雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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調査断念、ナンゴクウラシマソウが見当たらない! 消えた要因は何なのか?
●9月7日に、植物の会の代表者のK先生よりメールを頂戴しました。K先生はテンナンショウ属植物の生活史やフェノロジー(生物季節学)や種子散布の仕組みなどを研究されているようなのですけれども、調査に協力してほしいとのことでした。神戸のハリママムシグサや淡路のミミガタテンナンショウの果実を鳥が食べる証拠写真がバッチリ撮れたそうです。いろいろなテンナンショウ属植物の果実の赤熟時期とか鳥が食べるのかどうか、だいぶんデータが集積できたらしいのですが、淡路のナンゴクウラシマソウに関しては全くデータがないということで、調べてくれという話でありました。

●果実が緑色から赤く熟すのは何時なのか? そして赤熟した果実を鳥類が食べる様子はどうか? 定期的に観察して記録写真を撮るという調査であります。別にむずかしことではないし、素人でも中学生でもできるようなことなので、引き受けたのであります。観察し記録するからには、自生地の住民でなければ絶対にできないような克明な観察記録をしようと張りきったのですが、何回か自生地を調べに行って大変なことが判明しました。

今年の春5月にたくさんあったナンゴクウラシマソウが、まったく見られません。 今年2012年の5月にもあちこちでナンゴクウラシマソウの花を観察しているのですが、どこを探しても消えています。
シカが食べたのか?? テンナンショウ属植物はシカの不嗜好植物でしたが、シカがこの草の味を覚えた?? 早い時期に果実が赤熟して枯れてしまった?? 5月に開花したけれど、その後何らかの要因で枯れた、たとえば病虫害とか?? 兵庫県レッドデータブックでBランクの貴重植物に選定されているので、山野草マニアが根こそぎ採った?? 茶道をやる連中が茶花に採った??

残念ながら、調査は断念であります。 ナンゴクウラシマソウが消えた理由は全く不明です。調査は不可能になってしまいました。しかたがないので、また来春です。来年4月~5月頃に、消息不明のナンゴクウラシマソウを捜索したいと思います。消えた理由も調べたいと思います。  

↓これは昨年2011年5月16日の写真です。洲本市猪鼻谷にて。
ナンゴクウラシマソウ
ナンゴクウラシマソウは葉はたいてい1枚です。小葉の幅がウラシマソウよりも狭いことが多く、葉の真ん中の筋が白っぽいことが多いです。

付属体にシワがある
↑上の写真と同一のものです。付属体の様子がよくわかるように仏炎苞を取り除きました。付属体の先のほうが次第に細くなっています。先端は糸みたいです。付属体の基部はバナナの実のような形状で膨らんでいます。この付属体の基部がシワがあるのがナンゴクウラシマソウ、シワがなく平滑なのがウラシマソウです。ですが、馴れたら葉を見ただけで見分けがつきます。どちらなのか紛らわしいのはまずありません。

写真のものは、付属体の基部の膨らんだ部分が、膨らみが強く、密なシワがあり、葉が細いのでナンゴクウラシマソウと同定しました。しかし、付属体の膨らんだ部分が紫褐色がやや勝っていて、黄白色の部分が少ないです。ナンゴクウラシマソウは大抵はその部分は黄白色なので、ひょっとしたらウラシマソウとナンゴクウラシマソウの雑種になっている可能性もあるかも? という気はします。(もっと、一点の紛らわしさもない典型的な写真を掲上したいところですが、付属体を撮った写真はこれしか手持ちにはなかった)

↓下の2枚の写真は2010年5月だったと思います。場所は南あわじ市神代上田池の奥の源頭尾根で、海抜500メートルほどのところです。大群落でありました。
小葉の幅が狭い
↑この葉は極めて幅がせまく細長いです。勝手に異名をつければ「ホソバウラシマソウ」が良いと思います。

親株の周囲に子株がたくさん
↑この集団は、葉の中央の筋が白いのがかなり目立ちます。親の周りが子だくさんであります。親、子、孫と3代いるかもわかりません。これは親の種子が足元にこぼれおちて子だくさんとなったのでしょう。この親株の種子は鳥類が散布したのではなく、芸もなく足元に落ちただけでありましょう。

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諭鶴羽山系で見られる他のテンナンショウ属植物3種
ユキモチソウが諭鶴羽山系にあるなどと言っている人がいますが、本当にあるのでしょうかねえ? ないんじゃないでしょうか? テンナンショウ属植物の観察の前に、次の図をよく見て、しっかりと用語を覚えておきましょう。
『日本の野生植物』から借用
↑佐竹義輔ほか 『日本の野生植物 草本Ⅰ 単子葉類』128頁 平凡社 1982年、から借用した。(実は、パクッた)


【↓ウラシマソウ
ウラシマソウ
↑ウラシマソウは浦島草の意味で、付属体の先が次第細りに長く伸びて、先端部分は糸状になっています。その様が浦島太郎の釣り竿の釣り糸みたいだ、というのです。写真では分かりにくいのですが、釣り糸状に長く伸びているのは上記のナンゴクウラシマソウと同じです。仏炎苞は黒紫色のことが多く、なんとなく気味が悪い花であります。しかし茶道の活花には人気があるのか? むかし、洲本市三熊山にたくさん自生していたウラシマソウが、茶道をやる人々によって根こそぎ乱獲されたらしいです。

