雑想庵の破れた障子
ぺんぺん草に埋もれた山中の雑想庵。 破れた障子の小さな穴から見えるものを綴ります。
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ミミガタテンナンショウは、鳥類が種子を散布するのか?
隔離分布で知られる ミミガタテンナンショウ というサトイモ科の植物があります。本日2012年7月28日に、成相谷にアベマキというクヌギの親戚の樹木の写真を撮りにいきました。その成相谷にアベマキがあるのですが、そこがミミガタテンナンショウの自生地でもあります。ちょうどミミガタテンナンショウの果実が赤熟する時期に当たっていたので、観察してみました。

2011.04.15 ミミガタテンナンショウ
↑2011年4月15日に、全日写連会員の写真家の里口寿信さんが撮影したものです。花期は3月下旬~4月上旬ぐらいですが、その年の冬から春の寒暖のぐあいで、1週間や2週間前後します。諭鶴羽山系で見られる他のテンナンショウ属のウラシマソウ・ナンゴクウラシマソウ・アオテンナンショウよりも、花期がほぼ1カ月近く早いです。

赤い実を鳥が食べたのか??
赤い実を鳥が食べたのか??
ここにはセンサーカメラが仕掛けられていました。昼過ぎに見たときはカメラが設置されていたのですが、2時間後に再び見たときは撤去されていました。わたくしが山の中腹を探索していた間に撤去されたようです。センサーカメラを仕掛けた方は、おそらくK先生か、あるいはK先生の協力者(島内在住I氏か?)だと思います。

ミミガタテンナンショウは鳥類が種子散布するのでは?と考えられているらしいです。それはミミガタテンナンショウが自分で種子を散布など絶対にできない “その自生地より上の崖” などに生育地を広げたりする例が知られていて、鳥類が種子を運んだと考えると合理的に説明ができるからです。ちょうどミミガタテンナンショウの果実が色づく7月には他の木の実等が少ない時期に当たり、鳥類は仕方がなくミミガタテンナンショウの実までついばむのではないか? と想像できるのですが、しかし実際にそのことが確認された事例がまだ無く、詳しいことはよく分かっていないのです。と、以前K先生から電話を頂戴したとき、そう仰っていました。

で、ミミガタテンナンショウの果実を鳥類が食べにくる決定的瞬間(生態学的証拠)を写真に撮ろうと、動くものが来ると作動するセンサーカメラを仕掛けていたのであろうかと思います。さて、その証拠写真は撮れたのでありましょうか?? 写真では赤い実は残り少なくなっています。鳥類が(あるいは他の動物かも?)食べた可能性は大です。周囲を観察すると食べカスみたいなものも認められました。もし鳥類が赤い実を食べて、その鳥類の消化管を通過した後に種子が散布されるのであれば、けっこう分布が広がる可能性があるのでは?? 留鳥ならばそれほどでもないでしょうが、渡り鳥ならば分布が大きく広がりそう。しかし今時分は渡り鳥は居ないのではないか? それとは別に、種子の発芽率が非常に低いとか、分布がそう簡単に広がらない要因もあるかも…。

トウモロコシみたいな肉穂果序
ミミガタテンナンショウの果実
↑まるで赤いトウモロコシみたいです。穂状果序? 穂状複合果? トウモロコシ型果実? こういう形状の果実は何と言うのでしょうかねえ? いろいろと書物をひっくり返してみましたが分かりませんでした。それと、いったい個々の果実は、何個あるのだろうか? 何回かぞえても分かりませんでした。おそらく、100個~120個の間だとは思うのですが、全く数えられません。この穂状複合果を傷つけずに正確に数えるのは不可能であります。なんとか数える方法がないか沈思黙考しましたが、知恵は浮かんできませんでした…。

★数えながら果実を1個づつ外していくとか、数えながらマジックペンで印をつけていくとか…、はダメです。その数え方では果実に傷をつけたり汚してしまいます。なお、この写真の物には、鳥類が食べた形跡が全くありません。

葉は枯れている
↑こちらは葉が枯れるか、枯れかかっています。こちらの物も鳥類が食べた形跡が全くありません。山の中腹をよく捜したのですが、赤く熟したトウモロコシのようなミミガタテンナンショウの複合果実が5個体ありました。鳥類などの動物が触っていると思われるのは1個体だけで、残りの4個体は全く動物が触っていないようで、果実が欠けておりません。さらに、未開花(未結実)株が、結実株の周辺にやたらと多いことから帰納的に考察するならば、たとえ鳥類がミミガタテンナンショウの果実を食べるということがあったとしても、積極的に好んで食べるのではなく、他に食べる餌がないなどの消極的理由から、仕方なくいやいや食べるのではなかろうか??

