雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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高城山でのキノコ狩り 第二話 (その5)
ブナ林退治の魔手から、高城山は山頂部のみ免れた

●終戦直後の昭和20年代が、日本列島の森林が最も破壊された時期であることは疑いようがありません。戦時中には軍需物資としての木材が大量に必要であったし終戦時には、焼夷弾の絨毯爆撃で都会という都会は一面の焼け野が原です。住宅を復興させるには大量の木材が必要です。たとえば鉄道を再建するのに枕木が大量に必要だったことを見てもわかるように、産業の復興にも膨大な木材が必要でした。で、日本中で大量の森林が伐採されました。当時はまだ燃料革命の前夜です。660万人の復員兵と一般引き揚げ者が内地に帰還し、またベビーブームも起こって人口が急に増え、都会では一部ガス等が普及しかけていましたが、まだまだ大量の薪や炭が必要でした。里山も丸裸、奥山も大量伐採です。

●で、日本中に広がる荒廃したハゲ山に木を植えにゃならん、また経済の復興・発展にはさらなる木材需要があるから造林をせにゃならんと、治山事業や造林補助事業が推進されました。昭和25年ごろから復興が本格的になり大量の木材需要が発生しました。昭和30年代になると燃料革命が起こり、里山の雑木林が次第に要らなくなりました。この里山の雑木林が用材にする針葉樹を造林する新たな場所になりました。針葉樹の木材需要は大きいのに供給力が十分ではないということがあり、膨大な木材需要を満たすために、残っていた奥山の森林までどんどん伐採されました。一段とハゲ山だらけです。そこで、林野庁が音頭をとって拡大造林政策が始まりました。 『森林・林業白書』 第1部 第I章 第2節 我が国の森林整備を巡る歴史 (1~4)  を参照。

拡大造林とは単に造林を拡大することではありません。“あまり役に立たない広葉樹” → “木材として価値の高い針葉樹” への樹種転換です。里山でも奥山でも、とにかく広葉樹を伐り倒してスギなどの有用針葉樹を植えよという政策です。この林野庁の拡大造林が目のカタキにしたのがブナです。ブナ林退治などという言葉というか、標語みたいなものがありました。吾輩が子供の頃のハナシですが、ブナというのは役に立たない樹なのでこれを退治してスギやヒノキやカラマツを植えなければならないと、奥山のブナ原生林が次々に伐採されました。高城山も山頂近辺とはいえ、ブナの原生林がよくぞ残ったものだと思います。急斜面であるとか、あまりにも奥山すぎるとか、植林には不向きな条件であったのだろうと思われます。それでも、高城山の山頂南側は海抜1400mの高所までスギが植林されています。高城山の主に北斜面に見られるブナ原生林は、そんな林野庁のブナ林退治の魔手から上手く逃れられた貴重な森だといえましょう。

●さて、スギを植えたのはいいとしても、問題はその後の管理が不十分だったことです。普通、植林というのは計画的密植をするから、枝打ちはしない、間伐はしない、ということでは用材の価値はありません。木材の輸入自由化があり、円が1ドル360円固定相場制から変動相場制へと切り替えられ、一時1ドル80円までいく雄大な円の上昇トレンドがあったため、輸入木材が安く手に入ったです。価格で国内産木材は太刀打ちできず、林業は衰退しました。一時脚光を浴びた 分収造林・分収育林 は大失敗しました。林野庁に騙された! と裁判も起こりました。10年前に 「100年安心のプランができた!」 と豪語していた年金制度も、まあ、既に破綻したようなものです。それと同じで、林野庁でも何省何庁でも政府配下のお役人がやることは共通しています。その政策プランが大赤字を出そうが、破綻しようが失敗しようが、組織の温存・拡大や、天下りするところが確保できたらいいだけです。あとは野となれ山となれ…。当事者意識がなく責任も絶対にとらない…。


追記
林野庁の詐欺まがいの投資話
もう30年近く前になりますが、そのころ四国東部の山々をよじ登っていました。四国は幕藩時代からスギの植林がさかんで、たとえば、室戸岬の付け根にあたる高知県馬路村魚梁瀬 (やなせ) の千本山に土佐藩が植えたスギは、200年、300年が経ち樹高50mの 巨木の森林 になって見事なものです。千本山に分け入ったヒトは、巨人の国に迷い込んだ小人 (こびと) じゃないかというふうな錯覚がします。本州からのアクセスは簡単ではないのですが、一見の価値があります。土佐藩や阿波藩が植林に力をいれた伝統は現在まで引き継がれていて、山頂から見ると視程のかなたまで続く山々はスギの植林地で、よくまあこれだけ植えたものだと関心させられます。四国東部の山々の登山は必然的にこのスギ植林地を通るのですが、30年前に突如として林道のあちこちに看板が立てられました。

その看板とは、林野庁が推進した分収造林や分収育林の案内看板です。いわゆる 「緑のオーナー制度」 です。美辞麗句が並べられていて、投資話としてもさも素晴らしい商品かのようなことを謳っていました。確か1口50万円の出資金だったか? 1口25万円コースもあったと記憶しています。 吾輩もパンフレットを取り寄せて何口か購入しようと検討しましたわ。検討の結果ですが、疑問をもちました。なぜ他人に出資させる (カネを出させようとする) のか? 国であろうと民間であろうと、その投資話 (ビジネス) が本当に儲かるのであれば、面白いように儲かるのであれば、他人に勧めないハズです。できるだけ自分が独り占めするハズです。リスク極小、確実に儲かるのならば、自己資金が足りなければ借金してでも自分でするハズです。なぜならば、他人に勧めたら自分の利益が減るからです。本質的にヒトという種は強欲です。そういうふうに考えて、他人に勧める (国が国民に勧める) ということ自体が、このビジネスはダメなんだよと告白しているも同然ではないか? という判断をしました。だいいち、木材価格の動向を調べたら長期下降トレンドで、回復の兆しが見えませんでした。収益回収期に木材価格がどうなっているかあまりにも不透明で、国家が企画した投資話にしては杜撰な印象がして、手を出しませんでした。

緑のオーナー制度被害者弁護団のページ 「弁護団声明」
林野庁 (国) の詐欺的投資話で、なんの落ち度もない善良な国民が大勢被害に遭いました。いま、国を相手取って集団訴訟が起きています。美しいバラの花にはトゲがある、国に騙されないよう気を引き締めましょう。膨大な有利子負債を抱える国は、あきらかに国民資産収奪の方向に針路を変えていますね。権力は腐敗する という言葉がありますが、間違っています。権力が腐敗するのではなくて、権力というものは、そもそも腐敗そのものです。権力とは始めから腐敗であり悪なのです。統治機構も選挙制度も国家の徴税権も年金や福祉も、なにもかもが嘘や誤魔化しインチキだらけで、まあ申せば壮大な詐欺みたいなものです。若い時はわからなかったけど、最近、国家の存在そのものが詐欺であると分かりました。



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↓ 徳島のヘソという地点のブナです。ブナ林を破壊しながら剣山スーパー林道を開設したため、林道沿いのブナには立ち枯れが目立ちます。8月~9月だったら、この立ち枯れを見て回ったらキノコがいろいろと採れます。
山頂直下の “徳島のヘソ” の所のブナ原生林

↓ 高城山の山頂一帯のブナです。樹齢の古そうなものが目立ちます。
山頂のゴツゴツとした野武士のようなブナ

↓ 高城山の山頂付近の三角点標石です。山岳会が立てた登頂記念のプラカードには1627.9mとありますが、この標高の数字は旧版の地形図の数字です。国土地理院の最新版の地形図では1628.0mです。高城山の本当の山頂は三角点の東125mのところにあり、1632mの標高点があります。
高城山山頂の三角点標石

↓ 写真のブナの林分は樹齢が若そうです。樹齢20年か30年程度か? おそらく、ここはスズタケが密生していてブナが無かったところだろうと思います。何らかの要因でスズタケが枯れて、その跡にブナが進入したのだろうと思われます。そう考えると、樹齢がそろっている現象を上手く説明できます。
樹齢の若いブナの林分もある


ブナは南の地方のものほど、葉が小さくなる

●植物形態学の研究者じゃなくても、普通の登山者でも気付いている人は多いと思います。あちこちの山をよじ登っていると、どうも山によってブナが違うのです。特に四国のブナと本州日本海側のブナがかなり違います。四国のブナは葉が非常に小さく厚く、枝に沢山の葉が密集します。葉だけでなく樹形も何となく違います。日本海側のブナはスラと長身で樹皮が白っぽく貴婦人みたいな上品さがあります。四国のブナは、ブナはブナなんでしょうが、樹形がゴツゴツとしています。低い位置から太い大枝を沢山だしています。樹皮もあまり白くなく、風格はあるんですが野武士みたいな荒っぽさがあります。かつてブナには北日本・日本海側のオオバブナ (大葉ブナ) と、南日本・太平洋側のコハブナ (小葉ブナ) に分けられかけました。

