雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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諭鶴羽山系のツツジ属(その6)「ミヤコツツジ」
●南あわじ市賀集と北阿万の境の奥山に、ツツジ類の群生する桃源郷のような美しいところがあります。疎林の地面にはエビネも咲き乱れ、眺望もすこぶる良く、にもかかわらずこの山を訪問して花見をする者は、わたくし山のキノコとシカ(鹿)とイノシシ(猪)しかいません…。美しい花が咲き乱れているのですが、誰にも観賞されないというのは実に勿体ないことであります。

この奥山には赤い「ヤマツツジ」と淡いピンクの「モチツツジ」が、入り乱れて混生しています。並んで生えております。この両者は、ヒトが交配などしなくても、自然の状態で交配して雑種を作ります。この「ヤマツツジ」と「モチツツジ」は極めて仲が良く、親和性があって簡単に「合いの子」が出来てしまいます

赤い花のヤマツツジと、淡い桃色のモチツツジが並んで自生しています。
ヤマツツジとモチツツジの混在

ヤマツツジとモチツツジの混生状態
↑上の2枚は、賀集と北阿万の境の奥山(海抜420mほど)で、5月9日に撮った。仲良く並んであるので、お庭の一画を見るような感じであります。

「ヤマツツジ」と「モチツツジ」の自然交雑種は、「ミヤコツツジ」と称されています。

ヤマツツジ モチツツジとの 恋成りて ミヤコツツジの 花々の薗
                 ―――詠み人 山のキノコ―――

濃色ピンク系のミヤコツツジ
これは花が大きい個体
この個体は、ガク片や花柄に “粘り” がないタイプ。
↑上3枚は同じ個体の写真です。ヤマツツジとモチツツジの自然交雑種をミヤコツツジと言っても、その合いの子の程度はさまざまです。ほぼ中間型もあれば、ヤマツツジに近いもの、モチツツジに近いもの、1本の樹のなかで特定の形質ではヤマツツジの血筋で別の形質ではモチツツジの血筋、ということもあります。千差万別、多様性の極致といえます。写真のものでは、花色は中間型で、花の大きさは大きくモチツツジの形質です。花柄やガク片がべたべたと粘らないのはヤマツツジの血筋を受け継いでいます。

中間型
↑色々な形質を観察すると、これがほぼ「ヤマツツジ」と「モチツツジ」の中間であろうかと思います。

葉が小さく柄が密生するのはヤマツツジの血筋
↑これは枝ぶりと葉の大きさはヤマツツジの形質、花色は中間、花の大きさはモチツツジの形質です。

小さな花が密生するのはヤマツツジ型
↑これは全体的に中間型でありますが、小さな花がびっしり着く状態はヤマツツジの形質です。

●この自生地全体を観察すると、ここのミヤコツツジは、花の色は中間型が圧倒的に多いです。枝ぶりとか葉の大きさではヤマツツジ型が多いです。枝ぶりとか葉の大きさがモチツツジで、花の色だけがヤマツツジ型の赤花と言うものだけが見当たりません。その他の実に色々な組み合わせの雑種個体が見られます。

3種の形質表

●両親の「ヤマツツジ」と「モチツツジ」と、雑種の子の「ミヤコツツジ」の色々な形質を比較対照すると上の表のようになりますが、これはごく大雑把に見たものです。花色といっても濃淡さまざま、花の大きさも大小さまざまです。上の表だけでも(3の5乗 - 2 = 241)通りの “組み合わせ” の雑種可能性があり得ます。2を引くのはヤマツツジとモチツツジそのものの組み合わせが2通りあるからです。実際には花色が赤、濃桃色、淡桃色の3通りではなく、濃淡さまざまな段階があります。もし各形質について5段階のグレードがあるとしたら、3123通りの組み合わせの可能性があることになります。この組み合わせ可能性が、ここのミヤコツツジ自生地を桃源郷のように見ごたえのある花園にしているのでしょう……。

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諭鶴羽山系のツツジ属(その5)「ユキグニミツバツツジ」
諭鶴羽山系に自生するツツジ属植物(Rhododendron・ロードデンドロン)の見分け方
●諭鶴羽山系ではツツジ属植物が9種みられます。そのうち4種が兵庫県版レッドデータ種となっております。野外で目の前の植物の名を言うのは、そう簡単なことではありません。分類学を専攻する専門家でも、観察会で植物の名前を聞かれても答えられないことがあるほどです。まして、知識の少ない素人では目の前の沢山の植物の名前が50%でも言えたらたいしたものです。残りの50%が言えなくても、しかたがありません。ま、そんなものです…。

