雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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シタキソウ開花はじまる
ガガイモ科のシタキソウが、5月31日現在、早くも開花しています。
ガガイモ科シタキソウ
↑これは私の実家のウメの樹下に生じたものです。

4年前に、種子が風に乗って飛んできて芽生えました。その後3年目になると少し花をつけ、今年4年目で大きく生長しました。茎の長さはすでに6~7メートルぐらいはありそうです。この写真のシタキソウは勝手に生えたもので、栽培品では全くありません。ウメの樹下から茎が伸びて、洋館のコンクリート壁を雨樋にそって這い上りました。コンクリートが太陽熱を蓄熱して暖かかったためか、このシタキソウだけが特別に早く開花しました。
シタキソウが壁を登る
今年は3月の平均気温が平年値よりも標準偏差の2倍ぐらいも寒く、4月もかなり寒かったのでシタキソウの開花は遅れると予想しているのですが、実際にフィールドでのシタキソウを観察するとまだ“つぼみ堅し”です。例年はシタキソウの花期は6月10日から20日ぐらいで、7月になってもまだ花は残っています。花期はサクラなどに比べるとかなり長いです。

淡路島のシタキソウが発見されたのは1999年1月です。環境アセスの調査をされているS氏が見つけたらしいです。S氏はそれまでに友ヶ島にシタキソウが自生しているのを発見されていたのですが、由良生石を調査された際にシタキソウがあるのに気付きました。しかし生石では花が咲かずに標本が採取できませんでした。そこで、枝を採取して挿し木から栽培し花を咲かせて、標本にしたという涙ぐましい努力が刻まれた植物ということです。

その後、2002年の12月にSN氏が南あわじ市灘でシタキソウの果実が5個ついている個体を発見しました。SN氏はさも自分が見つけたかのような自賛をしましたが、そうではありません。兵庫県下での最初の発見者はあくまでもS氏なのです。ま、第一発見者が誰であるかはともかく、自然を愛する多くのナチュラリストたちが一つの植物を追いかけているのです……。
シタキソウの兵庫県版レッド・データ情報
『兵庫県レッド・データ・ブック2010』では、AランクからBランクに変更されました。新しい自生地が見つかったためです。シカの“不嗜好植物”なので、探せば個体数はけっこうあります。

南あわじ市灘地区の住民の間では、その標準和名など知らなくても、シタキソウの存在には気付いていました。それで“諭鶴羽ジャスミン”などと称していました。これは地方名です。諭鶴羽山系に自生していて、ジャスミンのような馥郁たる良い香りがするという意味なのでしょう。とくに満開のころにはとても高貴な香りがします。種子を蒔くとよく発芽します。栽培は容易です。
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日降水量の観測データはべき分布に従い、予想外のことが起こる
本日は2011年5月30日です。

●昨日はよく降りました。わが淡路島の洲本測候所(現在は無人の特別地域気象観測所になっています)の観測データをみると、5月30日の「日降水量」は226ミリでした。これは洲本測候所における観測史上で第8位という堂々たる記録です。しかし1位の309ミリにはかなり及びません。昨日の雨は、水を湛えたバケツをひっくり返したという土砂降りではなく、時間降水量が5~20ミリ程度の“篠突く雨”が長時間続いたことによるものでした。時間降水量の最大値は30.0ミリでした。それで歴代8位の大雨の割には、山崩れや浸水などの顕著な被害はありませんでした。

●さて、ここで「日降水量」という気象現象がどのような確率分布で近似できるのか、ごく簡単に考えてみます。ひとくちに降雨と言っても実にさまざまで、霧雨もあれば、小雨、大雨、土砂降りの雨、にわか雨、並み雨……、など色々でその雨量も大きなばらつきがあります。しかし大まかに言って、小雨や並み雨は出現頻度が多く日常的に起こるのですが、1日に100ミリとか200ミリの大雨はめったに起こりません。簡単に言って「日降水量」という気象現象は<正規分布>ではなく、<べき分布>に従っています。

