雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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自給自足の奨め、南あわじ市の夏ワラビ。
●世の中には色々な価値観を持つ人々がおります。人の考えは、十人十色どころか百人百色かもしれません。ていうか、必ずしも一人一色だとは限らないです。人は誰でも時間の経過とともに考えが変わります。ああでもない、こうでもない、と思案を巡らせているうちに考えが変わります。主義主張の変節など当たり前です。で、以前はA色だったが、そのうちB色に変わり、さらにC色にと変遷していくことがありましょう。その場合には一人一色とはいえません。また、AがいいのかBがいいのか自問自答するうちに、そのどちらでもあるという結論に達することもありましょう。その場合には、一人二色というべきでしょう。そのように理屈を考えてみれば、十人十色ではなく、十人二十色であったり、十人三十色だったりすることもありましょう。ただし、十人がみな同じ考えで同じ色の可能性もあります。その場合は十人一色か??

●さて、山菜のワラビというのは全国に分布しています。九州南端の鹿児島県から北海道にいたるまで春の到来を讃える山菜として珍重されています。(ところで沖縄県にもワラビは分布しているのですか?) 自ら野山にワラビを採りに行く山菜ファンも各地に多いでしょう。ふつうはワラビは春のものだというのが常識です。ただし、春といっても南北に長い日本列島ですから、南の地方で春といえば3月、北日本で春といえば5月でありましょう。そういう地方によるズレはありましょうが、ワラビが春のものだというのは不動の常識、ゆるぎのない固定観念でありましょう…。ところが、ワラビは夏でも出ます。世の中は、十人十色、いろんな考えがありますから、ワラビは夏に採るものだという風変りな考えの人たちも、山菜ファンの中でも非常に数は少ないでしょうが、おります。

↓ 7月27日に、兵庫県南あわじ市で採取した夏ワラビ
夏ワラビ 2013年7月27日採取
↑ 本日、2013年7月27日に午前中はかかりつけの病院に薬(不老長寿の薬ではない)をもらいに行ったのですが、その帰りに、山裾を回って道草を食い、夏ワラビを採りました。今の時期には自給自足用の菜園畑にはキュウリ・ナス・ピーマン・インゲンマメなど夏の野菜が食べきれないほど出来るので、大量にワラビを採ってもしかたがありません。食べきれずに捨ててしまいます。で採取したのは写真のもの、ちょうど1キロほどです。沢山採って近所の人におすそ分けしようとしても、良い返事が返ってきません。「これ、何や? 夏のワラビてか? いまごろ、そんなん出るんけ? 食えるんかいな。堅て食えれへんやろが」と、先入観というのは強固な鉄の檻(おり)です。簡単には打ち破れないのです…。
さて、ここに夏ワラビの採り方を公開します。ワラビ採りは春の風物詩などという固定観念を捨てて、夏ワラビを賞味しましょう。 ただし、以下に記述する夏ワラビの採り方は、南あわじ市(淡路島南部)での話です。地方が異なれば、当然に採り方は変わりましょう…。


①、ワラビ狩りは、農業用の溜め池の土手を捜せ!
淡路島は、おそらく、間違いなく、日本一の溜め池高密度分布地であります。農林水産省「溜め池」  を閲覧すると、わが兵庫県は溜め池の数において、日本一に君臨しています。また、兵庫県ホームページ 【参考資料】ほ場整備面積、ため池数 を閲覧すると兵庫県内の溜め池の半数が淡路島にあります。

全国および兵庫県の溜め池数
↑ 出典は上記の農水省および兵庫県のホームページから数字を拾い集めた。比率(%)は山のキノコが計算。

●農水省の数字では兵庫県の溜め池数は47,596箇所です。兵庫県調べの43,256箇所と大きく食い違っております。なぜだろうか? と考えてみましたが、四国新聞社 「追跡シリーズ 揺れるため池王国」 が示唆しています。

【記事のリードを引用】 (大規模消失 30年で4000個) おわんを伏せたような丸い山とその周辺に点在するため池は、地域の歴史から人となりまでを一目で語る香川の原風景と言われる。そのため池がピンチだ。この三十年間で四千の池が消えたという調査結果を県がまとめた。ため池密度日本一の座(註)は堅持しているものの、消失の規模とスピードは、ため池を支えてきた香川の暮らしの在りようが激変していることを物語っている。水は環境の健康度を測る指標ともいう。ため池の周りで何が起きているのか。それは、私たちに何を突き付けているのか。今回は揺れる「王国」の裏側に迫る。【引用終了】

溜め池が減少しているのは、耕作放棄の田畑が広がる中で、山間部の小さな溜め池が次々に放棄されてたり、種々の工事で溜め池が埋め立てられるのが主な原因で、調査するたびに溜め池の数が減るということらしい。

