雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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「ハンゲショウ」の観察(その2) 白化葉が全く見られないハンゲショウの集団があるのだろうか?
●以下の写真は、洲本市由良にあるハンゲショウの群生地であります。昨日、2012年7月6日に観察しました。南あわじ市に在住する有名な写真家のSさんに、「ハンゲショウの写真を撮りに行きませんか?」と誘いましたところ、「よし、行こう」ということになりました。なんと、朝5時から出かけました。今時分は日の出が非常に早く、朝5時半にもなれば十分に明るいのです。Sさんの本業はキャットウォーク服飾デザイナーの仕事をされていて、朝9時にアトリエを開店されます。わたくし山のキノコも一応まだ現役世代です。遊んでいるわけじゃあ、ありません。要するにその日の業務を始める前に写真を撮ってこようという作戦であります。

●ところが、ハンゲショウの自生地にたどり着いたら、天がビックリ仰天して落ちてきて、地面が東北沖地震で動くほどの、大異変であります。驚愕して腰がぬけてしまいそうです。白化葉が全くないのであります。一体これはどうしたことなでありましょうか?? 

白化葉が全く無いではないか!
花はあるが白化葉がない
↑元水田であろうか?と思われる湿地に、薪雑把(たきぎざっぽう)の如く隙間なくハンゲショウが生育しています。とても奇妙なことには、今の時期(花期)にあるハズの “白くなった葉” がまったく見られません。この写真のハンゲショウは花穂が立ち上がり気味なので、開花は終盤という状況であります。サクラでいえば満開を通り過ぎて散り始めと言ったところでありましょう。ハンゲショウは、花のない茎に着く葉は緑一色というのが普通なんですけれども、花がある茎に着く葉がここまで白化葉がないというのは、わたくしは初めて見ました。

本当に白化葉がない
↑この一面にひろがるハンゲショウの群落が、白化葉で埋め尽くされていたら実に壮観でありますが、これでは写真になりません。新聞社に投稿しても採用は望めないでしょう。これでは、「ただの雑草じゃあねえか」と言われるのがオチです。あきらめて、南あわじ市に戻り、南あわじ市賀集の淳仁天皇陵の掘りのハンゲショウの白化葉の写真を撮って、Sさんは新聞社に投稿されたようであります。

白化葉がなぜ無いのだろうか?

●まず、写真のものは日本在来種のハンゲショウです。アメリカハンゲショウではありません。園芸種として導入されて、ごく僅かのようですが販売されているアメリカ原産のハンゲショウは葉が白化しません。アメリカハンゲショウは雄蕊の花糸が長く、花穂が シライトソウ(諭鶴羽山系に普通にある) みたいな風に見えて、簡単に見分けがつきます。で、まず、ここのハンゲショウは在来種であり、栽培品のアメリカハンゲショウの逸出したものということは全くありません。

●ハンゲショウは、若くて成熟せずに花がまだない未成熟株の場合は白化葉が見られないものですが、ここのものはそんなことはありません。たくさんの花が見られます。花盛りであります。花があるのに白化葉が全くないという現象を示しています。

●どんな種でも、その産地により多少は変異があるのは普通だから、ここのものは白化葉を生じない系統なのだろうか?? そういうことがひょっとするとあるのか?? あるいは、遺伝的なDNA塩基配列や染色体の数などに何ら変化はないのだけれども、たとえば日照など気象条件であるとか、土壌のPHであるとか、自生地の沼や湿地の水質汚染だとか、なんらかの環境要因により白化しない場合があるということでしょうかねえ?? 分かる方にはご教示賜りますればありがたいです。

★なお、ハンゲショウの白化葉はあまりにもよく目立つので、ちょっと見た感じでは沢山あるように感じるのですが、葉の数を数えて出来るだけ定量的に観察するならば、意外に少ないものです。地面から生える1本の茎ごとに観察すると、白化葉をつけない茎のほうが多いです。未成熟な茎はもちろん、花をつける成熟した茎でも白化葉をつけない場合がありませす。で、たとえば10本の茎があっても白化葉をつける茎は1本か2本、そんな程度です。しかも1本の茎には10枚~20枚の葉がつき、そのうち白化する葉は1~2枚です。したがって、その群落で葉群全体に占める白化葉の比率はせいぜい1%程度か、1%よりも更に少ないかもしれません。たとえ白化した葉が一面にあるように見える群落であっても、白化葉が沢山あるかのように見えるのは “目の錯覚” であります。ヒトの目というものは、少ない物を多く見て、多い物を少なく見て、物事をありのままに見ない傾向があるように、わたくしは思います…。ようするにヒトの目は節穴なのです…。
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「ハンゲショウ」の観察(その1)
梅雨末期ごろの珍しい植物「ハンゲショウ」の花の観察をいたします。そうたびたび観察会を行うのは大変ですので、わたくし山のキノコが1人で観察しましたが、観察結果を少し書いてみましょう。観察日は2012年7月4日、観察場所は兵庫県南あわじ市賀集、観察会参加者は山のキノコ1人だけ。

ハンゲショウ
↑ドクダミ科のハンゲショウです。じめじめした湿地であるとか、水辺などに生育しています。草丈は70~80㎝か1mぐらいです。とても美しい植物で、観賞価値があります。庭園のあるお屋敷に住んでいる方は、その庭園の池の辺にハンゲショウを植えるといいでしょう。わしとこには池などないわ、という方は普通の庭(水辺でなくても)でも、鉢植えでも栽培は可能です。自生地をあまり荒すのはよろしくありませんが、1枝を採取するのであればいいでしょう。挿し木で簡単に殖やせます。コップに水を入れハンゲショウの1枝を入れておけば1か月ほどたてば、節から根がたくさん出てきます。