なお、ウラシマソウは葉は1個ですが、写真のものは2個あるように見えます。これは2個体がほとんどくっついて生育しているために、そう見えるだけです。

【↓アオテンナンショウ
アオテンナンショウ
↑アオテンナンショウは青天南星の意味で、仏炎苞ぜんたいが緑色です。付属体は白っぽいこともあるのですが、薄い緑色である場合が多いです。付属体の上部は丸くこん棒状で、ウラシマソウやナンゴクウラシマソウのように、釣り糸みたいに長く細く伸びていません。

【↓ミミガタテンナンショウ
ミミガタテンナンショウ
↑ミミガタテンナンショウは耳形天南星の意味です。仏炎苞の口辺部が外側に向かってべろーと広がっています。その様が “耳の形のようだ” というのです。この写真は知人の写真家の里口さんの作品ですが、耳の形がよく分かるようにと注文をつけて撮ってもらった写真です。
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冬に生育・夏に休眠するライフサイクルの「イワタイゲキ」  ど根性イワタイゲキ いわちゃん
岩の間に生えるイワタイゲキ
イワタイゲキ という岩石海岸に生育するとても美しい植物があります。十分な写真が撮れなかったので、岡山理科大学の植物生態研究室(波田先生)のホームページの解説をご覧ください。波田先生のホームページの説明では、「画像は香川県小豆島の海岸で撮影した。風化の激しい花崗岩の露岩地で、岩の割れ目に食い込むように生育していた」ということでありますが、淡路島でもイワタイゲキの生育する場所は、たいてい海岸の岩角地の岩の割れ目です。門岬の付け根の崖、灘仁頃、立川スイセン郷の海岸、成が島、沼島にも…、淡路島南部に何か所か自生地があるようですけれども、個体数はわずかしかありません。礫が多い砂浜にも生育することがありますが、大部分は岩の割れ目に根をのばして生えております。

●イワタイゲキは、コンクリートの護岸で固められたり、醜悪な姿の消波ブロックが並べられた人工海岸にはありません。開発の魔の手から免れた自然のままの海岸に自生する植物です。海岸の自然度の高さを窺える指標植物であるとされています。けれども、その海岸が開発が加わらず自然度が高いかどうかはちょっと見れば分かることであって、いちいち指標植物の生育を確認しなければ分からないというものではないハズです。で、へそ曲がりを申せば、イワタイゲキを海岸の自然度を測る物差しにする必要が本当にあるのだろうか? という疑問もあります。

●イワタイゲキは晩秋から冬に栄養生長して青々と茂ります。そして、4月に花が咲き5月に果実ができます。夏には美しく紅葉したのち、地上部は枯れて地下茎の状態で休眠しています。花壇に植えるスイセンやチューリップと同じように、冬に生育して夏に休眠するライフサイクルの植物であります。下のわたくしの撮った写真ではまだ紅葉していません。5月の終わりごろでしたが、もしかしたら紅葉が始まっていないかと思ったのですが、まだまだ早すぎました…。7月にもう一度仕切り直しでありますが、そう簡単に行けるところではありません…。

岩の割れ目に根を下ろすイワタイゲキ
↑これは5月の終わりごろの写真であります。南あわじ市灘仁頃の岩石海岸であります。大波が来るとバサアと波しぶきをかぶるような所にあります。土壌はなし、したがって保水性もなし、強乾燥、強日照、強潮風、塩害…、とよくまあこんな劣悪な環境で生育するものだと感心させられます。しかしながら、イワタイゲキにとっては、このような劣悪環境が安住の地なのでしょう…。このような環境で生きられるように進化してきたのにちがいありません。

他の植物はなし
↑ご覧のように他の直物が全く生えておりません。イワタイゲキは他の植物ではとても生存できないような過酷な所に生育するのであります。

【時には砂地に生える場合もある】
淡路島と和歌山県の間の紀淡海峡にある友ヶ島は、イワタイゲキの良い自生地であります。いなさの情報ブログ様のサイトで、その友ヶ島のイワタイゲキの自生地風景の写真が見られます。なんと、友ヶ島のイワタイゲキは砂浜に生育しているではありませんか! これではイワ(岩)タイゲキではなく、スナ(砂)タイゲキと言うべきでありましょう。イワタイゲキはたいてい岩の割れ目に生えるといっても、必ず例外というものは有るのです…。

ど根性イワタイゲキ いわちゃん
●むかし、ど根性大根だいちゃん などという馬鹿な騒ぎがありました。ここにもあった、あそこにもあった、と低俗趣味のマスゴミが煽りに煽りました。そのような話題から申せば、イワタイゲキのほうが遥かに根性があります。超ど根性イワタイゲキいわちゃんであります。いわちゃんの方が、だいちゃんよりも根性があります。なぜならば、この岩石の割れ目では大根は育たないからです。じっさいに、海岸にはハマダイコンは普通にたくさん分布していますが、こんな岩石累々の所には全くありません。ハマダイコンはこんな岩の割れ目まで分布を広げられません。(ハマダイコンは、栽培種のダイコンが逸出野生化したものという説があります。逆にハマダイコンを改良した物が栽培種のダイコンだという見方もあります。つまり植物の種としては、栽培種のダイコンと野生のハマダイコンとを同等とみなしてもいい)