(山のキノコの註釈)四国新聞社が言う香川県が “ため池密度日本一” というのは都道府県単位のものです。これは全く正しいです。そもそも、都道府県の面積はばらつきが非常に大きいです。香川県は47都道府県で面積最小の県で僅か1876平方キロメートルです。淡路島(592平方キロ)の約3倍しかないです。兵庫県は8396平方キロで全国12位です。単位面積当たりの溜め池数密度ということであれば、47都道府県で香川県がトップであります。もし、都府県を数ブロックに分割した地域単位で比較するならば、香川県の約3分の1の面積しかなく、香川県を遥かに凌駕する数の溜め池がある淡路島こそ、地域別の溜め池分布密度では全国トップであることは疑いようがありません。淡路島こそ日本一の溜め池王国なのです。

●余談が長くなりましたが、なぜ溜め池に注目するかと申せば、溜め池の土手にワラビが生える率が極めて高いからです。詳細な調査はまだしていないのですが、私の観察で直観的に言えば、少しでもワラビが自生していたならばその溜め池にワラビがあるとカウントして、2割の溜め池にワラビがあります。土手一面にあるというものは1割か少し満たないか、という印象です。もう少し詳しく申せば平野部の溜め池には少なく、山裾の溜め池には多くなります。つまり、ワラビ狩りをするならば溜め池巡礼をするのがコツなのです。ただし、これは淡路島での話で、他府県・他地方でも通用するかどうかは未確認です。が、案外、全国的に通用するのではないでしょうか? ワラビは乾燥気味の陽光地を好むシダ植物です。溜め池の土手はこの条件にピッタリと適合しています。


②、田主らが草刈り・火入れをした後2週間目を狙らえ!
●溜め池の土手は、田主(たず)というその池の水利権所有者が、管理組合をつくって管理しています。管理作業の中には、おりおりに土手の草刈りや、ときには奈良の若草山みたいに火入れ・野焼きがおこなわれています。つまり、管理草原と全く同じ環境なんです。放置した草原は日本みたいに四季とも雨量の多い国では、じきに茫々と生い茂り、やがて樹がはえ、森に遷移してしまいます。ところが田主が管理しているからいつまでも草原の状態が保持されています。これがワラビ狩りにはとても都合がいいのです。

●その溜め池管理組合は田植えの前とか、田植え後とか、日時はまちまちですが溜め池の土手の草刈りをしています。春早く(南あわじ市では3月中旬~4月上旬)に出たワラビは、長けて夏前には草丈1mになり茫々です。このぼうぼうのワラビの草むらを刈り取ったり、あるいは野焼きしたあと、1週間とか2週間後にワラビの新芽が一斉にでてきます。これを狙ったのが夏ワラビであります。たとえ火入れの野焼きが行われても、ワラビの地下茎は地中にあり生きています。じきに新芽を出してきます。そうではなくて、夏でも茫々のワラビの草むらをかき分けて捜すと、地面に疑問符の形をした新芽がありますが、これは数が少ないし品質が劣りますから、お奨めできません。夏前に溜め池の土手の草刈り後に出た夏ワラビは、柔らかく品質は極上なのです。


溜め池の土手にワラビが生じる
↑ 2013年7月27日、南あわじ市阿万本庄ダム奥にて。山間部の溜め池の土手にワラビが生えています。ワラビはシカ(鹿)の不嗜好植物なのでよくはびこります。シカの好きな植物は根こそぎ食べつくされ、シカの嫌いな植物ばかり残ります。写真の右下部分にシソ科のレモンエゴマが見えていますが、これもシカの不嗜好植物です。

刈り払った跡に夏ワラビが生じる
↑ 2013年7月27日、南あわじ市北阿万の山裾にて。おそらくシカ除けのフェンスの手入れの一環でしょう。フェンスに沿って草刈りをして、その草を野焼きしたみたいです。その草刈り跡に夏ワラビが出ていました。写真の左上のほうに、刈り残されたワラビの成葉が少し見えております。このような状況のところが狙い目なのです。

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諭鶴羽山系の山菜(その14) 夏の青菜の重宝な代用品「ツルナ」
【ツルナは海流により種子散布を行う汎世界種】
●ツルナの濃緑の蔓や葉が広がっております。春先から蔓が伸びておるのですが、梅雨のころが採り頃であります。今時分がいちばん柔らかくてみずみずしいのです。ですが、秋までずうーっと収穫できます。青菜の欠乏する夏にはその代用品として大変重宝します。ふつう砂質海岸に自生する海浜植物で、その種子は海水によく浮かび、しかも耐塩性があり、海流に乗って種子散布がなされます。新しく形成された砂浜には2、3年すると必ずといっていいほどツルナが侵入してきます。海流に乗って種子が広く拡散されるので、太平洋やインド洋の熱帯から亜熱帯、温帯にかけて広範囲に分布しているようで、コスモポリタン(汎世界種、世界的公布種)と言えそうです。