正規分布とべき分布はどう違うのか?
↑これは総務省のこしらえた『国民生活白書』の中にあるのですが、とても分かりやすいです。図を見ると、小さな値をとる標本の数が圧倒的に多く、大きな値をとる標本の数が急激に少なくなります。そして、いわゆる<ロングテール>が右の方に長く伸びています。それで、予想もしないような大きな値をとる標本が出現する可能性があります。べき分布をとるデータをグラフにする場合、縦軸も横軸も対数目盛をきざむ両対数グラフに書くと、「直線が得られる」というのがべき分布の特徴とされています。

ここで、私の住む南あわじ市のアメダス観測所「南淡」の観測データを見てみます。2005年6月から2011年5月までの6年間(2191日)の降水日数は620日です。28.3%の出現率で雨が降ることになります。10ミリ刻みの度数分布は次の通りです。見事にべき分布的ですね。

0.5~9.5ミリ      399
10.0~19.5ミリ     106
20.0~29.5ミリ      63
30.0~39.5ミリ      23
40.0~49.5ミリ      11
50.0~59.5ミリ      5
60.0~69.5ミリ      5
70.0~79.5ミリ      2
80.0~89.5ミリ      1
90.0~99.5ミリ      1
100.0~109.5ミリ     1
110.0~119.5ミリ     2
120.0~129.5ミリ     1

★620回の降雨のうち10ミリ未満の小雨が64%も占めています。30ミリ未満の降雨はじつに91.6%に達しています。雨が地中に浸透して地下水まで達するのは30ミリ以上の雨だと言われます。地下水を涵養する雨は10回のうち1回しかないのです。
この10ミリ幅での度数分布はきわめて“べき分布的”です。ロングテールが長く伸びています。一体どこまで伸びているのか、どこで打ち止めなのか? まったくわかりません。200ミリなのか? 300ミリなのか? この淡路島においても1日に500ミリもの豪雨が絶対ないとは言いきれないわけです。

★このような “べき分布” を示す現象では、どこまで “ロングテール” が伸びているかわからないという性質があることが 予想外の現象の起こるひとつの要因であります……。社会現象だけでなく自然現象にもべき分布を示す現象が存在することを認識しておく必要があります。おおよその定義上は、異常と看做す基準は、正規分布するデータでは標準偏差の2倍以上偏差している数値を、また、正規分布しない現象ならば過去30年間観測されたことがないような数値を異常としています。けれども、そんな定義では信じがたいような有り得ない極端な現象がしばしばみられます。マスゴミは “観測史上前例がない” などという表現で大騒ぎするのですが、べき分布を示す現象である場合には、有り得ないことが起こるのはごく当たり前のことなのであります。ガタガタと大騒ぎするのはみっともないわけで、いかに自然現象の本質というものを理解していないか、馬脚を現わしている愚かな騒ぎなのです。

アメダス南淡
↑これが気象庁の観測施設のアメダス南淡です。旧南淡町阿万塩屋の青年の家の入り口の手前の駐車場近くにあります。地面には深緑の防草シートが敷いてあり、夏などシートがけっこう熱を持つので、日最高気温が高く出る可能性がありそうです。(気象庁はそのような見方を頑固に否定していますが……)道路を挟んでアスファルトの広い駐車場に隣接しているので、風向きによっては駐車場の熱気の影響も受けそうです。気温は周囲の環境に大きく依存し、影響を受けてしまいます……。

この写真の背後に大見山の風力発電が見えています。2回も大きな故障を起こしたうえに、吹上地区の住民に低周波音被害を及ぼし、大きな問題をかかえています。とてもエコだなどと言えないしろものです。