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【さて、自生地を明かすことの罪について、少し考えてみます】
●淡路島南部のイワタイゲキの自生地を明かしてしまいましたが、いちおう兵庫県レッドデータブックではBランクの絶滅危惧植物の扱いになっております。採ってはいけません。個体数もすくないので、見るだけにとどめておきましょう。
日本のレッドデータ検索システムでは13県が絶滅危惧植物に指定
お前は、「採るな」というのであでば、自生地を明かすなという批判もあるでしょうけれども、採ることと、自生地を明かすこととは、どちらが悪質でありましょうか? つぎの例を考えるとハッキリしています。採る(盗る)ほうがはるかに悪いのは明らかです。

A氏……道路に1万円を落とした。うっかり落としたのではなく、
    わざと落とした。
B氏……道路に落ちていた1万円をひろい、警察に届けずに自分の
    財布に入れた。ネコババした。

A氏がうっかり1万円を落とした場合は逮捕されることはありません。かりに、わざと落としたとしても逮捕されることはないでしょう。場合によっては、たとえばA氏があちこちにたくさん1万円札をばら撒いて落とした場合には、警察署から人騒がせな行為をするなと説教されるかもしれませんが、逮捕されることはないでしょう。

B氏は明らかに犯罪にあたります。刑法第254条の規定する遺失物横領罪に抵触する可能性が高く、逮捕されるかもしれません。その落ちていた1万円札が、うっかり落とされたものであろうと、わざと落とされたものであろうと、「占有を離れた他人の物」であることには違いがないでしょうから、遺失物横領罪が成立しそうです.

★本議論で考察していることは、レッドデータ種扱いされている植物の自生地をあかすことは、悪質かどうなのか?であります。自生地を明かすということは、上の1万円の例でいうならば、“○○に1万円が落ちていますよと人に知らしめること” にほぼ同等だと考えられます。1万円が落ちていると「言う」ことは別に問題でもなんでもなく、1万円を拾ってネコババするほうが、はるかに悪質なのは明白であります。

★1万円などという極めて価値の高い通貨と、レッドデータ種といってもただの雑草とを同一視して議論するのはおかしいのでは?という考え方も出てきましょうが、山野草マニアの間ではただの雑草が1鉢、数千円とか、数万円とかで取引されることも多いようです。レッドデータ種に指定することがただの雑草を “金のなる草” に変えている例がたくさんあります。レッドデータ錬金術です。

★ひょっとすると、一番悪質なのは環境省なのかも?? その可能性は大いにあります。ここで、環境省の政策について、ごく簡単にですがその功罪を少し考えてみます。環境省が絶滅危惧生物にかんする行政をしなければ、国版および県版のレッドデータブックが作成されることもなく、そうすると山野草愛好マニアがレッドデータ種の乱獲をすることも少なかったのでは? という可能性があります。いかに希少植物であったとしても、綺麗な花が咲くもの以外はただの雑草であって、山野草マニアの食指が動きません。ところがレッドデータ種に指定することがただの雑草にお墨付きを与えて光らせています。で、山野草マニアが乱獲しています。(私の身近なところにもそういうことがあります)

●かつて環境省は「環境庁」でありました。環境庁は大阪万博の翌年の1971年に発足しました。戦後25年焼け野が原から日本が復興し、重化学工業がさかんになり、日本の国力も回復して、万国博覧会が開催できるほどになりました。けれどもその弊害として大気汚染や水質汚染などの公害がひどくなりまして、何とかしなければということで、公害国会(第64回国会) が開かれましたが、それを受けて設置されたのが環境庁であります。

●そもそも公害問題に取り組むために設置された行政組織が環境庁だったのであろうかと思いますが、その後、厳しい規制が敷かれた結果、公害問題はかなり解決しました。たとえば四日市ぜんそくという健康被害まででた大気汚染は改善し、光化学スモッグという言葉も久しく聞かなくなりました。ドブ川みたいだった大阪湾の水質もかなりましになりました。公害問題がかなり軽減されてくると、環境庁の仕事が減ってしまいました。これでは困ると出てきた新しい問題が、「地球温暖化」であります。もちろんこれらは国内から出てきた問題ではなく、国連の組織から出てきましたが、「生物多様性」問題もほぼ同じくしてクローズアップされました。環境庁は仕事が増えて予算も増え外郭団体もたくさん出来て大喜びです。2001年には「環境庁」から「環境省」へと位が上がりました。環境庁時代の1991年に環境省版のレッドデータブックが作成され、改訂版もでたし、各県毎のそれも編纂されていますが、山野草マニアの盗掘のための貴重な資料として活用されています。○○の植物はレッドデータブックに載っているから値打ちがあるんだ、ということなのであります。○○はレッドデータ種で値打があるのだが、たくさんあれば希少価値が薄まるから抜いてしまえ! 間引いて減らして希少価値を高めようということも聞いたことがあります。 

★ある意味、一番タチが悪いのは環境省であります。原発利権の伏魔殿の経済産業省や、財政破綻教という脅迫で首相でも手玉に取る財務省ほどではありませんが、環境省もけっこう天下りや渡りのための関連組織や外郭団体がたくさんあるようです。もちろん税金が流れて行っているハズです…。しなくてもいいような事業や、なんの付加価値も産み出さない “税金の穀つぶし事業” がいっぱいあるようです。

