場合がほとんどです。原生林といえども樹齢300年ぐらいで打ち止めになることが多いです。理由は山中では樹木が密生していて、太陽光や地中の栄養塩類を奪い合う熾烈な競争をしているのですが、上方にしか樹木が伸びられません。そのために幹の材の容積に対して樹冠の葉の分量が少なくなるので、やがて樹体を維持できなくなるからだ、と生態学の教科書では説明しています。

それに対して里の巨木は競争相手がおりません。その木がある程度大きくなると、ヒトが「ご神木」だとしめ縄を張って大事にしてくれます。里ではその木の周囲が田んぼだったりして開けているから、お日様の光を一人占めして四方八方に枝をのばせるのです。したがいまして、樹齢1000年とか2000年の巨木というのは山奥の原生林にあるのではなく、人里の外れあたりにあることが多いのです。

見事な「板根」が見られる
↑大雑把に測ると、根元の胸高周囲は6mです。観察のポイントは “板根・ばんこん” です。根際の根が板状になっています。熱帯地方で巨大な板根が発達するようですが、北緯30度以北でも小規模な板根は観察できます。生え際の根の上部が板状に発達するのは、数十トンとか数百トンにもなってくる重い幹を支える為だとされていますが、どのようにして板根ができるのか諸説あるみたいです。
諭鶴羽山系のツツジ属(その6)「ミヤコツツジ」
●南あわじ市賀集と北阿万の境の奥山に、ツツジ類の群生する桃源郷のような美しいところがあります。疎林の地面にはエビネも咲き乱れ、眺望もすこぶる良く、にもかかわらずこの山を訪問して花見をする者は、わたくし山のキノコとシカ(鹿)とイノシシ(猪)しかいません…。美しい花が咲き乱れているのですが、誰にも観賞されないというのは実に勿体ないことであります。

この奥山には赤い「ヤマツツジ」と淡いピンクの「モチツツジ」が、入り乱れて混生しています。並んで生えております。この両者は、ヒトが交配などしなくても、自然の状態で交配して雑種を作ります。この「ヤマツツジ」と「モチツツジ」は極めて仲が良く、親和性があって簡単に「合いの子」が出来てしまいます

赤い花のヤマツツジと、淡い桃色のモチツツジが並んで自生しています。
ヤマツツジとモチツツジの混在

ヤマツツジとモチツツジの混生状態
↑上の2枚は、賀集と北阿万の境の奥山(海抜420mほど)で、5月9日に撮った。仲良く並んであるので、お庭の一画を見るような感じであります。

「ヤマツツジ」と「モチツツジ」の自然交雑種は、「ミヤコツツジ」と称されています。

ヤマツツジ モチツツジとの 恋成りて ミヤコツツジの 花々の薗
                 ―――詠み人 山のキノコ―――

濃色ピンク系のミヤコツツジ
これは花が大きい個体
この個体は、ガク片や花柄に “粘り” がないタイプ。
↑上3枚は同じ個体の写真です。ヤマツツジとモチツツジの自然交雑種をミヤコツツジと言っても、その合いの子の程度はさまざまです。ほぼ中間型もあれば、ヤマツツジに近いもの、モチツツジに近いもの、1本の樹のなかで特定の形質ではヤマツツジの血筋で別の形質ではモチツツジの血筋、ということもあります。千差万別、多様性の極致といえます。写真のものでは、花色は中間型で、花の大きさは大きくモチツツジの形質です。花柄やガク片がべたべたと粘らないのはヤマツツジの血筋を受け継いでいます。

中間型
↑色々な形質を観察すると、これがほぼ「ヤマツツジ」と「モチツツジ」の中間であろうかと思います。

葉が小さく柄が密生するのはヤマツツジの血筋
↑これは枝ぶりと葉の大きさはヤマツツジの形質、花色は中間、花の大きさはモチツツジの形質です。

小さな花が密生するのはヤマツツジ型
↑これは全体的に中間型でありますが、小さな花がびっしり着く状態はヤマツツジの形質です。

●この自生地全体を観察すると、ここのミヤコツツジは、花の色は中間型が圧倒的に多いです。枝ぶりとか葉の大きさではヤマツツジ型が多いです。枝ぶりとか葉の大きさがモチツツジで、花の色だけがヤマツツジ型の赤花と言うものだけが見当たりません。その他の実に色々な組み合わせの雑種個体が見られます。