●そこで、諭鶴羽山系で秀麗な花を咲かせているツツジ類でありますが、その名前を言うために、9種のロードデンドロンの見分け方のポイントを自分自身の備忘録として書いておきましょう。ただし、これはあくまでも自分の備忘録であり、他の地方では分布するツツジ類の種類は変わるのでありますから、他の地方では通用いたしません。

諭鶴羽山系のみに限定の検索表
A、葉は互生する。葉が枝先に集まって輪生することはない。葉は半
  落葉性で、冬でも葉がすこし残っている。
 B、花柄・がく片・若枝などが、ひどく粘る。
  C、花の色は桃色。少し紫味が入った桃色。 …………モチツツジ
  C、粘りは少ない。花色は濃い桃色。 ………………ミヤコツツジ
 B、花柄・がく片・若枝などが、粘らない。
  C、花の色が赤(朱色)花径は3ー5㎝で大きい。 ……ヤマツツジ
  C、花の色が白。花は径1.5㎝ほどで小さい。…シロバナウンゼン

A、葉は枝先に3枚輪生する。(ときに2枚のこともあるが、普通3枚)
  葉は落葉性で、冬季は樹は丸坊主になる。
 B、花の色は、赤色(朱色)‥………………………………オンツツジ
 B、花の色は、紅紫色。
  C、花柄・がく片・子房などが粘る。…………トサノミツバツツジ
  C、花柄・がく片・子房などが粘らない。
   D、葉の縁が細かに波打つが鋸歯がない。ユキグニミツバツツジ
   D、葉の縁に先が毛になる微細鋸歯あり。…コバノミツバツツジ

A、葉は革質。常緑性。互生するが枝先に集まって付く傾向があるが、
  輪生することはない。枝先に10花前後着く。………ホンシャクナゲ

【注意】ミヤコツツジは、ヤマツツジとモチツツジの自然雑種であり、その形質は両者の中間の性質を現わします。が、ヤマツツジに近い物もモチツツジに近い物もあり、かなり連続的に繋がっています。

諭鶴羽山系の中での、ごく大雑把な分布。
山系頂上部に僅かにある。…………………………ユキグニミツバツツジ
猪鼻水系・鮎屋水系にある。………シロバナウンゼン・ホンシャクナゲ
諭鶴羽川・成相川源頭尾根にある。……………………………オンツツジ
山系中腹以上に多い。ヤマツツジ・ミヤコツツジ・トサノミツバツツジ
山系の裾野や下部に多い。……………………………コバノミツバツツジ
山系の裾から頂上まで広く分布する。…………………………モチツツジ

兵庫県レッドデータブック2010による絶滅危惧性
淡路のみAランク(県全体はCランク)………… ユキグニミツバツツジ
Bランク ……………………………………………………… オンツツジ
Cランク ……………………… ホンシャクナゲ・トサノミツバツツジ

ユキグニミツバツツジ です。日本海側の積雪地帯に分布するツツジですが、近畿地方では脊梁山地を越えて、太平洋側に向かって分布が南下しています。
ユキグニミツバツツジ
↑風がきつい日だったので、うまく写真が撮れなかった。南あわじ市の某山の頂上付近にて。
ユキグニミツバツツジの花
↑ふつう枝先に1個の花が付くようですが、この個体は2個ついています。
葉の縁は波打つ
↑葉の縁には細かに波打っています。
葉柄の下部には毛がない
↑葉柄の下部には毛がありません。これが本種の特徴の一つ。
ホンシャクナゲの開花が進行中!
シャクナゲの開花状態を下見に行きました。 なんと、既に開花が始まっていました。今年の冬から3月には、厳冬(寒冬)でシャクナゲの開花は相当に遅れるだろうと予想していましたが、4月になって気温が平年値を上回るまで回復しました。5月13日にシャクナゲの観察会を企画しておりますが、ひょっとすると数日遅すぎるかもわかりません。ま、しかしまだ堅い蕾が残っているので、13日でも全く花がないなどということはなさそうです…。