狭い淡路島、でも雨量はバラつく!
本日は2011年5月29日です。

早々と台風2号がやってきましたが、室戸岬のちょっと手前で温帯低気圧へと崩れてしまいました。今の時期は、日本付近の海域はまだ水温が低くて、台風はエネルギーの補給路を断たれたようです。風船がシューッとしぼむようにあっけなく崩壊しました。まるで兵糧攻めに遭った武将が降参したかのようです。温低に変わった際の中心気圧は982hpaですが、低気圧としてはかなり勢力が強いです。腐ってもタイならぬ、崩れても台風ですね。台風崩れの温帯低気圧は亜熱帯の暖湿気流を引っ張り込んで、しっかりとした雨が降りました。

淡路島は約600平方㎞しかなく、日本国のおおよそ600分の一の面積です。淡路島を600個集めれば日本国の面積になるのです。(正確には638個です)このように狭い淡路島なのに、雨の降り方は一様ではなく驚くほどのバラつきがあります。淡路島の雨量を観測する施設には、気象庁の観測所が3か所と国土交通省の“リアルタイム川の防災情報・観測所”などがあります。それで、このたびの台風による積算雨量を見てみましょう。

淡路島内のリアルタイムの雨量は、ここで調べることができます

観測所は19か所もあります。5月27日の昼前後の降り始めから、5月29日午後6時までの、積算雨量です。27、28両日は各観測所ともせいぜい30ミリ程度で、大部分は台風が接近した29日に降りました。

【5月30日追記】雨の降り止んだ5月30日午前6時の積算雨量のデータを()内に追記しました。

仁井 181ミリ(227ミリ)  成相ダム  140ミリ(175ミリ)
郡家 138ミリ(158ミリ)  北 富 士   164ミリ(196ミリ)
都志 137ミリ(163ミリ)  大日ダム  133ミリ(155ミリ)
志筑 147ミリ(177ミリ)  牛内ダム  160ミリ(187ミリ)
洲本 232ミリ(269ミリ)  分 水 堰   152ミリ(187ミリ)
洲本 219ミリ(260ミリ)  諭鶴羽ダム 138ミリ(173ミリ)
帰守 150ミリ(174ミリ)  諭 鶴 羽   139ミリ(176ミリ)
由良 185ミリ(209ミリ)  阿  万  135ミリ(164ミリ)
相川 135ミリ(168ミリ)  灘 土 生   131ミリ(172ミリ)
沼島 144ミリ(162ミリ)     

最小値は灘土生の131ミリ、最大値は洲本測候所の232ミリです。灘土生は洲本測候所の56%の雨量でした。全島的には130ミリのベースの降雨があり、多いところでは更に100ミリ増の降雨があったことになります。降雨強度分布は島の東部、由良、洲本、北淡路が多いかなという傾向です。これまで淡路島は1月から4月にかけてきわめて少雨でしたが、これでどこのダムも溜池も満水です…。

それにしても、オホーツク海高気圧が1028hpaと異常に発達しています。冷害が発生しないか危惧されます。

ハマヒサカキ
↑灘海岸のハマヒサカキです。『兵庫県版レッド・デーッタ・ブック2010』で新しい貴重植物にランクインしました。Cランクです。

ハマヒサカキは淡路島南部の海岸、由良~上灘~下灘~阿万~門岬~阿那賀あたりの崖の上とか風の吹きあたるところにあります。風衝地にあるのでたいていは見事な扁形樹になっています。そのハマヒサカキの樹形の中心線(根本を通る垂直線)から左右対称ではなく、片方に極端に偏っていることが多いのです。樹高は2~3mぐらいです。葉はヒサカキに比べると丸っこい感じで、やや小さいです。
ハマヒサカキは海岸部に生じ、ヒサカキは内陸部に生じると言う感じで、“棲み分け”現象が観察できます。
諭鶴羽山のミミガタテンナンショウ
●諭鶴羽山の北側の2つの谷、成相水系と上田水系とに見られます。『兵庫県レッド・データ・ブック』ではAランクの貴重植物と評価されています。旧五色町でもSN氏が見つけ兵庫県には3ヵ所に自生することになります。近畿地方では兵庫県にしか分布していないです。最初に発見されたときには<隔離分布>だと話題になりました。