3種の形質表

●両親の「ヤマツツジ」と「モチツツジ」と、雑種の子の「ミヤコツツジ」の色々な形質を比較対照すると上の表のようになりますが、これはごく大雑把に見たものです。花色といっても濃淡さまざま、花の大きさも大小さまざまです。上の表だけでも(3の5乗 - 2 = 241)通りの “組み合わせ” の雑種可能性があり得ます。2を引くのはヤマツツジとモチツツジそのものの組み合わせが2通りあるからです。実際には花色が赤、濃桃色、淡桃色の3通りではなく、濃淡さまざまな段階があります。もし各形質について5段階のグレードがあるとしたら、3123通りの組み合わせの可能性があることになります。この組み合わせ可能性が、ここのミヤコツツジ自生地を桃源郷のように見ごたえのある花園にしているのでしょう……。

諭鶴羽山系のツツジ属(その5)「ユキグニミツバツツジ」
諭鶴羽山系に自生するツツジ属植物(Rhododendron・ロードデンドロン)の見分け方
●諭鶴羽山系ではツツジ属植物が9種みられます。そのうち4種が兵庫県版レッドデータ種となっております。野外で目の前の植物の名を言うのは、そう簡単なことではありません。分類学を専攻する専門家でも、観察会で植物の名前を聞かれても答えられないことがあるほどです。まして、知識の少ない素人では目の前の沢山の植物の名前が50%でも言えたらたいしたものです。残りの50%が言えなくても、しかたがありません。ま、そんなものです…。

●そこで、諭鶴羽山系で秀麗な花を咲かせているツツジ類でありますが、その名前を言うために、9種のロードデンドロンの見分け方のポイントを自分自身の備忘録として書いておきましょう。ただし、これはあくまでも自分の備忘録であり、他の地方では分布するツツジ類の種類は変わるのでありますから、他の地方では通用いたしません。

諭鶴羽山系のみに限定の検索表
A、葉は互生する。葉が枝先に集まって輪生することはない。葉は半
  落葉性で、冬でも葉がすこし残っている。
 B、花柄・がく片・若枝などが、ひどく粘る。
  C、花の色は桃色。少し紫味が入った桃色。 …………モチツツジ
  C、粘りは少ない。花色は濃い桃色。 ………………ミヤコツツジ
 B、花柄・がく片・若枝などが、粘らない。
  C、花の色が赤(朱色)花径は3ー5㎝で大きい。 ……ヤマツツジ
  C、花の色が白。花は径1.5㎝ほどで小さい。…シロバナウンゼン

A、葉は枝先に3枚輪生する。(ときに2枚のこともあるが、普通3枚)
  葉は落葉性で、冬季は樹は丸坊主になる。
 B、花の色は、赤色(朱色)‥………………………………オンツツジ
 B、花の色は、紅紫色。
  C、花柄・がく片・子房などが粘る。…………トサノミツバツツジ
  C、花柄・がく片・子房などが粘らない。
   D、葉の縁が細かに波打つが鋸歯がない。ユキグニミツバツツジ
   D、葉の縁に先が毛になる微細鋸歯あり。…コバノミツバツツジ

A、葉は革質。常緑性。互生するが枝先に集まって付く傾向があるが、
  輪生することはない。枝先に10花前後着く。………ホンシャクナゲ

【注意】ミヤコツツジは、ヤマツツジとモチツツジの自然雑種であり、その形質は両者の中間の性質を現わします。が、ヤマツツジに近い物もモチツツジに近い物もあり、かなり連続的に繋がっています。

諭鶴羽山系の中での、ごく大雑把な分布。
山系頂上部に僅かにある。…………………………ユキグニミツバツツジ
猪鼻水系・鮎屋水系にある。………シロバナウンゼン・ホンシャクナゲ
諭鶴羽川・成相川源頭尾根にある。……………………………オンツツジ
山系中腹以上に多い。ヤマツツジ・ミヤコツツジ・トサノミツバツツジ
山系の裾野や下部に多い。……………………………コバノミツバツツジ
山系の裾から頂上まで広く分布する。…………………………モチツツジ