以下に掲示した写真は、全て昨日の5月7日に撮ったものです。場所は観察会を予定している場所とは全く違うところで、諭鶴羽山と柏原山とのほぼ中間地点です。海抜は250mで、ごく低いところです。じつはこの場所が簡単に行ける自生地なのですが、鉢植えに出来るような幼木が沢山あるところなので、残念ながら、ここがどこなのか公開できません。公開しても盗る人がないようなマナーの良い時代がくればいいなあと願っています…。
今年は裏年なので、花が少ない
↑表年には枝先という枝先に花が着き、樹冠を埋め尽くすのですが、本年はチラホラとしか花がありません。
枝先に10花前後が付く

シャクナゲの蕾

ここの自生地には、背丈が50cm程度の幼木がありますから盗掘に遭わないよう保全する必要があります。
シャクナゲの幼木

シャクナゲの幼木

シャクナゲの稚樹
諭鶴羽山系のツツジ属(その4)「シロバナウンゼンツツジ」
●シロバナウンゼンツツジであります。略してシロバナウンゼン。漢字で書けば「白花雲仙躑躅」であります。ウンゼンツツジの花は淡いピンク色でありますが、本種の花の色は白です。『日本の野生植物』によれば、ウンゼンツツジの単なる白花品ではなさそうです。花色以外にも違いがあって、花がなくても区別ができるから、ウンゼンツツジの変種がシロバナウンゼンであります。しかし、ウンゼンツツジの単なる白花品のシロウンゼンというものがあるので、ちょっと、ややこしいです。そこで整理して記述します。

ウンゼンツツジ……(基本種)花は淡いピンク色である。春葉の大きさ
          は5~10ミリ。春葉・夏葉の大きさの差は少ない

シロウンゼン………(基本種の品種)花が白いだけで、他は基本種と同
          じ。つまり単なる白花品である。

シロバナウンゼン…(基本種の変種)花は白。春葉の大きさは8~20ミ
          リで、夏葉より著しく大きい。基本種とは花だけ
          でなく他にも相違点がある。つまり、単なる白花
          品ではない。

●ウンゼンツツジとシロバナウンゼンは、その分布域も異にしています。両者には、生息地分割としての棲み分けが明瞭に認められます。

ウンゼンツツジの分布は、伊豆半島・紀伊半島南部・四国太平洋側・九州南部大隅半島で、襲速紀要素(そはやきようそ) の分布を示しています。

シロバナウンゼンツツジの分布は、山口県東部・広島県・岡山県・兵庫県・大阪府・和歌山県北部・徳島県北部・香川県・愛媛県東部で、これは瀬戸内要素の分布を示しています。

シロバナウンゼンツツジ
↑シロバナウンゼンツツジです。鮎屋水系源頭尾根にて5月7日に撮った。既に花はほとんど終わっていました。例年花期は4月中旬~下旬ぐらいです。僅かに2個花が残っていたのを撮りました。“表年” の満開のピークに行けば、枝の上に雪が積もっているように見えて壮観です。上品でとても美しい可憐なツツジです。諭鶴羽山系全体に自生するのではなく、主に、猪鼻川水系と鮎屋川水系の流域に見られます。

シロバナウンゼンの小さな株
↑これはシロバナウンゼンで、高さはわずか10センチほどしかありません。しかし、相当年数の古い株であります。横倒しになっている指の太さの幹があるのですが、これは枯れています。しかし根際が生き残って、ひこばえ状に新梢がたくさん出て盆栽のようになっています。小さくても樹齢は10年とか20年になるハズです。付近にはこのようなものが無数にあります。シロバナウンゼンツツジは生長が非常に遅いツツジであります。成木になっても1mかせいぜい1.5mで、針金のような細い枝が密に茂ります。

●さて、島内の山野草愛好家たちが、本種を「コメツツジ」などと呼んでいますが、誤称であります。シロバナウンゼンと呼びましょう。
「コメツツジ」は温帯上部から亜高山帯にかけて分布するツツジです。西日本では普通1500mを越えるような高所に行かないと見ることができません。コメツツジの分布は北海道から九州にまで及んでいるのですが、主に太平洋側の高い山の尾根などの “風衝地” に自生しています。西日本では大峰連山の山頂部のたとえば釈迦ヶ岳(1800m)・四国の剣山(1954m)~石鎚山(1981m)の脊梁山地の稜線・九州祖母山(1756m)傾山(1602m)などで、そんな高い山は淡路島にはありませんよ…。