●分布の本拠地は関東地方から東北太平洋側のようですが、遠く離れた四国の愛媛県や大分県にあり、その中間の近畿地方や中部地方の西部にはなかったので、“隔離して分布している”ということなんですが、10数年前に分布の空白を埋める発見として淡路島でみつかったものです。

ミミガタテンナンショウの全国的なレッドデータの状況

ミミガタテンナンショウの兵庫県のレッドデータ情報

●写真ではわかりにくいのですが、仏炎苞の口辺部がちょうど耳のように著しく横に開出していて、耳の形に見えることから、耳形天南星(みみがたてんなんしょう)と名づけられました
仏炎苞の色はかなりの個体差があるようです。私の写真では、茶色っぽいのですが、兵庫県レッドデータ情報の小林先生の写真では緑色です。個体によって、緑、茶色、紫がっかった色、えび茶色…、と変化に富んでいます。結構色とりどりなので観賞価値がありそうです。自生地のものを盗掘するのはいけませんが、7月には種子が沢山できます。種子を少し頂いて苗を大切に育てるのならばいいでしょう。栽培は容易です。

ミミガタテンナンショウの特徴の一つには花期が早いということが挙げられます。淡路島には4つのテンナンショウ属の植物がありますが、他のウラシマソウ・ナンゴクウラシマソウ・アオテンナンショウに比べると、1か月ほども速いです。例年は3月下旬から4月上旬ぐらいが花期です。ことし2011年の春は寒かったのですが、特に3月がここ30年来の寒さでした。南あわじ市の南淡アメダス観測所の観測データを見ると、3月の平均気温は平年値よりも-2℃以上も偏差したので生物季節が10日ぐらいずれてしまいました。それで、ある写真家の方と4月15日にミミガタテンナンショウを見に行ったのですが、まだ少し早いかなという感じでした。

ミミガタテンナンショウ
↑上田水系の斜面の崩壊地に生じたミミガタテンナンショウ
植物名をどう表記するか?
植物の名前をどう書いたらいいのか? シイ、椎、しい、シイの木……、いろいろな書き方があります。ここに淡路島を紹介する一冊の本があります。その中から植物名をどう表記するか、その実例を拾ってみましょう。

●片山雅夫『淡路ええとこ』88教育文化研究所、平成4年発行
「山桜・巨石・やまぼうし・ムラサキシキブ」 (227貢)
「五月はやまぼうしと沙羅双樹の咲く諭鶴羽山を三原から灘へ越える。」(228貢)

この本は軽いエッセイ集で堅苦しい本ではありません。不特定多数の読者を対象とした一般書です。それで、ちょうどいい植物名の用例として取り上げたまでです。漢字・カタカナ・ひらがなの混在した表記となっていますが、これがごく普通の一般の人の表記のしかたであろうかと思います。何の誤りがあるわけでもないし、これはこれでいいと思います。

次に、自然の動植物を観察したり、調査している人たちの手になる本を見てみます。

●淡路自然保護連合会編『島の生きものたち』神戸新聞出版センター、1982年発行

「最後に淡路を自生地とする植生の中でも保存したい植物名を列記する。これは筆者の見解でありご指導を賜らば幸甚である。
マツバラン、キキョウラン、ウンラン、ミスミソウ、ボタンボウフウ、クマガイソウ、ツチアケビ、カギカズラ、ヒメシャラ、カンザブロウノキ、ツクシシャクナゲ、ジュズネノキ。」(192~193貢)

この本は、動物や植物を調べている方々9人による共著です。動物や植物名の書き方はカタカナで貫いています。もう違いは説明するまでもありません。一般の人は植物名を適当に漢字や仮名で書きますが、植物を少しでも学問的に勉強したり調査している人たちはカタカナで書くのです。

植物の標準和名(和名)を、難解な漢字をやめてカタカナで書くようにしたのは明治時代の植物学者たちのようですが、戦前は公式文書は漢字カタカナ文でしたので、公式的な文章では植物名はひらがなで書きました。牧野富太郎先生の植物図鑑では植物名をひらがなで表記しています。学名は厳格な「国際植物命名規約」というルールがあるのですが、標準和名についてはとくに規約のようなものはないようです。慣例的というか、習慣的にカタカナで表記しようと“暗黙のルール”になっているということです。
国際植物命名規約について