兵庫県レッドデータブック2010による絶滅危惧性
淡路のみAランク(県全体はCランク)………… ユキグニミツバツツジ
Bランク ……………………………………………………… オンツツジ
Cランク ……………………… ホンシャクナゲ・トサノミツバツツジ

ユキグニミツバツツジ です。日本海側の積雪地帯に分布するツツジですが、近畿地方では脊梁山地を越えて、太平洋側に向かって分布が南下しています。
ユキグニミツバツツジ
↑風がきつい日だったので、うまく写真が撮れなかった。南あわじ市の某山の頂上付近にて。
ユキグニミツバツツジの花
↑ふつう枝先に1個の花が付くようですが、この個体は2個ついています。
葉の縁は波打つ
↑葉の縁には細かに波打っています。
葉柄の下部には毛がない
↑葉柄の下部には毛がありません。これが本種の特徴の一つ。
ホンシャクナゲの開花が進行中!
シャクナゲの開花状態を下見に行きました。 なんと、既に開花が始まっていました。今年の冬から3月には、厳冬(寒冬)でシャクナゲの開花は相当に遅れるだろうと予想していましたが、4月になって気温が平年値を上回るまで回復しました。5月13日にシャクナゲの観察会を企画しておりますが、ひょっとすると数日遅すぎるかもわかりません。ま、しかしまだ堅い蕾が残っているので、13日でも全く花がないなどということはなさそうです…。

以下に掲示した写真は、全て昨日の5月7日に撮ったものです。場所は観察会を予定している場所とは全く違うところで、諭鶴羽山と柏原山とのほぼ中間地点です。海抜は250mで、ごく低いところです。じつはこの場所が簡単に行ける自生地なのですが、鉢植えに出来るような幼木が沢山あるところなので、残念ながら、ここがどこなのか公開できません。公開しても盗る人がないようなマナーの良い時代がくればいいなあと願っています…。
今年は裏年なので、花が少ない
↑表年には枝先という枝先に花が着き、樹冠を埋め尽くすのですが、本年はチラホラとしか花がありません。
枝先に10花前後が付く

シャクナゲの蕾

ここの自生地には、背丈が50cm程度の幼木がありますから盗掘に遭わないよう保全する必要があります。
シャクナゲの幼木

シャクナゲの幼木

シャクナゲの稚樹
諭鶴羽山系のツツジ属(その4)「シロバナウンゼンツツジ」
●シロバナウンゼンツツジであります。略してシロバナウンゼン。漢字で書けば「白花雲仙躑躅」であります。ウンゼンツツジの花は淡いピンク色でありますが、本種の花の色は白です。『日本の野生植物』によれば、ウンゼンツツジの単なる白花品ではなさそうです。花色以外にも違いがあって、花がなくても区別ができるから、ウンゼンツツジの変種がシロバナウンゼンであります。しかし、ウンゼンツツジの単なる白花品のシロウンゼンというものがあるので、ちょっと、ややこしいです。そこで整理して記述します。

ウンゼンツツジ……(基本種)花は淡いピンク色である。春葉の大きさ
          は5~10ミリ。春葉・夏葉の大きさの差は少ない

シロウンゼン………(基本種の品種)花が白いだけで、他は基本種と同
          じ。つまり単なる白花品である。

シロバナウンゼン…(基本種の変種)花は白。春葉の大きさは8~20ミ
          リで、夏葉より著しく大きい。基本種とは花だけ
          でなく他にも相違点がある。つまり、単なる白花
          品ではない。

●ウンゼンツツジとシロバナウンゼンは、その分布域も異にしています。両者には、生息地分割としての棲み分けが明瞭に認められます。

ウンゼンツツジの分布は、伊豆半島・紀伊半島南部・四国太平洋側・九州南部大隅半島で、襲速紀要素(そはやきようそ) の分布を示しています。

シロバナウンゼンツツジの分布は、山口県東部・広島県・岡山県・兵庫県・大阪府・和歌山県北部・徳島県北部・香川県・愛媛県東部で、これは瀬戸内要素の分布を示しています。