★徳島県の三嶺(さんれい・1893m)は、国の天然記念物に指定されたコメツツジ群落に出会える山として、関西の岳人によく知られています。 三嶺・天狗塚のミヤマクマザサ及びコメツツジ群落

【両種の違い】
コメツツジ……枝先に1~3個の花が着く。花の径は0.8~1㎝。
シロバナウンゼン……枝先に1個の花が着く。花の径は1.3~1.6㎝。

【誤称の原因は2つ考えられます】
1、ツツジ類の園芸品種が沢山作出された江戸時代後期には、ウンゼンツツジはコメツツジと称されていたが、明治中期にウンゼンツツジを和名に採用しました。それで江戸時代の言い方がいまだに残っている。

2、だれかが植物図鑑などで名前をしらべて間違ってコメツツジだと同定してしまった。その誤称が島の山野草愛好家たちの間で流布してしまった。
諭鶴羽山系のツツジ属(その3)「オンツツジ」
●オンツツジであります。漢字で書けば「雄躑躅」です。オスのように立派で、大きく、逞しいツツジだという意味でありましょう。オンツツジの開花状況は、今年は極端な裏年にあたっています。表年には、それこそ「すわ山火事だぁぁ!」と思うほど全山赤く染め上がります。しかし、今年はちらほらで寂しいものです…。

オンツツジは 襲速紀要素(そはやきようそ) の植物の一つで、その分布は中央構造線の南側(西南日本外帯)に分布していて、紀伊半島南部~四国~九州の山地にあります。有名な 徳島県の天然記念物 船窪オンツツジ群落 と同じ種類のツツジが諭鶴羽山系にあるのです。船窪のオンツツジは海抜1050~1070mの高所にあるのに対して、淡路島では海抜350~586mの低所にあるので、淡路の方が花期が2週間早いです。淡路では4月下旬からポツポツと咲き始め、5月中旬まで咲いています。満開のピークはここ数年では5月10日ぐらいです。近年は春先が寒いので開花が遅れる傾向があります。

●むかし、船窪オンツツジ群落を観察に何回か行ったのですが、とても立派な観光地になっています。花見の観光客で立錐の余地もないほどの人出でした。出店であるとか屋台が沢山でていました。南あわじ市には花の名所といえるのは黒岩スイセン郷しかないので、新しい花の名所として有望な観光資源であります。諭鶴羽山系のオンツツジ群落として県の天然記念物に指定するように運動し、林道を拡幅、遊歩道や駐車場を整備したら、花の名所とするのは十分に可能でありましょう。有望だという理由は沢山考えられます。南あわじ市の潜在的有望な花の名所として、強く推奨いたします。

オンツツジ群落が花の名所として有望な理由
1、兵庫県では諭鶴羽山系にしか自生していない。兵庫県版レッドデー
  タブック2010でBランクの貴重植物に選定されている。
2、近畿地方でも紀伊半島南部しかなく、観光客供給地の阪神間の住民
  にとっては珍しいツツジである。観賞価値も高い。
3、貴重植物に選定されているけれども、個体数が非常に多い。
4、山系全体にランダム分布するのではなく、特定の狭い範囲に集中分
  布していて、見ごたえがある。
5、将来に、そのオンツツジ群落を後継維持する幼木や実生稚樹がたく
  さん見られる。心無い観光客に少々盗られても大丈夫。
6、既に林道が存在するのでそれを拡幅整備すれば、現地へ行く進入路
  とすることができる。
7、駐車場を作るための緩傾斜の場所がある。平坦地も存在する。
8、付近は諭鶴羽山系の屋根にあたるので、四囲眺望がすばらしい。
9、5月の連休にあわせて開花するので、客寄せの花にちょうどいい。

『兵庫県レッドデータブック2010』でBランクの貴重植物「オンツツジ」

★県版レッドデータブックが言うように、確かにオンツツジ群落がスギの植林のためにかなり破壊されました。植栽されたスギはその後下草刈りや間伐など手入れがされず、ほとんど植えっぱなしの状態です。早晩にスギ林もダメになるでしょう。その兆しが見えています。自然の二次林を破壊し、かつスギ林もろくすっぽ管理しないのでは、ツツジ公園整備に税金を流し込むほうがましでありましょう…。

オンツツジ
↑目が醒めるような情熱の赤いツツジです。別名がツクシアカツツジ。よく育って老成した個体では樹高5~6mになります。ツツジ類としては威風堂々とした大木になる種です。
オンツツジ