ナガバヤブマオの草叢
↑辺りはナガバヤブマオの草叢が生い茂っています。その生い茂る草叢の周辺にミミガタテンナンショウの赤熟果実が見られます。で、鳥類が果実を見つけにくいという理由もあるかもしれません。

鳥に発見されるように草を刈った
↑で、余計なことであるかも分かりませんが、鳥類が赤い実を見つけやすいようにと、覆いかぶさっていたナガバヤブマオの1株を剪定鋏で取り除きました…。
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移植されたハマアザミが大繁殖しています。
洲本市由良生石の砂嘴状の地形の砂礫海岸で、キク科のハマアザミが咲いています。9月初め頃から咲いていますが、間もなく満開になると思われます。10月末か11月初めごろになると冠毛のついた痩果を風散布し、地上部は枯れていきます。しかしながら、すぐさま枯れた茎の腋から新芽を出してきて、根生葉を展開して冬を越します。

『日本のレッドデータ検索システム』では5県がハマアザミを絶滅危惧植物に指定しています。
『兵庫県レッドデータブック2010』ではハマアザミをAランクの貴重植物に指定しています。

●「兵庫の植物 第10号」2000.4『洲本市平安浦に自生したハマアザミの移植と新たに確認された自生地』などの文献によると、ハマアザミは1990年か91年ごろ平安浦で杉田氏らが見つけました。しかし国道28号線の拡幅工事に伴い自生地が破壊される危機に直面しました。その自生地を保全することは不可能な情勢で、そこで緊急避難として建設省近畿地方建設局の手により、自生地のハマアザミの個体群が1996年5月に苗床に仮移植されました。2年あまり仮移植で養生させ、1999年2~3月に6地点の移植地に本移植されました。また、その間の1998年に広瀬氏によって平安浦と洲本市街地の中間で新しい自生地が発見されました。

●したがいまして、現在、淡路島におけるハマアザミの真の自生地は1か所だけであり、他のところは平安浦の個体群の移植されたものが起源だということになります。そのハマアザミの遺伝子は淡路島自生のものの系統であるのは間違いないのですが、移植地はあくまでも移植地であり、真の自生地ではないということになります。たしか2007年の7月だったか?神戸新聞淡路版にハマアザミの記事が報じられました。“ある島の自然を護る会の人らが由良生石で貴重植物の自生地を見つけていたのに、洲本市がブルドーザーで踏みつけてしまい、けしからんと怒っている” という内容だったと思います。つまり移植地であるのに自生地であると誤った報道がなされたのです。

そこで、移植にかかわった島外の専門家らがその自然保護会の人らに、移植の経緯を伝えたようです。その後、移植地のモニタリングの必要性から、2008年から毎年秋遅くに専門家ら数人で由良生石のハマアザミの移植後の個体群追跡調査が行われています。↓の報文がそれですが、オープンアクセスではないので本文は残念ながら読めません。
洲本市由良町に移植されたハマアザミの生育状況の推移

ハマアザミの大株
↑9月29日、洲本市由良生石にて。この生育地は真の自生ではありません。1999年の春先に10株移植されたものから繁殖したものです。大きな株では直径1mの円形に広がっています。多数の茎を出して数十個の花をつけると思われます。頭花は紫味の入った桃色で美しいものです。

蕾が多数ある

花のアップ
↑葉が肉厚で腫れぼったい感じがします。いかにも海岸植物という印象であります。茎や葉裏の毛が著しく、また全草鋭いトゲが多数ありうっかり触るとひどい目に合います。