植物名をどのように書くかで、その人が植物とか自然について、どの程度の知識とか理解とかを持っているかがほぼ分かってしまいます。先に実際例として取り上げた『淡路ええとこ』では、一生懸命に植物のことを書き述べています。しかし聞きかじりの耳学で記述したのは見え見えで、馬脚を現しています。
「沙羅双樹の咲く諭鶴羽山…」などと書いているのでは興ざめしてしまいます。この著者は諭鶴羽山の南斜面に自生するヒメシャラのことをほとんど知らないのだろうと思います。

ヒメシャラの花
↑ヒメシャラの花は直径2.5㎝で小さい。ナツツバキの花は直径5㎝で大きいのですが、ナツツバキは淡路島に分布していません。
ヒメシャラの幹
↑ヒメシャラの幹です。樹皮がなめらかでよく滑るので、南あわじ市灘地区では「サルスベリ」と言っています。綺麗な樹皮をしているので昔は床の間の柱に使われたりしました。

ヒメシャラは『兵庫県レッド・データ・ブック』ではBランクの貴重植物と評価されています。諭鶴羽山の南斜面で払川から黒岩にかけての海抜300~600メートルのあたりに点々と見られます。兵庫県では諭鶴羽山にしか自生していないです。襲速紀要素(そはやきようそ)の植物で、西南日本外帯の標高の高い冷温帯(ブナ帯)に分布の中心がある樹木です。紀伊半島や四国では800メートル以上の標高の高いところに行かないと見られません。灘払川には海抜がわずか100メートルのところに純林状になって自生している不思議な場所があります。

淡路島のホンシャクナゲ (2)
今年2011年はシャクナゲの表年でしたので、ご覧の通りの豪華な咲きっぷりです。シャクナゲは表と裏とを繰り返します。隔年開花の傾向が強い花木です。シャクナゲの花芽は夏ごろに形成されるのですが、今年5月から6月に出た新梢の先端にできるからです。今年に花が咲いた枝先には、花がらが落ちた跡には果実が出来て新梢がでてきません。つまり花芽が形成されないのです。花芽がなければ…、来年5月に花がない…、ということです。

つまり、去年出た新しい枝先に今年花が咲き、花の跡には果実ができて新しい枝ができない、そして来年になって新しい枝が伸びて夏に花芽ができ、その花芽は再来年に咲く……、ということです。今年は豪華に咲いたので、来年のシャクナゲ観察会(お花見)はダメだということですね。

○を花がよく咲く事象とし、●を花が咲かない事象とすると、○●○●○●○●、というような感じです。実際には◎をものすごくよく咲く事象とすると、○●○●◎●●○●○●○●、というような感じで、10年に1度ものすごくよく咲くことがあります。ものすごくよく咲いた後は、樹勢を消耗するためか2年ぐらいはあまり咲かないものです。山に自生するたくさんの個体が一斉に足並みを揃える理由は、ハッキリとはしませんが、おそらく気象条件が作用しているのでは?と思います。

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↑枝先に10~15花集まって手まりのようになって咲くので豪華に見えます。花冠は7裂します。

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↑これは鮎屋川源流地帯の尾根で撮ったものです。ほとんど全ての枝先に花をつけています。こうなったら来年は咲きません。(庭で栽培しているシャクナゲならば、花が終わったら“花がら”を摘み取ると来年も咲きます)