シロバナウンゼンツツジ
↑シロバナウンゼンツツジです。鮎屋水系源頭尾根にて5月7日に撮った。既に花はほとんど終わっていました。例年花期は4月中旬~下旬ぐらいです。僅かに2個花が残っていたのを撮りました。“表年” の満開のピークに行けば、枝の上に雪が積もっているように見えて壮観です。上品でとても美しい可憐なツツジです。諭鶴羽山系全体に自生するのではなく、主に、猪鼻川水系と鮎屋川水系の流域に見られます。

シロバナウンゼンの小さな株
↑これはシロバナウンゼンで、高さはわずか10センチほどしかありません。しかし、相当年数の古い株であります。横倒しになっている指の太さの幹があるのですが、これは枯れています。しかし根際が生き残って、ひこばえ状に新梢がたくさん出て盆栽のようになっています。小さくても樹齢は10年とか20年になるハズです。付近にはこのようなものが無数にあります。シロバナウンゼンツツジは生長が非常に遅いツツジであります。成木になっても1mかせいぜい1.5mで、針金のような細い枝が密に茂ります。

●さて、島内の山野草愛好家たちが、本種を「コメツツジ」などと呼んでいますが、誤称であります。シロバナウンゼンと呼びましょう。
「コメツツジ」は温帯上部から亜高山帯にかけて分布するツツジです。西日本では普通1500mを越えるような高所に行かないと見ることができません。コメツツジの分布は北海道から九州にまで及んでいるのですが、主に太平洋側の高い山の尾根などの “風衝地” に自生しています。西日本では大峰連山の山頂部のたとえば釈迦ヶ岳(1800m)・四国の剣山(1954m)~石鎚山(1981m)の脊梁山地の稜線・九州祖母山(1756m)傾山(1602m)などで、そんな高い山は淡路島にはありませんよ…。

★徳島県の三嶺(さんれい・1893m)は、国の天然記念物に指定されたコメツツジ群落に出会える山として、関西の岳人によく知られています。 三嶺・天狗塚のミヤマクマザサ及びコメツツジ群落

【両種の違い】
コメツツジ……枝先に1~3個の花が着く。花の径は0.8~1㎝。
シロバナウンゼン……枝先に1個の花が着く。花の径は1.3~1.6㎝。

【誤称の原因は2つ考えられます】
1、ツツジ類の園芸品種が沢山作出された江戸時代後期には、ウンゼンツツジはコメツツジと称されていたが、明治中期にウンゼンツツジを和名に採用しました。それで江戸時代の言い方がいまだに残っている。

2、だれかが植物図鑑などで名前をしらべて間違ってコメツツジだと同定してしまった。その誤称が島の山野草愛好家たちの間で流布してしまった。
諭鶴羽山系のツツジ属(その3)「オンツツジ」
●オンツツジであります。漢字で書けば「雄躑躅」です。オスのように立派で、大きく、逞しいツツジだという意味でありましょう。オンツツジの開花状況は、今年は極端な裏年にあたっています。表年には、それこそ「すわ山火事だぁぁ!」と思うほど全山赤く染め上がります。しかし、今年はちらほらで寂しいものです…。

オンツツジは 襲速紀要素(そはやきようそ) の植物の一つで、その分布は中央構造線の南側(西南日本外帯)に分布していて、紀伊半島南部~四国~九州の山地にあります。有名な 徳島県の天然記念物 船窪オンツツジ群落 と同じ種類のツツジが諭鶴羽山系にあるのです。船窪のオンツツジは海抜1050~1070mの高所にあるのに対して、淡路島では海抜350~586mの低所にあるので、淡路の方が花期が2週間早いです。淡路では4月下旬からポツポツと咲き始め、5月中旬まで咲いています。満開のピークはここ数年では5月10日ぐらいです。近年は春先が寒いので開花が遅れる傾向があります。

●むかし、船窪オンツツジ群落を観察に何回か行ったのですが、とても立派な観光地になっています。花見の観光客で立錐の余地もないほどの人出でした。出店であるとか屋台が沢山でていました。南あわじ市には花の名所といえるのは黒岩スイセン郷しかないので、新しい花の名所として有望な観光資源であります。諭鶴羽山系のオンツツジ群落として県の天然記念物に指定するように運動し、林道を拡幅、遊歩道や駐車場を整備したら、花の名所とするのは十分に可能でありましょう。有望だという理由は沢山考えられます。南あわじ市の潜在的有望な花の名所として、強く推奨いたします。