●本ブログを覗いてくださる奇特な方に、特別にこの写真を撮った自生地を公開いたしましょう。南あわじ市賀集にある、第47代 淳仁天皇淡路陵(じゅんにんてんのう あわじのみささぎ) です。御陵の西側に掘があります。その掘にハンゲショウが自生しております。ただし、あまりたいした自生地ではありません。淡路島南部で最大の群生地は洲本市由良にあります。なお、淡路島外の方はわざわざ見に来るほどの自生地ではないので、お住まいの地方の群生地を探すほうがおよろしいと思います…。ただし、多くの県でレッドデータ種扱いになっているため、自生地情報はあまり公開されていないようですが…。

日本のレッドデータ検索システムでは、「ハンゲショウ」は25県がレッドデータ種扱い ハンゲショウは植物自体は挿し木で簡単に殖やせるほど、丈夫な植物であるにもかかわらず、なぜ多くの県でレッドデータ種扱いなのか? 恐らく、湿地とか池・沼のほとりという環境に自生する植物なので、その環境が埋め立てとか水質悪化等の理由で大きな破壊圧にさらされているためではないでしょうか? それと鑑賞用採取もありそうな気がいたします。

白化した葉
ハンゲショウの葉は花期に白化しますが、花穂と向き合っている葉が白化するのであって、茎の下部・中部の花穂が出ていない葉が白化することはありません。したがいまして白化する葉は茎の上部にある葉が2~3枚か、多くても3~4枚までです。葉が白化するといっても、1枚の葉が全体すべてが白化することはまずなく、葉の下半分か3分の2程度で、先端部分は緑色が残っています。少ない場合は、3分の1とか、ほんのちょっぴりということもあります。

●面白いのは、葉が白化しているのは葉の表側であって、裏側は緑のままです。顕微鏡で観察すると、葉の葉肉を形成しているところの柵状組織のうち、葉の表側に近い部分の葉緑体が抜け落ちて白くなっていますが、葉の裏側に近い部分は緑色のままであります。

●ハンゲショウの花は、花弁、花冠(かかん、英 corolla) のない花です。いわゆる花びらがありません。花らしくない花、地味な花であります。それで花粉を運んでもらう訪花昆虫に、ここで咲いていますよとサインを送るために、葉を白くしているのだと考えられています。葉の白化はすなわち華やかな花弁の替わりであるというのです。花期が終わると、白化していた葉はしだいに緑色に回帰していきます。しかし、完全に緑に戻ることは無く、若干、色は薄いというかくすんでおります。

キツネの尻尾みたいな花穂
↑キツネの尻尾か、アキノエノコログサの花穂みたいに、おじぎをしています。尊大さがなく謙虚におじぎをしていますが、これは最初のうちです。1本の穂には小さな個花が数十個か100~200個ぐらいあるのでしょうか? 花穂(かすい)の根元から先端に向かって開花が進んでいきます。開花が進むにつれて花穂は立ちあがってきます。

●写真のものでは、綺麗な放物線状にお辞儀をしていますけれども、その放物線の頂点付近がちょうど開花しています。先端部分はまだつぼみであります。根元の部分は雄蕊(おずい・おしべのこと)の葯(やく・花粉の袋)が茶色く変色して、開花は終わっております。開花が進むにつれ花穂が立ち上がり、放物線の頂点付近がつねに開花最盛になるように開花がすすむのですが、これは頂点付近は花が上向きになって訪花昆虫が止まりやすいという配慮をしているのだと解釈されています。重要な花粉の運び手となるハナアブ類が、好んでハンゲショウの花粉を食べにくるのですが、ハナアブが止まりやすいようにサービスをしているのだと考えられています。訪花昆虫の形態・行動と、ハンゲショウの花の開花状況とが、ベストマッチするように双方がうまく進化したのでしょうかねえ??

ハンゲショウの花は、ルーペで観察しましたところ、写真のものでは雄蕊(おしべ)が5個、6個、7個と一定ではないようですけれども、6個の出現頻度が高いようです。子房の心皮を観察しますと、1個の個花には1個の雌蕊があり、その雌蕊は圧倒的に4心皮からなるものが多く、(若干3心皮、5心皮のものもあった)心皮の先端は合生せずに離生しています。福原先生の植物形態学講座「雌しべと心皮」 を参考にしてください。

群生するハンゲショウ
↑ハンゲショウはたいてい群生しています。ドクダミと同じように、白っぽい地下茎が縦横に走っているので、1本1本の茎が1個体であるということは無く、地下でみなつながっています。けれども、その群生しているものが全て地下でつながっている1個体ということもないでしょうから、一体この群生地には何個体のハンゲショウが生育しているのでしょうかねえ?? 全くわかりません…。

【ハンゲショウの語源説】
●24節季72候の、花鳥風月、歳時記的な季節区分け法によるところの、夏至の末候の半夏生の頃に花が咲くからハンゲショウという…、説があります。けれども、ハンゲショウが開花するころを「半夏生」と言うようになったのか? 「半夏生」という時季になると開花するのでハンゲショウと言うようになったのか? 両方の可能性があり得そう…、です。

要するに、季節名が先なのか? 植物名が先なのか? であります。「半夏生」という字句を見れば、「半夏・ハンゲ」という植物があって、そのハンゲが生えて花が咲くころを「半夏生」と言うようになったのではないか? ハンゲは一説によるとカラスビシャクか? ハンゲとハンゲショウは別物であって、ハンゲが咲くころにハンゲショウも咲くから、もとはハンゲの咲く頃の意味だった時節名を、ドクダミ科のハンゲショウに流用したのではないのか?? でないと、ハンゲショウの咲く頃という意味で時節名にしたのであれば、「半夏生生」としないと矛盾が生じます。