しかしながら、オオバブナとコハブナに明瞭に分けられるのではなく、両者は連続的に繋がっています。形態的に分布的にある境界を境に画然と分けられるのではないみたいです。 『本州中部山地におけるブナの葉の形態的変化に関する研究』 とか、『甲信越地域におけるブナ葉面積の地理的変異』 などの論文を閲覧すると、北日本と南日本とではブナの葉の大きさの差が顕著です。長野県など一つの県の中でもブナの葉の大きさに明瞭な差があるようです。 ブナ北限の里、黒松内町ブナセンターのサイトの 『ブナの基礎知識』 は一般向けに分かりやすく解説しています。

ブナの葉の大きさ
北海道 → 東北 → 中部 → 四国・九州、 南に行くほど葉が小さくなる。
日本海側 → 本州中央部 → 太平洋側、 でも葉が明瞭に小さくなる。
                 
●葉の大きさに、明瞭で連続的な地理的クライン (勾配) があります。無作為に採取した1枚の葉の大きさ平均値は、葉面積で、北海道黒松内では48平方センチです。四国では11~15平方センチというから、四国のブナの葉面積は北海道のそれの3分の1~4分の1ということですわね。他にも、矢印の方向に樹皮の色が濃くなる。樹形がゴツゴツとする。葉が厚くなる。葉が密集する。というふうなことが観察できます。↓は黒松内ブナセンターHPより借用。

ブナの葉の大きさの地理的変異


世界遺産の 白神山地のブナ はまだ見に行っていませんが、(西日本からでは外国に行くほど遠いので簡単には行けない。実際韓国に行く方が近い。) 写真や映像を見る限りでは、高城山のブナと大分ちがうようです。大勢の人々が写真を撮ったGoogle画像検索を閲覧すると、全然違いますね。実物を見ずしてああだ、こうだと言及するのは宜しくありませんが、どこがどう違うかと言うと、白神山地のブナは林床が明るいことが挙げられそうです。葉が大きいだけでなく、たぶん葉が薄いのでしょう。日光が葉を透過して明るく、いかにも夏緑樹林的な雰囲気です。林床に草やシダが多いようですね。明るい (光環境が良い) ので草本層がしっかりと形成されています。一方、高城山のブナ原生林は葉が密生して林床があまり明るくありません。照葉樹林ほどではないのですが、林床が暗いです。で、林床の草本層が欠落している林分が多いです。一帯はスズタケやミヤコザサの分布域ですが、ブナの林床が暗いのでタケやササ類はブナ林内にはあまり生えません。

↓ の写真のものはスラと真っ直ぐなものを選んで撮りましたが、これでもまだゴツゴツしています。

やはり枝ぶりはゴツゴツとしている

↓ 大分落葉が進んでいますが、小さな葉が密生しています。樹齢が10年とか20年程度の若木ならば、葉が更に一段とアキニレのように小さく、ブナではなく別物みたいに見える樹が多いです。
高城山のブナの葉は小さい



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高城山でのキノコ狩り 第二話 (その4)
高城山の山頂から見る大パノラマ

●大パノラマなどと言っても幾重にも重畳する山岳地帯しかみえません実は、山が低すぎるのです。高城山と人里の平野部との間に前衛の峰峰が何重にも取り囲んでいます。で、平野部の里や都市や、海岸などは意外にみえません。南を遠望しても地平の彼方に太平洋は見えますが、室戸岬は全く見えません。見えるのは何重にも重なる山々だけです。四国山地とか紀伊山地は、地形学的には曲隆山地 (きょくりゅうさんち) です。山塊が横からの力をうけて山塊全体が上のほうにたわんで出来る地形ですが、真ん中が高く周辺ほど低いという特徴があります。このため何重にも前衛の峰々ができて、その前衛の峰峰が邪魔をして、意外に麓の町が見えなくなります。

●中央アルプスみたいな断層の動きで高く聳える地塁山地ならば、前衛の山々がなく、麓から一挙に山の高度を上げます。中央アルプスは幅がたった20キロあまりしかないのに、3000mに迫る高度があります。麓の海抜が500~600mあるから山麓からの比高は2200~2300m程度か? 物凄く急峻で高いのです。

●一方、剣山地は、麓の吉野川から剣山まで水平距離20キロすこしあります。剣山の山頂から太平洋側まで最短でも35キロあります。つまり剣山地は55キロの幅があって高さは2000m弱なのです。 一方、中央アルプスならば20キロに山脈の横幅がすっぽりとおさまり比高2300m。中央アルプスの駒ケ岳(2956m)の山頂から麓の町がみえています。結局、高城山の頂上に立っても山々しか見えないのは、山地の成因が地塁山地や火山などの独立峰でないことが要因なのでしょう。剣山地のような曲隆山地は山塊の規模の割に山が低く、ドングリの背比べのような峰々しか見えないということですな。残念です。



ドングリの背比べの山岳風景に、うるさく山名を記入

↓ 高城山山頂から見て、西~西南西方向。
剣山方面 (西~西南西方向)

↓ 少し拡大した様子
剣山方面 少し拡大

↓ 高城山から西北西方向を遠望したところ。
矢筈山方面 (西北西方向)

↓ 高城山山頂から、北~北北西方向。
高越山方面 (北~北北西方向)

↓ 大滝山というのは、徳島県・香川県境にある讃岐山脈の山です。大滝山と高越山のあいだには、吉野川にそって平野部があり徳島県の人口の過半数が住んでいますが、高城山山頂からは徳島平野はほとんどみえません。
高越山方面 少し拡大


高城山山頂に、珍しいヤマグルマの樹がある
淡路島には分布していない樹木です。徳島県のブナ帯の山々を歩いていると、ときどき見かけます。なんとなくウコギ科のカクレミノの老木に似ています。カクレミノは老木になると葉が小さく、しかも葉の切れ込みが消失します。しかも葉に光沢のあるのが非常に似ています。
ヤマグルマ

●ヤマグルマは話題性の高い樹木です。話題としては3点あろうかと思います。

①、亜熱帯~温帯上部まで広い気候帯に分布します。ヤマグルマは山形県を自生北限として以西・以南にあるとされますが、西日本ではブナが生えるような標高の高いところで良く見られ、ブナ帯の樹木かと錯覚しそうですが、沖縄など琉球諸島や台湾北部にも自生して亜熱帯域では大木になるらしい。亜熱帯にある樹が厳冬期には-20度にもなるような海抜1600mを越える高所 (註) にあるのは不思議な感じがします。葉を見れば葉の表面にクチクラ層が発達しているのか? テカテカと光沢があり、照葉樹の葉そのものです。もう少しで亜高山帯になるというほどの高所に常緑でまさに照葉樹の樹があるのは不思議な光景です。恐らく分化しなかったのでは? 普通ならば、全く異なる環境にあれば動植物は分化して別物に枝別れしていくものですが、進化して枝別れしなかったので広範囲の気候帯に分布しているように見えるのではないか?
 

(註) 剣山測候所での最低気温の記録は-23.5度です。この時は上空に強い寒気が進入し、気温減率は0.8~0.9度/100mに達していました。山が約300m低い高城山山頂では剣山での観測値より2~3度高かったと思われます。高城山の山頂では-20.8~-21.1度であったと推定されます。

あるいは、ヤマグルマは元来は温暖な地方の植物であるけれども、耐寒性が非常に強い樹木かも? それから、岩場に多いということは他の樹木との競争に弱い (アカマツみたいに) ことを意味します。土壌中のバクテリア相や菌類相が関係していて、暖温帯の平地では土壌に有害なバクテリアが多くてヤマグルマは育ちにくい。けれども、ブナ帯では山地の標高が高く急峻であるから岩場が多く、有害菌のいない生育適地がけっこうあるのではないか? ブナ帯でも傾斜の緩やかなところは厚い腐葉土の層ができていて (気温が低いから有機物が分解されにくいので) ヤマグルマは有害菌のいるブナの森では暮らしにくい。さて、沖縄や台湾にヤマグルマがあるのは、亜熱帯域では気温が高く有機物がどんどん分解されて腐葉土層が出来にくいから、ヤマグルマに有害な菌類とかが少ない? というふうに、キノコファンとして菌類・バクテリア相と樹木の関係という視点から想像したら、ヤマグルマが亜熱帯に自生し、日本本土では平地ではなくブナ帯の岩場に多いという矛盾が上手く説明できそうな気がします。 (ただし素人の思い付き解釈)

だとすると、マツ(松)類と同じですね。本来、クロマツでもアカマツでも、海岸の砂地とか、山の尾根筋の岩場が本来の生息地です。広葉樹の茂った土壌が肥沃なところでは、マツに害のある菌が多くマツに有益な共生菌が少なく、マツは自生していないです。 一見するとかけ離れた環境に隔離して分布するように見えてしまいます。(ヒトが本来の分布を撹乱していますが)

植物生態研究室 (波田研) のホームページの 「ヤマグルマ」
導管を持たない日本で唯一の広葉樹  等参照。
 

②、ヤマグルマは、1科1属1種の孤高の植物として有名です。日本にある植物では唯一の 導管を持たない原始的な被子植物です。被子植物でありながら、裸子植物の面影を残している特異な樹木です。1科1属1種というのは、つまり分化していないということも言えそうです。たとえば、寒いところに生育するヤマグルマが葉を薄くして落葉性になるとか…、つまり変化しなかったということではないか?