オンツツジ群落が花の名所として有望な理由
1、兵庫県では諭鶴羽山系にしか自生していない。兵庫県版レッドデー
  タブック2010でBランクの貴重植物に選定されている。
2、近畿地方でも紀伊半島南部しかなく、観光客供給地の阪神間の住民
  にとっては珍しいツツジである。観賞価値も高い。
3、貴重植物に選定されているけれども、個体数が非常に多い。
4、山系全体にランダム分布するのではなく、特定の狭い範囲に集中分
  布していて、見ごたえがある。
5、将来に、そのオンツツジ群落を後継維持する幼木や実生稚樹がたく
  さん見られる。心無い観光客に少々盗られても大丈夫。
6、既に林道が存在するのでそれを拡幅整備すれば、現地へ行く進入路
  とすることができる。
7、駐車場を作るための緩傾斜の場所がある。平坦地も存在する。
8、付近は諭鶴羽山系の屋根にあたるので、四囲眺望がすばらしい。
9、5月の連休にあわせて開花するので、客寄せの花にちょうどいい。

『兵庫県レッドデータブック2010』でBランクの貴重植物「オンツツジ」

★県版レッドデータブックが言うように、確かにオンツツジ群落がスギの植林のためにかなり破壊されました。植栽されたスギはその後下草刈りや間伐など手入れがされず、ほとんど植えっぱなしの状態です。早晩にスギ林もダメになるでしょう。その兆しが見えています。自然の二次林を破壊し、かつスギ林もろくすっぽ管理しないのでは、ツツジ公園整備に税金を流し込むほうがましでありましょう…。

オンツツジ
↑目が醒めるような情熱の赤いツツジです。別名がツクシアカツツジ。よく育って老成した個体では樹高5~6mになります。ツツジ類としては威風堂々とした大木になる種です。
オンツツジ

オンツツジ
↑枝の先に普通は2~3花つきますが、時には5花もつくことがあります。雄しべは10本。花冠は5中裂しまして、全体はあざやかな赤い色ですが、上弁に濃いピンク色の斑紋があります。
オンツツジの葉
↑葉は枝の先端に3枚が輪生状につきます。葉だけを見るとトサノミツバツツジに酷似しています。

   ……………………………………………………………………
オンツツジの自生地からの眺望 は面積約600平方キロの小さな島とは思えないものです。山岳重畳して、山並みは遥かに続いています。彼方の山は雲霞にかすんで紫色であります。全くの仙境であり深山であります。
自生地から東を見る
↑オンツツジ自生地から東を見た景色です。一番むこうにかすんでいる山は柏原山(569m)です。画面の左側にある山(530mあまり)の山頂付近にはホンシャクナゲが沢山自生しています。柏原山の手前に見える山(544m)の林道にはシイタケがよく出ていました。しかし最近は茸の出る枯損木が朽ち果てたのであまり出なくなりました。
自生地から北を見る
↑画面の中央のやや遠くに見える山は兜布丸山(かぶとやま535m)です。この兜布丸山は島の平野部に最もせり出して近く、平野部を隔てて先山(448m)と対峙してすこぶる良い眺めであります。しかし登る登山道はありません。樹林のなかを藪こぎで登ります…。
自生地から北西を見る
↑一番手前に見えている山(545mぐらい)には兵庫県レッドデータブック2010でBランクの貴重植物のナンゴクウラシマソウの良い群落があります。またヤマツツジのちょっとした群落もあります。この写真では分かりにくいのですが、遥かに播磨灘が見えています。
諭鶴羽山系のツツジ属(その2)「モチツツジ」
●本日は2012年5月6日であります。

今年のツツジ類は裏年だ。
★昨日の午後に山の方に、ふらりと、ツツジ類の観察に行ってまいりましたが、今年はツツジ類はみな「裏年」で花が少ないです。葉ばかりがやたらに多いです。隔年開花という傾向がきわめて強いのは何故なのか? モチツツジでも、オンツツジでも、トサノミツバツツジでも、ヤマツツジでも、種が違い若木・成木・老木の区別がなく全体的に花が少ないのです。

★中には、樹冠を埋め尽くさんばかりに豪勢に咲き誇る個体もあることはあったのですが、葉ばかりの個体のほうが圧倒的に多数です。山中のツツジ類が一斉に隔年開花する理由は何でしょうか? 個々の個体がバラバラに無秩序に隔年開花するならば理解できるのですが、指揮者の統率により楽団の成員が一糸乱れぬ演奏をするが如く、ツツジ類の1本1本が一斉に足並みを揃える要因は何だろうか?