ツルナ
↑今年の春早くに発芽したツルナの個体ですが、急激に大きくなってきました。これぐらいのときが一番柔らかくて採集適期でありましょう。葉腋(ようえき)にまだほとんど花が出来ておりません。花が出てくるとその株はしだいに老化してきて、葉が固くなり食べるのには2等品となります。

ツルナの大群落
↑畳2枚ぶんぐらいもある大株であります。ここの砂浜は最近出来たものですが、砂地に水分や肥料分があるのかどうか不明ですが、この砂浜に生じたツルナは素晴らしい生育ぶりです。

ツルナの花

ツルナの花
↑ツルナの花です。花期というのは無いというか、非常に長いというか、春から秋遅くまで何時でも花が観察できます。伸びていく茎の先の方に何時でも花があります。茎の下の方にはたいてい果実があります。果実は熟してくると黒っぽくなります。秋に黒く熟した果実を採集して畑に蒔き栽培するのもいいでしょう。

【ツルナの栄養価値はホウレンソウに遜色がない】
文部科学省 資源調査分科会報告「日本食品標準成分表2010」について 『日本食品標準成分表2010 6 野菜類』 から抜粋作表しますと、ツルナの栄養成分価値はホウレンソウと比べるとそれほど見劣りするものではありません。したがって、ホウレンソウの欠乏する夏にはその代用品には立派になり得ます。てゆうか、『日本食品標準成分表』に掲載されているということは、ツルナという海浜植物が “立派に野菜である” と文部科学省がお墨付きを与えているわけであります。100グラムあたりの成分は次の通りです。
ツルナの栄養成分

【ツルナは世界各地で野菜として栽培されている】
WorldCrops「New Zealand Spinach Tetragonia tetragoniodes」 というサイトを見ると、中央アメリカのコスタリカで畑でツルナが栽培されている写真が見られます。また、ブラジルのサンパウロで市場で売られているツルナの写真が見られます。ツルナはこのように世界各地で畑で栽培されていて、間違いなく野菜であるといえましょう。海岸の砂浜に行って大いに採取して食べていただきたい。なお、New Zealand Spinach(ニュージーランドのホウレンソウの意味)というのはツルナのことです。

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【ツルナの料理の一例】
ツルナの収穫
↑海岸の砂浜でツルナを採取する場合は、ふわふわと生育が良い株の茎の先を摘みとります。葉が数枚着いた状態の茎の先です。出来れば花とか果実の付いていないものの方がいいでしょう。花がまだついていない若い茎は柔らかくて、アクとかエグ味がほとんどありません。しかし老成した堅い茎のものはエグ味が強くなります。

ツルナの白あえ
↑ツルナの白合えであります。これはわたくし山のキノコの作品です。作り方を伝授しましょう…。

【ツルナの白合えの作り方】
1、海岸に行って、ツルナを採取する。砂浜海岸には、捜せばどこにでもあります。砂浜でなくてもあります。

2、材料は、豆腐半丁・調味料(砂糖大さじ2、味噌大さじ2、塩小さじ1、炒りごま) 豆腐は重しを乗せて脱水する。すり鉢で炒りごまを摺りつぶす。次に豆腐と調味料を投入して、よく摺り合わせる。

3、ツルナ200グラムを茹でて、水に10分さらす。さらすのはアクとエグ味を抜くためです。そしてよく絞り上げる。そして3センチの長さに切る。

4、他の具材、ニンジンの千切り、シイタケの千切り、糸こんにゃくを3センチに切ったものを、ごく少量の油でいためる。他には、竹輪とか油揚げを線切りにしたものを用意する。

5、2で擦り合わせたものにツルナと具材を放り込んでよく攪拌し、混ぜ合わせる。

材料の分量は適宜でありますが、味付けは濃い目のほうがいいかもしれません。というのはツルナはややエグ味のある野菜ですので、濃い味にするとそのエグ味が減殺されます。ごま(ピーナッツとかアーモンドとかクルミなどのナッツ類もよろしい)を使うのも、ゴマの油分と香りでツルナのエグ味を減殺するためです。
自然薯(ヤマノイモ)の正しい食べ方
●20年ほど前に自然薯栽培が一種のブームになりました。山村では村の特産物にしようと、我も我もと自然薯栽培を手掛ける人が多かったのですが、最近ではブームも沈静化しました。皆が皆いっせいに同じビジネスを始めればいわゆる「合成の誤謬」になるだけです。残念ながら自然薯などを大量に生産しても売りさばける市場がありません。一人で行けば上手くいくものも、皆で行くとダメになる、「合成の誤謬」