③、ヤマグルマの樹皮からトリモチを作ることができる。淡路島では 鳥黐 (とりもち) はモチノキの樹皮を剥いで作ります。吾輩も子供のころモチノキの樹皮を剥いで作りました。樹皮を金づちで細かく叩き潰して、水の中で良く揉んで樹皮の繊維を取り除くとトリモチが簡単に作れました。鳥を捕るのではなくイタズラに使いました。淡路島ではヤマグルマが自生していないので、モチノキから作るしかありません。クロガネモチの樹でも作れます。ヤマグルマが沢山自生している地方では、ヤマグルマの樹皮からトリモチを作っていたらしい。ヤマグルマで作ったトリモチは色が赤っぽく赤モチというらしい。 自家製のトリモチを作ったのは50年も前のハナシで、今日びの中学生らはトリモチなど見たこともないでしょうね。


ヤマグルマの果実


高城山の山頂に、石灰岩の岩があるではないか!

四国山地の山々の山頂には、点々と 石灰岩 がみられます。剣山の山頂にもあるし、石立山の山頂にもあります。このあたり一帯は地質学では 付加体 (ふかたい) だと教えています。大昔に、中生代ジュラ紀に日本列島がまだ大陸にくっついていたころ、今のフィリピンプレート (そのころは テティス海 か?) の海底上に堆積した物質 (チャート等) とか、海底火山の岩石 (玄武岩等) や、海底火山の上に出来たサンゴ礁 (石灰岩) などが、プレートのベルトコンベアーに乗って西日本沖の海溝に運ばれ、西日本に次々に付け加わわったとされます。石灰岩があるということが、これは大昔には海の底にあったという証拠ですわね。ただし、サンゴ礁は海面スレスレの海山の頂上にできるので、この石灰岩は海底で形成されたとは言えないでしょうが…。

それにしても1億年とか2億年の時間尺度のなかで起こったことで、億年の重みなど感覚的には全く理解できないハナシです。長生きしても人生せいぜい100年です。文字が発明されて記録が始まってから最長でせいぜい5000年ですが、たった50回の人生の長さでしかありません。それに比べると、地質年代的時間スケールの1億年て100万回の人生分です。そう考えると、人類の歴史のなんとまあ薄っぺらなことか…。思うに、この億年の時間の重みが地学の魅力なのでしょう。各地に地学を学ぶ会があって、地学を正式に学んでいない一般の人でも、ハンマーを手にして化石を捜したりしている人々が大勢いますね。


高城山の山頂の石

山頂の石灰岩



高城山でのキノコ狩り 第二話 (その3)
興ざめする高城山の山頂

●なんともはや、高城山 (1632m) の山頂に、遊園地ばりのモノレールがあります! 興ざめです。そうとうな起伏があり、傾斜はかなりのものです。このモノレールの軌道にジェットコースターの車両を乗せて走らせれば、天空の遊園地です。猛スピードで走らせたならば結構な絶叫マシンになって、登山者が増えるのではないか? 山頂に巨大なコケシばりのレーダ雨量観測所があります。これも興ざめです。あちこちの山の上に無機質な構造物が建てられ興ざめな山が増えました。まだ高城山はましなほうかもしれません。ヒドイのは山頂に武骨で醜悪な鉄塔が10本も20本も建っている山もあります。 それから山頂に風力発電群が林立する山も多くなりましたが、地獄の針千本山みたいで気持ちわるいです。

高城山レーダ雨量観測所の管理用モノレール

高城山レーダ雨量観測所の管理用モノレール

↑ 点検補修用の手すりつき通路まであります。こういうのも キャットウォーク って言うんですかね? なんと登山者が何人もこのキャットウォークを歩いていました。滑り止めもあるし手すりもあるし歩きやすそうです。許可なく無断で歩いていいんやろか? しかしまあ、何もこんなところを歩かなくても、せっかく山登りをしに来ているのだから、藪を漕ぎ分け、岩を這い登ってこそ登山であります。猫歩きか? 犬歩きか? 何て言うのか知りませんが、こんなところを歩くのでは登山の値打ちがありません。

●軌条を観察すると、真ん中にメインのレールがあります。その両側に、補助レールと言ったらいいのか? やや細いものが2本あります。全部で3本あります。そうしますと、言葉の意味としてはモノレールと言う表現は変です。 monorail という言葉の 「mono」 という接頭辞は 「単一の」 という意味ですよね。軌条が3本あるから 「triplerail、 トリプルレール」 と言うべきか? 

真ん中のメインのレールの下側か? ひょっとすると側面か? ラック (歯車のような溝) が切ってあるのが写真でも確認できます。おそらく、このモノレールは ラック・アンド・ピニオン 方式のモノレールなのでしょう。メインレール1本だけではぐらぐらとして、安定が悪そうだから、補助レールが2本あるのはこれに車輪のようなものを引っかけて安定を取るのではないか? 結構大きな幅広の車両を乗せて走らすのではないか? (勝手な想像) スーパー林道わきモノレール始発場所に倉庫がありますが、窓がないのでどんな車両なのか見えません。非常に立派な資機材運搬用モノレールですが、ヒトが乗っても大丈夫な強度や安全性はあるハズです。せっかく立派なモノレールであるし、どんな機械類でも定期的に運転しないと調子が悪くなるから、建設省は土日に登山モノレールとして営業したらいいのではないか? 往復運賃として500円徴収すれば管理人の日当には十分なると思われます。 (勝手な放談)


↓ あまりにも豪華で立派すぎるモノレールの軌道
高城山レーダ雨量観測所の管理用モノレール

●説明看板は次のように言っています。

「このモノレールは建設省高城山レーダ雨量観測所の管理用モノレールです。 高城山でのレーダ雨量観測所建設にあたっては、周辺環境や自然生態系への影響を極力少なくするために、道路新設に替えて資機材運搬等の工事用及び完成後の維持管理を考慮したモノレールを設置しています。 このモノレールはレーダ雨量観測所との標高差111mを軌道延長393mの3条式レールで結んでいます。」

●環境や生態系に悪影響を与えないように配慮したのだ、と誇らしげに言っています。果たしてそうだろうか? この看板は高城山のシカやカモシカや野鳥に読ませるものではありません。明らかにヒトに読ませる為のものです。剣山スーパー林道を行く登山者やオフロードライダーたちに読ませるネライの筈です。そうしますと、建設省は環境や生態系に配慮する立派なお役所なんだ、と単にプロパガンダしているだけではないか? つまり自画自賛です。建設省というお役所は、もちろん社会に必要なものも沢山作ってきた立派なお役所ですが、しかしながら一面では、川を三面コンクリート張りの単なる放水路にして水生生物の棲みかを奪いました。また、ヒドイところでは100mごとに砂防ダムを作って魚の遡上をできなくしました。それから日本全国ダムだらけにし、(吉野川河口堰を阻止した徳島市の市民は偉い!) 無駄な道路や橋も沢山つくりました。建設業界とケッタクしてさんざん自然破壊をしてきた省庁という側面も確実にあります。それが今さら環境や生態系に配慮しているのだ、などと言っても、はあ? そうですかねえ??? てな感じはします。

●問題はモノレールではなくレーダー雨量観測所の建物です。風力発電そっくりの物凄い風切り音がしています。山頂に建っている巨大コケシは、風力発電のような回転するブレードはないのに、この物凄い風切り音は一体何なのだろうか? おおかたファガスの森 高城の近くまで聞こえています。これは建造物の形状に問題がありそうな感じです。付近に人家がないから問題にはならないですが、もし人家が近くにあれば風力発電みたいな低周波音被害が発生するのではないか? たぶん、野生動物たちはかなり影響を受けているのではないか? 環境に配慮したというプロパガンダが白々しく聞こえます。


説明看板

●それからもう一つ問題は、このレーダー雨量観測所の建設資機材運搬用および管理用に供するモノレールが豪華で立派すぎることでありましょう。国民から税金を集めるので資金は潤沢にあります。湯水のように資金が調達できます。足りなくなれば税金を上げて徴収すればいいだけです。いっぽう担税義務を背負わされている国民はやせ細る一方です。重税の重しで呼吸ができなくなる寸前です。徳島県は 高地性傾斜地集落 が非常に多いところです。驚くような斜面の高い所に集落があります。で、麓から集落まで自前のモノレールを設置しているところもあります。建設省のように潤沢な資金があるわけではないので貧弱・老朽化したモノレールです。ちょっと危なそうなこの老朽化したモノレールを見ると、国民の疲弊状態がよくわかります。
(なお埋め込動画のモノレールは国の費用で建造したものです)