★ハッキリした要因は分かりませんが、まず思いつくのは気象条件か? と思うのですが、年ごとの気象は暖冬の年もあれば厳冬の年もありという具合で変動がありますが、極端なことを申せば、暖冬であったとしても冬が夏のようになるわけではありません。気温に関しては、そう極端に変わるわけではありません。極端に変わるのは気温ではなく、降水量でありましょう。降水量は劇的な変化を示します。特別地域気象観測所「洲本」の93年間の観測データをグラフ化したものをお目にかけましょう。(気象庁観測データを元に山のキノコがグラフ作成)

年降水量の経年推移
↑「年間降水量」の93年間の推移です。下限1000ミリ、上限2000ミリの範囲に93個の標本のうち9割近いものが収まっています。なお、このグラフは昨年10月に作成したものです。2011年の年間降水量は、年末までにさらに150ミリほど上乗せがあり、2497.5ミリに達しました。

100㎜幅の度数分布
↑棒グラフで見ると、多雨の年は少雨の年の3倍近くあることがわかります。年間降水量が最小の年は1994年の805ミリ、最大の年は2011年の2497.5ミリです。3.10倍あります。

★極端に少雨の年と、極端に多雨の年の、それぞれの月毎の降水量を調べてみると、6月~9月の暖候期に雨が多いか干ばつになるかに因っていることが分かります。夏に日照りが続けば平年値よりも年降水量が極端に少なくなり、夏が冷夏だとか台風が次々に来るならば平年値よりも極端に年降水量が多くなります。春秋の降水量の年ごとの差はそれほどではありません。

★ツツジ類は夏か秋口ぐらいにすでに枝先に翌春に咲く小さな蕾ができています。花芽形成(かがけいせい)が進んで蕾が出来ていく大事な時季に、極端な少雨に遭うとうまく蕾ができなくなるのではないか?? と推論してみましたがどうだろうか? 地中深く入る直根がなく根が浅く横に広がるツツジ類はとくに干ばつの害を受けやすいのではないか? 干ばつの夏は枯れないで生存するので精一杯で、蕾を作るどころではない…、で、足並みを揃えて翌春は花がなく裏年。翌翌年は逆に表年で樹冠を埋め尽くす花、花、花。

その後は、花が沢山ついたら果実ができてしまうので、養分が全部果実に流れて新梢ができないか、出来たとしても新芽の伸長が弱くて花芽分化できるまで成長しない、因って次の春は裏年。以降、表、裏、表、の繰り返しになるが気象条件に因ってはその順に狂いが生じる……、ではないでしょうか?

社団法人 国際環境研究協会は地球温暖化を煽るタチの悪い団体であるが、その機関誌『地球環境』は温暖化を煽る部分を割り引いて読めば大変勉強になります。安田政俊『東南アジア熱帯雨林における一斉開花結実現象の至近要因と進化要因』地球環境 Vol.3 No.1&2 1998年 という論文では、マレーシアの熱帯雨林における数年ごとの一斉開花を議論しています。この議論で、気象変化の少ない熱帯域であっても、5年毎に出現する18℃の低温だとか、例年よりも厳しい乾期による水分ストレスとか、気象が一斉開花の要因になっているらしいです。

で、諭鶴羽山系でのツツジ類の一斉開花あるいは一斉不開花も、花芽形成期の、平年値から大きく偏差した雨量等の気象が要因になっているのではないか。具体的にそれが「夏の高温?」なのか「夏の極端な少雨」なのか「極端な日照不足?」なのかはよく調査しないと分かりませんが…。ま、冬の低温は関係ないと思います。冬から春の低温あるいは高温が影響するのは、花期が平年よりも1週間早いか遅いかが変わるだけだと思います。