●(追記)5月8日のシャクナゲ観察会の後日譚……

同行した有名な写真家が朝日新聞に写真を投稿すると、めでたく12日に淡路版の紙面をかざりました。するとその写真と記事を見た読者の方が、写真家に電話をかけてきました。「自分も猪鼻谷の奥の尾根にシャクナゲを捜しに行ったが、みつけられなかった。日当を出すから是非とも案内してほしい」と言うらしい。写真家はあんな急峻な尾根はもう御免だ、という腹があったのか、「山のキノコさん案内してあげてくれないか」と写真家から私の所に電話がきました。聞くと写真家とは知り合いらしい。案内してほしいと言ってきた方の名前をきいたら、記憶にある名前でした。

ということで、再度のシャクナゲ観察会となりました。日は5月16日の昼から。

12時に猪鼻ダムに集合です。参加者は私と、私の同級生のO君と、その電話してきたM氏の三人です。M氏と挨拶を交わして少し話をすると、やっぱり……、昔会ったことがありました。9年ほど前に島の中に植物を学ぶ会があってそこに参加していた人で、確かにお会いしています。しかしM氏は1回しか例会には出席できなかったそうです。残念ながらその会というのは1年ともたなかったです。会の主催者がとても気難しい人で内紛があったらしい……です。それでその会は解散となりました。

さて、M氏は若いころ登山をされていたということで立派な登山靴をはいていました。シャクナゲが大好きで、高野山で買ってきたシャクナゲを庭で栽培しているそうですが、鉢植えのシャクナゲを盗まれたこともあるそうです。登山口ではジャケツイバラという黄色のフジそっくりの美しい花が満開でした。フジはブドウの果実みたいに垂れ下がって咲きますが、ジャケツイバラは逆に上を向いてさきます。

小一時間かけてシャクナゲ自生地にたどり着くと、びっくりです。見事な満開なのです。O君も1週間まえの状態との差に感激で、「凄いな、枝と言う枝にはみな花がついているな。前来た時はつぼみが多かったので、こんなに花が多いとは思ってもみなかった」と、来たかいがあったと喜んでくれました。O君も屈強だし、M氏も登山靴を履いているぐらいだから健脚であろうと思われたので、「時期的に日は長いので、もう一つの尾根に行きましょうか?」と言うと、「行こうぜ」という返事です。


●別の尾根で、赤いシャクナゲを見つける!

最初の尾根を下山して、もう一つの尾根の登山口に車で移動、そこは海抜290メートルぐらいです。別の尾根は400メートルから490メートルの範囲にシャクナゲが自生していますので、登る標高差は半分程度です。途中、トチバニンジンがあちこちにありました。どうやらシカが食わないらしい。山には草本植物では、シカの不嗜好植物しか残らないという感じです。木本植物も背の低い木では、毒のあるシキミと、イズセンリョウというコーヒーの木の親戚がやたらと多いです。

もうひとつの尾根は木が茂っていてやや暗い感じですが、シャクナゲの花が沢山あるので、花で明るいという印象がしました。しばらく尾根上を散策して観察すると、M氏が見つけました。
「赤いのがあるぞ。ほら、あそこや」
「どれどれ、ほんまや。すごい赤いやないか」とO君。
「赤に近い濃色の桃色で、つぼみなんかは赤そのものやな」と私。
3人でしばらくその赤いシャクナゲに見とれたのですが、これを淡路島の貴重な赤シャクナゲにできないか? という考えが浮かんできて、秋に再訪問して種子の採取をすることになりました。5年かかるのですが、親がこれだけ赤いと、採取した種子から実生を育てて選抜すると、赤いシャクナゲの系統保存が出来る可能性があります。その赤シャクナゲはかなりの老木でそう遠くない将来に枯れる危険性がありそうなのです。

赤いシャクナゲを発見できたのは大収穫です。M氏に感謝したい。
(残念ながら、林内の光量不足で写真が撮れませんでした……)
淡路島のホンシャクナゲ
去る5月8日に、シャクナゲの観察会および写真撮影会をおこないました。参加者は私を含めて5人です。午前9時半に登山口に着きました。登山口は25000分の一地形図によると海抜約180メートル、シャクナゲの自生しているその山には三角点はありませんが標高点があり、454メートルと表示されています。標高点は山頂そのものではなく、山頂手前の前衛ピークにあるので、この山の真の標高は海抜470メートル弱であると思われます。