↓ 矮生化したスズタケの叢をかき分けて登る

南側から高城山の山頂にいたる登山道です。昔 (30年前) は、ここは背丈を超えるスズタケが密生していて漕ぎ分けるのが難儀でしたが、いつのまにかスズタケが小さくなってしまいました。30センチか50センチ程度です。スズタケが小さくなったので見晴らしが利き、見事な大パノラマが広がります。
スズタケの中を登る

スズタケの中を登る


↓ 眺望絶佳、四囲広闊、大パノラマが広がる

西方に、西日本第二の高峰、剣山が指呼の間に望めます。
剣山を遠望する

剣山を遠望する


南側はるかは室戸岬方面です。
室戸岬方面を眺める

(拙稿は続く)


高城山でのキノコ狩り 第二話 (番外編)
本日は2014年10月23日です。

●先日の10月19日 (日曜日) に徳島県・高城山にキノコ狩りに行ったのですが、案の定というか、予想した通りというか、時季外れで何の収穫もありませんでした。そこで、その代わりに吾輩の茅屋の近くの山に行ってマイタケを採ってきました。先日行った高城山のようなブナ帯では、マイタケはブナの樹に出るのではなく、主にミズナラの大木の根際に出ます。(なお、ブナによく出るのはトンビマイタケ) 時期は8月終わりから9月ごろの早い段階です。ミズナラの大木を求めて山中を徘徊して探します。あまり標高が高いところはブナばかりなので、やや標高が低いところを捜します。その樹が生育旺盛であまり健康すぎるものはダメで、樹のどこか傷んでいるというものの根際を見て回ります。

●このマイタケは実は分布が非常に広くて、ブナ帯はもちろん、西日本平地の照葉樹林帯にも発生します。よく出る樹はシイの大木です。他にも、シラカシとかアカガシなどの樫類にも発生しますし、クリの木やサクラ (桜) の老木にもしばしば発生します。照葉樹林帯ではマイタケが出るのは10月になってからですが、九州の宮崎県などでは11月にも出るそうです。マイタケは奥山のキノコと一般には考えられていますが、実は、西日本太平洋側の人家の近くでも発生するのです。 発生しても、多くの人は関心がないから気付かないだけです。つまり、目の前にあっても意識しないと見えないということであります。


↓ カシの樹に発生したマイタケ、これは淡路島産。

これは高城山産ではありません。10月22日夕方に、淡路島南部 (南あわじ市) の山で採ってきました。ちょっと小さめです。最近シカがキノコを食べるようになり、探してもシカの食害跡ばかりが見つかります。シカが食べ残した残りものを戴きます。淡路島南部の柏原-諭鶴羽山地でのキノコ狩りが難しくなってきましたワ。
天然マイタケ

発泡スチロールのトレイに乗せて、マイタケの表面を観察。
発泡スチのトレイに盛った

ひっくり返して裏面を観察します。裏側は白っぽいです。
裏側を観察する

裏側を20倍のルーペで観察すると針先で突いたような小さな穴が無数に空いています。いわゆる管穴 (くだあな) ですが、吾輩の写真では分かりづらいです。顕微鏡写真を撮らないとダメでしょうが、顕微鏡は持っていますがカメラの機材をもっていません。マイタケの裏面を観察すると、このキノコは、コフキサルノコシカケ (オオミノコフキタケ) の仲間であることがよく分かります。
微小な穴が無数にある

小振りですが形がいいので、乾燥標本にしようと思いましたが、バチ当たりなことに、結局マイタケ飯にして食べてしまった。キノコでも植物でも、それが何という種なのか? 自分で同定しようとしても、自分の貧しい知識では及ばないものが必ず出てきます。もし専門家に話を聞ける機会があっても、標本・写真・スケッチ・観察記録をきっちりとしていないことには、聞きようがありません。(教えてもらえない)

マイタケご飯

↑ これは吾輩の作品。 あまり美味しそうには見えないかもしれませんが、マイタケたっぷりで美味いです。材料は、天然マイタケ・竹の子(マダケの自家採取品)・クリ(山で採ってきたもの)・ニンジン(自家菜園で栽培) の4品は自給自足品です。竹の子はマダケよりもネマガリダケが良いのは決まっていますが、淡路島はネマガリダケ(チシマダケ)分布域じゃないから入手できません。 それから、エビ・油揚げは店で買ってきた。煮干しと利尻昆布でとった濃厚なダシで、コメとこれら具材を炊き上げた。具材は荒っぽくカットするほうが面白いです。鳥の餌みたいに、ちまちまと細かく切るのは良くないのです。調味料は、塩・醤油・酒のみ。へんな化学調味料など絶対に入れてはいけません。化学調味料がヒトの味覚を狂わせています。


高城山でのキノコ狩り 第二話 (その2)
●四国山地の東部の盟主、剣山 (1955m) から山地の主稜線は更に東へと数十キロ延びるのですが、その主稜線上の大きな膨らみが高城山 (1632m) であります。この高城山の山頂直下の海抜1300mのところにあるレストハウス 「ファガスの森 高城」 で昼飯には早いが腹ごしらえで名物のシカカレーというものを食べてから、早速にキノコ探しです。10月19日では時期的に遅すぎるのは承知ではあるけれども、ひょっとしたら晩生のキノコが残っていないか? あるいは、同じキノコの種であっても、山中で天然状態であっても、高温発生性の系統や、低温発生性の系統に分化していることもあります。で、低温発生性の系統が子実体を出しているかも? と淡い期待をもって剣山スーパー林道から谷の方へ (つまり下の方へ) 降りて行きごそごそと探しまわったが、こりゃあダメじゃ。なんせ、2週間前にあれほど沢山あったツキヨタケが陰も形もなく消え去っています。

↓ 高城山の山頂北斜面のブナ自然林
高城山の山頂北斜面のブナの自然林

↓ シロモジ (クスノキ科の低木) の黄葉
シロモジの黄葉

●剣山一帯の山岳地帯の市町村の観光課であるとか、観光協会などは 「紅葉が美しい」 と自画自賛しています。沢山の観光客や登山者やハイカーがわんさかと来てお金を落としてほしいという願望がにじみでています。ところが、吾輩の目にはあまり美しい紅葉には見えません。ブナ林というのは黄葉しますが、綺麗なレモンイエローではなく、まあ申せば土色です。とても綺麗とは言えません。山岳地帯で本当に綺麗な紅葉が見られるのはもっと標高が高い亜高山帯です。たとえば噴火で大勢の犠牲者が出ましたが御嶽山とか。ブナ帯は、ブナが純林を形成することが多く、どうしても単調な印象を否めません。痩せ尾根の岩角地などでは、矮小化したヒメコマツやウラジロモミなどの常緑針葉樹の緑色と、ナナカマドやドウダンツツジなどの赤色との対照が非常に美しいのですが、剣山地には意外にそういう所が少ないようです。真っ赤に色ずくカエデ類も少なく、黄色っぽいカエデ類の方が目立ちます。


時期遅し! めぼしいキノコはなし。
クリタケ がありました。汁物にすれば濃厚でコクのあるダシがでる良いキノコです。淡路島南部の柏原-諭鶴羽山地のコナラ林でもよく出ます。写真の物は老成したクリタケが乾燥に遭い干からびた状態です。傘の裏側のヒダを観察したら鉄サビ色に黒くなっています。こりゃあダメです。若い段階のもの (ヒダがクリーム色の状態) が乾燥クリタケになったのならばともかくも、採集不適期のものは見送りです。近年、クリタケから毒成分が見つかっているので少し注意が要ります。(大量に食べなければ大丈夫)
クリタケの乾燥したもの

ヌメリスギタケモドキ もありました。これも良い食用菌です。ただし、樹上で乾燥して干しキノコになっています。傘の表面のヌメリは乾燥のために光沢のある皮膜みたいになっています。傘表面に散在するささくれ (突起) も乾燥のため傘の表面に張り付いてしまっています。キノコのつぼみの段階で一挙に乾燥してしまったようです。これもダメです。天然キノコの採集の原則は、採集適期の物だけを採ることに尽きます。老成してヒダが変色したものや、乾燥して時間が経ち古くなったものには、基本的に手を出しません。
ヌメリスギタケモドキ


早々にキノコ狩りを切り上げ、「徳島のへそ」 まで来た
右側のチョン切れた標識に 「徳島のヘソ 木沢村」 と書いています。この地点が徳島県の中心点らしい。どうやって中心を計測したのか知りませんが…。剣山スーパー林道随一の展望所 (海抜約1490m) です。高城山風致探勝林 (釜ヶ谷国有林) の説明文の中に、「遠く淡路島まで眺望できる大パノラマ」 などと書かれています。逆にいえば、淡路島南部の山や海岸から高城山はよく見えています。高城山と淡路島最南端との直線距離は55キロ、高城山と諭鶴羽山との距離は65キロです。ちなみに諭鶴羽山から兵庫県最高峰の氷ノ山までは127キロ。つまり、淡路島南部の住民にとっては、自県の最高峰に登るよりも高城山に登るほうが遥かに近いのです。淡路島は幕藩時代には徳島県 (阿波藩) に属したのも理にかなっています。上代にさかのぼっても、淡路島は南海道に属しています。畿内じゃありませんワ。可能ならば兵庫県を脱退して徳島県に編入してもらいたいところ…。
「徳島のへそ」 にある説明看板