農林水産省の統計をいろいろと見ましたが、「やまのいも」という項目があることはありますが、どうもツクネイモやイチョウイモや多分ナガイモも、全ていっしょくたにして栽培面積や生産量を統計しているような感じです。それで自然薯の経年的な全国生産量等の統計は見当たりません。で、正確なところは分かりませんが近年では全国各地で自然薯栽培がなされていて、この島でも栽培されています。(私の所有する畑にも自然薯があります。植えているのではなく、ムカゴが落ちて勝手に生えているという感じです)全国各地の山村で自然薯が作られているので、売りさばくのに苦労している生産者が多いようです。直接販売ができればそこそこ高く売れるのですが、青果市場に出荷するだけでは安く買い叩かれる…、のです。

じねんじょ
↑全長60㎝ほどの小さな自然薯です。商売が忙しくなってきたので、1mを越えるような大物を掘る時間がありません。大物は暇ができてからのお楽しみです。それで自分の畑にある小さなものを掘りました。ヤマノイモの蔓の太さで芋の大きさがほぼ見当つきます。芋の大きさは蔓の太さに完全に相関しています。この小さなものでも290グラムあり、4人前のとろろ山かけ飯が作れます。
長い間、毎年秋に自然薯を掘っていますが、過去40年間で掘った一番大きな自然薯は5キロ強ありました。最近はこんな大きなものはありません。大きくてもせいぜい1キロ余りぐらいな物ばかりです。乱獲がたたったのと、近年はイノシシが自然薯を掘っています…。ヒトが掘るだけでなく、イノシシとの奪い合いになっています。なお、厳密なことを申せば、自分の所有地でない所のものを掘ると窃盗(つまり泥棒)です。森林窃盗に抵触するかもしれません。しかし普通の山菜採りでも山芋掘りでも、良識にのっとって山をひどく荒らすとか、掘り跡を放置するとかしない限りそれほど問題にはなりません。最低限のマナーは掘った穴を現状どおりに埋め戻すことです。

●さて、自然薯のとろろ山かけ飯の作り方です。

1、自然薯の1人前は50~100グラム程度です。自然薯を綺麗なタワシでよく洗います。芋のひげ根はむしり取ります。皮を剥く必要はありません。

2、自然薯をすり鉢にこすりつけてすりおろします。この方がいいのですが馴れないと難しいので、おろしがねを使ってもいいです。降ろした自然薯をさらにすりこ木で摩り下ろします。

3、味噌汁を用意しておきます。出しは昆布と煮干しを使い、隠し味としてスルメを少しほり込んで濃厚な出しを取ります。そしてやや辛い目に味噌を入れます。白みそが宜しい。具はネギだけです。余計な物はいれません。コツはとにかく濃厚でダシのよく利いた味噌汁にすることです。理由は自然薯自体には味がないからです。

4、すりつぶして柔らかい餅状になった自然薯に、味噌汁を少量づつ流し込んで伸ばします。5、6倍に伸ばすのがいいのですが、好みにより濃さを適宜かげんします。伸ばす際には、すりこ木をグリグリと回転させながら味噌汁が自然薯になじむようにします。素早くします。味噌汁は熱いものを流し込むのですが、芋が煮えないように気をつけます。芋が煮えると食感がガタ落ちになります。芋が煮えないギリギリの限界のところで、素早く、熱いままで伸ばすのです。熱いほうが美味いのです。

5、炊きたてのご飯(麦飯であれば更に良い)に、この味噌汁で伸ばしたまだ熱い自然薯のとろろを掛けて、出来上がりです。コツはとろろの温度を下げないことです。冷めた自然薯のとろろは興ざめです。熱いほど美味いのです。したがいまして、ご飯の炊きあがり時間と、自然薯のとろろの出来上がりの時間をピタリと同期させるのが、一番の肝心かなめであります…。

すり鉢ですり下ろした状態
↑おろしがねで自然薯をすりおろし、更に、すりこ木でよくすりおろします。きめ細かくすりおろすのです。すると、真っ白な弾力のある餅みたいになります。良く見ると胡麻みたいな黒い点々がありますが、これは皮を剥いていないためです。皮を剥きさえすれば真っ白になります。この時にアク出やすい二等品であれば、真っ白でなくて灰色とか変色してきます。