●紀伊半島南部では比較的多くのハマアザミが自生しているようです。熊野地方ではハマゴボウと称し、山菜として食べることもあるようです。まっすぐに50㎝ほど伸びる直根は径1~2㎝で野菜のゴボウそっくりで、きんぴらごぼうや天麩羅にするらしいです。美味しいらしいです。10月末か11月初めぐらいに種子を少し頂戴して畑で栽培するといいでしょう。2年あれば根を収穫できます。(3年も畑で養育すると立派なゴボウになります)

ただし、この由良生石で生育しているものは、たとえ真の自生ではないといっても根を掘り採ってはいけません。神戸や明石の専門家たちが毎年の生育状況をモニタリング(継続調査)しています。まあ、頭花1個分ていどの種子を戴くのならばいいでしょう。

●さて以前に、台風マーゴン(T1106)の影響で7月19日に紀伊水道は大しけに見舞われました。そのために5~6mものうねりが淡路島南部の海岸を洗いました。それで大量の流木と浮遊性ゴミが海岸に打ち上げられました。ハマアザミの移植生育地の3分の1程度が流木等で埋まるという惨状です。しかしながらハマアザミは海水の飛沫等には耐性があるためか、埋まらなかった個体には被害がありませんでした。↓がその大しけ等の様子です。
大しけの灘海岸

台風の被害
↑もこもこした緑のものがハマアザミです。向こうの方に流木等が打ち上がっています。

飛砂や飛塩に耐え忍ぶ「ビロードテンツキ」
カヤツリグサ科のビロードテンツキです。美しい花が咲くわけではないので、植物愛好家や山野草趣味の人たちには打ち捨てられたカヤツリグサ科ですが、植生や生態学を研究している人たちには興味深い植物群のようです。ビロードテンツキは砂質海岸の厳しい環境を耐え忍んで生育しています。強風で砂が飛んでくるわ、海水の飛沫もかかるし、それから生育地が砂地なので、乾燥・乏しい養分・強い日差しなど、内陸の軟弱な植物では育たないところがビロードテンツキには安住の地なのでしょう。

ビロードテンツキにとっては、厳しくとも安住の楽園である砂浜海岸が危機的状況です。各地で埋め立てや護岸工事による砂浜の破壊が進んでいます。砂防ダム建設や河川改修工事により砂の供給が減少して、砂浜がやせ細っています。防潮堤建設などによる潮の流れの変化も砂浜の消長に影響しています。砂浜がやせ細ることが多いらしいですが、時には逆に大量の砂が運ばれて自生地が埋没ということもあるらしいです。最近では砂浜海岸はオフロード車の格好の遊び場になっています。ビロードテンツキは砂浜や砂丘という特殊環境にしか生存できない植物ですし、その特殊環境が常に破壊の圧力にさらされているので、多くの県がレッドデータ種に指定しています。兵庫県レッドデータブック2010でもAランクの貴重植物に選定しています。

『日本のレッドデータ検索システム』では19の府県がビロードテンツキをレッドデータ種にしています。

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↑7月29日です。カヤツリグサ科のビロードテンツキです。今年は何故かどの株も花がありません。花期は夏です。7月から9月ぐらいまで花(果実)があるのですが、全く見当たりません。どうしたのでしょうか? 先日の台風の暴風で花が吹き飛んだのではなさそうです。なんらかの要因で今年は開花しなかったのか?

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↑草丈(葉の高さ)はせいぜい10㎝ぐらいのものです。もし花のつく茎があれば、それは葉よりもかなり高くなります。葉はとても固く、写真ではわかりにくいのですが、葉の表面を白い毛が密生して覆っています。それで見た感じがビロードみたいだ、というのです。実体顕微鏡で拡大して観察すると和名に「ビロード」を冠した理由がよく分かります。毛が密生しているのは飛砂から体を護っているのでは?