↓ かすみがかかっていなければ、淡路島と記入したあたりに淡路島が遠望できます。大鳴門橋も視認できるハズです。淡路島と記入したところから少し右側に徳島市が見えるのですが、市の中心部分は眉山の陰になるので見えません。
淡路島方面を眺める

徳島のヘソから、東~東南東を眺めたところです。高城山、雲早山、高丸山の3つを勝浦三山と言うらしい。四国山地は日本の代表的な曲隆山地であります。西南日本外帯を大地形的にみれば東から、曲隆山地の紀伊山地、曲降盆地の紀伊水道、曲隆山地の四国山地と曲隆-曲降-曲隆を繰り返して配列しています。四国山地も全体が一様に隆起したのではなく隆起の中心は石鎚山と剣山との2極あるように見えます。その剣山一帯は山地の隆起の中心部分で付近の山々は海抜高度が1600-1900mに達しているピークが目白押しです。しかしながら曲隆山地の中心から一回り外辺部の高城山周辺まで来ると、海抜高度は1300-1600m程度で全体的に300m下がっていますわね。山地隆起の中心部分から外れているので、しかたありません。もうすこし山の高度があればなあと残念です。

徳島のヘソから東を眺める

(拙稿は続く)


高城山でのキノコ狩り 第二話 (その1)
本日は2014年10月21日であります。一昨日の10月19日 (日曜日) に、再度、徳島県の名峰の高城山に登ってきました。10月4日に高城山にキノコ狩りに行ったときは天気が悪く、山にはガスがかかり全く眺望がありませんでした。高城山のキノコ狩りシーズンは8月~9月で、10月も後半となると時期が遅すぎます。キノコはもはやあまり望めませんが、高城山山頂をきわめて眺望を楽しもうという腹積もりであります。


高城山の真の標高は1628mではなく、1632mであります。
●高城山は三角点標高は1628mですが、その東側130mのところに別のピークがあり、標高点が設置され標高1632mです。したがって 高城山の本当の山頂の標高は1632m ということになります。紙の文献でもネット情報でも、高城山の標高が1628mという記述と1632mの記述の2通りがあるのですが、そういう事情です。どちらが正しいとか誤っているとかいうことではなく、三角点がその山の一番高い所に設置されていないことからくる混乱です。 

この事情は全国各地の山でたくさん見られます。実例をいくつか挙げると、一番有名な例が鳥取県の大山 (伯耆大山) でしょうか? 三角点は1709.4mですが標高点は1729mになっています。実に20mの差があります。他にも東北地方の名峰の鳥海山は三角点は2229.0mで標高点は2236mと7m高く、北海道の蝦夷富士と讃えられる羊蹄山は三角点が1892.7mで標高点は1898mと5mほど高いです。九州地方 (九州本島+離島) の最高峰は申すまでもなく屋久島の宮之浦岳ですが、三角点標高は1935mでその隣の標高点は1936mです。たった1m差ですが、文献により両方の記述が見られ混乱しています。

●昔は山の標高といえば、その山の山頂付近の三角点の標高を指しました。ところが最近はその山で一番高いピークの標高を指します。そうすると、三角点がその山の本当の山頂にない場合、山の高さが変わってしまいます。そのような例が続出しました。それに加えて、山の高さといっても測量誤差があり、国土地理院はときどき山の標高の見直しをするので余計に混乱します。地形図が改訂されるたびに標高が微妙に変わることが多いです。山の好きな人々は主要な山岳の標高ぐらいは記憶しているのですが、先の伯耆大山でも昔は1711mとされた数字を覚えた古い人と、最近の1729mの数字を覚えた新しい人が話をすると、「おまえは間違っている」 と口論になってしまいます。別にそんなつまらないことで口論しなくてもいいのですが、双方とも一生懸命おぼえた数字を譲りません。ここで注意すべきは、そもそも口論の下地を作ったのは建設省国土地理院というお役所であります。 (もちろん真の山頂に三角点を置かない事情はあるにしても) 最初にその山の一番高い場所に三角点を設置せず、しかも、山の高さなど本当は誤差がつきもので、とりあえず暫定的な数字を示しているだけで、数字が修正されることはあり得ると広報しなかったのが、手落ちといえば手落ちです。で、山登り (国民) が口論を余儀なくされます。山の高さの測量や地形図の作成は、何も山登りたちのためにしているのではない、という反論もありましょうが、 (飛躍した言い方をすれば) お役所というのは何かにつけ国民同士が口論やケンカするように仕向けわけです。それは、国民同士がいがみ合ってケンカしているほうが支配しやすいからで、つまるところ、分断統治です。


↓ 吉野川の南河岸から高越山 (1133m) を遠望
高越山 (こうつさん) は阿波富士と讃えられる秀麗な名峰です。高越山の真北側から眺めると確かに成層火山のような山容です。しかし、写真のように東側から見ると連山型の姿です。連山の稜線鞍部には 船窪つつじ公園 というオンツツジの大群落があります。オンツツジの西日本一の大群落と讃えられています。もっとも、オンツツジは西日本太平洋側の山にしかありませんが。 (オンツツジの分布は紀伊半島・四国・九州中南部の山々です。ただし紀伊半島のものは花が紫色の品種のムラサキオンツツジに変わります。)
高越山を遠望する
高越山は1133m、奥野々山は1159m。


↓ 神山町の役場手前2キロから、砥石権現を仰ぎ見た
写真左側の高い山が砥石権現 (といしごんげん) で標高1374.9m。砥石にする石材を産出したというハナシですが、右側に見える低い山が東宮山 (とうぐうさん) で標高1090.6m。 砥石権現は山名が示している通り、砥石の神を祀ったのであろうか? 砥石というのは申すまでもなく刀や包丁や鎌などの刃物を研磨するための石です。研磨する金属の硬度にあわせて砥石も硬軟さまざまな岩石から作られるようですが、付近一帯の渓谷や露頭を観察すると チャート という岩石が結構見られます。これは太古の昔、海洋底に放散虫などの遺骸が堆積してできた石で、二酸化ケイ素の含有率が高い硬い岩石だと言われています。砥石権現周辺で見られるチャートで研磨仕上げ用の硬い砥石を作ったのでしょうか? (ちゃんと調べたのではなく勝手な想像です) 

砥石権現を仰ぎ見る


片道99キロ、正味片道3時間コースのようだ
雑想庵 (吾輩の茅屋) 7:05 → 淡路島南IC 7:19 → 鳴門西PA7:38着 15
                  (11km)          (24km)
分休憩 → 板野IC7:58 → 神山町役場付近8:49 → 雲早トンネル → 剣山
    (3km)       (34km)            (19km)      (1km)
スーパー林道入口9:38 → ファガスの森 高城に到着10:06
                (7km)

●山登りたちが高城山登山の拠点に利用しているファガスの森 高城まで、それまでは4時間かかると思っていましたが、そうではなく、寄り道しなければ3時間であることが判明した。道路が空いている未明の3時とか4時に茅屋を出て、休憩などしなければ片道2時間半のコースのようです。



↓ 高城山登山基地のレストハウス、ファガスの森 高城に到着
ファガスというのは分類学上のブナ属のことです。学名の属名です。ブナという種そのものではありません。学名は、「属名+種小名+命名者」 の3点セットで個々の植物名を表します。ブナ の学名はFagus crenata Blume なのであって、単にFagusといえばブナも、イヌブナも、外国産のアメリカブナも、ヨーロッパブナ等も含めてしまいます。この山小屋風のレストハウスの名称は、「ブナの森」 のつもりでしょうが、じつは「ブナ属の森」 という意味であります。吾輩は水を差すようなことばかり言う癖があるのですが、ちょっと気になる名称です。営業時間は午前10時~午後4時。食事ができます。
ファガスの森に到着する

レストハウスの背後の森は、ブナの大木を中心として、ヒメシャラの大木が目立ちます。低木層には シロモジ が非常に多いです。ていうか、シロモジばかりです。いずれも、だいぶん紅葉 (黄葉) が進んでいますが、あまり綺麗には見えません。
店の背後の森にはヒメシャラの大木