「国民の生活が一番」が大躍進して、「官僚の天下りが一番」や、「利権業者の利益が一番」というふうな、既得権益組織や構造を木っ端みじんに打ち壊してほしいものであります。
弱弱しいツル植物の「シロバナハンショウヅル」
●「シロバナハンショウヅル」です。漢字で書けば、「白花半鐘蔓」です。その小さな花が半鐘のような形をしていて、花は白く、つる植物になるというのです。たしかに、その花は半鐘のように見えなくもありません。他のハンショウヅル類は半鐘らしく見えるのですが、本種は4枚あるガク片の先端が外側に向かって開きすぎているので、私には「半鐘」というよりも「鉄兜・てつかぶと」の形状に見えます。

●諭鶴羽山系では、林縁であるとか、林道の脇の「マント植生」の中などに、わずかにシロバナハンショウヅルが見られます。個体数は極めて少ないように思われます。蔓植物だといってもボタンヅルだとかクズなどのような強靱さがまったくありません。弱弱しい蔓植物という印象で、あまり繁茂するということがありません。ボタンヅルでは茎が人の腕ほどにもなり、樹木の上に覆いかぶさって繁茂し、その樹木を枯らしてしまうほどですが、シロバナハンショウヅルでは茎は指ほどの太さにしかなりません。蔓の長さも短くてよく茂った森林の中では生きられないようです。それで、林縁とかマント植生のなかにあるのでしょう…。

シロバナハンショウヅル
↑諭鶴羽山系では花期は4月中旬から4月下旬ぐらいですが、今年は春が寒かったので遅い花がまだ残っていました。よく見ると、上品で楚々とした美しさがあります。

シロバナハンショウヅル

シロバナハンショウヅル

シロバナハンショウヅル

●シロバナハンショウヅルは暖帯性の蔓植物であります。その分布は九州・四国・近畿南部・東海・関東南部と、太平洋沿岸地帯のようでありますが、他の植物との競争に弱いためなのか個体数が少なく、多くの県で絶滅危惧種になっているようです。兵庫県版レッドデータでは、Bランクの貴重植物です。兵庫県内では諭鶴羽山系にしか見られないようであります。

日本のレッドデータ検索システムより「シロバナハンショウヅル」

『兵庫県レッドデータブック2010』より「シロバナハンショウヅル」
諭鶴羽山系の灘海岸が北限地の、「マルバハダカホオズキ」の実が赤く色づいています。
●12月から1月の厳冬期にかけて淡路島南部の灘海岸を飾るのが、ナス科のマルバハダカホオズキです。ハダカホオズキの変種とされます。ハダカホオズキは諭鶴羽山系の各谷ごとに点々とあるのですが、マルバハダカホオズキは諭鶴羽山系の南側の海岸にしか見られないようです。マルバハダカホオズキは淡路島南部の上灘あたりがこの植物の分布北限地とされています。

●ハダカホオズキが枝が間延びしていて草丈が大きく、葉も長細くて大きいのに対して、マルバハダカホオズキの方が枝ががっちりとしていて草丈が小ぶりです。そして葉もやや小さくて丸っこい感じです。観賞価値はだんぜんマルバハダカホウズキの方が上位であります。とくに、冬に赤い小さな宝石のような実をびっしりと成らせているのは大変に美しいものです。この赤い実は食毒不明であります。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではマルバハダカホオズキをBランクの貴重植物としています。

『日本のレッドデータ検索システム』によるマルバハダカホオズキの各県のレッドデータ状況

マルバハダカホオズキ
7~8年まえには灘海岸の県道の山手側の擁壁にたくさんありましたが、2004年の記録的大雨により道路の法面が各所で崩壊し、マルバハダカホオズキが大きな痛手を負いました。僅かに残っていたのですが、今年の大雨で追い打ちをかけられ個体数が激減したようです…。分布の北限地でもあるので、自生地の保護の必要性がありそうです。

マルバハダカホオズキ
赤い小さな宝石がたくさんぶら下がっているように見えます。食用や薬用にするクコの実にとてもよく似ています。しかしながら、ナス科にはハシリドコロとかヒヨドリジョウゴなど毒草がたくさんありますから、不用意な試食などしないほうが無難です。つい手を出したくなりそうですが、見るだけならば中毒することはないので、見て観賞するにとどめておきましょう。
カラスウリ属の果実が色づく
諭鶴羽山系にはウリ科カラスウリ属は3種自生しています。カラスウリ・オオカラスウリ・キカラスウリです。秋も深まりそれらの果実が見事に色づいたので観察しました。

カラスウリの果実
カラスウリの果実
↑この2枚の写真はカラスウリの果実です。K先生の『淡路島の植物誌』によれば、カラスウリは淡路島南部には沢山あるのですが、淡路島北部には全く見られないそうで、不思議な、興味深い分布を示しているそうです。

オオカラスウリ
↑これはオオカラスウリ(大烏瓜)で、カラスウリよりも果実が一回り大きいです。蔓も太くてたくましく、葉も大ぶりで深い切れ込みがあります。オオカラスウリの葉の表面はあまりざらざらしていません。
その根茎が生薬になる「オオカラスウリ」

●さて、カラスウリ類の果実の観察です。特に、果実の形状と重さに着目して調べてみました。
オオカラスウリと、キカラスウリ
↑ざるに盛ってあるもののうち左側の赤い3個はオオカラスウリです。右の黄色っぽい2個はキカラスウリです。キカラスウリの果実はしわが寄っていますが、これは9月の大雨で土砂崩れがあり、キカラスウリの蔓が切られたためです。切られた蔓上で果実が乾燥したのですが追熟的に黄色に色づきました。