標高差で300メートルほどの登山なのですが、なにせ急峻きわまりない山でして、しかも尾根筋をまっすぐに直登する強行軍で、かなり健脚向きのハードな登山でした。自生のシャクナゲは<深山の麗花>と称され、ハードな山登りという“難行苦行”を積まないと見ることができないものなのです。

観察会の参加者は50代が2人、60代が3人で、若い人はいません。最近の若い人は植物のみならず自然にはあまり関心がないようで、島の山を軽登山したり、花を求めてトレッキングしている人はみな50代以上の中高年ばかりです。参加者はみな年寄りなので、持参のマダケでこしらえた杖を支給して、逸り立つ気持ちを抑えて 「とにかく安全第一だ、怪我がないようにゆっくりと行きましょう」 と発起人の私が挨拶をして登山開始です。遅々とした登山ではありましたが、尾根を直登したのでぐんぐんと高度をかせぎました。途中、尾根上に小さなピークが3つあるのですが、そのピークには庭石にするのにちょうどいい程度の苔むした岩が累々と堆積していて、ちょっと中部山岳の2500メートルの尾根のような雰囲気でいい感じです。

「淡路島にこんな深い山があるとは驚きだ。渓谷も深いし。谷にアマゴなんかいるのだろうか?」

と、初めて観察会に参加した人が感激しました。登山開始、小一時間でシャクナゲ自生地に辿りつき、持参の弁当を食べて花見です。花見に付きもののお酒は(?)です。アプローチし易い所であれば、お花見の名所になるのでしょうが、この山で花見をするのはシカとイノシシだけです。シャクナゲはこの山の7合目から上にあり、今年は春が寒かったので生物季節が1週間程度おくれ、満開には5日ほど速いかな? という開花状況でした……。 

観察会に参加した有名な写真家が朝日新聞に投稿した記事

こちらは昨年2010年の観察会での写真の投稿記事

猪鼻谷源頭で人知れず咲くホンシャクナゲ

―――淡路島のシャクナゲについて―――

淡路島に自生するシャクナゲは、ホンシャクナゲという種類です。これは長野県以西の本州(中部・近畿・中国地方)と四国に分布しています。ふつうは海抜800~1500メートルぐらいの冷温帯(ブナ帯)に自生するのですが、淡路島では280~530メートルの低山帯にあり、ウバメガシやアカガシの常緑樹の下の低木層を形成しています。ホンシャクナゲは産地による変異がかなり見られ、淡路島のものは葉の裏面にほとんど毛がないタイプのものです。無毛なので他地方のシャクナゲと比べると葉が少し薄く感じられます。『兵庫県レッド・データ・ブック2010年版』では、シャクナゲはCランクの貴重植物という評価です。前の版ではBランクでしたが、Cランクに格下げです。

猪鼻川と鮎屋川の源流地帯の尾根筋に自生しています。私の調査では4つの尾根に自生が見られます。個体数はかなりあり数百本はありそうです。花期は例年5月の連休頃です。むかしは柏原山の山頂付近にもありましたが、数十年前に行われた洲本市の不明朗な山頂開発等のため、今は柏原山にはありません。

シャクナゲはどんな種類でも、野生種は常に霧がかかるような空中湿度の高い環境に自生する植物です。現に、この淡路島のシャクナゲ自生地は400~500メートルの山地が東西に横たわり、紀伊水道を吹きあげてくる暖かい南風が強制上昇させられ、夏半年はしょっちゅう雲霞に覆われています。この標高の割には夏が涼しく高湿度な環境が温帯の植物であるシャクナゲを生存させているのだろうと考えられます。

夏が暑く乾燥する平地では環境がおおきく異なり、栽培するのは非常に困難です。そのため園芸愛好家の間では、シャクナゲを何回栽培しても結局枯らしてしまうので、“しゃく”にさわって“投げ”るからシャクナゲというのだ、などと言う人もいます……。


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