↓ ファガスの 森高城の駐車場の端にある三角点の標石です。海抜1300.7m。
国土地理院 「基準点成果等閲覧サービス」 で検索したら四等三角点です。

標高1300.7mの三角点標石


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初めてファガスの森 高城に入ってみた

● ファガスの森 高城のホームページはこちら です。このあたりには過去数十回きていると思う。少なくとも、年3~4回、残雪を見る、シャクナゲの花見、ブナ帯の植物観察、キノコ狩りですが、スーパー林道開設工事のころから来ているから30年になると思います。やはり100回ぐらいは来ていると思います。しかしながらファガスの森に1度も入ったことがありません。理由は弁当とか非常食を持ってくるからです。なんせ人里から遠く離れた奥山です。行ったわ、臨時休業していたわ、ということはあり得ます。したがって、登山でも自然観察でも奥山に入るばあい食糧を持たずに入ることなど心得としてあり得ません。そうなると、営業していても利用する意味がない、ということになります。他の客というか登山者の話を聞いたら、多くの人がここに車を置いて高城山に登山するようです。で、駐車料金は無料なので利用させてもらうお礼に食事をするらしい。(食事代という形で駐車料金を納入) なるほど。

ファガスの森 高城の食堂に入ると、奥の方に厨房があり、手前には16×3の48席か? これならば、かなりの団体登山客がきても昼飯ができそうです。山小屋風な建物で、窓が大きく明るい店内です。建物をぐるりと一周して観察したら、電気は裏に自家発電棟があった。電気が使えたら水は少し下の沢からポンプアップしているのであろう (たぶん)。

店内の食堂

ファガスの森 高城の人気メニューは、シカ肉カレーの大盛りらしい。店内を覗いて手ぶらで出るわけにはいかないから、写真のシカカレー並盛と、山菜うどんを注文しました。評価は、こんな山奥で昼飯が食べられるという特別な事情で下駄を履かせて、シカカレーは ☆☆☆☆☆ ですが、山菜うどんは残念ながら ☆☆ であります。うどんの麺は四国では珍しく柔らかで美味いのですが、スープがダメじゃ。ダシがよろしゅうないワ。うどんのスープは昆布と煮干しでダシを取り、塩と薄口醤油で味をつけ、隠し味に砂糖を絶対に入れない、というのが一番美味いのです。カツオ節でダシを取るのは宜しくないのです。

シカカレー

山菜うどん

(拙稿は続く)



高城山でのキノコ狩り その8 (ブナ帯で見られる植物たち)


ファガスの森 高城

ファガスの森 高城 の前を吾輩は何十回となく通っているどころか、この建物が出来る前のこの場所のとんでもない状態も知っているのですが、いまだかつて入ったことがありません。どういう施設か知らなかったのですが、ホームページを拝見すると、登山者やオフロード走行を楽しむ人々の休憩所であり、昔風な言い方では茶屋でありお食事処、バンガローがあって避暑のキャンプ場というところか? 敷地の端に国土地理院の三角点があり海抜1300.7m。気温減率を100mあたり0.65度とすると平地よりも8.45度気温が下がります。森の中にあり尾根筋で風通しもいいから、夏涼しく平地よりも10度気温が低いのではないか? よって夏の避暑に来るのに最高の場所であろうかと思います。そこで平地よりも何度低いか検証。

2014年10月4日14時10分 気温10度

↑ ご覧の通り10度です。気象庁の検定済みの温度計ではなくおもちゃみたいな温度計で器差は大きいでしょうが、いくらおもちゃみたいな温度計でも最大限1度程度の誤差です。2014年10月4日14時10分です。 同日同時 (14時) の徳島県内の観測データは、海抜100m以下の地点 徳島地方気象台 で23.4度、アメダス穴吹で21.6度、アメダス池田で20.2度、アメダス日和佐で23.4度、アメダス蒲生田で22.5度、アメダス海陽で23.8度です。山間部の標高の高い所でもアメダス木頭(海抜330m)で20.5度、アメダス京上(560m)で18.4度です。やはり平地よりも気温が完璧に10度低いです。瀬戸内地方の避暑地として最適です。四国東部の軽井沢と言えるのではないか?

ファガスの森 高城


↓ 高城山の登山口です。

ここで海抜1360mぐらいです。高城山の山頂まで標高差はわずか270m程度ですが、急斜面の痩せ尾根を直登しますから相当にきつい登りです。安易なハイキング気分で、気易く登るところでは全くありません。

高城山登山口


↓ ヤマブドウです。

以下4枚の写真はヤマブドウです。日本在来の野生ブドウです。これが本当のヤマブドウです。淡路島の自然愛好家が時に間違ってヤマブドウと言っているのはエビヅルで、本家のヤマブドウはブナ帯の植物であり、淡路島のような暖温帯下部には分布していないです。

ヤマブドウ

高城山の海抜1300m以上には沢山あります。徳島県西部の祖谷地方では海抜800mぐらいから見られますが、すくなくともブナの樹が見られる高度にならないとヤマブドウはないです。10月4日の時点で、美しく紅葉していました。葉は巨大で、エビヅルはもちろん栽培ブドウよりもはるかに大きいです。すくなくとも手のひら大、大きなものは子供の顔ぐらいの大きさがあります。

ヤマブドウの葉

↓ こちらは紅葉初期という感じですが、生育旺盛で、マント状になって他樹を覆い尽くしています。
ヤマブドウの葉

↓ これがヤマブドウの果実です。果実の粒の大きさは、せいぜい栽培種のデラウェア程度です。栽培種みたいに果粒がびっしりと着くのではなく、まばらでパラパラと着く程度です。味ですが、酸味があります。非常に酸っぱいというわけではなく爽やかな酸味です。山登りで疲労した後には結構美味いものです。秋が深まって初雪がきて霜げたり凍ったりすると酸味が抜けて甘くなります。酸度が高いので甘く感じないだけで、糖度そのものは高い野生ブドウで葡萄酒の材料に適しています。東北地方には、山中のヤマブドウから選抜育種した優良系統があるようで、1果房250グラムもあり栽培もされるようです。 なお、ヤマブドウは雌雄異株で当然メス株にしか実がなりません。(まれに雌雄同株もあるらしい) 雌雄異株の植物はたいていメス株・オス株半々になるのですが、高城山のヤマブドウはめったに実がなりません。オス株ばかりなのか、メス株であっても実が着かない要因があるのか分かりませんが、別の山では実が着く株が多かったりと、バラツキがあるようです。ちなみに、剣山登山口の見の越祖谷側の谷のヤマブドウは実がよく着きます。
ヤマブドウの果実


ホンシャクナゲ

高城山 (1632m) や、雲早山 (1496m) 一帯にはシャクナゲの自生が非常に多いです。葉の裏の毛が少ないホンシャクナゲと、葉の裏に赤褐色の毛が多いツクシシャクナゲの両方が見られますが、分類学的には、ツクシシャクナゲを基本種としてホンシャクナゲはその変種という位置づけです。本質的にそう大きな違いはなく、典型的な物では両者はハッキリ区別できますが、どちらとも言えない、或いはどちらでもある、という中間型が出てきます。ていうか、この山系一帯には中間型のほうが多いような気がします。5月下旬ごろが花見適期で非常に見ごたえがあります。ただし、海抜800~1600mの間に自生しているから、その標高によって花期にづれが生じます。写真は海抜1400mあたりのものです。
ホンシャクナゲ群落

シャクナゲ群落の林床を見ると、実生の小さな苗が沢山育っています。ごく小さいものならば無数にあります。ごく小さなものが全て大きく育ったら物凄く密集して大変なことになるから、適当に自然間引きで減っていくでしょうが、後継樹が確実に育っています。ここがわが淡路島南部の山岳地帯のホンシャクナゲと違うところです。淡路島自生のシャクナゲは、このままでは消えていく運命にあります。
ホンシャクナゲの実生苗


↓ オタカラコウです。

10月4日の時点で満開でした。平地にあるツワブキの親戚の花ですが、徳島県のブナ帯に来るとこの オタカラコウ や、良く似たメタカラコウが普通に観察できます。良く似て見分けにくいのですが、オタカラコウは頭花の舌状花の枚数が7~8枚あります。メタカラコウは2~3枚程度で少ないです。
オタカラコウの花


高城山でのキノコ狩り その7 (ブナ帯でのキノコ狩りは、毒茸のツキヨタケに気をつけろ!)
日本で一番キノコ中毒の多いツキヨタケ
注意喚起のために、写真に赤線の縁取りを施しました
●ツキヨタケは有名な毒キノコで、日本で一番中毒件数が多いとされます。 (ただし、クサウラベニタケが一番中毒件数が多いという説もある) ま、いずれにせよツキヨタケとクサウラベニタケは、中毒件数・中毒患者数の多さではワースト1位と2位を争う毒キノコの双璧です。猛毒菌ではないにしても、激しい下痢や幻覚症状に苦しみ、奈良県などで死亡例もあるようです。ブナ帯のキノコ狩りでは厳重な警戒が必要です。