カラスウリの果実
↑こちらのザル盛りは基本種のカラスウリです。写真ではザルの大きさを揃えスケールを同じにしました。見比べるとオオカラスウリやキカラスウリよりも、基本種のカラスウリのほうが果実が小さいことが分かります。

●カラスウリ類の果実の大きさ等を測ってみました。材料は全て南あわじ市灘で採取したものです。採取日は10月20日です。オオカラスウリは1個体のみ(果実3個)、キカラスウリも1個体のみ(果実2個)、カラスウリについては2個体から(果実15個)を採取しました。

果実の長さ(長径)・幅(短径)・重さ・幅を長さで除した数値(この数値が小さいほど果実の形状が長細く、1に近いと球状になります)を測りました。その結果は次の表の通りです。ただし、これはあくまでもザル盛りの写真のものを測定したものです。個体による差とか地域集団による差は当然あるものと思います。

カラスウリ類の果実の測定結果

★いちじるしい違いは、果実の形状と重量です。

【果実の短径/長径の平均値を見ると】
オオカラスウリ……0.8904 果実が丸くて球状にかなり近い。
カラスウリ…………0.7016 果実が全体的に長細いものが多い。
              個々の果実によりバラツキが大きい。
キカラスウリ………0.6649 果実が長細い。

【果実の重量の平均値をみると】
キカラスウリ………132.5g 果実がとても重い。
オオカラスウリ…… 96.0g 果実がまあまあ重い。
カラスウリ………… 32.8g 果実がとても軽い。

★なお、カラスウリの果実の平均の重さを算出するさい、異常値を示す16gを除外して計算しました。キカラスウリは皺がよるほど乾燥気味なので、生時にはさらに重量があると思われます。

珍木の「バクチノキ」は、サクラの親戚
珍木のバラ科サクラ属の「バクチノキ」が今を盛りと咲き誇っています。諭鶴羽山系での花期は9月下旬~10月上旬です。山系のあちこちに点々と自生していますが、南あわじ市灘倉川、来川、洲本市上灘畑田組あたりにはとくに多いです。尾根ではなく谷筋の湿ったところにあります。大きなものでは樹高15mぐらいの大木になります。この樹木がよく話題になるのは、樹皮が剥離して赤く禿げていくことがとても珍しいからです。

『日本のレッドデータ検索システム』ではバクチノキを9府県が絶滅危惧植物に指定しています。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではバクチノキをBランクの貴重植物としています。

『イー・薬草ドットコム』から、セイヨウバクチノキ
伊澤一男 平成7年『薬草カラー図鑑4』主婦の友社によれば、セイヨウバクチノキの葉を細切りにして、水蒸気蒸留で「ラウロセラズス水」を作るが、素人には無理です。ラウロセラズス水を1回20~40㏄服用して、鎮咳にもちいるらしいです。

●書物・ネット情報に、バクチノキ(セイヨウバクチノキ)の葉を蒸留して「バクチ水」を採り、それは生薬として『日本薬局方』に記載・規定されているなどとあるのですが、そうとう昔の話なのではないのか?? 
●『日本薬局方』は、薬事法にもとづいて、医薬品の品質等の適正を図るために定められた医薬品(生薬も含む)の規格基準書であろうかと思いますが、第14改正版(平成13年)、第15改正版(平成18年)、第16改正版(平成23年)の最新・直近3版をチェックしたところ、バクチ水とかラウロセラズス葉(生薬名)は記載されていませんでした。日本薬局方の初版は明治19年ということなので、昔はバクチノキの葉を生薬に用いられたが、最近ではそんなものはクスリではないということでしょうか?
(日本薬局方から除外された事情はわかりません。薬効成分がないことが判明したとか…、政治的な背景から除外されたとか…、いろいろと可能性が考えられる…。)
「日本薬局方」ホームページ

バクチノキの幹
↑8月15日、洲本市上灘畑田組の鎮守の神社にて。 若い木は幹の色が灰褐色なのですが、樹皮が剥がれるにつれて赤銅色~黄褐色になります。個体によりまた樹齢により幹の色に違いがあるようですが、山中ではひときわ目立つ樹木です。薄暗い森の中でバクチノキがでてきたら少しびっくりします。

この標準和名の由来は、バクチノキが成長するにつれて樹皮が次々に剥離して赤っぽく禿げていく様子が、ばくち打ちが賭博に熱中するあまり体が熱くなり着衣を脱いでいる様になぞらえたものだ、とされます。あるいは、ばくち打ちが勝負に負けて身ぐるみ剥がされていく姿に似ているからだという説もあるようです。
沢山ある別名も、ハダカノキ、アカラギ、バカノキ等とばくち打ちを連想したり特徴をうまくとらえています。

バクチノキの花
↑この写真から下の4枚は、10月4日、南あわじ市灘山本の鎮守の神社にて。
バクチノキの花
↑総状花序がたくさん付いていて、とても賑やかです。写真の枝を調べたところ、花序は葉の付け根のところから出ています。花序が葉腋からたいてい3本出ていて長短あり不揃いです。ただし生育の悪い細い枝では花序が葉腋から1本づつ出ています。 葉はやや革質で厚く、テカテカと光沢があります。葉の周囲には粗い鋸歯があります。