オンツツジ
↑枝の先に普通は2~3花つきますが、時には5花もつくことがあります。雄しべは10本。花冠は5中裂しまして、全体はあざやかな赤い色ですが、上弁に濃いピンク色の斑紋があります。
オンツツジの葉
↑葉は枝の先端に3枚が輪生状につきます。葉だけを見るとトサノミツバツツジに酷似しています。

   ……………………………………………………………………
オンツツジの自生地からの眺望 は面積約600平方キロの小さな島とは思えないものです。山岳重畳して、山並みは遥かに続いています。彼方の山は雲霞にかすんで紫色であります。全くの仙境であり深山であります。
自生地から東を見る
↑オンツツジ自生地から東を見た景色です。一番むこうにかすんでいる山は柏原山(569m)です。画面の左側にある山(530mあまり)の山頂付近にはホンシャクナゲが沢山自生しています。柏原山の手前に見える山(544m)の林道にはシイタケがよく出ていました。しかし最近は茸の出る枯損木が朽ち果てたのであまり出なくなりました。
自生地から北を見る
↑画面の中央のやや遠くに見える山は兜布丸山(かぶとやま535m)です。この兜布丸山は島の平野部に最もせり出して近く、平野部を隔てて先山(448m)と対峙してすこぶる良い眺めであります。しかし登る登山道はありません。樹林のなかを藪こぎで登ります…。
自生地から北西を見る
↑一番手前に見えている山(545mぐらい)には兵庫県レッドデータブック2010でBランクの貴重植物のナンゴクウラシマソウの良い群落があります。またヤマツツジのちょっとした群落もあります。この写真では分かりにくいのですが、遥かに播磨灘が見えています。
諭鶴羽山系のツツジ属(その2)「モチツツジ」
●本日は2012年5月6日であります。

今年のツツジ類は裏年だ。
★昨日の午後に山の方に、ふらりと、ツツジ類の観察に行ってまいりましたが、今年はツツジ類はみな「裏年」で花が少ないです。葉ばかりがやたらに多いです。隔年開花という傾向がきわめて強いのは何故なのか? モチツツジでも、オンツツジでも、トサノミツバツツジでも、ヤマツツジでも、種が違い若木・成木・老木の区別がなく全体的に花が少ないのです。

★中には、樹冠を埋め尽くさんばかりに豪勢に咲き誇る個体もあることはあったのですが、葉ばかりの個体のほうが圧倒的に多数です。山中のツツジ類が一斉に隔年開花する理由は何でしょうか? 個々の個体がバラバラに無秩序に隔年開花するならば理解できるのですが、指揮者の統率により楽団の成員が一糸乱れぬ演奏をするが如く、ツツジ類の1本1本が一斉に足並みを揃える要因は何だろうか?

★ハッキリした要因は分かりませんが、まず思いつくのは気象条件か? と思うのですが、年ごとの気象は暖冬の年もあれば厳冬の年もありという具合で変動がありますが、極端なことを申せば、暖冬であったとしても冬が夏のようになるわけではありません。気温に関しては、そう極端に変わるわけではありません。極端に変わるのは気温ではなく、降水量でありましょう。降水量は劇的な変化を示します。特別地域気象観測所「洲本」の93年間の観測データをグラフ化したものをお目にかけましょう。(気象庁観測データを元に山のキノコがグラフ作成)

年降水量の経年推移
↑「年間降水量」の93年間の推移です。下限1000ミリ、上限2000ミリの範囲に93個の標本のうち9割近いものが収まっています。なお、このグラフは昨年10月に作成したものです。2011年の年間降水量は、年末までにさらに150ミリほど上乗せがあり、2497.5ミリに達しました。

100㎜幅の度数分布
↑棒グラフで見ると、多雨の年は少雨の年の3倍近くあることがわかります。年間降水量が最小の年は1994年の805ミリ、最大の年は2011年の2497.5ミリです。3.10倍あります。

★極端に少雨の年と、極端に多雨の年の、それぞれの月毎の降水量を調べてみると、6月~9月の暖候期に雨が多いか干ばつになるかに因っていることが分かります。夏に日照りが続けば平年値よりも年降水量が極端に少なくなり、夏が冷夏だとか台風が次々に来るならば平年値よりも極端に年降水量が多くなります。春秋の降水量の年ごとの差はそれほどではありません。