自然薯のとろろ山かけ飯
↑山のキノコの作品です。あまり美味しそうには見えません。なんだか犬にやるご飯みたいです…。昔、飼い犬にご飯に味噌汁をかけてよくやりました…。器とか盛り付けに工夫が要りそうです。

山菜の王者「ヤマノイモ」
●ヤマイモ掘りと言えば、田舎では晩秋の欠くべからざる年中行事であります。自然薯(じねんじょ)とも称されるヤマノイモは最大の山の幸でありましょう。まさに山菜の王者であります。10月下旬ころから掘ることができますが、早い時期に掘ったヤマイモは調理するとアクが出やすい傾向があります。それで出来るだけ遅い時期に掘るほうがイモの品質が良いのですが、あまり遅くなると蔓が枯れ果ててしまいその所在がわからなくなります。で、まだ蔓や葉があるうちに株元を確認しておき、目印を付けておきます。昔はヤマノイモの株元にムギの種を蒔くなどということが行われましたが、ムギの栽培自体が止まって久しいのでその種子がもはや手に入りません。

★南あわじ市灘地区のある集落では、集落の鎮守の宮さんの新嘗祭(全国的には11月23日に執り行う新穀感謝のお祭り)の直会(なおらい)で、ヤマイモの “とろろの山かけ飯” を参列した地区住民に供する風習があります。東北地方では秋に “芋煮会” という行事が盛大に行われ大変に有名ですが、西日本では各地の集落で地区の公会堂でヤマイモの宴を行うところが沢山あります。

★さて、わたくし山のキノコは自営業的な仕事が忙しくて、まだヤマイモ掘りができておりません。ヤマイモ掘りは1m前後にもなる芋を掘り出すのでありますから、チョイチョイとできるものではなく半日仕事です。とりあえず山中のあちらこちらのヤマノイモ自生場所に目印をつけております。冬の間にぼちぼちと掘るつもりです。むかし、山口県柳井市の政田自然農園さんが考案した「クレバーパイプ」という塩ビ製の栽培用器を用いて、畑でヤマノイモを栽培してみましたが、栽培品は肥料をやったりして肥培するので芋の粘りがどうしても低下してしまいます。やっぱり、ヤマイモは天然品が一番であります。(栽培品は食味が悪いので二等品なのであります。)

政田自然農園さんの自然薯栽培講習です。
一時、栽培した「じねんじょ」が黒岩水仙郷で販売されていました。(今はどうか知りません)クレバーパイプの大きな欠点が一つあります。芋がパイプに接した部分が黒っぽく変色することです。栃木県の玉川園さんが考案した「おふくろ」の方がはるかに優れ物で、この欠点を克服したものです。しかしながら、なぜか普及しませんでした。農業資材においても、悪貨は良貨を駆逐するということなのか?

まず、ヤマノイモの果実とムカゴを観察したいと存じます。なお、“ヤマノイモ” と言うばあいは植物名(標準和名)を指すのですが、“ヤマイモ” あるいは「じねんじょ」と言う場合は山菜としての名称です。
ヤマノイモの黄葉
↑ヤマノイモの葉の黄葉です。とても美しいものです。青々としていたらその存在が目立たないのですが、黄葉するとその所在が一目でわかります。人家に近い所には中国から伝来した栽培種のナガイモとの雑種になったものが多く見られます。山の奥に行くほどに日本在来種のヤマノイモが多くなります。雑種か純血かは葉の形状で見分けます。写真のものは純血のヤマノイモです。雑種は葉の形状が変わるのと、蔓が紫色がかった色になります。

ヤマノイモの果実
↑ヤマノイモは雌雄異株で、雌株と雄株があります。雌株には写真のような果実が付きます。
ヤマノイモの果実と種子
↑ヤマノイモの果実と種子です。言葉では説明しにくい形状ですので写真をよくご覧下さいませ。右上のものは果実を展開させたものです。相撲の行司が持つ「軍配」のような形あるいはハート形の薄い羽が3枚合わさって果実が出来ています。その合着した羽の間に種子があります。通常は1個の果実に3個の種子ですが、時には2個ずつ計6個の種子が出来ることも多いです。右下の平べったいものが種子です。種子は径4ミリぐらいで、その周囲に膜状のひれがあります。ひれの径は写真のもので12~14ミリです。

★この種子を冷蔵庫で保存して春に蒔けば、秋には下の写真のムカゴ程度の大きさの芋ができます。ヤマノイモの雌株と雄株では芋の性質を比べると、雄株の芋は調理したときアクが出やすい傾向があるようです。(正確なる観察ではなく、経験的にそういう感じです。)