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↑枯れた古い葉がたくさん残っています。これは砂質海岸に生じたもので、そこは小規模な砂丘になったところです。飛砂が多い半安定帯と思われる環境です。古い葉が残って地表を覆い、砂の動きを止めるのに役立っているような感じです。ビロードテンツキは大きな群落を作るのではなく、その一帯に点々と散在するという感じです。

●ビロードテンツキは砂丘植物です。兵庫県でただ1か所のビロードテンツキ自生地の南あわじ市阿万吹上浜は、砂浜海岸であるとともに小規模な砂丘になっています。本種が飛砂の多い砂丘が “安住の地” である秘密が、次の資料でよく理解できます。
Sandblastingによる植生管理の試み : 鳥取砂丘の草原化対策(一般研究発表会・口頭発表)

sandblastingとは「砂の吹き付け」です。肥料散布機を使って、砂の強風吹きつけ実験をしたということです。砂丘植物も非砂丘植物も強風による飛砂で傷つくと、大半は枯れてしまいます。ところがしばらく後には、砂丘植物はかなり植生回復するのですが、非砂丘植物は回復が少ないそうです。

ビロードテンツキの自生地に内陸の植物が侵入してきても、不定期に起こる強風の飛砂でやられて、内陸植物は育たない。しかし、ビロードテンツキも飛砂によるダメージはあるにはあるが、じきに回復して生育できる…、ということですね。しかしながら、このことはビロードテンツキが必ずしも競争力の強い植物であるわけではない、ということを示唆しています。ただ単に飛砂とか乾燥とかに適応しているだけです。

ビロードテンツキを内陸の植物のあるところに移植するとか、種子を蒔いて育てても、内陸の植物との競争に簡単に破れて、育たないのではないでしょうか?
知られざるハマボウ群落
梅雨が明けまして、青い夏空にハマボウのレモンイエローが映えています。上品な美しい花です。学名は、Hibiscus hamabo(ハイビスカス・ハマボー)です。日本名がそのまま種小名になっているので、とても覚えやすいです。学名を見れば「ハイビスカス」というのはアオイ科フヨウ属を指すようです。世間一般が言っているハイビスカスは中国南部原産のブッソウゲのことで、ちょっと認識にズレがありそうです…。ハマボウの名の由来は不明などと書いてある書物やサイトがありますが、「浜(海岸)の塩湿地に生じて、その花がモクレン科のホウノキの花に似ているもの」の意味じゃなかったですか?

一般にハイビスカスと称されるブッソウゲは、花色が真っ赤のものとか、濃色系が多くケバケバしい感じがします。葉もまるで油を塗ったかのようにテカテカと光沢があります。極めてどぎつく繊細さがありません。それにくらべると日本自生種のハイビスカス・ハマボーは繊細で上品です。おくゆかしくて控え目なわが国民性を表しています。自己主張の強い国民性の国に原産する植物は原色ケバケバしく、そうではない国の植物が上品であるのは、もちろん何の因果関係はありませんが不思議なものです。

『兵庫県レッドデータブック2010』ではAランクの貴重植物です。入江の奥とか河口汽水域などで、満潮時には海水が逆流してくるような塩性湿地に生育する植物です。「半マングローブ」を形成する樹木としてよく知られています。しかし河口や入江などが護岸工事や埋め立てなどの環境改変が著しいので、どんどんと姿を消している植物です。花も美しいので盗掘もされるようです。なにも盗掘などしなくても、秋に少しだけ種子をいただいて播けば育苗・栽培は簡単です。栽培してみると乾燥・過湿・高温にも強く丈夫な植物です。植物自体は丈夫なのに、なぜ絶滅危惧種かといえば、ひとえに特殊環境に自生し、その自生地が次々に破壊されるからでしょうか?

『兵庫県レッドデータブック2010』サイトにおけるハマボウ

『日本のレッドデータ検索』サイトでは、多くの県がハマボウを絶滅危惧種に指定しています。

上品なハマボウ
↑とても気品のあるレモン黄色です。本日7月11日の段階ですでに沢山開花しています。蕾もいっぱいあるので、お盆ぐらいまで咲いているのではないでしょうか。

ハマボウ群落

ハマボウ群落
↑数十個体ぐらいはあろうか? ちょっとした群落になっています。大きいものは樹高3mぐらいもあります。1mぐらいの小さなもの(未成熟株)も結構たくさんあります。淡路島洲本市由良の成ヶ島の近畿地方最大のハマボウ群落には及びませんが、おそらくこの場所が兵庫県2番目の群落だろうと思います。冬になって個体群調査をすれば100個体以上あるかも分かりません。