花のアップ
↑1本の花序に何個の花がついているか観察すると、その花序の長さに依るのですが、最大限26個ついていました。短い花序は10個とか数個です。写真では細かいところは分かりませんが、実物の花を高倍率のルーペで観察しましたところ、花弁は5枚、がく片も5枚ありサクラと同じ形式です。雄しべは20本ぐらいあって花弁よりながいので、毛がたくさん出ているように見えます。なお、花は変な匂いがしています。悪臭というほどではありませんが、あまり良い匂いではないです。

(あまり花に近づかないほうがいいです。わたくし山のキノコは、バクチノキの強い花の芳香の毒気に中って半日めまいが致しました。むかし生薬にしていたというぐらいだから、変な揮発成分を放っているのかもしれません)

葉柄に花外蜜腺がある
↑葉身の少し下、葉柄の基部から7~8合目あたりに、丸いコブみたいなものが2個左右対称についています。バクチノキはサクラとは似ても似つかないように見えますが、バラ科サクラ属ということで、あちことにサクラと共通項が見出すことができます。この2個のコブみたいなものはサクラの葉にもあり、花外蜜腺と呼ばれるものです。この花外蜜腺から蜜をだしてアリ(蟻)を引き寄せています。アリは強力な肉食昆虫で葉につく蛾の幼虫などをついでに退治してもらうためではないか? などと言われています。

なお、葉柄の基部のところ(葉腋)に丸いものが3個ありますが、花序を3本かき取った跡です。花序が邪魔をして花外蜜腺が見えなかったからです。

ユリ科「ノシラン」の観察
ノシランは庭によく植えられるそうですが、淡路島には点々と自生品があるようです。洲本市の炬口八幡神社の裏山にあるものは有名です。ナチュラリストの間ではよく知られています。先日、津名に行く用事があってついでに寄りまして観察したのですが、日当たりが悪く生育不良になっているような気がしました。
小林先生の『淡路島の植物誌』によると、この神社の社叢林にあるものを最初に標本にしたのは故細見末雄先生で、1970年代ごろ淡路島に来島され柏原山など精力的に植物調査をしたようです。淡路島の植物は大部分は島外の専門家等が調査しています。(島の在住者はみな植物分類学・植物形態学・植物地理学などの門外漢の素人ばかり。にもかかわらず先生づらしている輩がいます。でも、その人に聞いたら標本は作っていないとのこと。標本も作らずに先生づらしてはいけない…。恥ずかしくないのだろうか?)

余談ながらいつも思うのですが、わが南あわじ市が学識経験者の意見を聞く必要が生じたとき、小・中学校の先生が出てきます。これには違和感が否めません。小・中学校の先生は教育者ではあっても研究者じゃありません。神戸市など都会では学識経験者というのは大学教授などの専門家が出てきます。ホントに田舎じゃ専門家でないものが専門家づらしたり、先生でない者が先生づらしています。井の中のカワズ…、じゃなかろうか?

諭鶴羽山系でもごく僅かですが、ノシランの自生があるようです。私も2か所見つけていますが、この植物をシカ(鹿)が食べるようです。シカの食害跡がありました。

『日本のレッドデータ検索システム』によると11の府県でノシランの絶滅危惧性について言及しています。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではノシランをBランクの貴重植物に評価しています。

ノシラン
↑ユリ科のノシランです。ちょっと見た感じはヤブランに似ていて、大きな株になります。しかしながら花の色が白で、ヤブランのように紫色ではありません。花があれば見間違うことはないでしょうが、葉を見ただけでは間違える恐れが多分にあります。

ノシランの花
↑ノシランの花は白で、花期は9月上旬~中旬ころです。花が付いている花茎は扁平であるのが特徴です。名古屋名物の「きしめん」みたいに平べったいのです。
ノシランの和名の起源は、その線形の葉が熨斗(のし)に似ているからとも、あるいは扁平な花茎が似ているからとも言われているようですが、おそらく葉ではないと思われます。ヤブランなどこの手の植物は葉の広狭はあっても似たようなものです。葉が際立った特性をもたないから、明らかに花茎が似ているからだという説に軍配が上がりそうです。花茎が槌でびしゃいだように扁平なことが本種のアイデンティティーといえましょう。

三重県国崎町町内会HP 「伊勢神宮献上の熨斗鮑(のしあわび)」
「熨斗・のし」というのは本来「熨斗鮑・のしあわび」のことです。海の岩礁地帯に生活しているアワビの身を紐状に削いで乾燥させたものです。乾物の「かんぴょう」みたいなものです。かんぴょうをスルメのような感じにしたものです。(昔、リンク先の「御料鰒調製所」に研修に行ったことがあります)
熨斗は紐状であっても多少は厚みがあり、紙のように薄くはありません。したがいまして、ノシランの和名の起源が “その葉が熨斗みたいだ” などという説は明白に誤りであります。

話題満載の「アカネ」と、貴重種の「クルマバアカネ」
身近な植物でどこにでも自生していますし、綺麗な花が咲くわけでもありません。申せばありふれた雑草みたいな「アカネ」なのですが、色々と話題豊富な植物です。また、アカネによく似たものに「クルマバアカネ」があります。

●まず、アカネは万葉植物です。万葉集にアカネが何首も詠われていますし、「あかねさす」というのは著名な枕詞です。朝焼けや夕焼けがアカネ色(赤系統の色)に映えることから、アカネは太陽を思い浮かべるもので、「あかねさす」は日・昼・照る・紫を引っ張り出す “先行詞” みたいなものです。アカネというのは “赤根” でその根を掘ると生時には赤黄色をしています。乾燥すると黒っぽくなります。