ヤマノイモのムカゴ
↑ヤマノイモは葉が普通は対生するのですがその葉腋(ようえき・葉の付け根)にムカゴが生じます。ムカゴは雄株の方が良く付くのですが、雌株にもムカゴは出来ます。
ヤマノイモの 「ムカゴ」
↑ムカゴの収穫です。これも上等な山菜です。ゆでたり、油で揚げたりして、塩を振りかけて食べます。お酒を召し上がる方はこれを酒のつまみにするとよろしいです。たいへん美味で珍味であります。ムカゴは極端に大小不揃いですが、大豆ぐらいの大きさのものが多く、大きなものではラッキョウぐらいです。ヤマノイモを栽培する際にはこれを種にします。これを春に蒔くと秋には長さ30~50㎝、重さ50~100g程度の芋になります。この芋を更に一年栽培して収穫します。
ハマボウフウは高級山菜であり、生薬にもなる
香り高い高級食材として知られるハマボウフウです。料亭などでお刺身の「つま」として料理に彩りと香りを添えています。畑でも栽培されることもありますが、生産量が僅かなので青果市場に出回ることが少ない品目です。ハマボウフウは第一級の山菜ですが、野菜といってもいいかもしれません。諭鶴羽山系の海岸部の砂浜でハマボウフウの新葉が出ています。山菜の採取時期は春が圧倒的に多いのですが、本種は春よりも、秋から冬の方がよろしいです。普通は晩秋から冬季はハマボウフウの植物体は休眠期で生育は停止していますが、この時期に、ロゼット状に広がる株元の中心部分の柔らかい葉を摘み取るほうがいいのです。ただし、これはあくまで淡路島南部においてのハナシです。

ハマボウフウの分布は広く、北海道のオホーツク沿岸から九州南西諸島にいたるまで日本全土に自生しています。地方により採取適期は異なるであろうかと思われます。ハマボウフウの生活史を観察すると、淡路島南部では花が5月~6月に咲き、7月~8月に種子ができます。結実するといったん花茎部は枯れます。そして秋になるとゴボウのような根茎から新しい新葉がでてくるのです。その新葉が秋から冬の間に僅かに育ちます。したがいまして秋から冬に採取します。春になると葉が硬くなり品質が劣ります。

●ハマボウフウは薬草でもあるようです。
『イー薬草・ドット・コム』 薬用植物一覧表より セリ科ハマボウフウ属「ハマボウフウ」
漢方薬でいう「防風」は中国産のセリ科の植物の根茎を乾燥させたもののようで、ハマボウフウとは別物らしいです。ハマボウフウはあくまでも代用品であって、本家本物とは異なるようです。したがって、薬効はあまりないのではないか?

ハマボウフウ

ハマボウフウ
↑上の2枚の写真は11月5日に撮りました。秋から冬はこの状態です。北国では冬季には枯れているのかもしれませんが、淡路島南部では厳寒期でも青々としています。この写真を撮った砂浜は幅が狭い砂浜で、波打ち際からハマゴウやアキグミなどの生育する安定帯までの距離が30m程度しかありません。ですので海浜植物の明瞭な帯状分布(不安定帯・半安定帯・安定帯などの)があるようではないのですが、海に近い最前線にハマヒルガオがあって、その手前に(陸地側に)ハマボウフウがたくさんあります。

ハマボウフウの花
↑この写真のみウキィペディアからお借りしました。他の写真は自前です。花はちょっと見はカリフラワーみたいな形状をしています。

ハマボウフウの収穫
↑採取するのはこれぐらいのものが宜しいです。セリ科特有の良い香りがします。栽培品はモヤシ状に軟白化させるのですが、天然品は葉身も葉柄もしっかりしていて歯ごたえがあります。株の中心の若い葉をそろりと採ります。砂を少し掘って採取するといいでしょう。葉柄の基部から下は太い根茎になっています。地下の根茎を傷めず残しておけば、また葉がでてきます。採取するのは展開するまえの葉でまだ黄色味が残っているぐらいのものが宜しいです。展開しきった葉は堅くて香りも少ないのです。展開した堅い葉でも天麩羅であればいけます。

ハマボウフウの身上は何と言ってもその素晴らしい香りです。まるで香辛料のような香りがします。サンショウ・ショウガ・ミョウガの3種の良い所の成分を調合したような感じです。軽く湯がいてあえ物にすると、そのシャキシャキとする歯ごたえと、30分ぐらい余韻を引く香りとが絶妙であります。あまり沢山食べると舌がしびれてくるほどの強い芳香があるのです。