南あわじ市のこの自生地は海辺の湿地です。そこは約30アールの面積でごく小さい池(水溜まり)が4つありアシが生えているなかにハマボウがあります。この湿地の東側は水田で、国土地理院の『電子国土ポータル』で2500分の1の測量図を見ると水田の海抜はわずか0.2mです。湿地の南側に狭い車道がありますが海抜1.2mです。きわめて低海抜です。海側には防潮堤がありその堤上には防風林があるので、ただちに海水がその湿地に流入することはないでしょうが、大潮の満潮時に排水路の門があいていたら、おそらくこの湿地に海水が遡上してくるだろうと考えられます。そういう海面ギリギリの低湿地なのです。

ハマボウはよく栽培もされますので、ここの湿地の物が万一植栽である可能性もあるので、近くの住民にヒアリングをしました。近くに2軒の民家があり、訪問して根ほり葉ほり枝ほり聞きました。すると昔から勝手に生えている自生であるとのことです。その湿地は転売の結果、所有者は地元住民ではないそうです。そこの住民は「この湿地には迷惑しているから伐ってやろうかと思っていた」などと言うのにはビックリしました。そこで、たぶん兵庫県2番目の貴重なハマボウ群落であり、ひいてはこの地区の財産ですと説明すると「じゃあ大事にしようか」と分かってくれました…。
この「アスヒカズラ」はどこから来たのか?
ヒカゲノカズラ科のアスヒカズラというシダ植物があります。『兵庫県レッド・データ・ブック2010』でAランクの貴重植物とされています。2~3ミリの針金のような硬い茎が地面を這って広がります。その匍匐する茎からところどころ分岐した枝を斜めに立ち上げます。そして枝の先端近くでは何度か二股に分岐して、ちょうど針葉樹のアスナロのような感じになります。アスナロやヒノキに似ているので「アスヒカズラ」という和名がついたとされています。

アスヒカズラは針葉樹のアスナロに似る
↑たしかにアスナロやヒノキに似ています。この写真では地面を匍匐する茎は見えていません。見えているのは斜上する茎で、葉というのは扁平な茎に圧着するように4列に並んでいます。常識的には葉というと平べったくて大きいものということですが、アスヒカズラの葉はおよそ葉らしからぬもので、ルーペで観察しないとどうなっているのかよく分からないものです。

アスヒカズラは匍匐して広がる
↑アスヒカズラは草丈の高さは20㎝ぐらいのもので地面を絨毯のように覆って広がります。この写真では若い「胞子のう穂」が見えています。

兵庫県レッド・データ・ブック2010ではアスヒカズラはAランクの貴重植物
↑兵庫県内には丹波の700mほどの山と、西播の1000mほどの所にあるそうです。氷ノ山にはないということです。
各県ごとのレッド・データ情報によるアスヒカズラの状況
↑16もの県がアスヒカズラを絶滅危惧植物に指定するか、もしくは絶滅危惧性に言及しています。大注目です。しかし環境省の全国版のレッド・データ・ブックでは絶滅危惧植物に指定していません。これは中部地方の高冷地より北、東北・北海道では割合によく見られる植物だからです。南の方の県でデッド・データ植物に指定しているのは、個体数が極端に少ないとか、かなり限定された地域にしかないとか、いろいろな理由があります。が、一つの大きな理由に氷河期の「遺存種」であるというのが挙げられましょう。かつての氷期に南の方に分布を広げたアスヒカズラが、後氷期の温暖期になって近畿地方の日本海側の山の上に僅かに残っている、ということです。兵庫県の周辺では、鳥取県では絶滅し、岡山県では後山の近くの1100m辺りにあるようです。徳島県では剣山系の丸笹山(1700mほど)に自生が知られています。要するに、アスヒカズラは北方系の温帯のシダ植物で、近畿北部・中国山地東部・剣山に遺存的にごく僅かに残っているのです。