★ツツジ類は夏か秋口ぐらいにすでに枝先に翌春に咲く小さな蕾ができています。花芽形成(かがけいせい)が進んで蕾が出来ていく大事な時季に、極端な少雨に遭うとうまく蕾ができなくなるのではないか?? と推論してみましたがどうだろうか? 地中深く入る直根がなく根が浅く横に広がるツツジ類はとくに干ばつの害を受けやすいのではないか? 干ばつの夏は枯れないで生存するので精一杯で、蕾を作るどころではない…、で、足並みを揃えて翌春は花がなく裏年。翌翌年は逆に表年で樹冠を埋め尽くす花、花、花。

その後は、花が沢山ついたら果実ができてしまうので、養分が全部果実に流れて新梢ができないか、出来たとしても新芽の伸長が弱くて花芽分化できるまで成長しない、因って次の春は裏年。以降、表、裏、表、の繰り返しになるが気象条件に因ってはその順に狂いが生じる……、ではないでしょうか?

社団法人 国際環境研究協会は地球温暖化を煽るタチの悪い団体であるが、その機関誌『地球環境』は温暖化を煽る部分を割り引いて読めば大変勉強になります。安田政俊『東南アジア熱帯雨林における一斉開花結実現象の至近要因と進化要因』地球環境 Vol.3 No.1&2 1998年 という論文では、マレーシアの熱帯雨林における数年ごとの一斉開花を議論しています。この議論で、気象変化の少ない熱帯域であっても、5年毎に出現する18℃の低温だとか、例年よりも厳しい乾期による水分ストレスとか、気象が一斉開花の要因になっているらしいです。

で、諭鶴羽山系でのツツジ類の一斉開花あるいは一斉不開花も、花芽形成期の、平年値から大きく偏差した雨量等の気象が要因になっているのではないか。具体的にそれが「夏の高温?」なのか「夏の極端な少雨」なのか「極端な日照不足?」なのかはよく調査しないと分かりませんが…。ま、冬の低温は関係ないと思います。冬から春の低温あるいは高温が影響するのは、花期が平年よりも1週間早いか遅いかが変わるだけだと思います。

モチツツジの観察
花柄・がく片などに腺毛が多く、べたべたと粘る。
↑モチツツジです。花柄・ガク片・子房・若枝に腺毛がびっしりとあって、なんだかベタベタとした粘液みたいなものを分泌しています。触ると手がネバネバしたものがくっついて気持ちわるいです。しかし、かぶれるなどの害はありません。石鹸水で指を濡らしておくとネバネバしたものがくっつかないと言われています。でも、山の中に石鹸水など持っていく人があるのでしょうかねえ?? 植物園ならば、展示用のモチツツジのそばに石鹸水を置いておき、さわる場合にはこれで手を濡らしてくださいと、説明書を掲げるのはあり得ます。

モチツツジ、花色がやや薄い
↑このモチツツジはやや色が薄いです。すごく着花数が多く、枝先に10花ほどもついています。見事な咲きっぷりで着花数の多い系統かもしれません。

雄しべは5本ある
↑ツツジ類は種を見分けるのに雄しべの個数は重要です。モチツツジは5本です。

花色がやや濃い
↑こちらは花の色がやや濃い個体です。着花数が少ないです。

花冠は5中裂して、上弁に濃い色の斑点がある
↑花冠は5つに中裂~深裂して、上弁にゴマ粒を振ったような斑点集団があります。
諭鶴羽山系のツツジ属(その1)「コバノミツバツツジ」
コバノミツバツツジであります。春の里山を桃源郷のように彩る美しいツツジです。

●植物名を書き表すさい、難しい漢字をやめて、カタカナ(場合によっては、ひらがな)で書くようにしたのは明治時代の植物学者であります。学名に関しては 国際植物命名規約 という厳密な規約があり学名の付け方にはルールがあるわけですが、和名についてはべつに厳格な命名規約があるわけではありません。(もしあるのでしたらご教示ください)けれども、植物名をカタカナで表記するのが、明治時代以来の既成の慣習になっているので、拙ブログでは植物名だけでなく生物名はすべてカタカナ表記でございます。間違っても漢字で表記したり、漢字仮名交じりで表記することなどありえません。ただし例えば、シマサルナシ(島猿梨)という風に、まずカタカナで植物名を示しそのあとに括弧つきで漢字名で説明することはございます。やはり、いかなる場合であっても、カタカナで植物名を表記することを崩すことはできないのです。