24節季72候のごく一部

二十四節気(にじゅうしせっき)

七十二候(しちじゅうにこう)

●ハンゲショウは「半化粧」だとする説もあります。葉の半分か、3分の2程度が白くなるので、全面的な化粧じゃあなくて半分の化粧だというのです。たしかに、おしろいを塗りたくって化粧しているように見えます。別名のカタシログサは葉の片面(表側)だけが白いという意味であるのはほぼ間違いないでしょう。
淡路島の最南端(その2) 海岸の風衝地帯に生活する「ハマヒサカキ」
●ハマヒサカキは淡路島では南部の海岸地帯に見られます。洲本市由良から灘海岸、そして阿万・門崎さらに旧西淡町の播磨灘沿岸に分布しています。いずれの場所でもハマヒサカキが自生する環境は風の強い所です。海風が吹き上がる海食崖(断層崖)の上とか岬の突端とか、あるいは谷の河口付近です。すこし内陸の風の弱いところではヒサカキが優占していて、ハマヒサカキはまず見られません。海岸の風の強いところにはハマヒサカキ、内陸の風が弱いところはヒサカキがと、見事に 「棲み分け」 ております。

『兵庫県レッドデータブック2010』 ではハマヒサカキはCランクの貴重植物

扁形強度4の見事なハマヒサカキ
見事な扁形樹
↑ 強度の扁形樹となっております。この個体の根元は写真の左下にありますが、主幹・側枝の全体がその根元の右側に流れています。海食崖 (断層崖) を吹き上がる風がいかに強烈であるかを見事に示しています。扁形樹の扁形の程度が、その風衝地帯の卓越風の強度や風向を示す指標になっています。
扁形の程度を数値で表す
●扁形樹を生物指標として用いて、その地域の風の強弱・風向の分布を調査するさいには、扁形の程度によって1ー4の数字で表すことが多いようです。あるいは扁形なしのばあいを0として、0ー4の数字で表します。そして樹種・扁形の方向・扁形の程度などを調査し、地形図のうえに調査結果をプロットしていきます…。アマチュアでも出来る調査として、自分は、南あわじ市の鳴門海峡に面する地域の克明な調査を一人でやっているのですが、膨大な手間が必要で、 「扁形樹から見た風況分布図」 が出来るのは大分先になりそうです…。

ハマヒサカキの葉
↑ ハマヒサカキの葉は (ヒサカキと比べると) 小さく、丸みを帯びていて、葉の先端は尖らず僅かに凹むこともあり、葉の縁が反って裏側に少し巻きこんでいます。葉の厚みはやや厚くて堅いです。乾燥・強風に耐えるために硬葉樹化しているような感じであります。矮小化したものでは密生する葉群を一瞥すると、シダ植物のマメヅタを連想します。あるいは庭木に利用されるツゲの木の葉に似ています。

ハマヒサカキの花
↑ ハマヒサカキの花期も果期も今頃 (12月) です。花も実も同時に観察できます。ハマヒサカキは雌雄異株ですが、写真のものが雌株か雄株か観察し忘れてしまいました。しかし、花ばかりで果実が見えないので雄株なのか?

ハマヒサカキの果実
↑ ハマヒサカキの果実は熟すと黒い色になります。写真のものには果実だけで花が写っていませんが、たいていは果実は去年に出た枝になり、花は今年出た新しい枝につきます。したがいまして、花は上の方に咲き、果実は下の方に付いております。

こちらはヒサカキ

これもヒサカキ
↑ この2枚の写真はヒサカキです。ハマヒサカキとは兄弟なのですが、葉の印象がまるで違います。手で触るとハマヒサカキよりも若干葉が薄く柔らかいような感触がいたします。

両者を比べる
↑ 左のものがハマヒサカキです。葉は小さく丸いです。葉の先端は尖っていません。 右のものがヒサカキです。葉が大きくて薄く長細いです。先端が尖っています。

ハマヒサカキの利用
↑ ある無人野菜販売所の店先にクリスマスツリーふうの飾りがありました。なんと使われている木はハマヒサカキです。そういえば、この野菜販売所の横の土地にハマヒサカキの植え込みがありました。その植え込みの枝を使ったのでしょう。そこは海岸から5km以上も内陸にあるので自然分布とは考えにくく、おそらく植栽されたものと思われます。

たまたまその無人販売所の経営者のおばちゃんがいて話を聞くことができました。「この木は生け花の材料にいいんですよ。生け花のグループでこの木を使っています」 ということでしたが、ハマヒサカキの名は知らなかったです。ハマヒサカキは乾燥に強くよく生長しても2ー3mほどにしかならないので、生け花のほか、庭木とか道路の中央分離帯の植え込みなどに利用できそうです…。



マチン科の「ホウライカズラ」の観察
●先日に、諭鶴羽山系の奥のある神秘的な池に出かけて、紅葉(黄葉)の観賞をしたときに、ホウライカズラの実がぼちぼちと色づき始めていました。とりたてて特筆すべきことはないのですが、ホウライカズラは蓬莱カズラという意味で、非常にめずらしいので蓬莱(古代中国で東の海上にある仙人が住むといわれている山)に生育する植物と思われていたらしいです。諭鶴羽山系には点々と自生しています。『兵庫県レッドデータブック2010』ではCランクの貴重植物とされています。

●とくに話題がないのですが、千葉大学の薬学部のホームページを見ていたら、「特異なインドールアルカロイドを含むが、どういう効果があるかはまだよく分かっていない。現在千葉大学で研究中。アルカロイドとは、窒素を含み、塩基性でかつ、天然物由来の物質の総称。アルカロイドには薬効を持つものが多い。エフェドリンもアルカロイドのひとつ」などという1文がありました。

もしかしたら、研究が進むと薬草になるのかもしれません。しかし、アルカロイドには薬効を持つものが多いということですが、有毒なものも多いハズです。逆に有毒植物ということになるかもしれません…。ま、毒と薬は紙一重ですね…。薬効はあっても副作用は強烈とか…。1文にあるエフェドリンは、昔は中国東北部原産のマオウという薬草から採っていたみたいです。昔、気管支炎をやってエフェドリンを含む薬をよく服用しました。エフェドリンは咳止めや気管支拡張作用があるのですが、動悸がするなど副作用もありました。やはり薬と毒は裏表の関係なのか…?