さて、掲げました二枚の写真は諭鶴羽山系の東の盟主、柏原山の山頂付近で撮りました。2009年に見つかったものです。これがもし自然分布であったならば柏原山は南限地にごく近いということになります。しかしこれは自然分布ではない可能性があります。というのは、柏原山は過去数十年にわたり島外の植物専門家が大勢入れ替わり立ち替わり調査された山です。徹底的に調べられているのです。それまで一切見つからず最近見つかったのは何故なのか? ここに自然分布でないのではと疑義が生じるのです。柏原山は林道開設や展望台建設、それから公園化など人為がかなり加わっている山です。それでそれらの工事に付随してアスヒカズラが侵入した可能性があります。諭鶴羽山と柏原山の間には500m前後のピークがたくさんあります。もしそこで見つかったならば話は別ですが、その可能性は低そうです。ま、絶対にないとも言い切れないので調査する必要がありそうです。

岡山県の吉備高原で見つかったアスヒカズラ
↑は岡山県在住のある研究者の方のブログです。示したページの3枚目の写真にアスヒカズラがあります。吉備高原の海抜200メートルのところ、しかも農免道路の法面(のりめん)です。分布上、自然分布と考えるのは不自然だという疑問がでて調査された結果、そこには外来種のコケ類もあり、法面に吹き付けたピートモスのようなものに胞子が混じっていて逸出したのであろう、との結論に落ち着いたそうです。近年、中国や朝鮮半島からの輸入堆肥等にまじって外来種が日本に侵入することがたくさん報告されているそうです。

アスヒカズラは日本固有種ではなく、北半球の温帯地方に広く分布するようです。朝鮮半島・中国・ロシアほか、台湾・ヒマラヤなどの亜熱帯の高地にもあるらしいです。で、柏原山でたびたび行われた工事で中国や朝鮮半島から輸入した資材が使われ、それに胞子が混入していた可能性が考えられます。
(ま、柏原山のアスヒカズラがどこから来たのか? 正確にはなかなか分からないものです。推理しても証明するのは難しい……。ヒトが植物の自然分布を不用意に撹乱しているのは間違いありません……。)
諭鶴羽山のミミガタテンナンショウ
●諭鶴羽山の北側の2つの谷、成相水系と上田水系とに見られます。『兵庫県レッド・データ・ブック』ではAランクの貴重植物と評価されています。旧五色町でもSN氏が見つけ兵庫県には3ヵ所に自生することになります。近畿地方では兵庫県にしか分布していないです。最初に発見されたときには<隔離分布>だと話題になりました。

●分布の本拠地は関東地方から東北太平洋側のようですが、遠く離れた四国の愛媛県や大分県にあり、その中間の近畿地方や中部地方の西部にはなかったので、“隔離して分布している”ということなんですが、10数年前に分布の空白を埋める発見として淡路島でみつかったものです。

ミミガタテンナンショウの全国的なレッドデータの状況

ミミガタテンナンショウの兵庫県のレッドデータ情報

●写真ではわかりにくいのですが、仏炎苞の口辺部がちょうど耳のように著しく横に開出していて、耳の形に見えることから、耳形天南星(みみがたてんなんしょう)と名づけられました
仏炎苞の色はかなりの個体差があるようです。私の写真では、茶色っぽいのですが、兵庫県レッドデータ情報の小林先生の写真では緑色です。個体によって、緑、茶色、紫がっかった色、えび茶色…、と変化に富んでいます。結構色とりどりなので観賞価値がありそうです。自生地のものを盗掘するのはいけませんが、7月には種子が沢山できます。種子を少し頂いて苗を大切に育てるのならばいいでしょう。栽培は容易です。

ミミガタテンナンショウの特徴の一つには花期が早いということが挙げられます。淡路島には4つのテンナンショウ属の植物がありますが、他のウラシマソウ・ナンゴクウラシマソウ・アオテンナンショウに比べると、1か月ほども速いです。例年は3月下旬から4月上旬ぐらいが花期です。ことし2011年の春は寒かったのですが、特に3月がここ30年来の寒さでした。南あわじ市の南淡アメダス観測所の観測データを見ると、3月の平均気温は平年値よりも-2℃以上も偏差したので生物季節が10日ぐらいずれてしまいました。それで、ある写真家の方と4月15日にミミガタテンナンショウを見に行ったのですが、まだ少し早いかなという感じでした。

ミミガタテンナンショウ
↑上田水系の斜面の崩壊地に生じたミミガタテンナンショウ
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