(あまりハッキリ書くのはマズイですが、本当は地下の根茎が一番おいしいのです。ゴボウほど真っ直ぐではありませんが、ハマボウフウの大株ならばゴボウのような直根が数十㎝も深く伸びています。これを掘り取ってよく水洗いして適当に切って、生で三倍酢をつけて食べると絶品です。ゴボウよりも柔らかいです。しかしこれをすると自生地の破壊につながるので慎みましょう。)

●『小太郎のまんぷく日記』さんが美味しそうなハマボウフウ料理をレシピつきで紹介してくださっています。ハマボウフウの甘酢漬がいいですね。香りの強い香辛料的な山菜には酢がよく合います。胡麻和えや天麩羅も美味しそうです。
料理ブログ『小太郎のまんぷく日記』さんのハマボウフウ料理。

晩秋の淡路灘海岸を彩る黄花3種 「ツワブキ」
秋も深まり、ツワブキの花が満開になりました。諭鶴羽山はツワブキの沢山自生している山です。至る所にあります。ただし山の中腹より上にはありません。ツワブキが多いのは山の麓の海岸部です。ツワブキは耐陰性が多少あり、海岸部のトベラとかイヌビワなどの疎林の下草として大群落になっているところもあります。ツワブキは珍しいものではなく、ありふれたものですが、話題は沢山あります。万葉植物であり、民間薬であったり、結構な山菜でもあり、花が大きいのでキク科の花の構造を観察するには良い材料です。

●ツワブキは民間薬として使われているらしい…。
『イー薬草・ドット・コム』 薬用植物のご案内「ツワブキ」
「ツワブキは、民間薬としての用途がおもなものです。葉を火にあぶって柔らかくし、細かく刻んで打撲、できもの、切り傷、湿疹(しっしん)に外用すると効き目があるとされています。また、葉を青汁が出る程よくもんで、打撲、できもの、切り傷、湿疹に、外用に直接つけます」 ということでありますが、たんなる気休めであろうかと思います。本当に薬効成分があるのならば、日本薬局方に収録・規定されるハズです。そう考えるとツワブキが薬用植物であると信じがたいです。

ま、ツワブキが良く効く薬だと信じれば効くのかもしれませんが…。効くか効かないかは心理的なことも影響するので、偉い医者が「これは良く効く特効薬なんだよ、特別に処方してあげよう」などと言って出せばメリケン粉でも効く場合は実際にあります。そういう意味ではツワブキが効く可能性は否定しきれません。プラセボ効果(偽薬効果)

●ツワブキには、民間薬としての価値はかなり疑問でありますが、山菜としての価値は大いにあります。熊本県など九州地方ではツワブキを野菜として食べているというのは良く知られています。畑で栽培され、八百屋の店頭で売られています。ですが、他の地方ではあまり食べません。淡路島でもツワブキを採って食べるのは私ぐらいなもので、大当たり一人占めです。ツワブキの若い葉の葉柄で佃煮をつくればとても旨いものです。炊きたてのご飯にツワブキの佃煮があれば、他におかずは要りません。

宮崎県日南市の南郷地区の特産品
温暖な海岸部に自生するツワブキ。畑で栽培もされています。春の香り高い山菜として人気です。

大分の情報サイト『SHOKU』佐伯つわぶき
佐伯(さえき)ツワブキというブランド品があるそうです。畑でツワブキを栽培していますよ。収穫した「佐伯つわぶき」を主にJAおおいた佐伯豊南を通じて、11月から4月末頃まで、県内や福岡市へ出荷するそうです。農協を通して出荷出来るというところがスゴイです。ツワブキを食べるという食文化が根付いている九州ならではのことで、他地方ではとても考えられません…。

「ツワブキの佃煮」料理レシピ みんなのきょうの料理

ツワブキの大群落
↑海岸部にあるツワブキの群落です。陽光地にもたくさんありますが、樹林の下草としても沢山自生しています。ほか海岸の岩の横とか至る所にあります。南あわじ市灘地区の黒岩水仙郷はよく知られていますが、諭鶴羽山の海岸部のツワブキ自生地を育成・拡大すれば新たな観光資源になる可能性を秘めています。花期が水仙より早いのも魅力的です。ツワブキの花期は10月~12月です。水仙は12月~2月ぐらいです。

ツワブキの花
↑花がつく茎が葉の上に突き出ているというのも観賞するには長所です。花が葉の陰に隠れることがないので見ごたえがあります。頭花が大きく径5㎝~7㎝ぐらいもあり、舌状花が10~15枚ほどもあるので野生の花としては極めて豪華であります。