●次に、古代から使われる優れた染料です。暖色系統の桃色~赤色に染まるようです。
サイト名は不明ですが、アカネで絹糸を染めています。

●アカネは薬草でもあります。秋に根を掘り採って乾燥したものは、茜草(せんそう)という名の生薬だそうです。
イー薬草ドットコム『薬用植物一覧表』
↑このサイトではアカネを万能の薬みたいに効能を書き並べていますが、茜草は『日本薬局方』には収録されていないようです。本当に効くのでしょうかねえ?? それとアカネの根を乾燥させると赤黄色になると、逆を書いています。生の時に赤いような黄色です。乾燥すると色が黒っぽくなります。

アカネ
↑こちらはアカネです。花の写真を撮るのは難しいので、花は下の波田先生の写真をご覧下さい。アカネは1節から4枚の葉が出ていて輪生(りんせい)するかのように見えますが、真の輪生ではありません。偽輪生(ぎりんせい)と言われています。ニセモノの輪生だというのです。実際は2枚の葉が対生しているのですが、葉の基部にある小さな葉状の托葉(たくよう)が葉と同じぐらいにまで発達して4枚の葉のように見えるのです。とくにアカネでは対生する2枚の葉の間に「葉間托葉」が2枚あり、それが巨大になっています。4枚の葉のうちどれが本当の葉なのか? どれが巨大になった托葉なのか? ですが、本当の葉の基部からは花序や枝が出ますが、托葉の基部からは花序や枝が出ないということで見分けます。で、そういうことを意識しながら↑の写真を撮りました。写真中央の節から4枚の葉が出ています。右上の葉の方向に枝が出ています。で、この右上の葉とそれに180度向き合う左下(虫食い模様がある)の葉が本当の葉です。

(托葉とは葉の付け根にある小さな葉のようなものですが、本来、アカネの対生する葉の葉柄の基部には2個の托葉がありました。1枚の葉に2個の托葉があったのです。葉は2枚あるから托葉は全部で4個あったと言うことになります。ところがその托葉が2個づつくっついて合着したのです。それは、こちら側の葉の托葉と向こう側の葉の托葉がくっついて「葉柄間托葉」になった。つまり托葉が4個 → 2個に減数した。そして2個に減数した托葉が巨大化したということなのです。)

リンクフリーの波田先生のサイトでアカネの花の写真が見られます。

クルマバアカネ
↑こちらはクルマバアカネです。車葉アカネの意味です。1節から葉がたいてい8枚にぎやかに出ていて、ちょうど車輪を思わせる姿をしています。8枚と決まっているわけではなく6枚のことも多いです。(ただし茎の主軸についてであり、枝では4枚のことが多いです。)さて、1節に8枚も葉がにぎやかに付いていると、このうちどれが本当の葉なのか? どれが托葉が大きくなったものなのか? 托葉は2枚なのか4枚なのか? と、聞かれそうですが、わかりません。???。ハイ。当方植物形態学の専門家じゃありませんから答えられません。でも、まあ調べておきます…。(よく観察してみます。)
ご教示たまわりますれば有難いです…。

クルマバアカネの分布はアカネよりも狭く、主に九州北部から中国地方の日本海側の海岸と、九州北部から愛媛県北部・瀬戸内海を通って淡路島・和歌山市にいたる線上の海岸にあるそうです。国外では朝鮮・中国東北部などで、要するに乾燥気候のところに分布しているそうです。海岸近くに自生していて、南あわじ市灘地区~洲本市由良にかけてよく見られます。アカネよりも豪壮な野草という感じがします。茎につくトゲもアカネよりもきついです。

『日本のレッドデータ検索システム』では6県がクルマバアカネを絶滅危惧種に指定しています。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではクルマバアカネはBランクの絶滅危惧植物です。

その根茎が生薬になる「オオカラスウリ」
ウリ科の「オオカラスウリ」です。これは諭鶴羽山系の南斜面の名物植物です。カラスウリよりもむしろオオカラスウリのほうが多いぐらいです。それで私は子供のころオオカラスウリのことを、カラスウリだと思っていました。そう認識している住民が多い筈です。兵庫県では諭鶴羽山系の南斜面にしか見られないようです。オオカラスウリは「大烏瓜」で、その果実が大きいのです。カラスウリよりも果実が一回り大きく、熟した果実の色がカラスウリでは朱色であるのに対して、オオカラスウリは橙色でやや薄いです。

本種は「隔離分布」ということが言われています。『淡路島の植物誌』によると、オオカラスウリの分布は九州には沢山あるのですが、あとは山口県の萩市や、淡路島南部、和歌山県の友ヶ島などです。四国では標本がないということです。九州から四国を隔てて淡路島周辺にある状態が、分布の中心から遠く離れてポツンとあるということで、「隔離分布」だというのです。高知県および愛媛県のレッドデータブックでは「情報不足」になっています。文献にはあっても標本がないらしいです。
徳島県立博物館所蔵のオオカラスウリの標本
↑学芸員の小川誠先生のサイトで見つけました。標本にラベルがありませんが、採集地を伏せるために隠しているのでしょうか? 明らかに雄株の標本で、長い花序が良く分かります。長い花茎に花は落ちているのに苞だけは何個か残っています。ひょっとする自然分布でなく、栽培品起源の可能性についても言及されています。