ホウライカズラ
↑ホウライカズラの果実は径1㎝ほどです。12月から1月ごろにかけて熟して橙色になります。葉はテカテカと光沢があります。

ホウライカズラ
↑この個体はあまり大きくないのでそう見えませんが、よく伸長して他樹の樹冠の上まで這い上るほどに育ったホウライカズラは、その蔓や葉の印象がサカキカズラに似ています。花や果実がなかったならば、サカキカズラと見間違える可能性があります。

ホウライカズラの花
↑これは以前に撮った花の写真です。花期は6月中旬~下旬ぐらいだったかと思いますが、ひょっとすると7月に入っていたかもしれません…。
晩秋の淡路灘海岸を彩る黄花3種 「アゼトウナ」
●万葉歌人の山上憶良(やまのうえのおくら)がもし生き返って、晩秋の淡路島南部の灘海岸を自然観察したならば、次のような連作の歌を詠むでしょう。

灘の海辺 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 三種の花
アゼトウナ ツワブキが花 島寒菊 黄色花 崖に張付き 岩根に生ふる 

最初の歌は、5・7・5・7・7の通常の形式を踏んでいますが、後ろの歌は5・7・7・5・7・7の旋頭歌(せどうか)の形式になっています。577を2回繰り返す形式が旋頭歌です。指は「および」、三種は「さんくさ」と読みます。

【歌の意訳】
吾輩、山上憶良は草葉の陰から生き返って、晩秋の灘海岸を観察して歩いたんだ。それで、晩秋の灘海岸をはなやかに彩る賞美すべき花はなにがあるか? 指を折りながら数えたんだ。すると3つあったんだな。それは何かと列挙すると、アゼトウナの花、ツワブキの花、シマカンギクの花なんだ。特にアゼトウナの花は面白い生態があって垂直の崖に張り付いて生えとる。ツワブキの花とシマカンギクの花は、大きな黒い岩の根元でたくさん咲いておるんだよ。この3つの花には共通点があって、みんな黄色の花ということなんだ。それから、歌には盛り込めなかったが3種ともキク科に属する花なんだ。

●さて、下の写真はキク科のアゼトウナです。アゼトウナは兵庫県レッドデータブックCランクとされ、一応、貴重植物扱いとなっています。淡路島では島の北部にはなく、島の南部に自生しています。海岸の崖や急傾斜地、道路の法面などにあります。個体数は比較的に多いので捜せばすぐに見つけられます。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではアゼトウナをCランクの貴重植物としています。

アゼトウナ
↑この個体はコンクリートの割れ目に生えました。崖の崩落を防止するために斜面にコンクリートを吹き付けたところです。落石防止の金網が張ってあります。普通の植物の生育には過酷な環境であろうかと思われるのですが、見事な大株になっています。アゼトウナにとっては逆にこれが最適な環境なのかも分かりません…。

アゼトウナ
↑美しい黄花で、観賞価値が高いです。が、いまだに園芸植物化はされていません。とても綺麗ですねえ。花はヤクシソウに酷似していますが、ヤクシソウのようにひょろひょろと背が高くありません。草丈はせいぜい15㎝か20㎝程度です。大株になると株の径が50㎝にも60㎝にもなるので、草姿全体の形状は鏡餅のようでペタンとしています。

アゼトウナの花

蕾です
↑海岸植物らしく葉が厚いです。

●さて、ここでアゼトウナという標準和名の語源解釈です。アゼトウナの分布は静岡県の伊豆半島から以西の九州宮崎県に至るまでの太平洋沿岸地方です。僅かに瀬戸内海沿岸など波の静かな内海にも分布を広げているようです。生育する環境は、とにかく崖です。急斜面や崖に自生しています。
アゼトウナは「畔唐菜」ですが、この「畔」は田畑のあぜではありません。崖(崩岸)のことです。崖に生じて唐菜(とうな・中国の菜っぱか?)に似た植物という意味です。万葉集に次の歌があります。

【原文】
安受乃宇敝尓 古馬乎都奈伎弖 安夜抱可等 比等豆麻古呂乎 伊吉尓和我須流(14巻3539)

【訓読】
崩岸の上に 駒を繋ぎて 危かど 人妻子ろを いきに我がする

【仮名読み】
あずのうへに こまをつなぎて あやほかど ひとづまころを いきにわがする

【歌の意味】
崩れた岸の、崖の上に馬を繋いだのでは、とても危なっかしくて恐いことなんですが、人様の妻である大好きなあの人のことを、私は命懸けで思ひ込んでいるんですよ。

★『岩波古語辞典』によれば、「あず」は、がけのくずれた所、です。安受・崩岸・久豆礼・阿須などと書いてあずと読ませるようです。また、「あざ」という語もあるのですが、これは諸説あってハッキリしないのですが、岩波古語辞典では波の浸食によって生じた洞穴をいうか?(現在の方言にその例がある)田の畔・断崖と見る説もあります。