ツキヨタケを、ムキタケ・ヒラタケ・シイタケと見誤って誤食するケースが多いようです。典型的な形状や色合いのものならばそう見誤ることはないのですが、キノコは1つ1つは個体差がかなりあり、色合いも形状も変異の幅があります。で、紛らわしいものが出てくるのですが、とくにムキタケとツキヨタケが傘が湿っている場合、似ていると言えば似ています。同じブナの枯れ木に両種が出ることも多いです。野生キノコ採りの盛んな地方では、行政機関が毒キノコに厳重に注意喚起をしていますが、中毒は毎年必ず起こります。相当な深山でなければブナ帯がない西日本瀬戸内や太平洋側であっても、ツキヨタケ中毒は発生しています。登山者やハイカーがうっかりツキヨタケを 「食べられるのかな?」 と不用意に食べて中毒するようです。

厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:ツキヨタケOmphalotus guepiniformis(キシメジ科ツキヨタ属)
ツキヨタケ中毒事件は必ず起こる
↑ 厚生労働省の資料にある数値データをグラフ化しました。2000年の接触者総数は>91で、正確な数字は不明であるが91人以上であるらしい。

東京都福祉保健局 食品衛生の窓 ツキヨタケ(毒)キシメジ科 
にツキヨタケの発光している写真があります。国内に発光するキノコは10種ほど知られていますが、大部分は沖縄や小笠原・八丈島など亜熱帯のキノコです。温帯のツキヨタケの発光は特異な存在と言えましょう。

有毒キノコ:道の駅でツキヨタケ販売か…滋賀・高島
毎日新聞 2014年09月21日配信。 
引用】 滋賀県は21日、同県高島市朽木市場の「道の駅くつき新本陣」で販売されたキノコを食べた人が、腹痛と嘔吐(おうと)の症状を訴えていると発表した。いずれも軽症という。有毒キノコ「ツキヨタケ」の可能性があり、県は購入者に食べないよう呼びかけている。  県によると、市内の住民が18日に近くの山の同じ木から食用の「ヒラタケ」と思ってキノコを採り、道の駅が20日に計12パック(1パック2、3個入り250円)を販売した。パックは全て売り切れた。食べた愛知県の客から21日に「腹痛などの症状が出た」との連絡があり、別の人も同様の症状を訴えていることが判明。残っていたキノコを調べたところ、すべてツキヨタケと分かった。 県によると、ツキヨタケを食べると食後30分〜1時間ほどで中毒症状が表れるが、翌日から10日程度で回復するという。【引用終了

●毎年、こういうツキヨタケ中毒事件が起こっています。ヒラタケと思って採ったということですが、馴れれば確実に識別できるハズなのに、キノコ狩りの初心者が経験不足で不用意な採取をするのでしょうか? 厄介なのはツキヨタケの発生が極めて多いことです。ブナ帯の森へ行けばツキヨタケは、あるわ、あるわ、そこらじゅう、いたるところツキヨタケだらけです。しかも、1本のブナの立ち枯れにツキヨタケとムキタケやヒラタケが一緒に生えることもある、ということでしょうか?

高城山のブナ林もツキヨタケだらけ…
以下5枚の写真は10月4日、徳島県・高城山 (1632m) の前衛の山の西砥石権現 (にしといしごんげん、1457m) の1350m地点で撮りました。


↓ ツキヨタケが古くなると、傘の表面が紫色~黒っぽくなることが多いです。ただし、紫色にならない場合もあるので厄介です。キノコの傘の形状も、古いツキヨタケでは強風に煽られたこうもり傘のように、やや反りかえってくる傾向がみられます。
ツキヨタケの老菌

↓ ツキヨタケが出る樹種は100%ブナの立ち枯れや風倒木です。唯一の例外として、北海道のブナ分布域外ではイタヤカエデに出るとされますが、本州以南ではブナ以外には出ないです。
ブナの立ち枯れに生えるツキヨタケ

↓ブナ帯では ツキヨタケの発生がきわめて多いです。ツキヨタケの発生量は他のキノコを圧倒しています。瓦を重ねるようにして大量に発生します。
瓦重ねに多数が発生する

↓ ツキヨタケには短い柄がありますが、その柄にリング状になった隆起がみられます。しかし、ときにはこのリング状突起がない場合もあるので要注意です。
短い柄にリング状の突起がある

↓ ツキヨタケを縦に裂くと、傘と柄の間あたりに黒いしみがあることが多いです。これが他のキノコにない特徴の一つですが、黒いしみがないか、あるいはしみがあっても確認しずらいこともあるので注意がいります。
ツキヨタケを裂くと黒いシミがある


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こちらは安全な食用菌、大いに採って食べよう!!
ツキヨタケはこの3種と間違えられるとされます。少し目をこらして観察すると、全然違います。吾輩の写真では不十分なので、Google画像を見ましょう。ただし違うのも出てくるので要注意です。

↓ ムキタケ Google画像 「ムキタケ」
ムキタケ
↑ ムキタケを裂いても黒いしみはなし。老菌でも紫っぽくならないし、傘の表面を爪の先で引っ掻いて引っ張るとスルーと薄皮がはがれます。

↓ ヒラタケ Google画像 「ヒラタケ」
ヒラタケ
↑ これは淡路島諭鶴羽山地でキノコ狩りをしたときの収穫物です。ヒラタケには柄がほとんどなく、リング状の隆起もありません。傘の色はかなり変異があり、時には海老茶色っぽいものも出てきますが、傘の上から見たら全体の色がノッペラボウな感じです。

↓ シイタケ Google画像 「シイタケ」 
シイタケ
↑ これも淡路島・諭鶴羽山産です。シイタケは明瞭な柄があり、傘全体の中央に柄がつきます。傘の表面には絹状の糸っぽいもいのがあることが多いです。


高城山でのキノコ狩り その6 (マッタケ似の強烈な芳香のブナハリタケ)
ブナ帯のキノコ
● ↓ の2枚の写真は、ブナハリタケ です。ブナの倒木にびっしりと生えるキノコです。白い清楚なキノコです。高城山 (1632m) の山頂近くでは海抜が高く、亜高山帯に近いので8月のお盆頃から出てきます。ちょうどそのころにはトンビマイタケ (東北地方北部ではトビタケとか土用マイタケなどと呼んでいるみたい) もよく出てきて腰籠に入りきらないほど採れるのですが、時期が遅すぎます。しかしながら捜したところ10月4日でもブナハリタケは見つかりました。やや老成しているので甘い香りは弱くなっています。このブナハリタケは新鮮なものはマッタケに似た強烈な芳香がします。20~30m離れていても香りが漂ってくるほどです。

ちょっと香りが強烈すぎる面があります。で、料理はいったんブナハリタケを茹でこぼすか、あるいは1~2ヶ月塩漬けにするかで、直接料理するには香りがきつすぎます。お奨めは炊き込みご飯です。山採りブナハリタケ・天然マイタケ・エビ・鶏肉を入れてダシをよく効かせた炊き込みご飯は絶品中の絶品です。ほんのりとマッタケ似の独特な香りで美味いです。

ブナハリタケ
↑ 10月4日、徳島県・高城山の前衛峰の西砥石権現 (にしといしごんげん、1457m) の1350m地点にて。ブナの巨木の風倒木に出ていた。

●ブナハリタケは漢字ではブナ針茸と書きます。もう少し接写しないと写真では分かりづらいのですが、傘の下面に針状の突起がびっしりと無数にあります。針状と言っても触って痛いわけではなく柔らかいキノコです。ブナ帯では比較的に普通に見られるキノコで、当たりはずれが無く、収量も非常に多く、東北地方では普通に食べられるキノコのようですが、瀬戸内地方あるいは四国地方ではこんなものを山の奥の奥まで行って採る人はほとんどいないようです。それが証拠に、吾輩は長年、夏から秋に高城山とか剣山 (1955m) 方面によじ登ってキノコ狩りをしていますが、山中で他のキノコハンターに出会ったことが全くありません。勝手にリンクした山採りキノコ業者さんは100グラム当たり500円の値段をつけています。法外な値であります。山登りさえすれば、西日本の瀬戸内や太平洋側でもブナハリタケを腰籠一杯採ることは可能です。ただし、一部高速道路を通行するしガソリン代を考えたらタダではなく、結構高いコストかも? いっそ東北地方のキノコ業者さんに宅配便で送ってもらうほうが安いかも? 東北地方には山採りキノコ業者が多数あるようですが、一体だれが買うのだろうか? と不思議です。おそらく、西日本からの注文など皆無で、首都圏あたりの東北地方出身者が故郷の味が忘れ難く買うのではないか? それから東北地方住民でも高齢化で自分で採りに行けなくなった人などが買うのでは?