(社団法人)東京生薬協会のサイトの『新常用和漢薬集』より、オオカラスウリの生薬名は「カロコン」
カロコンという生薬は、普通はキカラスウリの根茎から作るのですがオオカラスウリも用いるそうです。カロコンは『日本薬局方』にも収録されているので、れっきとした薬草ということになります。厚生労働省のお墨付きということになります。子供の汗も取りに使う天花粉はキカラスウリの根茎から採取した澱粉だというのは、よく知られています。キカラスウリよりもオオカラスウリのほうが根茎が大根のように太く、澱粉の収量が多くなるのでしょうか? 諭鶴羽山系南斜面では両種とも自生していますので、秋になったら掘って調べてみます。

『日本のレッドデータ検索システム』では7県がオオカラスウリに言及しています。
『兵庫県レッドデータブック2010』では、オオカラスウリはBランクの貴重種に指定しています。

オオカラスウリ
↑オオカラスウリの雄株です。よく繁茂しています。花は日が暮れてから咲き、朝になるとしぼむ「一夜花」なのですが、昼前までは「半しぼみ」の状態です。半しぼみの状態では花にふれるとポロリと落ちます。

オオカラスウリの葉
↑葉は手の平を広げたように深い切れ込みがあります。5裂が一番多いようですが、3裂や7裂のこともあり個体による差や、蔓の先端かどうかなど場所にもよります。葉の表面はざらざらしています。葉の形だけではキカラスウリと見間違える危険性があります。

オオカラスウリの花
↑これは雄花です。オオカラスウリは雌雄異株の蔓植物です。

花の付け根に大きな苞がある
↑花の付け根に大きな苞がありますが、これがオオカラスウリの著しい特徴です。近縁種との違いが分かりにくい場合には、この大きな苞を見るといいです。苞は長さが30㎜ぐらい幅が25㎜ぐらいで、この苞葉の先の部分が房状になって裂けています。
雄花のガク
↑がく裂片は5枚あります。長さは15㎜ぐらいで先のほうには房状の鋸歯があります。
亜熱帯のシダ植物「ナチシダ」の観察
熱帯・暖地性シダ植物の「ナチシダ」です。『日本の野生植物シダ』によると、本州(千葉県以西の暖地)・四国南部・九州・琉球の山地の湿潤な林床に生じ、群落となることがあるそうです。常緑ですが分布北限付近では冬に地上部が枯れてしまうこともあるらしいです。アジアの熱帯・亜熱帯に分布し、東はサモアに達します。和名は和歌山県那智山で発見されたことによるとのことです。

『日本のレッドデータ検索システム』によると8県がナチシダを絶滅危惧種に指定しています。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではナチシダはBランクの貴重植物です。

ナチシダの自生北限地は静岡県賀茂郡河津町梨本大畑ということで、そこでは国指定の天然記念物になっているようです。
↑しかしこれは古い話で、その後さらに北でナチシダが次々に見つかったようです。福井県のレッドデータブックを見ると福井県最北部にナチシダの自生地があり、静岡県河津町(伊豆半島南部)よりも緯度で1度以上も北にあります。河津町のナチシダ自生地は国土地理院の地形図に記載されています。自生地付近には温泉もあり、熱帯シダのナチシダ自生北限地というものを名所として売り物にしているようです。実際には伊豆半島はナチシダの北限地からは既に滑り落ちているのに、いまだに北限地だと主張するのはおかしいです。まるで北限地利権?にしがみついているようです。

福井県名田庄村……………北緯36度10分ぐらい
千葉県房総半島清澄山……北緯35度09分30秒ぐらい
静岡県賀茂郡河津町………北緯34度47分36秒

ナチシダの群落
↑見事な群落になっています。これは南あわじ市賀集牛内の奥の牛内川の源頭地帯の谷です。じめじめとした湿気の多そうな谷で、谷筋に沿ってナチシダが自生しています。大きいものでは2mに達しています。とても大きいのでいかにも亜熱帯のシダという感じがします。

5角形を連想する葉です
↑葉柄は長さ1mから大きいものでは1.5mにも達し、3つに分岐しています。その分岐した3つのうちの両側のものがさらに外側に枝を分けます。それで全体としては、5本指の手の平を広げたような形状になります。5角形を連想する葉です。

5本の指を広げたよう
↑これも5角形です。ナチシダの葉はみんな5角形なのです。自然界には5角形というのはとても多いです。5裂する葉とか、5裂の花冠とか、かわったところでは台風の眼です。台風の眼は円形だと思いそうですが、意外に(不思議なことに)5角形とか6角形とかがよく観測されています。気象学の教科書によると、眼の中に小さな渦が数個出来てそれが関係しているらしいのですが、なぜ円ではなく多角形の台風の目ができるのか諸説あるみたいです。
ソーラス(胞子嚢群)は葉縁に沿ってつく
↑葉は2回羽状深裂で、葉の裏側の裂片の左右の縁にソーラスがあります。写真の茶色いものです。ここから胞子を散布します。裂片の先のほうにはソーラスはありません。先の方には葉の縁にギザギザ(細鋸歯)があるのが見えています。

若い葉も特徴的
↑若い葉は独特な姿で美しいのですが、シカの不嗜好植物です。薬にも毒にもなるさまざまな化学物質が含まれているようです。南紀ではシカが食べないためにナチシダがはびこっているらしいです。兵庫県でもシカが食べないので広がる傾向があり、ナチシダはAランクからBランクに変更されました。
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