で、結局、万葉集など上代文学では「あず」「あざ」は崖を意味していました。その「あず」や「あざ」が → 「あぜ」と転訛して「あぜ」が崖を意味していると考えられます。以上のことからアゼトウナという植物名は、崖に生える中国の菜のような植物という意味であろうかと思われます。大昔にこの植物を命名した人はアゼトウナの生育環境をよく観察していた…、と言えそうです。

石垣の花
↑これがアゼトウナの特技です。垂直の崖であろうと、石垣のわずかな石の隙間であろうと、こういうところを好んで生えてきます。ど根性アゼトウナです。普通の植物にとっては過酷な場所なのだろうと思いますが、考えようによっては競争相手がいません。アゼトウナ一人の独壇場といえましょう。潮風にも強くて塩害などものともしません。海岸の絶壁がアゼトウナの安住の地なのでしょう。

アゼトウナは海岸だけでなく、海抜100m付近までみられますが、生育している場所はほとんどが崖かそれに近い状態のところです。他の植物がよく繁茂するような土壌が厚く湿潤なところではダメみたいです…。
サカキカズラの淡路地方名は「シオババ」 その1
キョウチクトウ科のサカキカズラです。兵庫県では淡路島の南部にしか分布していないです。県内分布が限られるので『兵庫県レッドデータブック2010』では一応Cランクの絶滅危惧種扱いになっています。しかしながら、淡路島南部の諭鶴羽山系ではありふれた普通種です。谷でも尾根でも山系の南斜面でも北斜面でもいたるところに繁茂しています。物というのは少ししかないと貴重品ですが、沢山あればあまり価値がありません。で諭鶴羽山ではサカキカズラは単なる雑草です。身近な所にいたるところにあるので、「シオババ」という地方名までついています。

●いわくありげなシオババの地方名ですが、(南あわじ市灘地区の名称です)意味不明の地方名です。わたしの勝手な語源解釈ですが、“シオババ = 塩婆” ではないでしょうか? サカキカズラの花は径10㎜ていどですが、花冠が5裂しています。その裂片が塩で萎れたかのように細くなっています。そしてお婆さんの顔のしわみたいにねじれています。そういうイメージであろうかと思います。この解釈が当たっているかどうかは分かりませんが、立派な地方名が存在するということが、その標準和名など知らなくても、そういう植物があると地域住民が認識している証拠といえましょう。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではサカキカズラはCランクの扱いです。

サカキカズラの花
↑花はお世辞にも美しいとはいえませんが、とても面白い形状をしています。花冠が5裂しているのですが、裂片がいじけたように萎縮して細く、しかもねじれています。“かざぐるま” を彷彿とさせるような形をしています。淡路島の諭鶴羽山での花期は5月上旬です。
リンクフリーの波田先生のHPで、サカキカズラの花のアップ写真が見られます。

サカキカズラの葉
↑サカキカズラの語源は、その葉がサカキ(榊)の葉に似るからだとどの書物にも書いています。はたしてそうだろうか? サカキの葉よりもかなり細身であるように見えます。あまり似ているようには思えません。諭鶴羽山のサカキカズラの葉が特別に細長いのかと思い、各地の植物のブログやHPの写真を拝見すると、若干の地域変異とか個体差とかはあるのかもしれませんが、細長いものが多いようです。で、サカキとサカキカズラの葉が似ているというのは、その葉の形ではなく葉の表面にクチクラ層が発達していてテカテカと光沢がある様子が似ているからではなかろうか? という推論もできそうです。でも光沢があるのが似ているというのであれば、“ツバキカズラ” でも良さそうです。

サカキカズラの太い茎
↑サカキカズラは10mぐらいになる壮大な蔓植物で、よく育つと茎の太さはヒトの腕ぐらいにもなります。写真のものは茎の径が5㎝ぐらいです。写真の茎には20㎝間隔でリング(輪)があります。これがサカキカズラの茎の特徴で、若い茎にも太い茎にもリングが見られます。なれると茎を見ただけでサカキカズラだと分かります。

対生する葉の付け根がリング状に盛り上がる
↑葉は対生していて葉の葉柄の付け根が膨らんでいて、その膨らみは茎を取り巻いて輪となっています。枝先の葉であろうと、太い徒長枝につく葉であろうと、よく観察すると対生する葉の付け根がリング状になっています。

サカキカズラの若い果実
↑サカキカズラの若い果実です。この写真は8月16日のものですが、2個の果実が水牛の角のように水平に開いています。2個の果実の長さは約20㎝で、すでに生長しきった大きさです。しかし果実が成熟し種子散布をするのは何ケ月も先で、種子が風に乗って飛び散るのは年が替わって冬です。この果実は1枚の心皮(しんぴ)から成る袋果(たいか)で、果実が成熟するとアケビのように1筋の裂け目から裂開します。

シタキソウの若い果実
↑こちらはガガイモ科のシタキソウの若い果実です。水牛の角のような形状といい、長さ太さ幅とか、色合いとか、袋果(たいか)の縫合線の茎にたいする位置とか、何から何まで酷似しています。諭鶴羽山系でサカキカズラの果実の観察をする際には、シタキソウの果実と見間違える可能性があります。しかしながら、葉を観察すると全く異なりますから識別できると思います。
こちらがシタキソウの花と種子散布の写真です。 
コヤブランの観察です
「コヤブラン」の観察です。似た仲間の植物に、「ヤブラン」と「ヒメヤブラン」があります。これら3種ともに諭鶴羽山系で見られます。見分け方のポイントは次のことを押さえるといいと思います。ただし、あくまで諭鶴羽山系での観察という意味においてのハナシです。