モチツツジの観察
花柄・がく片などに腺毛が多く、べたべたと粘る。
↑モチツツジです。花柄・ガク片・子房・若枝に腺毛がびっしりとあって、なんだかベタベタとした粘液みたいなものを分泌しています。触ると手がネバネバしたものがくっついて気持ちわるいです。しかし、かぶれるなどの害はありません。石鹸水で指を濡らしておくとネバネバしたものがくっつかないと言われています。でも、山の中に石鹸水など持っていく人があるのでしょうかねえ?? 植物園ならば、展示用のモチツツジのそばに石鹸水を置いておき、さわる場合にはこれで手を濡らしてくださいと、説明書を掲げるのはあり得ます。

モチツツジ、花色がやや薄い
↑このモチツツジはやや色が薄いです。すごく着花数が多く、枝先に10花ほどもついています。見事な咲きっぷりで着花数の多い系統かもしれません。

雄しべは5本ある
↑ツツジ類は種を見分けるのに雄しべの個数は重要です。モチツツジは5本です。

花色がやや濃い
↑こちらは花の色がやや濃い個体です。着花数が少ないです。

花冠は5中裂して、上弁に濃い色の斑点がある
↑花冠は5つに中裂~深裂して、上弁にゴマ粒を振ったような斑点集団があります。
弱弱しいツル植物の「シロバナハンショウヅル」
●「シロバナハンショウヅル」です。漢字で書けば、「白花半鐘蔓」です。その小さな花が半鐘のような形をしていて、花は白く、つる植物になるというのです。たしかに、その花は半鐘のように見えなくもありません。他のハンショウヅル類は半鐘らしく見えるのですが、本種は4枚あるガク片の先端が外側に向かって開きすぎているので、私には「半鐘」というよりも「鉄兜・てつかぶと」の形状に見えます。

●諭鶴羽山系では、林縁であるとか、林道の脇の「マント植生」の中などに、わずかにシロバナハンショウヅルが見られます。個体数は極めて少ないように思われます。蔓植物だといってもボタンヅルだとかクズなどのような強靱さがまったくありません。弱弱しい蔓植物という印象で、あまり繁茂するということがありません。ボタンヅルでは茎が人の腕ほどにもなり、樹木の上に覆いかぶさって繁茂し、その樹木を枯らしてしまうほどですが、シロバナハンショウヅルでは茎は指ほどの太さにしかなりません。蔓の長さも短くてよく茂った森林の中では生きられないようです。それで、林縁とかマント植生のなかにあるのでしょう…。

シロバナハンショウヅル
↑諭鶴羽山系では花期は4月中旬から4月下旬ぐらいですが、今年は春が寒かったので遅い花がまだ残っていました。よく見ると、上品で楚々とした美しさがあります。

シロバナハンショウヅル

シロバナハンショウヅル

シロバナハンショウヅル

●シロバナハンショウヅルは暖帯性の蔓植物であります。その分布は九州・四国・近畿南部・東海・関東南部と、太平洋沿岸地帯のようでありますが、他の植物との競争に弱いためなのか個体数が少なく、多くの県で絶滅危惧種になっているようです。兵庫県版レッドデータでは、Bランクの貴重植物です。兵庫県内では諭鶴羽山系にしか見られないようであります。

日本のレッドデータ検索システムより「シロバナハンショウヅル」

『兵庫県レッドデータブック2010』より「シロバナハンショウヅル」
【お知らせ】 諭鶴羽山系に自生する「ホンシャクナゲ」の観察会をします。お気軽に、ふるってご参加ください。
―――深山の麗花―――
淡路島のホンシャクナゲ
観察会 および 写真撮影会について

●日  時  平成24年5月13日 午前10時に集合。
      集合場所は、下記に地図を提示しています。
      (雨天が予想される場合は、前日の12日に前倒し)

●観察場所  諭鶴羽 ~ 柏原山系の最奥部の尾根筋
       猪鼻川源頭部の尾根。詳細は盗掘防止の為非公開です。

●行  程  10時00分   集合場所に集合。ただちに登山開始。
       11時00分   シャクナゲ自生地に到着する。
       13時00分まで 現地で観察と昼食(持参弁当をたべる)
       14時00分   登山口に帰還する。

●準 備 等  標高差280メートルの登山になるので、しっかりした足
      もと(登山靴・長靴等)、リュックサック、軍手、帽子、
      汗ふきタオル、水筒、弁当、非常食、カメラなど…。