(理由は、植物名をどのように表記するかを見れば、その人が動植物とか自然についてどの程度の知識とか認識を持っているのか、ほぼ分かってしまうからです。したがいまして、自然や植物について講釈を垂れる人が目の前におったら、その人がどの程度の認識を持っているか品定めするには、動植物名をどのように書くかを観察すればいいのです。)

●そうは申しても、やはり、植物名を漢字で書くほうがその植物について分かりやすいことは多々あります。ということで、コバノミツバツツジは明らかに「小葉の三つ葉躑躅」であります。小さな葉のツツジだというのです。また、その葉は枝先に3枚つくことを表しています。本種はサクラのソメイヨシノと同じように、葉が出てくるよりも先に花が咲きます。葉が出て展開するのはたいてい花が散って後です。春に枯れ木にいきなり開花するような感じで、殺風景な雑木林が一気に華やかになります。本種は葉が小さいだけでなく、他のミツバツツジ類よりも花も若干小ぶりであります。

コバノミツバツツジ

 ●さて、いつも思うことでありますが、園芸店の店頭であるとか公園などでツツジの園芸品種がたくさん見ることができますが、ミツバツツジ類が原種であろう園芸種が全く見当たりません。広い世の中にはミツバツツジ類の園芸種があることはあるようですがが、世の中にほとんど普及していないといえましょう。サツキであるとか、ヤマツツジであるとか多くの野生種がツツジ園芸種の原種になっていて、江戸時代から膨大な数のツツジ園芸種が開発されているのに、何故ミツバツツジの類の園芸種がほとんど見当たらないのか?

思うに、ミツバツツジ類がありふれているためではないか? 個体数が多く、身近な里山に沢山ある(あった)ので、別に採ってきて庭に植えるまでもありません。タネを採取して育苗し開花させるのには長年月がかかります。わざわざそんな手間のかかることはしないし、まして、交配してもっといい品種を作出してやろうという意欲も湧かないです。またミツバツツジ類の交配種ができても、それによく似た原種が目の前にたくさん野生しているから、わざわざお金を出して購入するのは馬鹿馬鹿しいです。ミツバツツジ類は野生状態でも非常に観賞価値が高いものでありますが、しかし家の前の里山にいくらでもあるから、それを見ればいいんだよ。なんでお金を出して買わなきゃいけないんだよ、ということが品種改良の原種にあまり成らなかった理由ではないのか? 身近に沢山あるものには価値が少なく、山奥とか特殊環境に自生する入手困難なものにこそ価値があるということなのでしょう…。(と、考えてみたのですが、違うかもしれません。

●コバノミツバツツジは身近な里山にごく普通のありふれた植物だったのですが、近年、急速に減少しております。諭鶴羽山系でも沢山あったのですが、最近では捜さないと目にしなくなりました。写真のものは、諭鶴羽山系ではなく阿万の大見山で撮りました。コバノミツバツツジが減少してきた理由はハッキリしています。 “遷移の進行” です。森林が鬱蒼と茂ってきたからです。

コバノミツバツツジは耐陰性があまりなく、ある程度は陽光があたらないと育ちません。しかも低木です。樹高は1mかせいぜい2~3m程度です。したがいまして、明るい雑木林、二次林でも初期のまだ背が低い段階の林、比較的に林床が明るいマツ林、などで以前は見られました。ところがマツが枯れ、二次林が成長して樹高が高くなり、遷移が進んで常緑広葉樹(照葉樹)が鬱蒼と茂ってきました。こうなるとコバノミツバツツジは居なくなります。しかしながらこれは自然の摂理であり法則であります。やがてはコバノミツバツツジは樹木の育ちにくいところ、例えば土壌の少ない急斜面の岩角地とか、やせ土の尾根だとか、かなり特殊なところにしか残らないでしょう…。役場の人たちとか、自然保護NPOの人たちの感覚では、じゃあコバノミツバツツジを消滅から救うために、森林を間伐して太陽があたるように環境整備しよう、などと言う方向にじきに動くでしょう。しかし、それは間違っています。自然には法則とか秩序があるのですから、やがて落ち着くところにたどり着きます。自然の摂理には逆らってはいけません。
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