『兵庫県レッドデータブック2010』では、コヤブランはCランクの貴重植物に指定しています。

1か所にまとまった大きな株になる。…………………………ヤブラン

1か所にまとまった大きな株にならず、面的に広がってはびこる。
  葉の幅は4~7㎜で、花は沢山つく。20~30以上。……コヤブラン
  葉の幅は2~3㎜で、花は少なく、10個前後。………ヒメヤブラン

ヤブランに似たものに、ノシランの自生も諭鶴羽山系で確認されていますが、ノシランは花が白で、ヤブランは紫です。コヤブランとジャノヒゲを見間違える可能性がありますが、コヤブランの種子は黒、ジャノヒゲの種子は濃いブルーで、色で見分けるのがいいと思います。ただし、種子が熟すまで継続観察する必要があるのは、しかたがありません。

コヤブラン
↑地中に匍匐枝が縦横無尽にのびて、その匍匐枝の先端から5~10枚の葉を出します。ヤブランのようにまとまった大株になるのではなく、平面的な広がりをもつ植物です。よく育つと地表をびっしりと覆い尽くします。写真の状態になると他の草本植物(つる植物以外のもの)がなかなか侵入できません。(30㎝ぐらいの厚みのマット状になっているので、地表の植物の種子が発芽生長できなくなるのです)

疎らに花茎が立っている
↑写真のものは、葉の幅が5~7㎜あります。幅はヤブランよりも狭いです。半分くらいです。線形の葉の長さですが、写真のものは生育良好ですので30~55㎝もあります。

コヤブランの花

花のアップ
↑コヤブランの花です。花のつく茎は30~50㎝もあります。写真のものは生育がすこぶる良いのです。1花茎に個花は30~40個もつくのですが、開花間際に落ちるものが多くて、疎らになることが多いです。花の径は8~9㎜ほどです。花の色は薄い紫色です。花は花被片が6枚、雄蕊6個、雌蕊1個です。

ヒメヤブラン
↑これは「ヒメヤブラン=姫藪欄」です。コヤブランとの違いは大きさです。葉の幅は2~3㎜、葉の長さは10~20㎝しかありません。花の構造は全く同じですが、1花茎に付く個花の数は数個~10個程度で少ないです。パッと一瞥すると、芝生が広がっているみたいに見えます。
カワラサイコが激減しています
先日にユウスゲの写真を撮りに行く際に、阿万吹上の小規模な砂丘を横切ったのですが、兵庫県絶滅危惧植物Cランクのバラ科カワラサイコが激減しているのに気がつきました。10年ぐらい前には一面に沢山あったのですが、激減の理由は不明ですが10個体程度しか見られませんでした。隣接する場所にキャンプ場があるので、大勢のヒトが踏み荒らしているのかもしれません…。この小さな砂丘にはハマウツボやビロードテンツキなどのAランクの貴重植物もあるのに、侵入・出入りが全く自由で踏み荒らし放題です。ひどいのは車の轍もあり、オフロード遊び場となっています。兵庫県はレッドデータブックなどという資料を、植物地理学や植物分類学などの専門家たちに編纂させて、発行していますが一体なんの為なのか? ただ編纂・発行するだけのようです。

●平成7年3月に発行された初版『兵庫の貴重な自然』の「はじめに」の末尾には次のように書かれています。

「この兵庫県版レッドデータブックが、多様で豊かな兵庫県の自然を次の世代に引き継いでいくための基礎資料となることを願っています。」

●2003年に発行された『改定・兵庫の貴重な自然』には次のように書かれています。

「本書が多様で豊かな兵庫県の自然を次の世代に引き継いでいくための基礎資料として、なお一層活用されることを願っています。」

まるで人ごとみたいな書き方です。“これはあくまでも基礎資料なのであって、活用されることを願う” だけのようです。兵庫県環境創造局自然環境課が、作成した資料を活用して “多様で豊かな兵庫県の自然” を護るのではなさそうです…。貴重植物を絶滅から護るのはワシ等の仕事ではない…、資料を作るのが仕事だ…、ということか? 活用されることを願うなどと言っても、だれが活用するのか? 自生地の地域住民なのか? 植物愛好家なのか? 補助金をかすめ盗るNPO法人なのか? 環境創造局の外郭団体なのか? 全く意味不明であります。また、植物を調べているある人が編纂委員の先生に「先生らは貴重植物の保全活動はしないのですか」と聞いたところ、「それはワシ等の仕事ではない」と、恐い顔で睨まれたそうです。結局、資料をつくるだけ…、が目的か? 経済産業省は利権の巣窟(原発利権・新エネルギー利権など)ですが、環境省でも県でも生物多様性ではあまり利権にはならないみたいです。資料編纂利権などはなさそうです。とても利権などと呼べるほどの予算がつかない……。

阿万の小さな砂丘の海浜植物は、何の防護柵もなく踏み荒らされ、オフロード車が乗り入れています。そこに自生する貴重植物は激減、風前のともしびです。カワラサイコは川原の砂礫地の植物ですが、川のない淡路島では海岸の砂地に生えます。南あわじ市唯一の自生地の阿万吹上砂丘では、カワラサイコは消滅するかもしれません…。