ブナハリタケ


ブナ帯の植物
↓ の2枚の写真は、ツルアジサイ です。ブナの幹に這い登っています。淡路島にツルアジサイは分布していません。淡路島にあるのはみなイワガラミです。ツルアジサイとイワガラミは酷似している蔓植物で、花がないと見分けるのが難しい植物です。で、淡路島の自然愛好家がよく間違ってイワガラミをツルアジサイと言っていますが、ツルアジサイはブナ帯の植物の傾向が色濃く、淡路島にはありません

ツルアジサイ

ツルアジサイ …… 装飾花(飾り花)が4~5枚。分布は主に冷温帯、山の高い所に
            自生する傾向がある。

イワガラミ ………… 装飾花(飾り花)が1枚だけ。分布は主に暖温帯、低地から山
            の低い所に自生する傾向がある。

両者は山の低い所と山の高い所になんとなく棲み分けていますが、境界が画然としているわけではなく、両者が混生する移行帯のようなものがありそうです。その両者混生ゾーンでは、飾り花の数を見れば間違うことはありません。たとえ花期でなくても、たいていは枯れた飾り花が残存しています。


ツルアジサイ
↑ 飾り花のガク片が4枚あります。よって、これはツルアジサイです。


高城山でのキノコ狩り その5 (皮をむいて調理するムキタケ)
高城山 (1632m) のブナ林
概ね海抜800m以上に ブナ (ブナ科) があります。ただし、標高の低いところ (1200mあたりまで) はスギ植林のために伐採されているところも多いです。高城山の山頂付近には千古斧鉞の入らぬブナの原生林になっています。剣山 (1955m) の山頂付近の1700m以上は亜高山性の針葉樹のシラビソが優占していてブナが消えるので、四国東部の山岳地帯では、海抜800~1700mがブナ帯 (冷温帯) と言えましょう。この標高帯が天然食用キノコの宝庫であります。
ブナの森

ブナの幹は本来の地肌は灰白色なのですが、地衣類が付着してさまざまな紋様をあらわします。非常に独特な樹皮です。黒っぽい部分と白っぽい部分が混在するさまは、まるで望遠鏡で見た 月面 みたいであります。
ブナの幹

ブナの純林となっているところもありますが、他の樹種も交えています。多いのは、ウラジロモミ、ツガ(海抜が高くなるとコメツガ)、ゴヨウマツなどの針葉樹を交えて針広混交林のところもあるし、広葉樹ではイタヤカエデなどのカエデ類や、ミズナラ、ハリギリ、トチノキ、サワグルミなどがあり、この山域で特に目立つのはヒメシャラです。↓の写真で赤っぽい幹がヒメシャラです。ただし、ナツツバキも僅かに見られますが幹だけでは識別がむずかしいです。手前の太い樹の幹はおそらくツガですが、森の中に入ると枝葉がはるか樹上で茂っているので観察できず、木の幹だけみて樹種を見分けるのですが幹だけで樹種を同定するのは非常に困難です。

ヒメシャラとか、ウラジロモミなど

ブナ林は天然キノコの宝庫!
●徳島県・高城山 (1632m) にキノコ狩りに行ってから早10日も経ってしまったけれども、その記事の続きであります。ブナ林は天然キノコの宝庫であることに異論はないと思います。なぜ北陸地方や本州中央高地や東北地方でキノコ狩りが盛んなのか? その大きな理由の一つが、冷温帯のブナ林が身近な里山にあるからでありましょう。ブナ林のキノコのフロラは非常に豊かで、特に南の地方の常緑広葉樹林 (照葉樹林) と比べると、天然キノコの種類や発生量で圧倒しています。

ブナの自生南限地
この天然キノコの宝庫のブナ林は、日本列島の分布は、自生南限地が鹿児島県の 高隈山 (たかくまやま) (1236m)です。1000mを越える尾根筋の北側に僅かにあるそうです。かつての氷河期に北方の植物が分布を南下し、後氷期の温度上昇で北方へ後退、山の上の北斜面や谷筋に取り残された 「遺存」 であるらしい。 
『鹿児島の落葉樹 南限のブナ林』
『高隈山森林生物遺伝資源保存林』 等参照。

ブナの自生北限地
自生北限地が北海道・渡島半島 (おしまはんとう) の付け根の 黒松内町 (くろまつないちょう) の歌才ブナ自生北限地が非常に有名です。しかしながら、 『分布最北限ツバメの沢ブナ林の林分構造』 という論文を閲覧したら、真のブナ自生北限地はツバメの沢というところらしい。ならば、ブナの北限地は蘭越町 (らんこしちょう) ということになりそうです。北限地には、普通の 「北限地」 と 「最北限地」 との2種類があるらしい。吾輩もこれは知らなかったわ。よい勉強になった。 「北限地」 と 「最北限地」 はどう違うのか? おそらく従来北限地と考えられていた場所よりも更に北方でその植物の自生が見つかった場合であろう。つまり新しく見つかった所が 「最北限地」 ですね。しかしながら、従来の所が 「北限地」 の称号をを取り下げずに 「北限地」 を主張し続けるのでしょう。北限地でも南限地でも、そこの教育委員会等は案内の看板を建てて、町おこしの観光資源にしようとします。あんまりカネにはならんと思いますが、「北限地利権」 ということか??


余談その1
自生地北限利権なのか??
黒松内町 のホームページを拝見すると、その表紙 (トップページ) に

「北海道黒松内町のホームページへようこそ! このホームページでは、北海道黒松内町に関する様々な情報をお伝えしています。 「ブナ北限の里 くろまつない」 をごゆっくりお楽しみください。」

と書いてあります。ブナの真の自生北限地は明らかに北側に隣接する蘭越町に移転しているのに、いまだにブナ北限の里を主張しています。これはおかしいです。本来ならば、蘭越町のツバメ沢でブナ自生林が発見された時点で、黒松内町はブナ自生北限地の称号を取り下げるべきです。大袈裟な言い方をすれば、一旦手にした利権・利得は絶対に手放さないぞ、ということでありましょう。もちろん利権の質や規模は全く異なりますが、チェルノブイリを超えたと米国機関が認定したフクイチ原発過酷事故を起こしても、絶対に原発利権を手放さない原子力ムラの連中に相通じるものを感じます。


余談その2
淡路島南部地域の自生北限地
黒崎先生 (植物地理学専攻) らの研究によると、淡路島南部地域で、野生高等植物 (維管束植物) で分布限界地となっている種が2種あります。1つは キキョウラン (ユリ科) で旧西淡町伊毘の沖の島が北限地です。もう1つは マルバハダカホオズキ (ナス科) (2段目の赤い果実がびっしりと着いているのが吾輩の写真) で旧洲本市の上灘海岸 (相川~中津川) です。また、ミツバツツジの一種のユキグニミツバツツジが一時自生南限地 (諭鶴羽山) とされましたが、すぐに他地に譲りました。地元の教育委員会は自生北限地の説明看板を建てて、早急に観光スポットにしなければいけない。


西日本じゃ相当な深山へ行かないとブナ林がない
●ようするに、ブナの樹の出現高度は南限地では海抜1000m、四国東部では800m、近畿北部では谷筋など場所によっては500mと緯度が高くなるにつれて下がってきます。 『佐渡:安養寺のブナ林 佐度における最低海抜55mのブナ林』 によると佐度島では場所によっては海面近くの低いところまで降りてきます。東北地方北部では標高の低い里山まで、北海道南部じゃ平地まで降りてきます。つまり、北日本ではキノコの宝庫のブナ林が低い所にあります。一方、瀬戸内地方などではブナなどほとんどなく、相当な深山に行かないとブナがありません。これが北日本ほどキノコ狩りが盛んな自然環境的な背景です。  

なお、淡路島にはブナの自生はありません。淡路島の周辺最寄でブナがあるのは、北の方では六甲山 (931.3m)、東では大阪府の葛城山 (858m)、西では香川・徳島県境の大滝山 (946m) の山頂付近です。南は紀伊水道で海です。



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高城山のブナ林のキノコ
↓ 下の2枚の写真は ムキタケ です。ブナ帯では普通に出てくる優秀な食用菌です。表面の皮を剥いて調理するから 「剥き茸・むきたけ」 というらしいが、東北地方では普通に食べられているキノコです。肉質がやや柔らかで、水分をよく含む傾向があり、味噌汁など汁物によく合う食材であります。
ムキタケ
↑ 10月4日、高城山の中腹海抜1300m地点にて。

●このムキタケが何の樹の風倒木に出ているのか、材の腐朽が進んでいるので特定できません。ミズナラ? イタヤカエデ? あたりだと思いますが、ひょっとするとシデ類(イヌシデ、アカシデなど)かも? そのキノコが何の樹に出ているのか特定しておくことは重要です。キノコの種 (しゅ) は特定の樹種と結びついていますから、発生する樹種(ホスト)を可能な限り確認しておけば、次回のキノコ狩りに経験則として大いに生きてきます。(そのキノコの出ない樹種を捜すという徒労をカットでき、キノコ狩りの効率が上がる)

ムキタケ

↓ こちらは ナラタケ の老菌です。つまり、腐る寸前あるいは腐りかけです。残念! こちらも東北地方では良く食べられる美味い食用菌です。このキノコは西日本の照葉樹林帯でも発生しますが非常に少ないことは間違いありません。やはり、分布の本拠地はブナ帯でしょうか?
ナラタケの老菌
↑ 10月4日、高城山の中腹海抜1300m地点にて。ブナの巨木の立ち枯れの根元に出ていました。


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