ツワブキの花

諭鶴羽山の山菜「ツルナ」
野山には食べられる植物がたくさんあり、山菜として愛好家が珍重しています。諭鶴羽山は近年いわゆる「遷移」が急速に進行していて、樹木がどんどんと生長しています。それで木が鬱蒼としげり、林床が昼なお暗いという状況のところも増えています。いきおい草本類が日照不足で減る傾向があります。しかもシカが大繁殖して食害も目だっています。そのため、ひと昔前と比べると山菜が減りました。30年前には大きな籠を持って諭鶴羽山の山頂直下の北東斜面に分け入り、たくさんのゼンマイを採りました。ゼンマイの大群落があったのです。そのゼンマイはさらに以前にネザサ(正確にはケネザサ)の大群落が昭和40年ごろ結実して枯れて、その跡に繁殖したものです。しかし「自然遷移」の進行はいかんともしがたく、山は深い森に覆い尽くされようとしています。これから将来は山菜は貴重なものとなりそうです。

さて山菜といえば山に産するから山菜と称するのでしょうが、麓の海岸にも山菜があります。海岸の食べられる植物を山菜と言うのはおかしい、たとえば海岸菜、浜辺菜、潮の香るところの物だから潮菜? などの言葉を造語してみましたが、なんだか、しっくりとする名ではありません。食べられる植物にはよく「ナ=菜」が語尾につけられます。例えば「アゼトウナ」、灘海岸の崖に生える植物ですが兵庫県レッド・データ・ブック2010でCランクの貴重植物です。食べるわけにはいきませんが食べられる筈です。ごく近縁のホソバワダンが沖縄では「にがな」と称して食べられています。アゼトウナは畔冬菜の意味で、「畔」は海岸の崖の意です。海岸の崖に生えて冬に花が咲く食べられる菜ということだろうと考えられます。それで海岸の食べられる山菜は、「浜菜・はまな」と称するのがいいのでは? と提案したいと思います。

今の時期に推奨の山菜(浜菜)はツルナです。ハマジシャの名前でよく知られています。太平洋沿岸の熱帯から温帯の海岸に広く分布しています。東南アジア・中国・オセアニア・南洋諸島・南米チリと分布は広いです。グンバイヒルガオやハマナタマメとおなじように海流に乗って種子が散布されると言われています。また18世紀にキャプテン・クックがツルナをヨーロッパに持ち帰って、イギリスやフランスでは1800年代に野菜として栽培されたそうです。このツルナは日本でも時には畑で栽培もされますが、海岸の砂地とちがい肥沃湿潤な畑では素晴らしい生育を見せます。誰が出荷するのかは知りませんが、南あわじ市福良のスーパーでは店頭にツルナがよく並びます。

このツルナは山菜というよりも野菜と言うべきかもしれません。保育社の『原色日本野菜図鑑』にも載せられています。また文部科学省の『五訂増補日本食品標準成分表』にもツルナが載っています。栄養成分もコマツナとかホウレンソウと比べてけっして見劣りしません。栽培容易で夏の暑さにめっぽう強く、これという害虫もいないので完全無農薬栽培が可能です。夏の青野菜の代わりとして大きな価値があります。実際に栽培するには、たとえば株式会社「サカタのタネ」がツルナの種子を販売しています。もちろん海岸の自生品から種子を採取してもいいでしょう。
ありゃまあ、ツルナをレッド・データ種と指定する県もあるぞ

ツルナ
↑これは海岸の県道の山手側の擁壁にぶら下がるように生じたものです。海岸の砂地から、礫まじりの荒れた場所、大波がくると海水の飛沫がかかるところ、など乾燥・強風・塩分・乏しい肥料分によく耐えて逞しく育ちます。一見すると強健で競争力の強い植物に見えるのですが、そうではありません。逆です。ほかの植物には過酷すぎて育たない場所に適応して生活する植物というだけです。葉も肉厚で塩分を含み潮風にもよく耐えます。

ツルナ
↑雨に濡れそぼるツルナです。ちょうど採り頃です。ツルナは秋まで常時収獲できますが、やはり春から梅雨までぐらいの柔らかい時がいいです。茎の先20センチぐらいを摘み取ります。葉も茎も食べられます。葉腋に花の蕾ができていますがこれは堅いので食べません。摘み取ったあとから側枝が出てきますので何回でも収獲できます。

ツルナのお浸し
↑ツルナのお浸し。ツルナを湯がいて、流水に少しさらして塩分とアクを抜きます。シュウ酸が多いとされるのでアク抜きは必須です。そして鰹節とお醤油をかけただけのシンプルな料理です。シンプルではありますがホウレンソウのおひたしに全く遜色がありません。あえ物(味噌あえ)などにも合う山菜です。夏のビタミン補給によろしいです。葉菜類の少ない夏場にこのツルナは重宝します。なお、結石が心配な方はツルナ料理の食事のさい、牛乳を飲むといいです。
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