カワラサイコは『兵庫県レッドデータブック2010』ではCランクの貴重植物です。

全国的には31もの県が絶滅危惧に言及しています。

バラ科カワラサイコ
↑株元から放射状に枝を伸ばします。
カワラサイコの花
↑花はキジムシロやオヘビイチゴの花にそっくりです。見分けがつきません。しかし葉が特徴的です。とくに早い時期に大きな個体が株元から放射状に出す大きな葉は、とても美しいものです。
ユウスゲの淡路自生の個体群が衰退しているかも?
ユウスゲの花が咲きました。花色は上品なレモンイエローです。淡路島での花期は6~7月です。早いものでは6月上旬から咲いています。7月終わりぐらいまで咲いています。1個の花については1日花で、夕方に咲いて翌朝しぼみます。つまり夜間に咲いているわけです。ですから1日花というよりも1夜花というべきかもしれません。1つの花は1夜限りのはかないものですが、写真をご覧いただいたら分かる通り、大小たくさんの蕾が後ろにひかえています。花茎があまり分岐していない若い個体では5~10花ぐらい着き、花茎が沢山枝分かれしている老成した個体では15~20花もにぎやかに着きます。自生地のユウスゲの1花茎あたりの花数(蕾数)を任意に20花茎ほど数えてみました。最低で5個、最大で22個もありました。なお、若い個体では花茎は1本だけ、老成した大きな個体では何本もの花茎が出ます。そして沢山ある蕾が大小さまざまなのです。この大小の蕾が大きいものから順番に咲いていくので群落全体の花期は2カ月もの長期にわたります。

淡路島でのユウスゲの分布は2か所がよく知られています。南あわじ市阿万吹上の「押登岬」と、鳴門海峡に突き出した細長い岬の「門崎」です。どちらも潮風が吹きつける海岸崖地です。淡路島のユウスゲ自生地での個体数は減少しています。それで盗掘は自粛いたしましょう。ユウスゲの栽培は簡単です。7月終わりごろになると早い果実が熟しています。それでお盆ごろに種子を少し採取して、すぐに播けば簡単に苗ができます。早ければ翌翌年に花が咲きます。畑などで育てると見事な大株になって沢山の花が着きます。
自生地での花の観察には夕方4時ぐらいに行くのがいいでしょう。待っていると日没までに花が咲きます。厚い雲に覆われて薄暗い日には、昼過ぎぐらいから咲くこともあります。

『兵庫県レッドデータブック2010』によるとユウスゲはCランクの貴重植物です。

『日本のレッドデータ検索システム』では多くの県が貴重植物に言及しています。

ユウスゲの花
↑花にはケバケバしさが全くなく、高貴な雰囲気すらします。訪花昆虫を招くためなのか良い香りがします。このユウスゲは淡路島の(諭鶴羽山系の)ワイルド・フラワーのベスト10に間違いなく入ります。
蕾がたくさんある
↑海岸の崖地の草原の中に生えています。この崖地は何年か前に大雨で崩壊したらしいです。それでユウスゲ群落が大きな痛手を受けたそうです。たしかに10年ほど前と比べると個体数が激減している印象がします。昔は一面の大群落だったような記憶があります。

ユウスゲの葉
↑ユウスゲの葉はユリの類とだいぶん相違しています。ユリ類は茎に葉が着くのですが、ユウスゲは花茎に葉が着かないのです。葉が株の根元から多数が集まって出ています。よく見ると2列になって出ています。ユウスゲは花が夕方に咲き、葉がカヤツリグサ科のスゲ属の植物の葉に似ているというのが、その名前の語源だとされています。しかし葉の質とか手触りの滑らかさは、スゲ属植物に似ているとは私は思いません。おそらく根元に葉が集まっている様子が似ているということではないか? と解釈しています。

さて、ユウスゲの花色が鮮やかなレモン黄色なのは、「受粉の仕事をしてもらう夜行性の蛾などの訪花昆虫に、暗闇でも良く見えるようにする為だ」とされています。本当にそうなのか? 少し疑問があります。例えばスイカズラという植物は「金銀花」という薬草にされるように花の色が黄色と白です。スイカズラの花は2日花です。1日目は白ですが2日目は黄色に変化するという面白い性質があります。スイカズラの花が2日目に黄色くなった夜に夜行性の蛾などが盛んに来るなどの観察や報告があります。したがって黄色の花に夜行性昆虫が集まるという可能性は否定できません。

●しかし、そもそも夜間は全く暗闇ではないにしても、光が少ないからよく見えないハズで、夜行性の動物は色盲が多いとされています。夜行性の送粉昆虫たちは目を大きくするなど暗闇に適応しているとは思いますが、彼らには黄色がよく見えるのか?という疑問です。第一に夕方咲いて翌朝しぼむ花は白が多いです。有名なものはサボテンの仲間のゲッカビジン(月下美人)があります。諭鶴羽山系にあるものではカラスウリ、キカラスウリ、オオカラスウリ等は1夜花ですが純白です。良く見えるというのであれば「白」が一番有利なのでは? 実際に夜咲いて朝しぼむのは白ばかりです…。ツキミソウもそうです。沖縄の名物のサガリバナも白っぽいです。

●それに夕方咲いて翌朝しぼむ(散る)花はたいてい強い香りがするので、白っぽい色に加えて芳香でも送粉昆虫を招いているハズです。花の色はあまり重要ではないのでないか?

●それに昆虫たちは我々ヒトと異なり、近紫外領域の波長の光と、可視光線でも紫や青の波長域でものを見ていることが良く知られています。ヒトより短い波長の光で見ているので、ヒトが黄色と認識している波長の光を夜行性の蛾などはどう見ているのか? ひょっとすると見えないのでは?(夜間に蛍光灯に虫が集まるのは、蛍光灯は紫外線を利用する照明器具だからだと説明されます。虫たちは紫外線で物を見ています)紫外線カメラでユウスゲの花を見たらどのように見えるのでしょうか? ぜひ一度、見たいものです。

●それに農業で “黄色ランプの防蛾灯” が普及しつつあります。夜行性の蛾などの昆虫が黄色の光で活動を抑えることが出来るといいます。夜行性の蛾などの目が黄色の光で昼間だと勘違いしておとなしくなる反応があるらしいです。黄色の「色」と「光」では昆虫の反応を同一視してはいけないでしょうが、関係があるのか?ないのか?