      (メールフォームにて、お申込み下さったならば、当方で
      千円の弁当を用意することも出来ます)


●そ の 他  山の尾根筋を直登します。やや健脚向きの観察会です。
       自己責任にて参加お願いします。

●注 意 点  植物観察のマナーは、取ってもいいのは写真だけ。残し
      てもいいのは足跡だけ…。(足跡を残してもいいと言っ
      ても、あまり踏み荒らすのは良くない。)付近一帯は国
      有林です。植物の採取は禁止されています。ゴミは持帰
      り。それから、自然には多くの危険がひそんでいます。
      オオスズメバチ、長い虫、登山道から滑落など…。慎重
      に行動しましょう。

集合場所 赤丸で印をした地点です。
集合場所

● 上の地図を拡大したもの 猪鼻川の上流域にダム貯水池が2個あります。その2個のダムの中間に三差路になっているところがあります。そこには橋もあります。そこにご集合下さい。
集合場所拡大図


申し込み無しで、当日、集合場所にお越しくださったら参加できます。
★淡路島の自生シャクナゲをご覧になりたい方は、どなたでも参加できます。お気軽にどうぞ。
★登山ルートの最初の取りつきはかなり難所です。それを越えたら普通の低山の山登りです。
★足腰に自信のない方は、残念ながら、ご遠慮ください。
★誠に恐縮ですが、あくまでも100%自己責任にてのご参加を宜しくお願いします。
★怪我・事故・遭難等なにごとがあっても主宰者HN山のキノコは責任を負いません。
★参加費は不要です。シャクナゲ観察会参加に関しては一切の費用を徴収しません。
★ただし、弁当の申し込みがあった場合は、弁当代の1000円を徴収いたします。
★今年のシャクナゲは裏年です。たとえ花が少なくても苦情は一切受け付けません。
★山の地権者(国有林か?)の許可を取っていませんので、良識にのっとっての行動をお願いします。なお、一番問題になる可能性があることは、森林窃盗罪に抵触することです。したがいまして、樹木・枝・岩石等、森林内の産物の一切の採取はできません。
★ゴミは持ち帰りです。ゴミの投棄は許されません。

掲げた4葉の写真は、淡路島一の写真家の里口さんの作品です。これが諭鶴羽山系に自生するシャクナゲです。
ただし、紙にプリントしたものをスキャンして、さらにデータを縮小したので、原版からは遠く劣化してしまっています。原版は高い技量で撮った素晴らしい写真であります。
淡路島のホンシャクナゲ

ホンシャクナゲ

淡路島自生のホンシャクナゲ

淡路島自生のホンシャクナゲ

――淡路島のシャクナゲについて――
淡路島に自生するシャクナゲは、ホンシャクナゲという種類です。これは長野県以西の本州(中部・近畿・中国地方)と四国に分布しています。ふつうは海抜800~1500メートルぐらいの冷温帯(ブナ帯)に自生するのですが、淡路島では280~530メートルの暖温帯(低山帯)にあります。ホンシャクナゲは産地による変異が見られ、淡路島のものは葉の裏面にほとんど毛がないタイプのものです。無毛なので他地方のシャクナゲと比べると葉が薄く感じられます。『兵庫県レッド・データ・ブック2010年版』では、シャクナゲはCランクの貴重植物という評価です。

猪鼻川と鮎屋川の源流地帯の尾根筋に自生しています。私の調査では4つの尾根に自生が見られます。むかしは柏原山の山頂付近にもありましたが、洲本市の疑惑的な山頂開発のため、今は柏原山にはありません。
 
花期は、以前では、4月下旬に開花が始まり、5月の連休が終わるころに満開だったのですが、ここ数年は春先の気温が低く、シャクナゲのみならず「生物季節」全体が1週間ほど遅方にずれています。

シャクナゲの野生種は、涼しく、常に霧がかかるような空中湿度の高い環境に自生しています。そのため夏が暑く、乾燥しがちな平地の環境が大の苦手です。その栽培は非常に困難です。そのため園芸愛好家の間では、シャクナゲを何回栽培しても結局枯らしてしまうので、“しゃく”にさわって“投げ”るからシャクナゲと称すのだ、などと言う人もいます……。

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