このようなことがあるから、「ユウスゲの花の黄色は夜行性の昆虫には良く見えるのだ」などという説明は “安易な説明” じゃないかという気がします。でも本当はどうなのか、よく分かりません……。(私も思いつきを適当に言っているだけです。ハイ。)

クスドイゲは派手なトゲで草食獣の食害を防御
まず、シカの食害の実際をご覧ください。
幹の樹皮をかじられたビワの木
↑ビワ(果実の琵琶です)の葉や樹皮をシカが好みます。ビワ栽培の盛んな南あわじ市灘地区では、シカの食害による果樹の被害が目立っています。ご覧のようにビワの樹皮までかじって食べてしまいます。ビワの葉はごわごわとしていて固く、葉の表面も裏面も毛が多くてもそもそとしていて、おいしそうには見えません。しかしシカはビワの葉が大好物です。ミカンの葉も大好物なのです。幹や枝の樹皮も好物のようです。樹皮をかじるのは歯を研ぐためかと思っていたのですが、よく観察するとかじった樹皮が地面に落ちていないことから食べているのだと推察できます。歯を研ぐついでに樹皮を食べてしまうのかもしれません。そのあたりの正確なことは観察不足で良く分かりません…。

とにかく南あわじ市灘地区ではシカが多くて庭にまでわがもの顔で出没しますので、ワイヤーメッシュ、トタン板、網、と3重に防護柵を張らないとビワもミカンも栽培できなくなっています。写真の樹皮をかじられたビワの木も枯らされるのは時間の問題です。

さて、地面に固着して動くことのできない植物ですが、草食獣に葉や茎を食べられるのに手をこまねいているだけではありません。いろいろと手段を講じて食害を防御しています。比較的多い手段には、毒を盛るというのがあります。草食動物が食べたら中毒を起こすような毒物(化学物質)で身を護る「化学作戦」です。タケニグサ、シキミ、ナルトサワギク、オモトなどヒトが食べても草食動物が食べても中毒する毒草はいっぱいあります。

ほかに多い手段としては、トゲだらけで痛くて食べられないというのもありますが、これは「物理作戦」といえましょうか? トゲだらけの植物は諭鶴羽山系にもたくさんあります。

ミカン科 サンショウ、イヌザンショウ、カラスザンショウ、
     フユザンショウ。
グミ科  ツルグミ、ナワシログミ。
マメ科  ジャケツイバラ、ハリエンジュ(ニセアカシア)
ウコギ科 タラノキ、ヤマウコギ、ハリギリ。
バラ科  フユイチゴ、オオフユイチゴ、ホウロクイチゴ、
     ノイバラ、ヤブイバラ、ナガバモミジイチゴ
     エビガライチゴ、クサイチゴ、など多数。
キク科  オニノゲシ、ノアザミ、ハマアザミ等。
トウダイグサ科  カンコノキ。

ざあっと思いつくだけでも一杯あります。よく考えればもっともっとありそうです。良く見るとヒトが食べられる植物も多数含まれています。例えばカラスザンショウでも、春の枝先の新芽を天麩羅にするとうまいです。これらはトゲだらけで、屈強のシカ(鹿たち)でも手も足も出ません。おいしそうな匂いを嗅ぐだけです。植物たちもそうやすやすと食べられてはたまらない、と必死の防御策です。
 
さて、クスドイゲという樹木があるのですが、派手なトゲで武装しています。これもシカは手が出せません。
クスドイゲ
↑クスドイゲはあまり大きくならない樹木です。せいぜい7~8mぐらいでしょうか。最大限10mまでといった感じです。雌雄異株の樹木で、秋の早い時期に(9月ぐらいに)小さな花をびっしりと着けます。

クスドイゲは『兵庫県レッドデータブック2010』ではCランクの貴重植物です。
諭鶴羽山系では、山系南斜面でも北斜面でも点々と自生していますが、特別に目立つ樹木ではないので意識的に観察しないと見落とすかもしれません。兵庫県では諭鶴羽山系と西播磨のごく一部に分布するようです。
『日本のレッドデータ検索システム』ではクスドイゲについて4県が言及しています。

クスドイゲの幹はとげだらけ
↑クスドイゲは幹の直径が10㎝程度の若い木では、トゲだらけです。トゲは枝が変化したものと言われていますが、幹から20㎝ぐらいの長大なトゲが出て、その長大なトゲから更にトゲが出ているという感じです。時にはトゲから出たトゲに更にトゲが出ることさえあります。つまり3重にトゲが出るわけです。こうなると、その一つの塊のトゲ自体が「トゲの樹木」のように見えます。そういうのを観察すると直感的にもこのトゲは枝の変化したものであって、葉が変化したものではないということが分かります。しばしばトゲから葉が出ています。分かりにくいですが写真にも見えています。これもトゲは枝そのものであるという証拠なのでしょう。梅雨ごろの新しく出たトゲは赤っぽい色をしていることが多いです。

クスドイゲも古木になるとトゲがなくなってきます。幹の直径が30㎝、樹高が10mに近いようなものになると、幹にはトゲがありません。クスノキは古い枝を落としながら幹を太らせますが、それと同じような感じで、クスドイゲも老成してくると落枝現象が生じてトゲを脱落してしまいます。それで別物みたいになります。そうなると幹の樹皮は縦にはがれたような感じになります。ちょうどムクノキの大木みたいな樹皮の様子です。トゲのある樹木も古木になるとトゲがなくなるか、あるいはトゲが疎らになってくるという一般的な傾向が認められるように思います。古木で樹高も高いでしょうから枝の葉にシカの背が届かない…、樹皮も厚くなってシカの歯が立たない…、ということでしょうか? そうすると、わざわざトゲで武装する必要性が薄らぐのか?
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